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晏陰  作者: 水嶋
2人の行き着く先

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取り敢えずの前進

「これは僕からの餞別ね」


そう言って田所は薬物の入手ルートを伝えて来た


大学5年生となって少しした頃にマコトに会いに来てその帰りに話していた



「有難うございます」


「多分…これでこの姿で会うのは最後になるかもだからね。八神先生にも色々挨拶して来たよ」


「この姿?最後?病院を辞めるんですか?」


「まあ、それに近いかな」


「そうなんですか…」


「僕はね、決めたんだよ『支配』を決行する事にね」


「前に言っていた…患者さんにですか?」


「そうだよ…最初はね、誰にも触れさせずにそのまま静かに美しくこの世界から消してあげようと思ってたんだけどね…もしかして僕も触れる事ができるんじゃ無いかってね…」


「そうですか…」


田所の言う『支配』とは恐らくただ殺害するだけでは無いのだろう


結局具体的な事は良く分からないままだったがこの患者を殺害する事には変わりないだろう


そして、韻の話だと先日友晴と会って近い内に田所は逮捕されるだろうと話したらしい


田所から受け取った薬物で捜査して貰えたのだろう


この姿…恐らく次は医者としてではなく犯罪者として刑務所でだろうか…

面会など行く気もないが


しかし最後に約束通り薬物の入手ルートを伝えて来るとは律儀な男だ



「杉田警視長とも話がついたからね。アンちゃんは何も心配しなくても大丈夫だよ」


「そうなんですね…色々有難うございます」


「まあ、これで八神先生への義理も果たせるかな?僕も都合良かったからね」


「?」


「それじゃあ、元気でねアンちゃん。アンちゃんの『支配』の成功を祈ってるよ」


「はい、有難うございます。田所さんもお元気で…」



本当に友晴のお爺さんとも話をつけた様だ


何だかわざわざお別れを言いに来たり改めて最後まで律儀な男だなと思った





最後に田所と会話して暫くした後、田所が病院内で患者を殺害し、現場に張り込んでいた警察官に現行犯で逮捕される寸前に自殺を図って薬を飲んで意識は戻ったが精神が崩壊したと光太郎から報告された





○○○○○○○○○○





「まあ、田所の供述は取れなかったけど…今までの犯行手口から類似点も多いからそこから何とか証明してみるよ」


「そうだね…」



友晴に報告を受けていた


大学院への受験の忙しい最中、私の為に色々動いていてくれた様だった


友晴も無事通っていた大学の大学院に進学出来たが話す内容は主に田所の事となっていた


どうやら田所は心酔していたその患者を殺害し、『支配』を決行する寸前に取り押さえられたらしい


田所の言う『支配』とは…


「田所は自分で殺害した被害者を死姦する事をしていた様だ…相手は年齢も性別も厭わないらしい」


「そうなんだ…」


前に言っていた一度きりのお相手とはそう言う事かと納得した


「それで…殺害方法は主に首筋などに薬物を注射していた」


「うん…」


「で、死姦した後…隠蔽する為に行為をして中に自分の出した物を一度洗浄して別人から集めていた精液を注入させる」


「成る程…」


それを集める為に韻に使った睡眠薬が必要な訳か…と理解した


「で、あの事件当日…マコトさんはその…被害者の娘と…病院内で…」


「うん、いいよ」


「コンドームを使用して性交渉していた。その破棄された使用済みのコンドームを回収出来るのは同じ病院で働いていた田所だろう」


「そうだね」


「恐らくそれを使用して…普段はマコトさんは患者にピルを飲ませていてコンドームは使用していなかった」


「うん…」


「この日は患者がピルを飲めなかったと言ってコンドームを使用した」


「うん…」


「マコトさんが自殺した後に田所はその患者を受け持っていた。病院内の監視カメラに田所と患者が患者の母親が殺害される以前に話している姿が映っていた。」


「以前から面識があったんだね…」


「うん。母親が殺害された日、マコトさんが現場へ到着する前に街頭の防犯カメラの映像に田所が先にその現場の家へ行く姿が映っていた」


「そうなんだ…」


「恐らく…田所が入れ知恵して精液を回収する為に患者にコンドームを使用させる様にしたんだと思う」


「多分…そうだね」


「患者も行為の録音を都合良く準備したり…不自然な点も多い」


「成る程…」


「この辺りから攻めて行って…マコトさんの再審請求に持っていくつもりだから。後は八神院長の雇った優秀な弁護士の手腕に頼る事になると思うけど…」


「うん…色々有難うね。何とかマコトの無実が証明されれば…マコトも報われると思う」


「そうだね…大丈夫、味方は沢山いるからね」


「うん…でもやっぱり…1番の味方はやっぱりトモハルだ…」


「そうだよ…これからもアンの事助けていける様に立派な弁護士になるからね」


「うん…有難う」



そう言って私は友晴に抱きついた




結局まともな状態では無い田所からは供述は取れなかったが一度判決されたら難しいと言われている再審請求は通り裁判が行われる事が決まった


田所の今までの犯行が徐々に明らかになっていたのも大きいだろう


きっかけはやはり田所が私に渡した薬物も大きいと思う



『支配されている相手を『支配』するにはどんな状況でも感情で取り乱さない冷静さと相手を分析する判断力、不測の事態を想定した準備が出来る思慮深さが必要だからね』


『支配を決行する前は事前に様々な結果を仮定して準備しておくんだよ?』



田所は私にこう告げていた


他人の精液を集めてまで隠蔽工作をする様な周到で用心深い田所が、恐らく自分に恨みを持っているであろう私に対して安易に自分の身を危険に晒しかねない証拠となりそうな薬物を渡してきた事に少し違和感と言うか疑問も有った


オマケに薬物の入手ルートまで最後に伝えて来た


少し何やら不穏な予感と言うか…気持ち悪さも感じていたがマコトの無実が証明されるなら…





何か田所に思惑も有るのかも知れないが敢えて今はその事に乗っかろうと思った


実際は麻里奈が使用済みゴムを持ち出しましたが…

ひとまず前進した様ですね


杏も素直に喜んで良いのか多少疑問にも思っている様です


杏はやはり冷静な性格の様ですね


田所の殺害については「地石」に書いてますのでそちらを参照下さい


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