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18 オカルト事件、入りました!

 革張りのソファに少女をおろすと、底がないかのように沈みこんだ。許嫁いいなづけの手前、最低限疑われる動きをしないよう、紳士的とおもわれる態度で少女を寝かせる。


「うぅん……」


 苦しそうに少女がうめく。ふつふつと、あぶら汗まで浮かんでいた。

 額にそっと式符が置かれる。

 苦悶くもんの表情がやわらぐ。

「なにしたの?」

「よく眠れるおまじないです」

 すこやかな寝息をたてはじめた少女からはなれ、香月は別の札を取りだす。


「彼女のお父上には政敵も多い。直接的な手段でなく、このような手段で蹴落とそうとするものもおりましょう」


 部屋の壁へと札がとぶ。

 札は壁にはりつき、えがかれた文字が赤い燐光をはなった。

 おなじように三枚の札を投げつけると、東西南北の四つの頂点で式符がかがやく。


「歳徳神に乞い願ふ。幸いたりや南の星。幸いたりや西の星。幸いたりや北の星。幸いたりや東の星。那由多の星々に祈り給いて浄土と清めん――」


 四枚の札はより明るくかがやき、重い空気がうそのように吹きとんだ。


「おおっ!」

「結界をはりました。このうちにいるかぎり安全です」

 黒髪をはらうと、日和へとちかづく。


「あなた様にも見えたのですね?」

「うん。グロかったよね、アレ」

 涙と鼻水の件ははずかしさのせいで忘れた。


「やはり”舞姫”様のちかくにおられるだけはありますのね」

「アレ、何?」

「この家にわざわいをおこす呪いが形をなしたもの。邪なる”鬼”です」


 胸ポケットから白い封筒をとりだす。


「わが生徒会では投書を受けつけています。ほとんどは書記や副長権限で解決できるような問題ですが、ごくまれに、不可解きわまりない事項が投函とうかんされる。それが真実であると判断したとき、わたくしはわが校の生徒を救うためにこうして参上いたします」

「なんでオレも一緒なの?」

「わたくしの夫となるかたなら、このくらいの試練には耐えていただかないと」

 封筒で口元をふさいで微笑む。


(……可憐だ)


「わたくしに見せてください。あなたが優秀な助手であることを」


「おおっし!」


 日和は気合いをいれた。

「見ていてください! この春日日和、あなたのためにあの化けものをみごと仕留めてご覧にいれましょう!」


「期待していますわ」


 封筒の下に浮かべた笑みが、苦笑まじりに変わった。

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