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神さまなんてキライ。うそつきだから。
おなかがへって泣きたいときも。
さむくてこごえて消えてしまいそうな夜も。
いたい思いをじっとガマンしてなくちゃならないあいだも。
どんなにお祈りしても、助けてくれなかった。
お祈りがたりないの?
どれだけお願いすればたすけてくれたの?
ただ、おなかいっぱいに食べることができて、
あたたかいベッドでぬくもりを感じて、
だんろのあるへやで、笑いあっていたかったのに。
窓からみたけしきの内側にあこがれただけなのに。
神父さまの言うとおりに、まいにちお祈りをささげました。
つぎはげぎだらけのぼろを着て、
いっしょうけんめいにお祈りしても、
奇跡なんておきなくて。
顔をあげても、ただ笑ってみてるだけ。
なにがそんなにおかしいの?
あたしが苦しんでることがそんなにたのしいの?
神父さまは言ってたのに。
とおいお空のうえから降りてきて、パンを与えてくれるんでしょ。
どんなにおかしな味でも、いっしょうけんめい食べるから。
ひとつだけなら、おとうとと半分こして食べるから。
かえして。
おとうとを、かえして。
あんなにおねがいしたでしょ。
眠らずずっとおねがいしたでしょ。
きのうから目をあけないの。
ずっととじたまま。
もう「おねえちゃん」とよんでくれないの。
どうして。
ねぇ、どうして?
どうして奇蹟をおこしてくれないの?
おくすりなんて買えないから、奇蹟をおねがいしたのに。
神父さまは言ってたのに。
神さまのちからで、めを覚ましたひとはたくさんいるって。
どうしておとうとは駄目なの?
おとうともあたしと一緒にお祈りしてたよ。
ずっとへやにいたから、きっとあたしよりいっぱいお祈りしてた。
なんであたしじゃないの?
なんであたしの大切なものをとるの?
神さまなんてキライ。大きらい。
神さまなんて信じない。
神さまなんて、ほら吹きだ。
この世の誰も信じない。
みんなキライ、大きらい。
あたしから大切なものを奪った世界なんて、きえてなくなっちゃえばいい。
みんなふこうになればいい。
あたしがきっとそうしてあげる。