6 女教師はナイスバディ!
「本日より、このクラスを受けもつことになった小笠原令子よ。一年間よろしく」
女性は教壇に立つなり、自己紹介をはじめた。
どよめく群衆。
とくに男子が色めき立った。
茜色のスーツが似合うキャリアウーマン。えびす顔で暑苦しかったこれまでとは真逆に涼しい小顔。鼻の下がのびるのびる。
「こちらの高校で教職員の人数が足りないとのことで、今日づけで配属されました。前はどうだったか知りませんが、今日からは給料分厳しくしつけていきますので覚悟すること」
「おお、S……」
だれかが嬉々とした声でつぶやく。
浮かれ騒ぐクラスのなかで、日和はちらりと美鈴の席をみた。
目があった。
プィ、と顔を背けられる。
「むきーっ!」
「そこ、なに奇声あげてるの!」
容赦なく指摘をうける日和。憮然とする彼だが、まわりの男子たちは違った。
「むきーっ!」
「むきーっ!」
「むきーっ!」
そこかしこからうれしそうに奇声があがる。
「この教室はサルの惑星の出身者ばかりなの?」
眉をしかめると、すぅ…と息を吸いこむ。
「Beィィィ――Quietッッッ!!!!」
「「むきょ!?」」
騒いでいた男子たちが金縛りにあったように硬直する。
「――担当教科は英語。Understand?」
「い、Yes!!」
まともだった男子と女子が唱和する。
「よろしい。出欠をとります」
冷静に出席簿をひらき、一人一人の名前をよんでいく。
日和は目の前の席で硬直している志村に声をかけた。
「こえぇな」
「……イイ」
帰ってきた言葉は半ば程度予想できたモノだった。
この調子なら、しばらくみすずの話題はスルーだな。
日和は安心した。