俺と朝の日課の鍛練
まさかまたもや不慣れな描写をする羽目になろうとは……
戦闘描写なんぞ出来る筈があるまい……。
さて、過去の事はもういいだろう。
今は俺も雫も元気にやってる…それで充分だ。
時間もそろそろトレーニングに行く時間が迫ってきたみたいだし、そろそろ布団から出るとしよう。
「んー…あにきぃ~…」スリスリ
……まずは俺に頬ずりするのに夢中なこいつを何とかせんとな……。
という事で、さっき雫の頭をずらした要領で行くとしよう。
頭を撫でながら少しずつ体をずらし…その隙間にいつの間にか布団から出ている枕を…入れ、るっ!
「…よし、後は体を抜けば…」
スルスル~っと…よし、行けた。
「うぅーあにきぃ~いかないでくれよ~…」
え?起きてないよね…?寝言にしてはタイミングが…、もしかして俺の体と枕の感触の違いで気付いてんのかな……。
何か枕を抱きしめる力が凄い事になってるし。
さっきまで俺に込めてた力を『ぎゅ~』で表すのなら、今は『グギギ…』って感じだ。
人間なら骨が軋む音を聞く事になるだろう。
「ごめんな雫、トレーニング行ってくるからな」
「んー………」ぎゅっ
また少しの間頭を撫で続けながらそう言うと、どうやら少し安心したようだ。
さっさと行ってさっさと終わらせるとしよう。
「行ってきまーす」
返事の無い事が分かっていても、そう呼びかけてから家を出た。
〇
「はっはっはっはっはっは………」
規則正しい呼吸と規則正しいペースを心がけて走り続ける。
まず最初にするのは体力作りだ。
何事も体力が無ければやってられないというのは正しいと思うし、そのためにはやっぱりランニングが一番だろう。
足腰も鍛えられるし。
「あら~十夜君じゃない。おはよ~」
「あ、静音さんおはようございます」
この人は響静音さん。
俺がランニングしているようにこの人も毎朝散歩している人で、何故こんな朝早くから散歩しているのか聞いたら「十夜君に会う為に、時間を合わせているのよ~」と、はぐらかされてしまった。
歳は分からないが(女性に年齢を聞くのは失礼らしいので聞いた事が無い)恐らく20代前半だと思われるかなりの美人さんだ。
一緒に走った事もあるんだが…その時は俺のペース(結構早い)に付いてきて、尚且つ話しかけて来るというかなりの体力を持つおねーさんだ。
「今日もランニング?関心ね~」
「まあ日課ですからね……っていうかそれ毎日言うんですね……」
「あらあら、そうだったかしら~でも私は本当にそう思ってるのよ~? 十夜君みたいな良い子はあんまりいないから~」
「いやいや俺より出来た人間なんていくらでもいるでしょうよ」
「も~謙遜しちゃって…河原で別のトレーニングもしてるんでしょ? 本当、良い男だと思うわ~」
「静音さんみたいな美人さんにそう言ってもらえるとうれしいですね……というか、何で河原で鍛練してる事知ってるんですか? 見せた事無いと思うんですけど……」
「あらあら~…、ひ・み・つ(はぁと)」
相変わらず読めない人だな……
「んー…何か十夜君から女の子の匂いがするわね~」
なんですと?
「なんですと?」
口に出た。
「匂うわよ~若くて可愛い女の子の匂いが~」
まぁ今日は妹と密着して寝てましたからね……とは言えない。
「もしかして~彼女? 彼女ができたの? ねぇどうなのかしら、ねぇ?」
あれー? 何だかいつものほんわりオーラが無くなったぞー?
……え? 本当に何が起こった。
本気で怖いんだが。
「いや、多分妹の匂いじゃないかと…」
「ふーん? 今まではそんなにしなかったのに?」
「えーとそれは…」
「それは?」
「それh『プルルルルルルッ』うお!?…すいません、河原でのトレーニングに移行しますんで!」ダッ
危ねー!ケータイのタイマーに救われたー!!
とりあえず全力でその場を去った。
「…あらあら、逃げられちゃったわ~。それにしても慌てちゃって可愛いわね~……今度はちゃんと説明してもらうわよ?……んふふっ」
やばい、背筋にゾクッと来た…前にもこんな事あったよな……。
〇
河原に到着した。
とりあえずさっきあった事は忘れて、トレーニングを始めようと思う。
まあトレーニングと言っても、唯の筋トレが主なんだがな。
「295…296…297…298…298…299…300…っと」
時間が有り余っているわけではないので、基本的な筋トレを各300回ずつするだけだ。
……こんな事を毎朝しているのは俺の周りには他にいないので、この回数が多いのか少ないのか良く分からないんだが……どうなんだろうか。
「さて、次だな」
これ以上回数を増やすと学校生活に支障をきたすんだよなー……授業中に寝やすくなったりとか。
「まぁ自分的にはこれで良いと思ってるし、これでやっていけてるからいいだろ」
というかこれより早く起きるのは流石に無理だしな……。
「297…298…299…300っと…よし、筋トレ終わり!」
筋トレが終わったら、実際の戦闘の練習をする。
勿論相手がいるわけではないので、仮想敵を想像してするだけだ。
実際に戦った不良たちを相手にした時の事想定して動く。
今回の敵は鉄パイプ持ち二人、ナイフ一人、素手一人だ。
一人いる素手はボクシングでもしているのかフットワークが素早く、拳のキレがいい。
鉄パイプ持ちを不良AとB、ナイフ持ちがCでボクシング経験者をDする。
「まずは殺傷力の高い奴を…っと」
不良Cが斬りかかってきたのでナイフをかわし、すれ違い様にナイフを持った手を掴む。
その手を上に捻り上げてそいつの体の後ろに回り込み、不良Aの方へ突き飛ばしてやる。
勿論その時にナイフを奪っておくのも忘れない。
その隙に不良Bが殴りかかって来たので、今度はその鉄パイプをかわして相手の懐に潜り込む。
後は相手の鳩尾にその勢いで膝をお見舞いしてやり、その時に下がってくる顎にアッパーカット。
まぁ良くあるコンボだな。
これで1人は完全ノックアウト。
少し息を整えていると不良Dが素早いフットワークで懐に潜り込んでこようとしてくるので、あえてこちらから距離を詰めてやる。
距離を取ろうとすると思っていたのだろう、一瞬相手が怯むのでその隙にこちらが懐に潜り込み、苦し紛れに放ってくるパンチをかわし、その腕を掴んで背負い投げを食らわせてやった。
ただそれだけでは終わらないので、倒れた相手の頭に蹴りをお見舞いしてやる。これで頭を揺らされて二人目ノックアウトだ。
そこでやっと最初に投げられた不良Cと、Cとぶつかって倒れた不良Aが復帰してきた。
……正直ここからは余裕だ。
一番の実力者だった不良Dが余裕で倒せた以上、唯の喧嘩殺法しかできない二人なんて今更相手にもならない。
殴りかかってきた鉄パイプを持ちの顔面をカウンターでぶん殴ってやり、もんどりうって倒れこむと同時にその鉄パイプを奪ってやる。
そして後ろから突進してきた、今は素手の不良Cの腹に野球のボールの如く鉄パイプでフルスイング……突進してきた勢いもあってか『ドグシャアッ』と派手な音を立てて地面に倒れた。
不良Cはそれで気絶したので、何とか起きあがってきた不良Aの顔面に勢いをつけた張り手をお見舞いしてやる。
――――踏ん張る事もできない不良Aは、3mほど吹っ飛んで気絶した。
「ふう、こんなもんかな」
ちなみにこれは実際にあった戦闘だ…そんな大したものじゃないから喧嘩かな?
まぁ俺がそこそこ強いという事が分かってくれたと思う。
まあ暴力何て振るわないに越したことがないんだが身を守るためには必要な事でもあるだろう。
妹の雫もそこらの不良には負けないレベルの実力があるが、それでも何かあった時俺自身の手であの子を守れるように鍛えてきた。
……もし本当にそんな場面が来た時、俺はあの子を守れるだろうか。
「ま、守れる守れないじゃなくて……守るんだがな」
さて、早く家に帰ってシャワーを浴びるとしよう。
前回言ったばかりなのですが、何やら本気で執筆時間が取れなくなってまいりましたので、投稿間隔が開きそうです。すみません。
休日に作ったストックが無くなるまでは今まで通り毎日更新が続くでしょうが……それも少ないですしねー……多分2話分ほどでしょうか……。
―響静音説明時に抜けていた一文を加筆。