幻想三方一両損
ガラの悪い二人の男がなにやらもめていた。
「銀貨三枚の短剣を拾ったんだから三枚よこせ!」
「馬鹿いえ、新品じゃねぇんだからせいぜいが二枚までだ!」
二人の言い争いはだんだんひどくなり、周りの誰にも止められない。
と、そこへ二人がいつも世話になっているこの辺りの顔役がやってきた。
「おい、こんなところで何をもめてるんだ」
「オーカーさん! ちょっと聞いてくだせぇよ!」
二人は顔役のオーカーにいきさつを説明した。
「つまり、こっちのお前が落とした短剣をそっちのお前が拾って、返す代わりにその対価の銀貨三枚を要求してた、と」
「はい、その通りで」
「で、この短剣は使い古しなんだから三枚は払えねぇ、二枚で承知しろってことだな」
「ええ、まさしく」
「それでここに短剣と銀貨二枚があるのか」
「この野郎ががめついのが悪いんでさぁ」
「なんだと!? 拾ってやった恩も忘れてぬかしやがる!」
「おいおい、喧嘩はやめねぇか。しょうがねぇやつらだなぁ」
オーカーは顎に手を当てて少し考えたあと、自分の懐から二枚の銀貨を取り出した。
「まずこの短剣は質にとるなら銀貨一枚ってとこだな。それで俺が預かろう」
オーカ―が銀貨一枚をぱちりと置く。
「で、さらに俺の懐から銀貨一枚をこの場に出そうじゃないか」
さらに銀貨一枚をぱちりと置く。
「これで銀貨が四枚になったな。じゃあ、この四枚をお前ら二人で分けるといい」
「……? そりゃまたいったいどういうことですかい?」
「よく聞け。まず短剣を拾ったお前は銀貨を三枚要求したが二枚しかもらえないから一枚の損、次に短剣を落としたお前は銀貨三枚の短剣を失ったが二枚戻ってきたから一枚の損。最後に俺が懐から銀貨一枚を出したから一枚の損。どうだ、皆がそれぞれ銀貨一枚の損で手を打たないか」
「ううむ、なるほど。さすがオーカーさんだ。もちろんそれで結構でさぁ」
二人はオーカーの話に納得して銀貨を二枚ずつ懐にしまいました。
オーカーが短剣を腰に差して立ち去ろうとすると、短剣を落とした方の男がおずおずと声をかけた。
「あのう、オーカーさん。して、短剣のほうは……」
「これはもともと銀貨三枚のもんだ。返してほしけりゃ銀貨三枚よこせ」




