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晏陰  作者: 水嶋
2人の行き着く先

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危ない男

「で、何か分かった?」



田所から譲って貰った薬を宮乃に頼んで成分分析をして貰っていた


「ええ、まあ概ね強い睡眠薬…ただ他にも色々混ぜてあるわ」


「混ぜて?」


「まあ、端的に言えば精力剤の類かしら。後は向精神薬に近い物等がごく微量に…」


「精力剤…」


「全身の血流が促進されるわね。男性の場合だとED治療薬で使われてる成分ね。女性だと血管拡張効果が起こり膣や陰核の陰部をはじめ全身の血流が促進さる程度かしら」


「そんな物が…」


「まあこの手の薬は女性にはさほど効果はないかもね」


「そう…」


「恐らくだけど…眠らせても勃起している状態になるから…男性を眠姦するのに女性が使うとか…」


「女性…」


恐らく使っているのは田所だ

田所はお相手は男女問わずと言っていた


眠らせてお相手をレイプしているのだろうか?

それとも…


「因みにだけど、男は眠っていても射精するの?」


「まあ、夢精する位だからするんでしょうね」


「確かにそっか…」


これならセックスしなくても精液が採取出来る…

マコトは患者から精液を採取された


それを使って母親殺しの罪を擦りつけた…


田所はこの方法で他にも殺害の目眩しをしているのではないか…

その為に他人の精液を集めている…


一度きりの夜のお相手は恐らくゲイだろう

そう推測した


「まあ確かにこれを服用したからと言って人体には深刻な問題は起こらないけど…これは限りなくグレーな代物ね。勿論そんなもの普通の病院ではまず処方されない、犯罪に使えるからね」


「そうだね…」


「出処は田所先生だっけ?恐らく表沙汰に出来ないルート、繋がりが有るわね」


「だろうね。マコトの飲んだ薬と言い…あっ!そう言えば!」


「何?」


「これ確かマコトのお葬式でインもお菓子に混ぜられた物を食べた筈なんだけど…インは寝ただけみたいに見えたよ?」


韻はただ座って眠っていて勃起している様には見えなかった


「まあ…あの子は…普段から勃たせまくってるから…そう言う薬は効かないんでしょ?多分…」


「そーゆーもの?」


「あの子は色々特殊だから…よく分からないわ」


宮乃は韻の考察は面倒なようだ…

よく分からないで片付けていた


韻はお酒にはめっぽう弱いがこの手の薬は効かないらしい

まあ韻はこんな薬に頼る必要は無いだろう


早く歳をとって枯れて勃たなくなった方が周りの、世の中の為になるだろう


今回はこの薬の情報で田所の殺害後の隠蔽の為に使用する精液の集め方は粗方予想がついた


ただやはり肝心の殺害に使用する薬物…


マコトの事件で母親を殺害したのはまだ幼い、当時14歳になるかならないかの少女だ


親にも反抗出来ないような非力な子が武器や道具を使って力づくで殺害は無理だろう

外傷なども無かった


恐らく何らかの方法で薬物を使って殺害したのだろう


直前に韻に盛られた様に飲食物へ混入されていたならもっと詳しく調べられていた筈だ

胃の内容物位は調べるだろうからその線は違う気がする


ならば吸引か塗布か注射か…


この辺りで予想するなら注射が妥当だろうか


吸引も塗布させるのも相手に気づかれない様に無傷で摂取させるのは難しいだろう


そうなれば身体の何処か、動脈か静脈に沿った位置に注射痕がある筈…


しかしもう母親の遺体は火葬されている


もしかしたら現場検証の遺体の撮影画像で調べられるかも知れないがどの道それだけでは証拠とするのは難しいだろう


そんな事を考えていて黙り込んでいた


「杏、色々思う所は有ると思うけど…田所先生に近づきすぎるのは危険よ」


「分かってる」


「そう…なら良いんだけど…マコトは無事だったんだし、新たに人生をやり直している最中よ。マコトに心配かけちゃダメよ」


「分かってるわ…」



田所から殺害方法を聞き出し殺害に使用する薬物を何とか入手しないと…


私はそんな事を考えながら



「分かってるわ…」



そうもう一度答えていた





○○○○○○○○○○





「田所さん、こんにちは」


マコトに会いに来ていた田所の帰りを外で待ち伏せしていて声をかけた


「アンちゃん、こんにちは。学校はどうかな?」


「はい、私は変わらずですね…田所先生は病院どうですか?」


「僕は…最近仕事でちょっと心踊る事があってね…」


「へえ、田所先生っていつも冷静なイメージだから想像付かないです…昇給とか役職が上がったとかですか?」


「僕はそう言う事には興味は無いね…」


「そうなんですね…じゃあ何だろう?興味の持てる患者さんを受け持ったとか?ですかね」


「ご名答、流石だね」


「そうなんですね、いったいこの田所さんがそんな嬉しそうな顔をする患者さんって…どんな人なんだろう?」


「まあ…余り具体的な事は教えられないけどね、殺人等の罪の容疑が沢山かかっている凶悪犯でサイコパスの患者さん…だね」


「成る程…警察病院ですからね。そう言う患者さんになりますか…田所先生はシリアルキラーがお好きなんですか?」


「ただの凶悪犯には然程興味は無いんだけどね…この人は全く悪意が無いんだよ」


「へえ…」


「ただ人を愛して愛される事に固執していて結果として犯罪になってしまっているんだよ」


「愛…」


「しかも全ての犯行がまるで呼吸をする様に…悪意も善意もなく…純粋で同じ人間とは思えないね…強いて言えば神…偶像(アイドル)…」


「それじゃあ今は田所先生はその患者さんを崇拝しているって感じですかね?」


「正にその通りだろうね。初めて仕事場に行くのが待ち遠しいと思っているよ」


「成る程…じゃあ…田所先生は今はその患者さんに『支配』されてるんでしょうね…」


「その通りだろうね…今はその人の事で頭が一杯だね」


「支配される者は支配もしないと…でしたっけ?」


「そうだね」


「じゃあいずれ田所先生はその患者さんを『支配』するんでしょうね…」


「そうかも知れないね…今はただ世間の下衆な娯楽と成り果てる前に誰にも手の届かない存在のまま美しく幕を閉じさせてあげたいと思っているけどね」


幕を閉じさせる…

この言葉で私は確信した


そして切り出した



「田所さん、私決めました」


「何を決めたのかな?」


「八神家の…使命を支配する事に」


「へえ…」


「前に言ってくれましたよね?田所先生にも多少原因は有るから、困ってる事が有ればマコトの友人として微力ながら力になるよって」


「ああ、言ったね。何か困ってる事が有るのかな?」


「私を支配している八神家の使命…その思想を支配するには現段階で八神家の使命を取り仕切っている叔父の云足…八神院長を私の手で支配しなければならないと思っています」


「成る程ね…」


「その為にも…色々ご教示下さればと思います」


「そうだね…分かった、いいよ」


「有難うございます」





そして遂に田所と『支配』の手口を聞き出す約束を取り付けた


名探偵杏は刑事にでもなるんだろうか?


杏は中々の肝の据わった性格みたいですね

刑事、案外似合ってそうです

ただ正義感は無さそうですが…


田所が浮かれている患者については「地石」を参照ください

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