表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/44

俺と妹の朝と過去

後半はシリアス(笑)またはシリアルでござる。


……寧ろそれ以下の何かかもしれん。


▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ← 回想


「んぅ…むにゅ………あむっ」かぷっ


「うーん…んむむ…」


「んにゃー…んふー…はむっ」かぷっ


「ん?……んー…」


「んちゅっ、ちゅー……」かぷかぷかぷ……


「ぐっ……んん?な…なんだ…?」


 何だか耳に違和感を覚えて目が覚めた。


「一体何だって……あれ?」


 何か前が見えないんだが…顔に何か当たってる?

 柔らかくて良い匂いがして……ってまさか!?


「雫の胸じゃねぇか!?」ボソッ


 小声で叫ぶという器用な真似をして完全に目が覚めた。

 それによってやっと大体の状況を察する……まだ前は見えないけど。


「あむっちゅっじゅるるー」


 ……どうやら雫が俺の耳をしゃぶってるっぽい……


「こいつ、寝ぼけてやがる……」


 おおかた飯を食べる夢でも見ているんだろう……


「(ちゅぽんっ)…んあー兄貴ぃー…あにきぃー…」


 あれー?俺の夢?何で俺の夢を見ると耳をしゃぶる事になるんだよ…あれなの?俺が雫の為に料理を振舞ってる的な……いやでも完全に甘がみされてるしな……


「とりあえず起きるか……よっと…おお!?」グイッ


 起きようとしたら背中に回された腕にこもる力が強くなった。

 しかも自分の足を俺の脚に絡めてきたせいで完全に動けない。

 ……せめて時間を確認したいんだが……。


「んあっあにき…だめぇ…んふ」


 何故か雫が嬌声をあげる……耳をしゃぶりながら。

 体を離すのは無理っぽいので、まずは雫が俺の耳をしゃぶるのをやめさせよう…さっきから耳元を舐めたりされるせいでずっとペチャペチャ音が聞こえていて、頭がどうにかなりそうだ。

 しかも時折雫が「あにきすきぃ…」だとか「あにきだめぇ…」だとか嬌声をあげるせいで、俺の息子が暴走しそうでやばい。

 妹に反応するなど許されない事だからな!


「よっと…む、いきなり離すのは無理か…ならば」


 雫の頭を下に、つまり俺の胸の所に来るように体をずらそう。


「よーしよし、良い子だ……」


 あまり無理やりやろうとするとぐずりながら抵抗されるので、頭を撫でやりながら頭をずらしていく。


 ――――よし、上手く行った。

 途中雫の口が俺の口と接触しそうになって焦ったけど、何とか回避に成功したぜ。


「さてさて時間はっと…まだ2時じゃねーか……」


 まぁ昨日は早くから寝たし、雫の耳捕食事件(ノリで命名)によって起こされたから仕方ないんだが、俺が起きるまでまだ2時間もある。

 それまでどうするか……。


 雫の頭を撫でてやりながらゆっくり考えよう


「んにゃー…おにいちゃぁん……」


 ……そうだな、雫が今のようにヤンキーっぽくなる前の事を考えよう。



 ▲ ▼ ▲ ▼ ▲



 ――――昔まだ小学生だった頃、雫は虐められていた。

 特に理由があった訳では無い。

 強いて理由をあげるとすれば、雫が物静かで自分を表に出す事が苦手な女の子だったからだろう。

 しかもこういう時期の子供は、相手が大した抵抗をしなければ調子に乗って更に酷い事をする。


 最初はたまに机にちょっとした落書きを書いたりするだけだったのが、靴や筆箱など、物を隠したりするようになり、それから悪化して面と向かった暴言になり、最終的には暴力を振るうに至った。


 当時の俺も何度か雫を庇ったりしたんだが、妹への虐無くすまでの事はできなかった。

 学年自体が違ったし、その頃の俺は喧嘩が強くなく、虐めのリーダーをしている悪ガキが空手をしているのもあって自分よりも一つ下の子供を倒す事が出来なかった。


 だから俺は強くなろうと思った。

 雫を守れるような強い男になろうと思った。

 でも時間が無い。

 雫は今虐められている。

 そのリーダーの周りには3人の取り巻きがいたし、そいつらは別に強いわけでは無いが、単純に4対1という数の差は子供にとって覆しがたい差だった。


 ――――それでもやらなければならない。

 勝てないとしても、毎日暗い顔をして学校に行く雫をこれ以上見たくなかったのだ。

 せめて奴らに一泡吹かしてやりたかった。


 前日のうちに消しておいた雫の机の落書きを見て、あいつらが放課後、また落書きをしようとした所に待ち伏せした。

 何か策があった訳ではない。

 俺はただあいつらに正面からぶつかっていった。


 ――――結果、俺は奴らにボコボコにされた。

 いや、それより危険だった。

 奴らのリーダーに殴られて、反撃しようとした所を後ろに回り込んだ取り巻きに突き飛ばされたせいで、俺は教室の窓ガラスに腕を突っ込んだのだ。

 ガラスは割れ、しかも俺の手首がガラス片で切れてしまった。

 手首にできた何故か白い傷口から、真っ赤な血が染み出るように溢れ出し、床に滴り落ちて行ったあの光景は今でも思い出せる。

 その光景を見た奴らは小さな悲鳴をあげて逃げて行った。

 学校のガラスを割った事と、何より俺の手首から滴り落ち、床に溜まっていく真っ赤な血に恐怖したのだろう。


 窓ガラスの割れた音を聞いたのだろう、向かいの校舎の一回にある職員室から何人かの教師が駆け付けてきた。

 そして手首から血を流し、体も殴られてボロボロな俺を見て、唯の悪戯では無い事に気付いたのだろう。

 俺を一先ず保健室に連れて行き、事情を聞いてきた。

 勿論俺は先生達に事情を話した。


 ……今まで何もしてこなかった教師も、事態を放置したせいで軽傷とは言い難い怪我人を出したとあっては動かずにはいられない。

 直ちに虐めの調査が進められ、虐めをしていた4人は別の学校に転校していった。


 手首の傷は10針縫う怪我だった。

 幸い静脈を傷つけていなかった為命には何の問題の無いものだったが、その時の医者曰く「後数センチ横を傷つけていたら君は死んでいたかもしれないね。結構深く切ってるし、もし実際にずれていたら噴水みたいに血が出てきただろうねー」だそうだ……軽い口調で随分恐ろしい事を言われて、酷く背筋が冷たくなった事を覚えている。


 勿論この事は雫の耳にも入った。

 自分のせいで兄が下手をすれば命に関わるような怪我をしてしまったと思ったのだろう……あの子は酷く自分を攻めた。

 ……正直、その頃の自分が許せない。

 妹を助けようとして、結局あの子を悲しませてしまった事に酷く自分の弱さを実感させられた。

 

 雫も自分の虐められた原因が自分の弱さだと考え付き、口調や態度を変えた。

 あの子にとっては、今のヤンキーの様な態度が強い物の姿だったのだろう。

 子供の頭ではその程度が限界だ。


 俺はもっと強い男になろうとして色んな格闘技に手を出し、妹を守りたいという俺の意思を知った両親も応援してくれた……何故か雫もボクシングをやり始めたのは誤算だったが……。


 こうして俺は喧嘩に強くなり、雫は晴れてヤンキーの道を歩み始めたという事だ。


 ……まぁヤンキーと言っても、喝上げとかはしないし、どっちかと言うとただ単に気が強くなって暴力を振るうようになっただけだし、しかも俺には甘えてきたりするので、可愛い妹であることには変わり無いんだがな。


実は左手首の怪我は、実際に私が負った傷だったりする。

……原因は自業自得だけどね……。


そろそろ毎日投稿は出来なくなりそうですなー……地味に執筆時間が取れなくなって来ましてね……。


※指摘された誤字修正

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ