2度目の花火
「今年もやっぱりトモハルの方が早かったか…」
「あはは、さっき来たばっかりだよ」
今年も待ち合わせ場所には先に友晴が着いていた
「今年は浴衣着たんだね」
「うん、アンとお揃いにしたかったから」
私は今年も浴衣で来たが友晴も浴衣を着ていた
「暑いし動きにくいでしょ」
「そうだね、暑い」
そう言って配られてた団扇であおいでいた
「でも、似合ってるよ。カッコいい」
「有難う。アンも似合ってて可愛いよ!」
「有難う」
「じゃあ行こっか」
そう言って差し出された手を握って河原を歩いた
「今年も凄い人だったね…」
「うん…でも綺麗だった…」
花火が終わってぶらぶら歩いて露店を覗いていた
「あ!ラムネあるね。今年も飲もっか」
「うん」
今年は2本買ってそれぞれ飲んだ
「今年はアンの分も買ったんだね」
「うん。味は大丈夫って分かったから」
「なんだよそれ、俺で毒味させたの?」
「まあ、容器も変わってるしちょっと不気味だったから」
「あはは、酷いなー」
「ごめんごめん、やっぱり初めて見るものってちょっと怖いじゃ無い?」
「そっか、そうだよな…」
そんな風にして歩いていると遠くで知った顔が見えた
「あっ!あれは山本だ…」
友晴も気づいて小声で囁いた
山本翔太と、隣にクラスの女の子が手を繋いで歩いていた
夏休みの間、何度かラインが来ていたが面倒なので無視していたらその内連絡して来なくなった
私に見切りをつけて別にシフトチェンジしたのだろう
2人は露店に入ってまだこちらに気付いてる様子はない
「会うと面倒だから見つかる前に逃げよ!」
そう言われて手を引かれて走ってその場を離れた
「はあ…はあ…足大丈夫?」
「うん…今年は絆創膏ちゃんと持って来てる…」
「そっか、良かった。まだ貼らなくて平気?」
「うん。多少は去年より耐性出来たのかも」
「あはは、足の指の間も成長してるんだなあ」
「そうなのかもね。まだ成長期だからね…」
「でも…」
「何?」
「咄嗟に逃げちゃったけど…声かけた方が良かった?」
「なんで?」
「いや…その…アンは山本とよく話したりしてたし…」
友晴は韻と翔太の会話を聞いていた筈だからどんな奴か知ってると思うけど、私が翔太と仲良くしたいと思っていて気遣っているのだろうか…
確かに韻の言う通り優しくて気遣いをする人だなあと思った
「ううん。正直迷惑だったし…」
「そうなの?」
「うん。夏休みの間もおはようとかおやすみとか何してるとか…大した用件でも無い内容を頻繁に送って来て。鬱陶しいから全部無視してたらやっと最近連絡して来なくなって清々してる」
「あはは、そうなんだ、良かった…」
「良かった?」
友晴は顔を外らせて俯いていた
「うん…あのさ…」
「何?」
「俺…」
「うん」
俯いていた顔を上げて真っ直ぐ此方を見つめていた
「アンの事が好き…ずっと前から…」
「そうなんだ…」
「アンは…俺の事どう思ってる?」
「トモハルの事好きだよ?」
「俺は…アンと付き合いたいって思ってる…」
「それは…私とキスやセックスしたいって意味の?」
「…うん…でも、それだけじゃない…もっと色々…深く分かり合えたらなって思う…この先もただの友達じゃなくて…」
「そっか…」
「だから…俺と付き合って下さい!」
「うん…いいよ」
「本当!?」
「うん」
「嬉しい!有難う!」
そう言って友晴は私をぎゅっと抱きしめた
マコトとは違う、鍛えた逞しく男らしい胸板に抱きしめられて、汗の匂いとほのかにコロンの匂いがした
「アン…キスしても良い?」
「うん、良いよ…」
そう言って友晴はそっと口付けて来た
唇を重ねるだけの優しいキスだった
「俺…初めてキスしたから…ドキドキしちゃってる…」
「…うん、私も…」
私は何故か咄嗟に嘘をついていた
優しい友晴を傷付けたくない…
そう思っていたのかも知れない
顔を外らせて真っ赤な顔をして照れ笑いをしている友晴を見て可愛いなあと思った
友晴は家まで送ってくれた
「それじゃあまた、学校で」
「うん」
「また何かあったら連絡するけど…頻繁にはしないから」
「そう?」
「だって…アンに嫌われたく無いし…あはは」
「あれは好きでもない人からだからだよ?トモハルなら平気だよ」
「そっか…じゃあまた連絡するね!」
「うん」
そう友晴には伝えたけど、結局その後も友晴は本当に必要最低限にしか連絡して来なかった
恐らく勉強の邪魔になると気を遣っているのだろう
そう言う所も優しくて可愛らしいなあと思った
マコトがよく私に可愛いって言ってくれてたけど、こう言う事なんだなあと実感した
青春ですね
しかし杏は多少後ろめたい気持ちもあるのかな?




