第一話 主人公とは
つまらない話ですが、黒歴史を作ってるんだなと思いながら読んでくださいませ…
「ぐぅ…ぐぅ…」
無造作に伸ばされた黒髪、濃い紫色の瞳は閉じられている。
「ゴラァ!いつまで寝てんだ起きやがれ!」
自分で短く切った灰色の髪、怒りに染まった灰色の瞳の男が黒髪が抱きしめている毛布をはぎ取る。
「…んぁ??」
ド低音の不機嫌ボイスを披露しながら、ゆっくり、ゆーーーっくりと起き上がる黒髪。
「んぁ??じゃない!何時だと思ってるんだ!毎回毎回!!今は!11時だぞ!?分かってるのか!分かってないだろうな…!知ってるぞ!俺!この長い付き合いで知ってる…!!」
毛布を丸めて黒髪にぶん投げる。黒髪はそれをさらっと避けて。
「なはは、ばーか。そんなんじゃあオレに当たらんよ、林檎」
毛布をそのままにして、ベッドから立ち上がり、伸びをする。まるで猫が日向ぼっこから起き上がったように。
「林檎言うな!俺は琳だ!お前がつけたんだろう!琳って!」
琳。黒髪がつけた灰色の男の名前である。
「そーだったそーだった。で、林檎ー、腹減ったー」
さてはて、この黒髪だが、この話の主人公である。名を嵐神李仁。これでも性別は女である。
「朝飯も林檎にしてやろうか…?」
林檎呼びをやめろと言うことだろう。
「朝飯は林檎か…でも、オレ、お前さんの作った朝食が食いてぇなぁー…この世のモンとは思えねぇほどうまいお前さんの作った手料理をさ」
その言葉としゅんとした表情に琳はきゅんとしたらしい。
「しっかたねぇなぁー♪作ってやるよ!何がいい?あ、フレンチトーストでいいか。ちょっと待ってろ」
上機嫌にエプロンつけて、このこぢんまりした木のログハウスにある台所へと引っ込んでいった琳を見ながら…
(ちょっっっっっっろ♪)
内心笑いが止まらない李仁であった。
(まぁ、さっき言ったことは嘘じゃねぇけど…それでも、あぁまでなるとおもろいよな)
けらけらと笑う。その内心を知られているとは思ってない。
琳も琳で馬鹿ではないのだ。しかも、その言葉が本音だと言うこともバレているので機嫌が良くなったのである。
そそくさと黒と月と狼をモチーフにした一張羅であるパンツスタイルの戦闘服に着替える。
(これしか私服ねぇんだよなぁ…)
そんなことを考えていたら
「オラ、朝飯だ、食え」
凄く雑な言葉だが、トレーを置く手は優しい。かたりと置かれたトレーにはフレンチトーストが湯気を立たせて鎮座していた。
「サンキュー」
李仁はキザっぽくウインクした。
「お前のウインク、悪くねぇが…それで機嫌とってやるってゆー魂胆が見え見えで受け取れねぇわ」
バレたかと笑う李仁。
「さて!いっただっきまーす♪」
と食べる。うまい。相変わらず美味しいのだ。琳の飯は。
「お前さん、オレが育てたにしてはホントーにこーゆーのうまいよな」
自慢じゃあないが李仁は寝食と家事は最低最悪である。11時までは寝るし、食べるのはテキトー、家事はほぼしないので。
「お前だからこそだろ。俺がなんとかしねぇとと思ったぞ」
琳が当時8歳、李仁が当時13歳の時に、琳を拾ってきて、この一人暮らしの家に連れてきたのだが、入った途端に足場がないゴミ屋敷だった。ご飯も適当に煮たり焼いたりしただけなどなど。人間だよなと言いたいくらいの食生活と生活能力。ので、琳が得意とすることは掃除と料理である。
生活能力は大事。琳は齢8にしてそれを知ったのであった。
「食べ終わったら、仕事、しよーぜ?」
李仁はそう言って、笑う。いつも通り、飄々としていてどこか毒があるように。
「はいはい、付き合ってやんよ、李仁」
その笑い方を真似るように笑ってみる。
それを見てニシシと笑う李仁。李仁は食べるスピードをあげた。
「ごっそーさん。さ、行くか」
立ち上がって、黒いコートを羽織り、腰にある拳銃ホルダーに墨汁を入れる。
「はいはい」
琳もそれにならって立ち上がり、灰色のコートを着て、手袋をはめ、ドアノブを握った。
「いやー、ホント、主人公とはって感じだよな、オレ」
「今更だろ、李仁」




