表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者ですがハーレムがアホの子ばかりで辛いです  作者: 鹿角フェフ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/90

第十四話(下)

「か、カカカカカ、カタリ様!? 私は確かに宰相ちゃんをプレゼントすると言いましたが! それはわりとネタと言うか、半分は冗談で半分はカタリ様を信じていた為であって! ガチで手を出すとは思っていなかったのですよ!?」

「手は出してない! 誤解なんだよ!」


 お、落ち着け。落ち着くんだ俺。

 状況は最悪だ、ティアは驚きの表情で俺を咎めるように詰め寄ってくる。

 ティアさんは意外とピュアっ娘さんだからなぁ、こういうの物凄く怒るんだよなぁ。


「姫様、関係ない」

「宰相ちゃん! 煽らないで!」


 首に回された腕に力が込められる。

 宰相ちゃんがより近くに感じられた。

 あかん、これ完全にティアさんの事煽ってらっしゃる。

 俺は宰相ちゃんを無理やり引き離す事も出来ずに誤魔化し気味に笑みを浮かべるだけだ。


「チュー、チュー……」

「さ、宰相ちゃん? 俺はティアさんとちょーっとお話があるから先に食堂に行っててくれないかな? 甘えん坊な勇者様の為に用意をしておいて欲しいんだ!」

「わかりました、です」


 幸いティアさんは俺と宰相ちゃんの蜜月の時が相当ショックだったのか、目をぐるぐると回す勢いで混乱している。

 俺はその隙にこれ幸いと宰相ちゃんを説得し、退室して貰うようお願いし、ティアの誤解を解こうと構える。


「ティア。話をしよう。人は分かり合えるんだ」


 宰相ちゃんが俺から名残惜しげに離れ、部屋から完全に出たのを確認すると、ティアへ笑顔を向け、いたって平然と、かつ爽やかに語りかける。

 もちろん内心の動揺は全力で隠す。もしティアさんが誤解したまま本日の出来事を言いふらすような事があったらまさに一巻の終わりだ。俺の冒険はそこで終了してしまうことになる。


「つ、次は私のつもりですか! だ、駄目ですよ! 私はこの国の姫なんですから! まだまだやらないといけない事があって、カタリ様とそういう事をするのは駄目なんですよ!」


 ティアとの距離が遠い。

 と言うか、彼女はまるで次に襲われるのは自分だとでも言いたげに、自らを抱きしめるように守ると、全力で俺から距離を取っている。

 ちょっと過剰反応過ぎるんじゃない? 流石の俺もちょっと不満だ。


「誤解だって言ってるでしょ! ってかその宰相ちゃんだよ! その事について聞こうと思ってたんだよ!」

「……宰相ちゃんがどうかしたのですか?」


 その言葉を聞くや、ほんの少しだけ何かを考える仕草を見せたかと思うと、ほへーっとした表情でこちらへとやってくるティアさん。

 ……なるほど、今までの行動は演技だったんですね、分かりました。

 俺は平気で人を騙そうとするこのワガママお姫様に苦い思いを抱きながらも、これ幸いと最近の宰相ちゃんご奉仕モードについて相談する。


「いやさ。最近、ってかここ数日前からかな? なんかいきなりお世話を頑張りだしてね、ちょっと甘えん坊になったっていうか、ベッタリが過ぎるっていうか……何か知らない?」

「うっ……」

「何か心当たりがあるんだな?」


 原因発見。

 バツの悪そうなティアの表情にここ数日の出来事の原因を見つけた俺は、咎めるようにティアに問い詰める。

 先程とは全く逆の、今度はティアが慌てる様な素振りを見せながら、会話は続く。


「えっと、えっと。えへへ、最近ちょーっと宰相ちゃんを怒らせてしまいまして。もしかしたらそれが原因かなーって……」

「おいおい、あの宰相ちゃん怒らせるとかよっぽどだぞ? 宰相ちゃんは12歳だしティアはお姉さんなんだからイジメたりしたら駄目じゃないか」


 なるほど、宰相ちゃんはイジメられて寂しくなったからいつも以上に俺に甘えてきたのか……。理解した。

 と言うか、宰相ちゃんを怒らせるなんて何をやったんだろうか?

 食事に唐辛子を大量に盛られていてもちょっと困った顔で「辛い、です」の一言で済ませてあげる慈悲の塊である宰相ちゃんだ。そんな彼女を怒らせるなんて普通ではありえない。俺はティアに苦言を呈する。

 ちなみに、宰相ちゃんに唐辛子を盛った人物は唐辛子100倍返しの刑に処した。これは正当な断罪である。


「むぅ! 私にも譲れない事があるんですっ!」


 プクーっとむくれる不機嫌ティアさんのほっぺを両手で挟みこむように抑える。

 ぷすーっとティアの口から空気が漏れた。


「それでも、だよ。ちゃんと後で謝っておくんだぞ」


「……カタリ様は宰相ちゃんの味方ばっかりなんですね」


 なんだか、少しだけ寂しそうに答えるティア。

 俺は彼女の変化を疑問に思いながらも、ベッドに腰掛けるとティアへ椅子に座るよう促し話を続ける。


「ん? まぁ宰相ちゃんってなんか守ってあげたくなるオーラ出てるしね。なんかこう、誤って虫を殺しちゃっただけで泣いちゃうような心優しい感じで」

「そうですね」


 そっけなく返される。

 もしかして拗ねているのだろうか?

 ティアも一国を治める姫様とは言え、その中身は16歳の女の子だ。

 あんまり彼女ばかりに多くを求めるのは良くなかったかもしれない。

 その事に反省した俺は、彼女を元気づけようと、気持ちを込めて明るく彼女に伝える。


「でもさ、別に宰相ちゃんだけって訳じゃなくて、ティアの味方でもあるからさ! 困ったことあったら何でも言ってくれよ!」

「本当ですか?」

「本当だよ、なんで嘘つく必要あるのさ?」

「もし、本当は私がもの凄く悪い子だったとしても?」

「もうしちゃ駄目だよって怒るね」


 めっ! って感じで。

 まぁ、ティアの事だ。本当に悪い事はしないと信じているけどね。


「もし、大臣の皆さんがもの凄く悪い子だったら?」

「問答無用でぶっ殺す」


 奴らは生かしておけぬ。慈悲はない。


「そっか……」


 少しだけ、嬉しそうな表情で頷くティア。

 彼女がどんな気持ちだったかは分からないけど、これからはもう少し優しくしてあげようと思う。

 取り敢えず、100倍返しで食事に唐辛子を盛るのは今後無しだ。


「それにしても、宰相ちゃんどうしたものかな? これじゃあ戦闘訓練も出来ないや……」

「そういえば、訓練している報告は上がってきませんでしたね。そんなに宰相ちゃんにベタベタされているのですか?」


 ガイゼル地区の反乱事件以降、一応ティアからは戦闘訓練の許可を貰っているのだが、一向にそれをする隙がない。

 理由は明白。宰相ちゃんが遊びに来るのだ。断るわけにもいかず一緒に絵本読んだりお歌を歌ったりしている。

 それだけではない……。


「……この前なんて一緒にお風呂入った」

「えっ!?」

 しかも100まで一緒に数えた。


 ……ティアが遠い。

 先程まで椅子に座って居たはずなのに今は気が付くともう部屋の隅から驚愕の表情でこちらを見ている。

 ……固有スキル使ってまで盛大にドン引きリアクションをしてくれるとは……俺もいろいろとキツイ。


「ちょっとティアさん? あんまりそういうガチの反応見せないでくれる? 凹むんですけど……」

「一応、王宮には不届き者対策として幾重にも監視魔法が張り巡らされているのですが。ど、どうやってその目を掻い潜ったのでしょうか?」

「なんか宰相ちゃんがものすごい魔法使ってた……素人でも分かるくらい大規模な感じだったよ」


 赤黒い謎オーラを出しながら、複雑な幾何学模様を身の回りに漂わせて詠唱をする宰相ちゃんは正直ちょっと格好良かった。

 これがこっそりと一緒にお風呂に入る為に使われるものじゃなかったならもっと格好よかったんだだけど……


「お、お風呂入る為だけにフローレシアが誇る監視魔法を歪めるなんて……」

「やっぱ良くないよな? なんかめっちゃバチバチ鳴ってたし……」


 思い返すと、あの時はちょっとまずかったと思う。何度も問い直す俺に宰相ちゃんは「大丈夫、です」と自信満々で答えていたが。やっぱり大丈夫じゃなかったようだ。

 ……宰相ちゃん。あんまり自らの欲望を優先して皆を困らせないでくれ。


「私は頭痛がしてきました」

「なんか、ごめん」


 俺も頭痛がしてきた。

 宰相ちゃんは優しい良い子さんだと思っていたけど、こと自分の欲望の為となると猪突猛進になる所がある。

 このままでは宰相ちゃんに何を要求されるか分かったものではない。と言うか、もう既に大概の事は要求されている事に気がついた俺は、冷や汗をかきながら縋るようにティアに視線を送る。


「と、とにかく! 話は分かりました! 宰相ちゃんには私から言い聞かせましょう!」

「お! 本当に!? 助かるよ!」

「カタリ様にはそろそろ戦闘訓練も頑張って貰わないといけませんからね! 治水も非常に助かっていますがこちらも疎かには出来ません!」


 おお! 頼もしい!

 自らの胸を張るように自信ありげに宣言するティア。その言葉に俺も俄然やる気が出てくる。

 俺だって別に宰相ちゃんが嫌いなわけじゃない。ただ、一緒にいるとどこまでも甘やかしてしまいそうなので誰かに注意してもらわないとズルズルとイチャつくだけなのだ。

 これで少しでも宰相ちゃんが甘えん坊を控えてくれるようになったら夢にまで見た剣と魔法のファンタジー世界だ。

 待っていろよ見果てぬ大地! 隠された秘宝! 強大な敵! 俺が全て踏破してやるぞ!


「いやー! 楽しみだな! 俄然ファンタジーっぽさが出てきた! いずれはゴブリン退治とかそういうのもやってみたいな!」

「ここらだとスノーゴブリンですね、初心者向けの手頃な魔物で良いと思いますよ!」

「じゃあ頼むよティア!」

「ふっふふふ! どうか私にお任せ下さい!」


 和気あいあいとした雰囲気。

 先程ちょっと気落ち気味だったティアも今ではいつもの様にコロコロと愛らしく笑っている。

 うんうん、順風満帆だ。後は宰相ちゃんがもう少し控えてくれれば解決だ。

 もちろん、宰相ちゃんだって根は良い子だ。すぐに俺のお願いを理解してくれるだろう。

 丁度その時だ。タイミングよくドアがノックされる。

 どうやら件の宰相ちゃんがいつまで経っても来ない俺を迎えに来たようだ。


「勇者、様?」

「あ、宰相ちゃん」

「遅い、です」

「ごめんごめん、ちょっと話こんじゃってさ」


 少しだけむーっ、とした表情の宰相ちゃんに謝る。

 俺の謝罪にコクコクと頷いた宰相ちゃんは、トコトコとこちらにやってきて。嬉しそうにまた俺の表情を覗きこむ。

 うん、宰相ちゃんも今は機嫌いい。早速ティアに視線を送る。

 出番ですよティアさん!


「宰相ちゃん! その事でお話があります! 貴方はちょっとカタリ様にベタベタしすぎです! 今後過度にイチャつくのを禁止します!」


「――は?」


「もちろん嘘ですよ宰相ちゃん! 冗談ではないですか!」


 ティアさん弱ぇぇ!!!

 宰相ちゃんのドスのきいた返答を受けたティアは脱兎の如き早さで俺の後ろに隠れるとガクガク震えている。

 しかし、宰相ちゃんもそんなに怒らなくていいのに……。

 俺は不機嫌モードに入った宰相ちゃんを「まぁまぁ」と宥めつつ、背後で生まれたての子鹿のように震えているヘタレティアさんへこっそり耳打ちをする。


『ちょっと、ティア! しっかり言ってくれないと! 弱すぎるでしょ!』

『だってー! 宰相ちゃん怒ったら滅茶苦茶怖いんですよ! ぶっちゃけこれ以上怒らせたくないのでカタリ様言って下さいよー!』


 ティアさん役に立たねぇ!

 さっきまで頼もしい言葉をかけてくれた我らが姫様はどこにいったのだろうか?

 俺は未だ背後で「怖いです!」と震えるティアに呆れながら、良い機会だと宰相ちゃんに視線を合わせて優しく語りかける。


「ねぇ、宰相ちゃん? 実はね、ティアの言ったことは俺からお願いした事なんだ?」

「えと……」


 宰相ちゃんの瞳が揺れる。まさかその様な事を言われると思っていなかったのだろう。

 途端に不安げな表情になり、悲しげに俺を見つめている。


「最近ちょっと宰相ちゃんと仲が良すぎかなーって思ってさ。戦闘訓練もできてないしね」

「一緒にいたら、迷惑、ですか?」


 オズオズと語られるその言葉。

 俺は小さく笑うと、彼女を安心させる様にその美しい髪を撫でやる。宰相ちゃんお気に入りのなでりこだ。


「そんな事ないよ? 俺も宰相ちゃんと一緒に過ごすのは楽しいよ? でもね、宰相ちゃん。このまま俺が宰相ちゃんに甘えっぱなしだったらどうなると思う?」

「宰相ちゃんと勇者様が、もっと仲良しになります」

「そうだね。でもね、普通の仲良しさんは服の着替え手伝ってもらったり、朝起こしてもらったり、夜一緒に寝ながら子守唄を歌ってもらったりしないんだよ? お風呂にも一緒に入らないし、膝枕とかも、ご飯をあーんとかもしないんだ」


「うわぁ……」


 外野が煩い。ティアは何も役に立たなかったのだから黙っていて欲しい。

 ……俺だって、ちょっとどうかと思っているんだ。

 割りと楽しかったり満更でもない気分になっている自分に自己嫌悪しているんだ。

 後ろでドン引きするこの国の姫。その気配を感じつつ、俺は宰相ちゃんに続ける。


「このままだと俺は宰相ちゃんのヒモになっちゃうよ……。宰相ちゃんが一から十までお世話しないとなーんにも出来ない情けない勇者様。そんな事になったらどう思う? いつも宰相ちゃーん、宰相ちゃーん。って赤ん坊みたいでとっても格好わるいんだよ?」


「……あり、です」

「なしですよ宰相ちゃん!!」


 なんでその結論になるの!? しかもなんで微妙に嬉しそうなの宰相ちゃん! どこに君を喜ばせる要素があったんだ宰相ちゃん!!

 俺はなぜかキラキラと瞳を輝かせて幸せそうに何度も頷く宰相ちゃんを必死に説得する。


「ねぇ、宰相ちゃん! ちゃんと話聞いてた!? 俺をそんな駄目人間にしてどうするの!?」

「勇者様は、宰相ちゃんが、養います」

「ガチのヒモになっちゃうでしょ!!」

「望む所、です!」

「ホモでロリコンでロリのヒモ……」


 両手の拳を胸元でグッと握りしめ「やってやるぞ!」とばかりに謎の決意を見せる宰相ちゃん。

 相変わらずドン引きしている外野も煩いが、このままでは本当に俺は宰相ちゃんのヒモになってしまう。

 ……心を鬼にしよう。いや、初めからそうするべきだったのだ。俺は宰相ちゃんを甘やかしすぎた。宰相ちゃんが駄目な男を養う事に快感を見出すアホの子になってしまう前に、矯正する義務があるのだ。


「とにかく! 宰相ちゃんは俺を甘やかし過ぎで、俺は宰相ちゃんを甘やかし過ぎなのが分かりました! これからはお風呂禁止! ホッペチュー禁止! 添い寝禁止! お着替えの手伝い禁止! その他もろもろ禁止です!」


 禁止令発動! と同時に宰相ちゃん絶望の表情!

 ……くっ! 甘やかしたい! 冗談だよと言ってあげたい!

 だが俺は心を鬼にする。と言うか、鬼にしないと俺がいろいろと危険な性癖に目覚めそうでヤバイ。

 本当にロリコン勇者になってヤバイ。


「ホッペチュー……」

「駄目です!」


 縋るような視線を向ける宰相ちゃんに冷たく言い放つ。

 ここは譲れない。テコでも曲げるつもりはない。


 どれくらい宰相ちゃんと見つめ合っていただろうか。

 彼女は複雑な表情を見せていたが、ようやく納得してくれたらしく頷く。そしていつもの様に穏やかな表情を見せるとちょっとだけ不思議そうに尋ねてくる。


「勇者様は、強くなりたいのですか?」

「ん? 戦闘訓練の事? そうだね、やぱり宰相ちゃんやティアが困っている時に颯爽と駆けつける事が出来るくらいにはなりたいね!」


 少なくとも宰相ちゃんのヒモになっていては出来ないことだろう。

 ただでさえ、前に反乱事件があったのだ、今後似た様な事がないとも限らない。

 そんな時に、何も出来ないのは嫌だ。

 だからこそ、俺は強くなりたい。だからこその戦闘訓練。

 まぁ、冒険に興味があると言うのも本音の一つだけど。


「分かりました、とっておきの人。知ってます」


 力強く頷く宰相ちゃん。

 む、どんな人だろうか? でも宰相ちゃんが紹介してくれるんだから素晴らしい人だろう。


「え? 心当たり在るの、じゃあお願いしてもいいかな? やっぱり宰相ちゃんは頼もしいね!」

「どなたにお願いするつもりなのですか? 宰相ちゃん」


 背後からうにーっと顔だけをだして、ティアが宰相ちゃんに尋ねる。

 おや? ティアはこの件について全然知らないのか? わりと国内の事は全部把握している才能の無駄遣いティアさんだけど、知らない事もあるらしい。

 と言うか、この場合は宰相ちゃんが突如思いついたと言った所か?

 どんな人なんだろう、楽しみだ。


「――『外道公』です」


「うげっ!!」


 ……嫌な予感がする。

 俺は突然背後から聞こえた不吉なうめき声と、宰相ちゃんの愛らしいお口より漏れた不吉な名前を聞き、途端に不安が募ってくる。


「では、行ってきます」

「「…………」」


 詳細を尋ねようとするその前、宰相ちゃんは「がんばるぞ!」と言いたげな表情でとててーと勢い良く部屋を出て行ってしまう。

 不安が増大する。俺の背後で無言になっているティアさんへ、慌てて振り返り尋ねる。


「ちょ、ちょっとティアさん? 今貴方とっても不穏な声出しませんでした? 俺滅茶苦茶不安になってきたんですけど!」

「えっと、えへへ。カタリ様、がんばれっ!」


 引きつった笑みでニコリと一言告げたティアさんはそのまま宰相ちゃんと同じように部屋から出ていこうとする。

 置いて行くんじゃない! 慌てて追いかける。


「まって! まて! なんだその苦笑いは! あ、これ! 逃げるんじゃありません!!」


 どうやらこれは選択を間違った臭いぞ……。

 俺は俄然大きくなる内心の警鐘に目を背け、必死に宰相ちゃんの暴走の正体について知るべくティアを追いかけるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ