俺と聡里とデート 1
|∵) ……。| ε=(ノ゜д゜)ノ タダイマー!
ここまで読者様方を待たせたのは私の責任だ。
……だが私は謝らない本当に申し訳ありませんでした。
今回は聡里とのデートのお話。
デートなんて書けねえっスよ私……。
「…そろそろか?」
現在時刻朝の8時56分、俺は聡里との待ち合わせ場所である時計台の下でそう呟いた。
「でも意外だな…あいつの事だからキッチリ10分なり30分なり前の時間にいるかと思ったんだけど」
待ち合わせ時刻まで既に5分を切っている。
なのに未だに待ち合わせ場所に姿を現さない聡里に対して、俺はそう思った。
……まぁ、今までこうしてどこかに遊びに行ったことも無かったしな。
聡里との付き合いは中学二年生の時からだが、俺と聡里の関係は学校でしか会ったことも無かった。
……よく考えると、結構知らない事だらけなんだな、お互いに。
「…さて、と言うわけで9時になった訳だが…聡里はもう来てるか……?」
そう呟きながら周りを見渡すが…いない。何でだ? あいつが遅れるとは思えn『プルルルルルルルル』…ケータイが鳴った。相手は……『明石 聡里』
「『ピッ』もしもし? おい聡里、お前今どこn『やぁ十夜、ちゃんと10分前から待っているなんて偉いじゃないか』…なぬ?」
何で知ってるんだ?
……ホントは30分前に来る筈だったんだけどな。雫ェ…。
『でも駄目だよ十夜。僕は1時間も前からいたって言うのにね? お蔭で長い事待ち惚けを食らってしまったじゃないか』
「いやいや俺悪くないだろそれ! 幾らなんでも1時間はハエーよ!?
…っていうかお前どこにいるんだ? 俺が待ってた時間が分かってるって事は、見える位置にはいるんだろ?」
予定通り来ても結局俺の方が遅いのかよ!
っていうか俺が来たのが分かるんだったらとっとと来たらいいじゃないか……。
『フフフ、こういう場合は無条件で男が悪いのさっ。
僕がいるのは…君が今向いている反対側にあるレストランの中だよ。
君も来るといい。一緒にお茶でもどうだい?』
「幾らなんでも理不尽だろとか最後のセリフがナンパっぽくねとかレストランでお茶ってとか色々言いたい事はあるが……まぁ、いい。
とりあえず今からそっちに『あぁそれと』おいィ!?」
『僕が来るのを今か今かと緊張しながら忙しく周りを見渡す十夜…可愛かったよ(ポッ)』
……悔しい。
………思いっきり手玉に取られて悔しい。
…………というか、自分で「ポッ」とか言うな。
〇
……カランカラーン
「いらっしゃいませー。何名様でしょうか?」
「あ、待ち合わせしてるんで大丈夫です…えーっと……」
レストランに到着した。
流石にこの時間にはそんなに人はいないようだ。
これなら聡里もすぐ見付けられ……
えーっと…見付け、られ……。
「聡里どこだ!?」
全然見当たらんぞ!?
「……十夜! 僕はここだよっ」
「……あ、あそこにいたのか」
聡里がいたのは店に入って左手の奥、窓からちょうど俺がいた時計台が見える場所だった。
テーブルには水の入ったコップのみ。……まだ何も頼んでないのか。
「っていうか、何でこんな奥に座ってるんだお前は」
聡里の向かい側に座りながらそう質問する。
……正直言って、奥で見辛いってのもあるけど、それ以上に聡里の背の小ささのせいで余計に見付け辛かったってのは秘密な。
「いやぁ…だって折角君と二人きりで出掛けているっていうのに、直ぐ傍で人が出入りするような場所は嫌だろう?……あ、僕の背の事を馬鹿にしたから何か奢ってね」
ウヴォア。
……まぁ、そんな事無くても奢るつもりだったけどな。
そんな事言うのも恥ずかしいし、ここは渋々払う振りでもするとしよう。
「分かったよちくしょうめ。ここは俺が払わせてもらいますよーだ」
「フフフ…そうだね、頼むよ。
所で、どうして僕の向かい側に座ったんだい?」
何だか笑みが怪しいが…気にしてもしょうがないか。
「―――って、んん? 正面って駄目だったか?」
向かい合って雑談でもしながら食べるんじゃないのか?
「う~ん…鈍感な君にしては考えた方かもしれないけど……。
向かい合って食べるのは普段学校でしているだろう?」
……だから?
「僕としては、その…折角君と二人きり何だからさ、君の直ぐ隣で食べたいって言うか……」
何故か真っ赤な顔で俯きながらもじもじしている聡里。……というか、後半何て言っているのか全く聞こえなかったんだが。
「…とにかく! 君は僕の隣に座れば良いんだよ! ほら、早くここに来てっ」
そう言って自分の直ぐ傍をバンバン叩く聡里。
……凄い顔赤いけど大丈夫か? 風邪なら早く帰って休んだ方が「ほら、早く!」…了解。
いらない心配だったようだ。
しかし…。
こうして俺の前ではコロコロ表情を変える聡里だが、学校では基本的に表情は無い。
あったとしてもそれもかなり小さな変化だ。
……正直言ってかなり損していると思う。
聡里はどう思っているのか分からないが、こいつはもっとクラスで人気が出てもおかしくないはずなのだ。
だって―――
「―――こんなに可愛い女の子なんだしなぁ…」
そう、聡里の目を見て言った。
「×〇□%#&@!?」ブッ
俺がジッと目を見てくるのを不思議そうにしつつも、自分からもこちらの目を見つめてくる聡里は、俺のその言葉を聞いて言葉にならない叫び声を上げながら口に含んだ水を噴き出し―――
噴き出し―――……うん?
―――ビシャッ
「ギャー! 目に水がァー!?」
それが見事に俺の目に直撃した。……っていてぇ!?
そうして、聡里は水が変な所に入って咳を連発し、俺は目に水が直撃した痛みで悶え。
お互いに苦しむのだった。
……初っ端からこんなので大丈夫なんだろうか。
〇
「ハァ…ハァ…ハァ……ふぅ」
「ゼェ…ゼェ…ゼェ……はぁ」
何とか復活した俺達。
全く…
「服が少し濡れちまったじゃねーかよ……」
で、デート…はまだまだこれからだっていうのに……。
「な!? そんなの、十夜が変な事を言うからだろう!? い、いきなり可愛いだのなんだの……」
おーおー顔真っ赤にしちゃって…ってか、声に出ちまったんだなぁあれ……。
自分的には頭で考えただけで、声に出すつもりは無かったんだけども。
「まぁ、聡里の恥ずかしがる可愛い顔が見れたし良かったとするか」
「んなぁ!? と、十夜っ君と言う奴は! ……と言うか君、今にょはわじゃとだりょう?」
あ、バレた。
「朝の仕返しだ、別に良いだろ? というか、別に馬鹿にした訳じゃないし良いと思うんだが」
可愛いと思ったのは本当だしな。
今も真っ赤な顔で冷静を装いつつ、結局装えてないし。どもってるし最後らへん噛みまくってるし。
「ぐぬぬ……。
はぁ…今回は君の勝ちのようだね……」
「だな!」
良かった、今日は聡里にやられっぱなしだったからな。
何とか反撃が出来たようでなにより。……俺は負けっぱなしなんて嫌だからな!
「…じゃ、いい加減に何か頼もうか。お腹も空いたし」
そうだな。
聡里が昨日『朝ごはんは一緒に外で食べるから、明日は朝ごはんを家で食べてくるのは駄目だからね?』って言ってきたせいで、今日はまだ何も食べていない。
おかげで腹ペコだ。
―――と言うか、
「さっき騒いだせいで店員さんの目つきが微妙に……」
「言わないでおくれよ…僕だって少し騒ぎすぎたとは思ってたんだから……」
確かに、いつも冷静な聡里らしからぬ取り乱しようだったな。
「君のせいだけどねっ
と言うか早く隣においでよ! 結局来てないじゃないか!!」
あぁ、そう言えばそうだったな。
「分かった分かった。今行くよ……。
あとさ、何だかお前に心読まれるのが当たり前に思って来た自分が怖いんだが」
そう、席を立ちつつ言う俺。
っていうか俺が考えてる事完全に把握してるよね?
なんかそのまま自然に会話(?)が続いたりするせいで、いつの間にか当たり前に感じてたけど…。
「良いじゃないか。別に悪い事は無いだろう?」
いやいやいや! 悪いだろ!? 主に俺の精神衛生上悪いだろ!!
……ってか、今もしてるー!?
「フフフ…可愛いなぁ君は……」
「あーもう! とっとと料理注文するぞ! いい加減腹減ったしな!!」
聡里の隣にドサッと腰を降ろしながらそう言う俺。
ちくしょう、絶対顔赤くなってるだろこれ……。
―――結局、俺は聡里に勝つのは無理っぽいなぁ……。
店員さんを呼びつつ、俺はそう思うのだった。
「―――本当に可愛いなぁ……」
うっさいわ!
[おまけ]
~デートに出発する前の十夜と雫のやり取り~(会話文のみ)
「兄貴ぃ! あたしを置いて行っちまうのかよぉ……!」
「別に夜は帰ってくるから! 今生の別れって訳じゃ無いんだって!」
「あにきの浮気者ぉ! どこの馬の骨とも知らねー女の所に行くだなんてぇ!」
「いやいやいやいやいや! 何日か前から言ってただろ!? 聡里とちょっと出掛けるだけだって!」
「完全にデートじゃねーかァ! まごう事無くデートじゃねーかァァァァ!!」
「いや、その…デートって言うと照れるんだけどさ……」
「(ブチッ)チッキショオォォォォォォォォォ!!!」
「ちょっそんな大声で叫ぶなって!?」
「おにいちゃんいかないでよぉぉぉぉぉわたしをおいてかないでよぉぉぉぉぉ!!!」
「ちょ、おまっ抱き付くな!? 30分前に着きたいんだって!」
「おにいちゃん愛してるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
「や、やめっ………ギャー!!」
「…んっんちゅっちゅぷっんはぁ…おにいちゃんすきぃ……」
※雫との攻防20分間(敗北)