番外編「俺とバレンタインと」
ハイパー書き殴り話。
本編とは関係ない話なので読む必要は特に無かったりする。
本編を期待していた人はごめんよ。
「ハッハッハッハッハッ……」
現在、朝の4時30分。
瀬川十夜、走ってます。
……いやまぁいつもの朝の鍛練なんだけども。
ちなみに今日は一人で走っている。
何故か今日、雫が行かないと言い出したからだ。
『え、今日は行かないのか?』
『あぁ、だから今日は1人で行っといてくれ』
『とりあえず理由を知りたいんだが……』
『別に良いだろ! ちょっとやりたい事があるんだよ!!』
……やりたい事って何なんだろうか。
まぁそもそも朝の鍛練は強制でも無いし、元々俺一人でやっていた事だ。
別にそう気にする事では無い。……ちょっと寂しくなるけど。
「でも、あいつが参加したいって言って来たんだけどな…やりたい事って何なんだろう……」
まぁ雫の事だし、後でちゃんと教えてはくれると思うんだけどな。
「よし! とっとと終わらせて帰って、雫に理由を聞くとするか!!」
「―――あらあら、今日は一人なのね~?」
「うおぉっ!? …って何だ、静音さんですか……」
心臓が止まるかと思った……。
「でも毎日ランニングするなんて偉いわよね~」
「まぁ鍛えておいて悪い事はありませんからね」
それにしても静音さんに会うのは久しぶりだな……。
昨日も一昨日も会わなかったし。……少し聞いてみるか。
「静音さん、そういえば何で昨日と一昨日はいなかったんですか? ……あっ、別に言いたくない事なら構わないんですよ?」
最近は毎日のように会っていたから少し心配になってた所だったりする。
誰だって毎日会っていた人がいきなりいなくなったら心配する筈だ。……するよね?
「あらあら~十夜さん心配してくれるんですか~?」
「そりゃ勿論ですよ。……それで、理由は言える事ですかね? 言えない事なら結構なんですけど」
ちょっとしつこいかな…?
流石にもう少し言い方があったかもしれない……。
「んふふ~。十夜君はわたしの事が気になるのね~? でも別に大した事は無いのよ? ただ今日の為に準備してただけだから~」
ん? 準備? 何の準備だろう……。
「えっと、その準備って「はい、ハッピーバレンタインよ、十夜君」……うぇ? 何ですかこれ?」
何か綺麗に包装された包みを貰った。…ハート形のリボンが付いてるけど……何だろうか。
「も~今言ったでしょ? バレンタインよ、バレンタイン♪」
バンアレン帯? ……なんてお約束のボケは置いといて。
あぁ、バレンタインかー……。って、え?
「これ、俺にくれるんですか? ホントに?」
「もちろんよ~。二日も掛けて作ったんだから美味しいと思うわよ~?」
二日!? いやいやどんだけですか! ……あ、『今日の為の準備』ってこれの事か。
「ってもしかして手作りですか!?」
「んふふ~美味しく食べてね? じゃーホワイトデーのお返しも期待してるわよ十夜くーん!」
気が付くと静音さんはかなり遠くにいた。……え、さっきまで横を一緒に歩いてたんですけど!?
まぁあの人前から底が知れないしな……。
「分かりましたー! どれだけ出来るか分かりませんけど、頑張って作りますねー!」
近所迷惑かもしれないが、まぁ仕方ない。
少し大き目の声でそう返事をした俺は、そのまま家に走って帰った。
〇
「ただいまー。雫~? 結局『やりたい事』って何なんだー? ってうおぉ!?」
声を掛けながらリビングに入って行った俺を迎えたのは、雫でもなく、テレビのニュースキャスターの声でもなく―――
―――散乱した、本来台所に仕舞ってある筈の道具達であった。
「なんじゃこりゃあ!?」
本当に色々散らばっている。
ボウルにゴムベラにミキサーに板チョコの袋に…ん? チョコ? まさか……。
「う、うぅー……」
っ! 雫の声…どこからだ?
「うぅー…あにきぃ……」
「おいおい、何だか凄い事になってんなぁ……」
雫を見つける事に成功…したのは良いけども……。
薄力粉を頭から被ったのだろう、頭のてっぺんから胸にかけて真っ白になっている。
しかもココアパウダーだろう、茶色の粉までかかってしまっていてかなり酷い。
「……もしかして、俺の為にチョコを作ろうとしてくれたのか?」
「うぅ…あにきにばれちまったぁ…あにきが外に行ってる間に作ろうと思ったのにぃ……」
いや、流石にそれはお菓子作りを舐めていると思うんだが……。
お前普段お菓子所か簡単な料理すら作らんだろうが。俺が外に行ってる時間もそう長い訳でもないし。
……まぁ、俺の為に頑張ろうとしてくれるのは素直に嬉しい。
今までバレンタインの日はいつも店で売ってるチョコだったからな……。
「うえぇ…あにきにチョコ作ろうと思って、頑張って準備してたのにぃ…材料全部こぼしちまったよぉ……」ポロポロ
遂に泣きだしてしまった。
鍛練から帰って来たばかりで、少し汗臭いかも知れんが仕方ない。
「ほら、そんなに泣くな。雫が頑張ろうとしたのは分かった。
今回も店売りの物でいいから。雫の気持ちさえ伝われば十分だよ。」
そう言って俺は雫の頭を撫でたのだが……。
「……ぃゃ」
ん?
「…いやだ……嫌だ! あたしは兄貴の為に手作りチョコを作るんだ!!」
その気持ちは嬉しいんだが……。
「でも材料は全部ダメになってるし、これから学校だぞ? 流石に時間が足りなくないか?」
「……今日は学校休む!」
「駄目だ」
それは駄目だろ常識的に考えて。
「即答かよ!?」
「お前なぁ、どこにチョコ作る為に学校休む奴がいるんだよ」
「ここにいるだろ!」
……ハァ
「分かった分かった、じゃあ好きにしろ。……学校にはちゃんと欠席の電話入れろよ? 後、流石に理由は風邪にしとけ。幾らなんでも“チョコの為”は駄目だからな」
雫は元々頑固な所があるが、事俺の事になるとそれは顕著になる。
今回も、『俺の為にチョコを作る』→『時間が足りない』→『なら学校を休めばいいじゃない』という流れを断ち切るのは不可能だろう。……俺の事をそれだけ想ってくれるのは嬉しいんだがな。このブラコンめ。……まぁ俺もシスコンなのは認めるけども。
「やった! 兄貴大好きだぞ!!」ガバッ
「抱きつくんじゃない。今の俺は汗臭いんだから……」
「兄貴の匂いなら臭くねーよぉ……」スリスリ
というかそれ以前に粉まみれの頭で頬ずりしてくるんじゃない!
「とりあえず風呂だ。雫が先に入りなさい。俺が後で入るからさ」
こいつを後にすると、ほぼ確実に乱入してくるからな……。
「えぇー! 一緒に入ろうぜ兄貴ぃ~」
「えーい抱きつくな! 俺まで粉まみれになるだろうが!?」
絡み付いてくる雫を引き剥がしながらそう叫ぶ俺の声が、我が家とその近所に響き渡るのだった……。
―次回に続く―
バレンタイン当日の夜から急いで書いた物なので、いつも以上の残念仕様でございます。
あと一話…もしかしたら更に何話か続きます。
本編?絶賛スランプ中で全然書けて無いよ!……ごめんなさい。
それにしても長くなっちゃったなー……。
本当は学校に行くあたりまで書くつもりだったんだけど。
どうしてこうなった……。