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晏陰  作者: 水嶋
晏陰

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87/90

嬉しい再会

すっかり忘れ去られているあの人と再会します

「八神さん」


「えっ!?静奈!?」



云足の病院に行くと高校1年の時に同じクラスだった静奈が来ていた


静奈はクラスの山本翔太に妊娠させられてこの病院で堕した事があった


妊娠した時に相談されてここを紹介した


「今はもう八神じゃないんだよ?」


「あっ!そうだった!八神先生が杉田と結婚したって言ってたんだった…ゴメン…じゃあアン!久しぶり」


「うん、本当に久しぶりだね?」



場所を変えて外のベンチで話した


「静奈は今日はどうしたの?妊娠した?」


「ううん…患者として来たんじゃ無いんだ…」


「?」


「アンは…もうすぐ産婦人科医になるんだよね?」


「うん、そうだよ。来年認定試験を受けるよ。来年は研修が終わるから本格的にこの病院で働くよ。今は専攻医として研修中だよ」


「そっか、良かった…」


「良かった?」


「うん、私ね、あの事があってから…後悔も沢山したんだ…安易な行動で産まれさせてあげられなかった…」


「そっか…」


「うん…でね、アンや八神先生にお世話になって…私も出産や私みたいな子を励ましたり助けたり…私の経験が少しでも誰かの助けになりそうな…あの時生んであげられなかった子の代わりに望まれて生まれる子を取り上げてあけたい…そう言う仕事がしたいなあって思ったの…」


「うん…」


「私もアンみたいに産婦人科医目指せたら良かったんだけど…そこまで頭良くなかったから…あはは」


「そんな事…」


「でね、助産師を目指す事にしたんだ。助産師課程がある大学に行って看護師と助産師の国家試験に合格して今は助産師として働いてるんだよ?」


「そうなんだ!」


「うん。今年で働き出して…8年目だから…アンがこの病院で働き出す時には力になれると思う…」


「それって…」


「うん…八神先生にお願いに来てたの。来年から採用して欲しいって」


「本当に!?嬉しい!」


「うん。私はあの時アンに助けられたから…今度は私がアンを助けられたらなあって…まあ微力ながら…だけどね」


「ううん!凄く助かるよ!有難う!」


「そう言ってもらえて嬉しいな。頑張るから…宜しくね」


「うん、こちらこそ!」



「静奈は私生活で今はどうしてる?」


「私はね、大学で出会った人と結婚したんだよ。相手は今、看護師してるんだ」


「そうなんだ!」


「私の過去の事を打ち明けても…結婚してくれたんだ…」


「そっか!やっぱり静奈の事を大切にしてくれる、良い人と巡り会えたんだね!本当に良かった」


「うん…アンが杉田と結婚したって聞いた時は驚いたよ!まさか付き合ってたなんて全然知らなかったし分からなかった」


「まだ周りは子供だったし…揶揄われて騒がれるのが嫌だったからね…周りには言って無かった」


「そっか、まあ私の時もあの頃は周りに騒がれて嫌な思いしたからなあ…正確だね。でも隠すの本当に上手いね!」


「ふふ、有難う。静奈は結婚生活は順調?」


「うん。今は子供も居て…」


「へえ!そっか!好きな人の子供が出来て良かったね!今いくつ?」


「うん。今年で5歳」


「そうなんだ!じゃあうちの子と同い年だ!」


「そうなの!?うちは女の子で…ヤンチャで手を焼いてる…あはは」


「そっか、静奈は大人しかったのにね…旦那さんに似たのかな?ウチも女の子だけど…元気過ぎな位だよ…」


「そっか、杉田の子だもんね…スポーツも得意になりそうだなあ」


「ふふ、そうかもね…」


「その内ウチの子にも会わせてあげたいな…きっと良いお友達になれると思う。素直で優しい子だから…ちょっと保育園ではガキ大将みたいになってるけどね…虐められてる子を助けてあげたりしてるみたいだから…」


「あはは、そうなんだ…うん!楽しみにしてるね」



照陽は私にもマコトにも似ずに元気いっぱいだった


血の繋がらない友晴に似たんだろうか?


それとも浄化される過程で新たなステージに進んだのだろうか…


人間って理論や理屈や数式通りの結果にならない…不思議で面白いなって思った





嬉しい報告と心強いベテランとなった静奈に感謝した


この先のこの病院の明るい未来に希望が見えて来た


その為にも…


認定試験に合格して


ちゃんと精算しなきゃ…


気持ちを新たに引き締めた





○○○○○○○○○○





「はい、叔父さん…一休みしましょうか…」


私は疲れている云足にコーヒーを淹れて差し出した


「ああ…そうだな…有難う、御月…」


「ふふ…私はアンですよ?」


「あっ…そうだったな…杏、有難う…」


最近では疲れているとたまに意識が混濁する時がある様だ…


長年失敗の許されない、常に気を緩められない緊張を強いられて来た影響だろうか…


なるべく早く第一線から身を引かせてあげて心にゆとりの持てる穏やかな環境にしてあげなければ…


「静奈が訪ねて来てくれた様ですね…さっき会って色々話して来ましたよ」


「ああ…あれから…随分経ったが、今だに恩義を感じてくれていて…この仕事の有意義さを実感するな…」


「そうですね、有難い事ですね。医者の仕事…とりわけ産婦人科は特に母親と生まれてくる子供の命に関わる仕事ですからね…責任も重圧も大きいですが…その分やりがいも大きいですね」


「そうだよ…」


「静奈は来年ここで?」


「ああ、もう十分経験も積んでるしな…即戦力として助かるよ…是非来てくれるように頼んだよ」


「それは良かったです。そうですね…私も心強いです…まだ私は経験は浅いですからね…」


「まあ…お前なら大丈夫だろう…見ている限り問題は無いよ?」


「そうですか、良かった…有難うございます。マコトはどうしていますか?」


「ああ、来年で中学は卒業するが受験は無いから…」


「ふふ、それはカイですよ?」


「ああ…そうだったな…」


「随分お疲れですね…今日の予約はどうなってますか?」


「今日は…この後は定期健診が2件だな…2人とも安定期で問題ないから…」


「なら、私が代わりに診ますよ。叔父さんは少し横になって休んでいて下さい」


「そうか…悪いな…何か有ったらすぐ呼んでくれ…」


「はい、分かりました」


「では、頼む…」





「はい…おやすみなさい…」


前半のハートフルなお話から一転しての後半…


云足大丈夫かね?…


相変わらず杏は不穏です

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