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晏陰  作者: 水嶋
2人の出会い

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20/90

違和感

「ねえ、何でマコトに会えないの!?」


「分かんない…私も会わせて貰えなかった…」



韻が遅くにやっと帰って来て私に怒っていた


もしかしたら損傷が激しいのだろうか?


「明日お葬式するって…」


「うわぁーん」


遂に韻が泣き出した。泣きたいのはこっちだ…

この後火葬してお通夜などせず、形だけのお別れ会の様な家族葬で身内だけで行うと言われた


最後の姿を見る事は出来なかった



翌日、小さなセレモニーホールを借りて本当に型式だけのお葬式をした


参列者は私と韻とお爺ちゃんとあと…


「こんにちは、僕は八神先生と同じ病院で働いている同僚の田所と言います」


田所と言う男が来ていた


遺体等は無く、祭壇に飾られた花と遺影のみだった


その遺影を見たら韻がまた泣き出した


「うわぁーん!マコト!嫌だ!死んじゃったなんて嘘だー!」


まあ、他に誰も居ないが煩い…


「インくん、お菓子あげるから…落ち着こうね」


そう言って田所がお菓子を取り出して与えていた


「うぇっ…ヒック…うん…ヒック…」


泣きながらお菓子を食べていた。本当に子供だ…


その後韻も大人しく座って俯いていた

と言うより寝ていた。赤ちゃんかよ…



何とか式も滞りなく終わって解散となった


「またいつかきっと八神先生に会えるよ」


そう言って田所は立ち去った


会える…あの世でかな?

あと何十年後だろう…

そんな事をぼんやり思っていた


「ほら、イン、起きて!もう終わったよ!帰るよ」


「う…ん…あれ?僕…何してたの?」


「寝てたんだよ。さあ、帰るよ」


「えぇっ!?何で!?マコトにお別れ言えなかった!うわぁーん!」


そう言ってまた韻が泣き出した


寝た子を起こすな…


今度から韻がグズった時に与えるお菓子を用意しておこう


また一つ勉強になった




その後は暫く落ち着くまで韻は家に来ることになった


韻は私の家には初めて来た


「くんくん…何かアンの家地下施設と同じ匂いがする」


「まあ、母親も医者だしね。家は普段から定期的に消毒してるからね」


「何か落ち着く…」


「そう」


まあ、病院みたいな匂いで落ち着くのは韻が特殊な生い立ちの所為だろう


学校は1週間休む事になった


暫く慌ただしくてスマホを見る余裕が無かったが、何件か友晴から連絡が来ていた


『アン、大丈夫!?』


『うん、有難う。お葬式終わった。来週から学校行くから』


『何か困った事が有ったら何でも言って!』


『うん、有難う。また遅れた授業内容とか学校で教えて』


『分かった。インは大丈夫?』


『泣き喚いて大変だった。暫く家で預かる事になったから家でもインのお守りだよ』


『そっか、インが側に居るなら気が紛れるかもな』


『そうだね』


『じゃあ、また学校で』


『うん』


確かに…韻がいるから何とか持ち堪えてるのかも知れないなって思った





それから暫くして韻が怒鳴り込んで来た


「アン!これ見て!」


そう言って韻がスマホを見せて来た


「何、イン…うるさいなあ」


「いいから!見て!」


そう言って見せられた画面はニュースサイトだった



○○病院で勤務していた八神眞事(33)容疑者は患者の母親に口論の末暴行を働き逃走中に自殺を図り死亡


その他にも未成年の患者にも暴行を繰り返していた疑いが有り余罪を調べています



暴行!?マコトが!?

あの穏やかで優しいマコトから想像出来ない内容だった


詳しく見てみるとどうやら患者の母親をレイプして殺害、その他未成年の患者にも3人との「不同意性交罪」と児童ポルノ所持の疑いらしい…


何だか違和感があった


マコトが母親をレイプ出来るのだろうか?



「僕は子供の身体でないと反応…セックス出来ないんだ…」



マコトは以前私にこう告げていた


現にそれ以来マコトとはセックスしていなかった


あと、未成年の患者との不同意性交…


あのマコトが同意無しで無理矢理セックスするだろうか?


そして逃走して自殺なんてするだろうか…


マコトと私は考え方が似てると思っていた


いつも感情に抑揚が無く、他人に対して激しく怒り等をぶつける事も無い。そんなドラマチックな激情的な考えや行動にやはり違和感が有った



「こんなの絶対嘘だ!」



韻が煩く騒いでいた


韻ならやりかねないなって思っていた




それから漸く学校に復帰した



周りはニュースを見たせいかまるで腫れ物みたいに私と韻を遠巻きに見て何やらコソコソ言っていた


まあ、私は元々クラスの子と殆ど関わりを持って居なかったから気にもならなかったが…


韻はいつもの元気が無く俯いて大人しかった




「おはよう、アン、イン…何か大変だったな…」


友晴だけはいつも通り話しかけてくれた


「まあね、私よりインが大変だったよ。大騒ぎで」


「そっか…まあ、1人で居るより煩い位のインが近くにいた方がいいかもな」


「まあ、そうかもね。それより休んでた間の授業の内容、後で教えて」


「うん、分かった…」


友晴も韻の様子を見てどう話しかけるか考えあぐねている様だった


韻もいつもの様な女の子に突撃も無く大人しかった


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