表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
晏陰  作者: 水嶋
晏陰

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/92

可愛い子

年が明けて2月になる手前位に私は云足の病院で無事女の子を出産した


「やっと会えたね…」


「頑張ったな!アン!」


「うん…」



友晴も駆けつけてくれた


出産は2度目だったが今回はちゃんと生きた子を産めた


「この子の名前…」


「うん、照陽(テルヒ)…明るく陽の光輝く未来を生きていける様に…」


「良い名前だな」


「画数も良いんだよ?」


「あはは、やっぱりアンはしっかりしてるよな。安心だ」


「ふふ…」



名前は私が付けた

この子にはこの先は始祖になって欲しい…


先祖…「八神(ハッシン)」の柱が守って行く子の…



「やっぱりアンに似てるなあ」


「そうかな?」


「うん。俺の遺伝子は弱いのかなあ」


「そんな事無いよ。ほら、元気だし友晴みたいに柔道とか始めちゃうかも」


「あはは、それは困ったな!女の子だからなあ…」


「女の子だって強くなきゃこの先大変よ?」


「まあな…でもあんまりそっちで有能になるとウチの家族に取られちゃう」


「ふふ、友晴は心配性だね。この先この子が結婚する事になる時は大変そう」


「ああ!まだそんな事考えたく無い!テルヒはずっとウチにいるよなー?」


「子煩悩の父親でこの子もこの先大変そうだ」


「あはは」


友晴はきっとこの子を愛して守って大切にしてくれる…

そう思いながら照陽の手を握った


「ちっちゃい手…可愛い…」


この手でこの子は何を掴んで行くんだろう…



春から私も初期臨床研修を開始した


韻も先に始めている宮乃の勤める病院だった


「へへん!やっとアンを追い越したぞ!僕は先輩だからね!何でも聞いてくれたまえ!」


韻は得意げだった

何かムカつく…


「私は産休してただけだから。人の心配する前に落ちこぼれにならない様に自分の心配でもしてな」


「むう!」


いい歳をして相変わらず返しの言葉はガキだった


「ここで迷惑掛けてないでしょうね!?私だけじゃ無くて宮乃やアキラさんまで肩身が狭くなるんだからね!」


「その点は大丈夫だよ、今度からは僕もちゃんと見張ってるから」


「マコ…じゃ無くてシン!」


韻がマコトに抱きついていた


「こらこら…やめなさい、目立つから」


マコトが韻を引き剥がしていた


マコトも無事卒業して医師免許も取得出来たので今年から私と同じく初期臨床研修をこの病院で始める事となった


「アンはやっぱりズルい!腹黒だ!シンと一緒だなんて」


「仕方ないでしょ。アンタ先輩なんだから私達に教えるつもりで頑張りな」


「むう!」


また言ってるし…

お前は牛か?



「あはは、何だか賑やかだなあ」


「アキラさん、お世話になります」


そう言って頭を下げた


「アンちゃんはしっかりしてるね!」


「ゴメンなアキラ…インが迷惑掛けてるだろう?」


「いやいや、頑張ってるぞ?なあイン」


「うん!僕頑張ってる!」


「コラ、『はい』でしょ…もう…」


「何か…お前がちゃんと父親してて面白いな」


「もう…アキラまで…」


この蘇我晃はマコトの高校生の時からの兄弟の様に仲のいい友人で宮乃の病院に外科医として働いていた


アキラは八神家の使命についても知っている数少ない外部の人物だ


マコトが仮死状態の時の蘇生も宮乃と昼夜を問わず献身的に行ってくれた


マコトの事を本当に心配して助けてくれる、田所とは違う本当の親友だった


「じゃあ宜しくお願いしますね、蘇我先生」


「あはは、まあお前なら大丈夫だろう?2周目なんだから。逆に上手くやりすぎて目立たない様にしろよ?」


「その辺は心得てますよ、先輩」


「じゃあな!」


そう言ってアキラさんは立ち去った




「じゃあそろそろ僕達も…」


「うん」


「この後…折角だからどっかでお茶でもしてく?2人とも結婚してから久々に3人顔合わせたし」


「あっ!僕は今日は帰る!」


「どうしたの、珍しいね?インがシンの誘いを断るなんて…」


「僕この間朝帰りしちゃって!まだマユが怒ってるから!」


「アンタねえ…この間子供が産まれたばっかりでしょうが!いよいよマユに三行半突きつけられるよ!?」


「そうならない様に赤ちゃんのお世話頑張んなきゃ!じゃあね!」


韻は走って帰って行った


「何か…色々…相変わらずだねインは…お父さんになっても…」


「これからはここでのインの監視はシンに任せるよ」


「そんな…1人じゃ荷が重い…」


「私は長年やって来たんだけどね…まあ仕方ない、2人で頑張りますか…」


「有難う、やっぱり頼りになるねアンは」


「はいはい」


そんなやり取りをマコトとしながら病院を後にした





○○○○○○○○○○





「テルヒちゃん、元気にしてる?」


「うん。元気過ぎな位」


「あはは、そうなんだ!良かった」


人目につかない様に病院から遠いカフェに入ってマコトと近況等をお喋りしていた


「フォウの子…フィアだっけ?今年で4歳だっけ?」


ドイツ語で4のフィーアから名付けた様だ

恐らく御月の生存する4番目の子…と言う意味合いも有るのだろう



「うん、そうだよ。フィアも元気だよ?この子も元気で無邪気で可愛いよ」


「そっか…」


フィアもドライと同じように精神疾患が有った

あと6〜7年…

マコトがまた精神科医となって落ち着いた頃には治療をして可愛がってあげるのだろう…

それとも既に…


その頃にはもう子供も産める身体になっているかも知れない…


そう考えていると胸がギュッと締め付けられるような感じを覚えた


気持ちを切り替える為に話題を変えた




「テルヒは医師にさせないつもりなんだ」


「へえ、そうなの?」


「うん。自分でここまで来た道のりを振り返ると…やっぱり大変だったから。私はトモハルとたまたま出会えたけど、そう言う…恋愛とかも楽しむ余裕もないだろうし」


「まあ…そうだね。僕も結局恋愛とは無縁でこの歳まで来ちゃったしなあ…」


「シン、今年で幾つだっけ?」


「44…もうっ!言わせないでよ!口に出すと余計落ち込む…」


「あはは、シンは可愛いから大丈夫だよ!今は美人にもなってるし!」


「うーん…あんまり嬉しく無い…」


「お肌だって綺麗だよ?」


「宮乃が定期的に肌年齢チェックしてくるんだよ…一体僕を何にさせたいのか」


「でも命じられて真面目にお手入れしてるし…そう言う所も素直で可愛い」


「そりゃどーも…」


そう言う所もやっぱり大好きだ…


「僕まだテルヒに会ってないからなあ…落ち着いたら会いに行くよ」


「ううん、私が連れてくよ。シンが家に来たらトモハルがヤキモチ妬いちゃう」


「ええっ!?何で?僕もうおじさんだよ?」


「トモハルは私の初恋相手がシンだって思ってるから」


「そんな!ちゃんと否定してよ、この先トモハルくんと話し難くなっちゃうじゃない」


「ふふ、もう遅いよ。うんそうだよって言っちゃった」


「アンは悪戯っ子で仕方ないなあ」


「ふふ、困った顔のシンも可愛い」


「もうっ…やめてよ…」



久々に子供の様にはしゃいで楽しい気持ちになってマコトと話していた


「テルヒはね…私に良く似てるんだあ」


「そうなんだ!会うの楽しみだなあ」


「うん。私にもインにも宮乃にも叔父さんにも…マコトにも似てるよ?」


「アン…それって…」


「私の遺伝子が強かったのかなあ?やっぱり浄化されて来てるから」


「うん…そっか…そうだよね」


「本当に可愛いんだよ?落ち着いたら会わせに行くから楽しみにしててね!」


「うん、楽しみだなあ…」





本当に可愛い子だから…


早くマコトに会わせてあげたいなあ…


マコトは何か察してる?


何かもう杏には不穏しかない…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ