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前世は王太子の婚約者の公爵令嬢だった私が通りますよ

作者: ぺいた
掲載日:2026/08/04

ヤスゾー様の「スケバン悪役令嬢!」

https://ncode.syosetu.com/n6302ij/


を読ませていただいて、新鮮で面白かったので、私もこういう転生ものが書いてみたいと思って書きました。


8月5日、[日間]コメディー〔文芸〕 で1位になってました。身に余る光栄をありがとうございます。

高級車の助手席。恋人であるたかしが運転している。


「やっぱり、反対されてるんじゃない?」私は聞いた。


「まあそりゃね。親はそれなりの家のお嬢さんと結婚させたかったみたいだからね」


「そうよね…私みたいな、貧乏サラリーマンの娘なんて、嫌でしょうね…」


「しょうがないよ、俺は君と結婚したいと思ったんだから、あきらめてもらうしかない」


「……」なんなんだろ、しょうがないって。もうちょっと言い方ないのかな。


「とにかく、親の前であんまりみっともない姿は見せないでくれよ? 俺が恥ずかしいから」


「はい…」


車がエントランスに止まった。「庶民お断り」と言わんばかりの立派なホテル。

その一流ホテルの中の、一流フランス料理の店。

ご両親との顔見せに、こんなとこ指定してくるなんて。


「恥をかかせるために選んだとしか思えないわ」車を降りながらつぶやいた。


「ん? 何?」ドアマンに鍵を預けて中に入る隆。

「なんでもない」と言いながら、小走りで後をついていく。


最上階のフレンチレストラン。場所も値段もお高い。怖い。

隆のご両親は先に店に着いていた。「ご案内します」店の人が席へ案内する。

緊張で震える。どうしよう、マナーとか、一応本を見てきたけど、ちゃんとできるか自信ない!


いた。あれがご両親か。高級そうなスーツを着た脂ギッシュなメタボハゲと、ブランドロゴが歩いてるみたいなツーピースにじゃらじゃらブランドアクセ。絵に描いたような成金夫婦だな。


「父さん母さん、彼女が今つきあってる人だよ。戸ノ下(とのした)ななのさん」

隆が紹介したので、あわててお辞儀して「戸ノ下です! はじめましてよろしくお願いします!」と言った。


「そうなの」

「ふーん」


座ったまま、汚い物でも見るような顔してそう言った。うわあ、反対モード全開じゃん!


「座ったら?」ブランド奥様が言う。


うう、確か、こういう店って、店の人が椅子を押してくれるのよね…うまく座れるかしら…。

緊張しながら「失礼します」と言って腰をおろした時、


あれ?


私、なんかこういうの、慣れてる気がする?


と思った途端、頭の中に別の人生の記憶が流れ込んできた。

貴族、公爵家、侍女、王家、婚約、王太子妃教育、婚約破棄、毒杯…


……私、前世で、異世界の公爵令嬢だったわ!


王太子と婚約したから、王太子妃教育を受けたけど、王太子の心変わりで婚約破棄されて、王家の秘密を知ってたせいで毒杯を飲まされたんだったわ!


それで死んで貧乏サラリーマンの家に生まれ変わったってこと? そうなの?


「ななの?」隆がけげんそうな顔でこっちを見てることに気づいて、あわてて「あっごめんなさい、ちょっとぼんやりして」と言った。


「こんな店来たことないでしょうから、緊張で固まってたんでしょ?」ブランドが意地悪く言う。


「ああそうか、それじゃしょうがないか」


納得すんなよ失礼なこと言われたんだよ怒れよ。


「メニューもワインも選んでおいたわ。隆は車だからノンアルコールよね」


「うん、さすが母さん」


さすがじゃないよ。勝手にメニュー決めてんじゃないよ。アレルギーの確認とかしろよ。私にはアレルギーないけどさ。


でも公爵令嬢の記憶を取り戻した私にとって、そんなのはささいなことだった。

ここにいるのはみんな平民。平民が貴族ぶって偉そうに食事をしてるだけ。

本物の貴族の中で暮らしてた私にとっては、ごっこ遊びにしか見えない。


「アミューズ・ブーシュです」給仕が小さい前菜を持ってきた。


ふうん、一皿ずつ持ってくるのね。この世界だと、毒見の必要もないから、気楽に口にできていいわね。

私は背筋をのばして、外側のカトラリーを使って優雅に食してみせた。


どのナイフとフォークを使うかわからなくて、おろおろするのが見たかったんだろうけど、おあいにく様。あんたらより慣れてるわたぶん。


「とてもおいしいです」とにっこりして言ってやると、ちょっとひるんだように「そ、それは良かった」と、顔をゆがませて笑った。ふふふ、楽しい。


オードブルが、スープが、そして魚料理が運ばれてきた。

骨付きまるごとの舌平目のムニエル。


わかりやすく食べにくいのを選んでて笑える。

もちろん慣れてるので優雅に食べる。隆もご両親も、ガチャガチャ音を立てて苦戦してる。みっともないのはどっちよ。人を陥れる前に、自分のマナー見直せ。大口開けるな。


「あなたのお父さんはモグモグ、聞いたこともない会社の係長だそうね」


口にもの入れた状態で喋るな、と思ったが、我慢して


「ええそうです」と答えた。


「そんなもぐもぐどこの馬の骨かわからないような子、うちの隆ちゃんにはふさわしくないと思うんだけど、どう思う? もぐもぐ」


平民のくせに、何様のつもりなんだろう。


「母さん、俺がななのをもぐもぐ選んだんだ、ふさわしくないとか関係ないんだよ」


おまえも飲み込んでから反論しろ。


「しかしもぐもぐ、うちの財産目当てかもしれんからな」ハゲおまえもか。


しかも財産目当てって。平民だろ? 平民が小金持ちになったからって偉ぶるなよみっともないな。


「ごくん。そんなことないよ。ななのは倹約家だし、結婚しても働いてもらうし、俺がななのの給料もがっちり握るから、無駄遣いはさせないよ」


うわ、私が稼いだお金まで握るつもりだったの?


「でもなあ、何かあったら遺産が転がり込むからなあ。ぱくもぐもぐ、遺産目当てで殺されちゃかなわないし」

「ほんとよ、卑しいぱくもぐもぐ人間と一緒に居たら、隆ちゃんまで卑しくもぐもぐなっちゃうわよ」

「ぱくもぐえ~、俺も感化されてるのかなもぐもぐ?」


私は、ナプキンで口を拭きとると、食事の途中だが立ち上がって、「では、感化される前にお別れしましょう。さようなら」と言った。


「え」「なんだって」「ななの?」


スタッフに「お料理、ここまで本当に美味しくいただきました。残りのコースを頂けず、シェフにも大変申し訳ないとお伝えください」と伝え、レセプションで自分の分の会計を済ませた。


親の暴言をたしなめることもできない恋人なんか願い下げだ。

なにより、飲み込んだと思ったら、またすぐに食べ物を口に入れて喋る神経が、どうしても許せなかった。

公爵令嬢として厳しくしつけられた私にとって、あの家族は動物にしか見えない。


隆との結婚は玉の輿だったかもしれないけど、王族への輿入れがどれほど大変だったか知ってるし、貴族ごっこみたいな暮らしなんて絶対嫌だ。せっかくこんな、身分で縛られることのない、平民天国の国と時代に生まれたんだし、平民の暮らしをエンジョイしたい。


誰にでも話しかけられる、どこにでも行ける、結婚相手を自分で探せる!

こんな幸せの中で生きてることを、今まで気づかなかったことにびっくりだ!


さあさあ、元公爵令嬢の平民が、手始めに、合コンに行くわよー!

五十音順で、「と」の下「な」なの、というどうでもいい理由でつけた名前ですが、「とのした」は「殿下」っぽくていいなあと思ってます。


あとフランス料理! 全然わからないのでAIさんにたくさんお世話になりましたありがとう!

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― 新着の感想 ―
> 王族への輿入れがどれほど大変だったか知ってるし、貴族ごっこみたいな暮らしなんて絶対嫌だ。 タイトル的に輿入れ準備はしたけど成婚には至らなかったんだよね? 至ってたなら王太子妃、王妃、前王妃として死…
成金とか上流階級関係なく口の中に食いもん入れたまま喋るなァァァァ!!!!!!
公爵令嬢様ーっ! しびれるぅ!! モノホンの名家子息に見初められて、隆一家がギャフン言うところ、妄想。
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