兄貴とあたしの二度目の夜
あばばばばば……。
クオリティがやばい。まさかスランプ? そんなバナナ……。
ハイパー難産で更にグダグダになったから気を付けてェ!
「あ゛~、しんどかった……」
雫が風呂に入って、やっと一息つく事が出来た。
全く、今日は散々な一日だったなぁ……。
初めての告白と同時にファーストキスを奪われて、それだけでも思考停止に陥ったのに妹にも告白されるとか…、本当に色々あった一日だった……。
「あ、そういえば……」
聡里の奴はどうなんだろう。
―――――そう言えばあいつも修羅場(?)に突入した時『僕の十夜に何してるんだい……?』って言ってたような気がする…。よく覚えてたな俺……。
もしかしてあいつも俺の事を? いやいやそんな……、あー、でも否定もできないような気がするなぁ……。
あー! 駄目だ! 頭が働かない! ……やっぱり今日はさっさと寝て、明日直接本人に聞くしかないか……。どうせ考えて分かる物でも無いしな。
あーでも今は雫が入ってるんだったか。
だったら今のうちにやる事全部終わらせて、風呂からあがったらさっさと寝れるようにするか。
……本当に今日は疲れた。
〇
「ふぅ。これで終わり…っと」
元々そんなに溜まってたわけでも無いし、結構すぐ終わったな。
ま、そもそも2人分の家事だし、いつもどおりにすればこんなもんか。
そう言えばそろそろ雫も風呂からあがる頃かな……?
「兄貴ー、風呂空いたぜー」
お、丁度空いたか。仕事が終わったと同時とはナイスタイミング。
それじゃあ俺も風呂に入るか。
とりあえず振り向いて返事を……
「ああ、分かったじゃあ入r……って何って格好してやがる!?」
おおおお落ち着け、ただ妹がバスタオル一枚だけの格好で出てきただけだ……って落ち着けるかぁ!!
「いいじゃねーか別に…うれしいだろ?」
「嬉しくない! 早く服を着ろぉ!!」
「(顔真っ赤にして……兄貴可愛い……)分かったよ、着れば良いんだろー」スタスタ
―――――行った…か……?
「はぁ、疲れる……」
もうさっさと風呂入って寝よう……。
〇
「ふいーさっぱりしたぁ…」
よーし寝よう、さっさと寝よう。
「布団敷くの面倒くさ…って敷いてあるし……」
何で布団が敷いてあるんだ? 俺はちゃんとしまった筈だが……
まぁいいか、とにかくさっさと寝よう。
「よっこらしょっとそういえばそろそろ湯たんぽ的な物を買うべきか……ん?」
何だ? 何だかあったかいものが……『ギュッ』……え?
「捕まえたぞあにきィ……」
「んな!? 雫がどうして俺の布団に……っ!」
うおおおおお……今度は俺が忘れてた……!
何という事だ……。
「今日もいっぱいくっつこうな~」スリスリ…
「……もう勝手にしてくれ………」
眠い。
疲れた。
もう一々雫を叱るのが面倒くさい。
……寝よう。
「(…あれ? 兄貴が全然怒らない?)どしたの兄貴ー?」
ったく、今日も疲れたけど、明日は聡里と美咲ちゃんに事情を聞かないと駄目なんだよな……。
もしかして今日以上に疲れたりするのか……?
駄目だ。これ以上辛い事を考えるのはやめよう。
……さっきから雫がうるさい。
俺は寝たいんだ。静かにしててくれ。
「ねー兄貴ー。どしたー? あにk『ムギュッ』んにゅぎゅっ!?」
抱きしめてやったら静かになった。
これでやっと眠れる…おやすみ……。
◆
あったかい。
今あたしは兄貴に抱きしめられている。
風呂からあがってからそんなに時間が経って無いから兄貴の体がすごくあったかい。
ちなみに今のあたしの体勢は、あたしの頭を兄貴が前から抱きしめていて、あたしの顔が兄貴の胸に当たっている状態だ。
……正直まずい。
なにがまずいのかと言うと、兄貴の体からすごい良い匂いがして、頭が真っ白になりそうだからだ。
しかも兄貴はたまにあたしの頭や背中を撫でたり、耳元であたしの名前を呼んだりするせいで余計に思考が出来なくなる。
「はぁ…雫……」
「ふみゅう!?」
耳元でささやかないでぇ!? 名前を呼ばれるのにもクルけど、息が当たるせいで背筋がすごいぞくぞくするから!
「ん…ふふっこんなに可愛くなって……」なでなで
「ふわ……」
もうだめだ。
襲おう。
兄貴を襲おう。
美味しく頂こう。
幸い今は寝てるし隙だらけ…『ギュムッ』
「ふぐぉ!?」
う、ちょっとあれな声が出た……。
うー……。お兄ちゃんがあたしを抱きしめてるせいで、身動きが取れない……。
抱きしめられるのはいいんだけど、これじゃあお兄ちゃんの初めてが食べられないよ……。
そうだ。
いただくんだ。
美咲ちゃんにファーストキスは奪われたけど、お兄ちゃんの貞操はわたしがいただく!
とりあえず頭を自由にする!
一気に力を込めたら抵抗されるかもしれないから、少しずつ頭を離して片手でお兄ちゃんの腕を外しながら……っと。行けた。
――――――それじゃあ早速……!
「んー…、雫……」にこっ
ポッ
お兄ちゃん、その笑顔は反則だよ……。
あたしの心の汚さが目立っちまうじゃねーか……。
………仕方ない。
「寝込みを襲うのはやめるけど、いつか絶対にあたしのものにしてやるからな? 兄貴」
手ごわい敵が多いけど、それでもあたしが兄貴の一番になって見せる。
「今日はこれで勘弁してやるよ……」(ちゅっ)
兄貴の唇に自分の唇を少しの間重ねてから、あたしはあにきの胸に顔をうずめた。
これはあたしだけの特権だ。あいつらには渡さねー。
兄貴もまたあたしを抱きしめてくれるし、あたしからも兄貴の背中に腕を回して抱きつく。
……すごい密着したせいで兄貴の心臓の音が聞こえる。
兄貴の体温。
兄貴の匂い。
兄貴の息使い。
あんしんする……。
「ぜったいに…あたしがあにきのいち…ばん…に…なって……」
あにき…だいすき……。
こんなクオリティですまぬ…すまぬ……。
実に無様…! 圧倒的無様…!
感想ももらえたのに不甲斐ない……。