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第十話

「は、反乱だって!?」


 突然の凶報。予想だにしない出来事の発生に動揺が生まれる。

 緊張により思わず喉を鳴らす。

 ど、どうしよう……。


「そうですか、ご報告ありがとうございます。適当にやっておいてください」

「御意……」


「すとぉぉぉっぷ!!」


 だが動揺していたのは俺だけだったらしい。

 ティアとじぃやが行うゆるーいやりとりにすかさず突っ込む。

 なんでそんな軽い感じなんだよ! 反乱が起こってるんだぞ!?


「……? どうしたのですか、カタリ様? お話の続きをしましょう!」

「出来るわけ無いでしょうが! 今完全に物騒な話が出てきたよね!? なんで普通に日常会話に戻ろうとしてるの!?」

「えー、だってー! 反乱とか面白くないんです!」

「面白い面白くないの問題じゃありません!」


 ゴネるティアさん。国の一大事でも全くブレない……。

 もし反乱が面白かったらどうするつもりなのだろうか? ってかそんな適当な感じでどうするのだろうか?

 呑気なティアさんとは裏腹に、俺の焦りは加速する。


「そうですぞ、姫。我が国に楯突くガイゼル地区のゴミどもを早くどうにかしないと儂も安心して眠れませんのですじゃ」

「寝なければ良いではないですか?」

「儂にだって寝る権利はありますぞ!」


 それどころじゃないにもかかわらず、いつもの様にアホなやりとりを始めるティアとじぃや。

 俺はこの二人では埒があかないと、この場において最も頼もしい宰相ちゃんへと話を振る。


「宰相ちゃん……どうしよう? 反乱ってどうなってるの?」

「フローレシアは完璧に平和な国、じゃないです。戦争の火種、常に抱えています」

「そっか……。やっぱり勇者を呼ぶだけの理由はあったんだ。でも姫もじぃやもあんな感じでぜんぜん危機感なさそうなんだけど……」


 全然常春じゃないじゃねぇか!

 頻繁に雪は降っているし戦争の火種は抱えている。しかも絶賛反乱発生中だ。

 国内の逼迫した状況とは裏腹に、脳内が常春お花畑のティア達に俺の心にある警鐘がガンガンとその音を鳴らしている。


「危険な事はいつも回避してきました。だからだと、思います」

「うーん。今までそうだったから今回もそうだとは限らないんだけどなぁ……」

「困った、です」


 ティアはなまじ才能がある。腹立たしいことにじぃやを含めた大臣団と国民もだ。

 だからこそ、気が緩むのだろう。なんとかなると高をくくってしまうのだろう。

 それが一番危険なのだ。そういう気の緩みにこそ魔が潜む。

 俺は未だアホらしいやりとりを続けるティアとじぃやを諫め、直ぐにでもこの問題の対処をする様に警告する。


「ねぇ、ティア! じぃや! ちょっと喧嘩はやめて冷静になってくれよ! 王国の危機なんでしょ!?」

「じぃやのバカー! ハゲー!」

「バカって言う方がバカなのですぞ! このバカ姫がっ! フサフサがっ!」

「ど、どうしよう……こいつら全然話聞かない……」


 喧嘩のレベルが幼稚園児だ。フサフサが悪口になる意味が分からない。

 次第に焦りが募る。このままでは絶対に駄目だ。何とかしなければ。

 すると、服の袖を引っ張られる感触に気がつく。宰相ちゃんだ。


「勇者様……」

「どうしたの宰相ちゃん?」

「宰相ちゃんが、やります」

「え?」


 宰相ちゃんは普段見ないような真剣な表情を見せている。

 だが、宰相ちゃんがこの下らない言い争いをするアホ二人を止める事が出来ると言うのだろうか?

 言っては悪いが、宰相ちゃんは舐められまくっている。

 普通に考えてガン無視されるのがオチだとおもうけど――。


「――話を聞け」


「あっ!」

「はうっ!」


 心臓を鷲掴みにされる感触が突然襲う。

 不気味な悪寒と同時に放たれたのはドスの効いた宰相ちゃんの声だ。

 愛らしい宰相ちゃんが見せる突然の豹変に驚き、チラリと様子を伺う。

 彼女は全員の視線が自分に向いてる事を確認すると、ニコリと笑った。


「反乱のお話、してください」

(怖えぇーっ!?)


 宰相ちゃん。目が笑ってねぇ!

 普段可愛らしい子が怒るとこんなにヤバイの!?

 俺は宰相ちゃんの新たな一面に心底ビビリながら、なんとか平静を保つ。


「むーっ!!」

「仕方ありませんな! 直ぐに説明しますぞ!!」


 どうやらティアとじぃやも宰相ちゃんのお叱りが効いたようだ。

 二人はビックリとした表情で宰相ちゃんを見つめている。

 ……うん。分かるよ、流石にこれは驚くよね。


「やりました、です」

「宰相ちゃんは宰相ちゃんだよね? 俺の知らない所に行ったりしないよね?」

「……? はいです」


 こちらに向けていつもの柔らかなほほ笑みを浮かべながらピースしてくる宰相ちゃん。

 俺は絶対に宰相ちゃんを怒らせないようにしようと心に誓いながら、唯一の希望である彼女が手の届かない所に行ってしまわない様に、強くお願いする。


「宰相ちゃん! 能力を使ってはダメではありませんか! 貴方の力は影響力が強すぎるのですよ!? 場合によっては人の命を左右する力だと理解しているのですか!?」


 ティアがプリプリと怒りながら宰相ちゃんに注意をする。

 対する宰相ちゃんは平然としている。それどころかティアから目を逸し不満ですアピールまでしている。

 さ、宰相ちゃん反抗期かな? 勇者様はいつもの素直な宰相ちゃんが好きだなー!


「勇者様の為、です」

「むぅ。なら仕方ありませんね! 許します! あんまりオイタは駄目ですよ!」

「です」


 あの感触は宰相ちゃんの能力だったのか……。

 俺は宰相ちゃんの能力が予想以上に物騒な物である事に少々驚きながらも、それ以上にその使用に関してあっさりと許してしまうティアの倫理観に唖然とする。


「よろしいですかな? ではお話ししますぞ!」


 緊張した空気を割くようにじぃやが声を上げた。

 どうやらこの話題はこれで終了らしい。

 釈然としないものを感じながら、ようやくじぃやの口から反乱に関してその全貌が語られ始めた。


………

……


「それにしても、思った以上に切羽詰まってるな……」

「まぁあのゴミどもはいつか反乱すると思っておりましたからなぁ」


 反乱軍――つまり武装した民は既にここ、王都に向けて一直線に進軍しているらしい。

 数は約五千。不思議な事に統率は取れているらしく、このまま順調に行けばあと数時間で王都に着くとのこと。


「って言うかじぃや。さっきからゴミだゴミだって言ってるけど、そもそもその何とか地区ってのは何なの?」


 気になって尋ねる。今までにも何度か聞いた覚えがある。


「ガイゼル地区、です。隔離された強制移民がいる所、です」

「強制移民はゴミですからな! あそこには一般の市民はいませんぞ」

「なんだか不穏な単語だな……」

「複雑な理由があるのですよカタリ様」

「ティア……」


 神妙な面持ちでティアが切り出す。

 俺は彼女の言葉に耳を傾けると、件のガイゼル地区の説明を受ける。


「我が国が多数の国家に囲まれている事はお話しましたね?」

「ああ、その、なんだ……周りは強国ばかりなんだろう?」

「はい、しかもそこに領土的野心を持つ……と言う単語が加わります」

「我が国がターラー王国と同盟にあるのもそういった理由です。小国同士協力しあって大国の圧力を押し返しているのです」


 なんだか常に理不尽な目にあっているイメージしか無かったのだが、ターラー王国とはその様な関係にあったのか。

 俺は今まで知らされていなかったこの国の危機的状況に寒気を感じる。


「幸い、我々の国家は先進的な魔法技術と強靭な戦力がそれなりにあり、大国と言えどもうかつに手を出すと痛手を負う水準にあります。その為、彼らも直接的な侵略を控えているのです」

「うん……でもそれが今回の反乱とどう関係あるんだ?」

「その原因が強制移民、です」


 その質問に答えてくれたのは宰相ちゃんだった。


「我が国は迫害された者達を多く受け入れて、います。そこに目を付けた大国は、自らの手のかかった者達や貧民、ならず者達を移民と称して強制的に我が国に送り出している、のです」

「そうして我が国を内部から崩壊させ、力が弱まったり、移民の発言力が多くなった時点で強制的な併合を企んでいるのですよ……」


 続けてティアが語る。

 そこには、この国が抱える問題がありありと存在していた。

 移民による侵略。どこかで聞いた話だ。俺の居た世界でだって大きな問題になっているんだ。大国と比べ人口の少ないこの国であるならより重大であろう。


「それでその強制移民を移動させたって訳か……」

「はい、ガイゼル地区はその為に用意されました。我が国の風土に合わない害意ある者達を強制的にあの場所に集め、閉じ込めているのですよ」

「全体的に犯罪率の少ない我が国ですが、あの地区の犯罪率は笑えますぞ勇者殿。故にあそこはゴミ溜まりなのですじゃ」


 犯罪者やならず者……か。

 じぃやが事ある毎にガイゼル地区に嫌悪感を表すのも無理からぬ気がした。


「そうして隔離された移民の不満が爆発して、反乱に繋がったと……」

「その通りです。もっとも、偶発的に起きたものかは怪しいところですが……」

「でもさ、甘い考えかもしれないけど。話し合いで解決する方法はなかったの? その移民だって全員が悪意を持っている訳じゃなかったんだろう? もしかしたら本当に困ってこの国にやって来た人もいたかもしれないし……」


 日本で生まれたと言うことは本当に幸せな事なのだろう。

 異世界……いや、俺がいた世界ですら一歩国から出れば貧困や差別、戦争が当然の様に存在していた。

 だから、こういう考えは富める者の傲慢なのだろう。

 けれども、それでも言わずにはいられなかった。

 できる事ならば、無駄な死を生み出したくは無かった。


「カタリ様は本当にお優しいのですね。その考え方は褒め称えられるべき美点です。……しかしながら、私達も国民の命を預かる身。苦渋の選択ではありますが、彼らを切り捨てる以外他に方法は無かったのです……」

「おお、お労しや姫。じぃも何とかしようとしましたがお力になれず……あの時の姫が見せた悲しみの表情、決して忘れておりませんぞ」

「そっか、ごめん。生意気言って……」


 やはり、俺の考えは甘かったらしい。

 当然の様に朝起き、食事を取り一日を過ごし、当然の様に夜眠る。

 そんな誰もが羨み渇望する生活を、当然の様に享受する幸せな国民。

 わかっちゃいたが、俺は想像以上に恵まれていて、想像以上に世間知らずだったのだ。

 ……自分の呑気さが、とても恨めしかった。


 しかし、小さく愛らしい声によって新たな展開がもたらされる。


「当時の議事録、あります。王歴二千十三年第五回緊急国政会議。出席六、欠席二十三。議題、強制移民による侵略政策について……」

「「あっ!」」


 俺の部屋にいつの間にか備え付けられた専用本棚より、宰相ちゃんがゴソゴソと何やら紙束を取り出し読み出したのだ。

 同時にティアとじぃやが驚きの声を上げる。見せるは焦りの表情だ。

 ……何かおかしいな。


「発言者、じぃ。此度の議題ですが、どうしますかのぉ? ぶっちゃけ移民共のゴミがそろそろ鬱陶しくなってきたのでどうにかしたいのですが。殺して良いですかな?」

「こ、これはこれは……」

「…………」


 じぃやは何やら焦りながら、誤魔化すように明後日の方向を向いた。


「発言者、姫。未開発地区のガイゼル辺りにまとめて放り込んでおいてはどうですか? 一歩でも出たらホモ尽くしの刑で。どうせ我が国への移民者って体なので適当に扱った所で他国も口煩くは言えないでしょう」

「え、えへへへー!」

「…………」


 ティアは、うそ臭い笑い声を上げると、誤魔化すように目線を逸らした。


「この後、特に反論意見もなく全会一致で採択。以後ガイゼル地区に強制移民が隔離されました、です」

「……ノリノリじゃねぇか」


 思わず呟く。

 宰相ちゃんのフォローがなければ危うく騙される所だ。

 俺は徹底してアホなノリであるこの国の性質を忘れていたのだ。

 ……ありがとう、宰相ちゃん。いつも君に助けられてばかりだね。


「これは私の発言ではありませんね。記憶にはありませんし、こういった方針が取られた事は遺憾に思います!」

「歳を取ると物忘れが酷くてのぉ……。じぃはその様な昔のこと、忘れてしまいましたぞ!」

「そんなんだから反乱起こされるんじゃないの?」


 俺は呆れのあまり注意することも忘れながら、いまだ己の所業を誤魔化す二人にため息をつく。


「それで、どうするんだよ? 今も反乱は継続しているんだろ? 早く動かないといろいろ被害がでると思うんだけど」

「うーん。じゃあ正規軍でも動かしますかー! 普段から税でご飯を食べているのです、この様な時位働いてくれないと割に合わないです!」

「いやー、テンション上がってきますな! 我が国の精強たる正規軍がゴミクズ共をなぎ倒す様を想像するだけで血沸き肉踊りますぞ!」


 途端に元気になる二人。

 正規軍を動かすのがそれほど楽しいらしい。

 ……コイツラは何を言っても無駄だ。でもまぁ、これで反乱はなんとか鎮圧出来る。

 俺はその事に安堵するが。


「現在正規軍は出撃、不可です」


「えっ!?」

「なんですと!?」

「どうしてでしょうか!?」


 宰相ちゃんの透き通る声によってひっくり返される。


「王国正規軍の第一軍第二軍は全員休暇、第三軍は地方出張。他の予備軍も連絡が取れません、です」

「なんで全員出払ってるんだよ!!」


 完全に私用じゃねぇか! なんで申し合わせたように全員駄目なんだよ!


「くっ! 何たることじゃ! まさかこの様な形で隙を突かれるとは!!」

「初めからこれを狙っていたのですね! 何と狡猾な者達ですか!!」

「いや、完全に身から出た錆じゃねぇか……」


 アホみたいに悔しがるティア達に突っ込みを入れる。


「これはいよいよ王国滅亡の危機ですね……」

「ああ、輝かしき歴史を誇った王国ももはやこれまでですかな……」

「いや、休暇中の奴らを緊急に呼び出したらどうなの?」


 冷静に尋ねる。まずは軍単位で取られる休暇に思う存分突っ込みを入れたかったが、それよりも話を進める事が先立った。


「そんな! 時間外給与を払ったり、後で上司がご飯に連れて行ったりしてフォローしないといけないではないですか! それに休日の者は基本的に居留守やバックレをするのでなかなか捕まらないのですよ!?」

「知らねぇよ! 王国の危機だろう!? どっちが重要なんだよ! 働けよ!」

「彼らは誇り高き王国正規軍! 休日に働く位なら死を選びます!」

「死んでしまえ! 今直ぐ死んでしまえ!」


 アホだ。この国の兵士はアホなのだ。

 ニートですらもう少しマシな根性をしている。この国は国民から兵士、そして施政者に至るまでノリと勢いで日々を過ごしている。

 ……もう駄目だ、コイツラはいつもこうなのだ。きっと今までこの国が滅亡しなかったのは神が気まぐれでサイコロを転がし続けたからに違いない。

 そして今日そのツケを払う日が来たのだ。


「どちらにしろ、今からでは招集間に合わない、です」

「宰相ちゃん……」

「そうですなぁ、後一時間程で王都へ到着するらしいですし、間に合いませんのぉ」


 ホラ見たことか。バッドエンドだ。俺達の冒険はここで終わりた。

 激昂した暴徒によって引きずり出されて、生首を晒されるのだ。

 ……え? ってかマジでこれヤバイんじゃないか?


「ど、どうするんだよ?」

「うーん……カタリ様? ちょっと反乱鎮圧してくれませんか?」


 動揺する俺に対してあっけらかんと返される答え。

 ティアはこの期に及んで俺に全振りをしてきたのだ。


「いや、待って待って! 俺戦えないって! あれから一切戦闘訓練とかしてくれなかっただろ!?」

「ご安心下さい。カタリ様が想像する以上に勇者の能力という物は高いのです。例えぶっつけ本番でも反乱した者達など鎧袖一触(がいしゅういっしょく)でなぎ払えるでしょう」

「姫様。運良く王城におりました兵士の準備が整ったようですぞ。兵力約二百。万が一に備えて我らも出ますじゃ」

「分かりました、私も参りましょう」


 いやいやいや。待て待て待て。

 マジで俺が行くのか? 戦闘訓練も何もしていない俺が?

 もしかしていつもの冗談だろうか? なんだかんだ言って何か対抗策を隠し持っているのだろうか?

 俺は小さな希望を抱きつつ、ティアの様子を伺う。


「カタリ様。私達には貴方の力が必要です。本来なら関係ないはずの貴方様にこの様なお願いをするのは心苦しいのですが、どうか我らをお助け下さい」


 だが、彼女の表情は真剣そのものだった。

 ああ。マジなのか。ティアのこんな表情は見たことがない。

 ならば、俺がやるしか無いみたいだ……。


「……俺が出ないと一般の人達に被害が行くんだよな?」

「その可能性はあります」


 ティアが静かに答える。


「……俺が出ればなんとかなるんだよな?」

「その可能性高い、です」


 宰相ちゃんが静かに告げた。


「俺しかいないんだよな……」


「「「…………」」」


 はぁ……。なんでこんな事になっちゃたんだろうなぁ?

 ただアホに突っ込みをいれつつ、元の世界に戻る時を待っているはずだったのに。

 ……でもまぁ、仕方ないか。

 なんだかんだで、皆には世話になっているし。何より嫌いになれない。


「分かった。分かったよ! でも万が一があるかもしれないからちゃんと兵は招集しておけよ!」

「もちろん、です」

「くそっ! とんだ災難だ! 争いとか無かったんじゃねぇのかよ……」


 愚痴る。

 それぐらいはさせてくれ。今まで平和な世界で生きてきた男子高校生が一発勝負の殺し合いなのだ。文句を言った所で罰は当たらないだろう。


「ったく、怪我とかしたら一生恨むからな……」


 そもそも生きて帰れるのか? 遺書とか書く時間あるか?

 まぁいいか。もし死にそうならその時考えよう。

 とりあえずは、皆無事にこの危機を乗り越えることを考えよう。


 ブツブツと、文句を言いながら外出の準備を整える。

 ふと気が付くと、ティアが驚いた表情でこちらを見ていた。


「……どうしたの?」


「いえ、ありがとうございます!!」


 彼女の声は、人の機微に疎い俺ですら分かるほど、強い想いの篭ったものであった。

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