杏の理解
「わあ!あれ何!?」
「桜の木だよ」
「木がピンク色だあ!ねえ、あれは!?」
「チューリップって花だよってもう!ウロチョロしないでイン!」
入学式早々韻は目が離せなかった
気を抜くとすぐ何処かへ行っている
「マコト!私インの世話無理だと思う!」
「あはは、インはずっと外に出られなかったからね…色々珍しくて楽しいんだよ。その内落ち着くと思うから…アン、お願いね」
「…」
マコトにそう言われると断れない
私だって1年ぶりに学校で楽しみたいのに…
あの病室であった子、韻は自分の弟でこの春から同じ中学に同級生として通う事になった
韻は指が6本で生まれた為に今まで地下施設で隠されて育てられていたと聞かされた
私も存在を教えられていなかったので知らなかった
マコトが説得して地下施設から出してあげたらしい
入学式には宮乃は来ずにマコトが私と韻の父兄として来てくれていた
忙しかったのもあるだろうが、本来の父親であるマコトに任せたのだろう
私は韻から目を離せなくて誰かに声をかけて友達を作る暇が無かった
いっそ首輪でもつけてうろちょろしない様にリードを握っておきたい…
「ねえ、名前なんて言うの?僕はイン、仲良くしてね!」
早速韻が女の子に突撃していた
「私は麻由。インくん…宜しくね」
「マユちゃん…可愛いね!この後僕と気持ちよくなる遊びしない?」
「えっ!?」
「こら!!イン、やめなさい!」
韻の首根っこを引っ張って引き寄せた
コイツは目を離すとすぐ女の子に声をかけていた
「マコト!インに避妊は教えてる!?」
「あぁ…そう言えばまだちゃんと教えてないかも…」
「早急にお願いします!このままじゃ入学早々退学になっちゃうよ!」
「うん…分かった…ゴメンねアン…」
入学式の日早々に私は韻とマコトを叱っていた
クラスは韻と同じだった
どうやら学校にお願いしている様だった
長い間学校に行けていなかった韻の事情を色々捏造して学校に説明していた
学校には知らない間に外でこっそり生まれた生き別れの私の弟で、戸籍も無く世間から隠されて育っていたのを見つけ出して養子に引き取ったと言う事にした様だ
その為、今まで学校にも行けず殆ど他人と接する機会がなく、一般常識が欠けている部分があるから姉の私がついて面倒を見ると言う事になっていた
まあ大まかには正しい内容だけど…
韻はこの学校を一般入試で受験して合格したので勉強は出来るみたいだ。多分頭は悪くないんだろうから早いこと常識を身につけて落ち着いて欲しい…
そう、韻は勉強は出来て成績は良かった
私も医者を目指して頑張っていたので成績は良かった
順位も私と韻は上位5人の中にはいつも大体入っていた
韻はあの感じなのですぐにクラスの子達と仲良くなった
仲良くなり過ぎた子…女の子も何人か居たけど…
私の方は何かと韻がおかしな行動をしてると注意して叱っていたのと歳が1つ上という事もあってなんだか怖がられてるというか距離を置かれている感じがしていた
中々仲良くなれる友達も出来なかった
そんな風に過ごしていた時にマコトに言われた
「学校生活はどう?慣れた?」
「うん…相変わらずインの子守ってか見張りで中々友達が出来ないけど」
「そうなの?」
「うん…多分私がいっつも怒ってるから怖がられてるんだと思う。歳も皆より1つ上だし…」
「そっかあ…アンには苦労かけちゃってるなあ…ゴメンね」
「いいよ。別に友達とか出来なくても…勉強頑張るから。医者になりたいんだし…」
「でもね…アンには友達や好きな人…恋人を作って欲しいな」
「友達や恋人…」
「僕は学生の時に兄弟みたいに思える親友が出来たから。そいつがいたから色々頑張れたしお互い影響し合ったし、僕自身が知らなかった事…大切な事に気付かせて貰えたりしたよ」
「そうなんだ…」
「アンは僕や宮乃のお願いを聞いてくれてインの面倒をちゃんと見てくれてる。アンは真面目で優しくて良い子だから、きっと良い友達…親友が出来ると思うよ」
「うん…」
「まあ、僕は八神家の使命もあったし、恋人は作らなかったけどね」
「そうだね。私もそうなると思う…」
「僕は先祖から託された使命は遂行するけれど…ただ…」
「?」
「アンはこの先どうするかはアンが決めれば良いと思うんだ…僕は八神家の使命をアンに強要をするつもりは無いんだよ」
「…」
「僕はアンが学生の内はアンに子供を作らせない様に僕の父に言ってるし、そうするつもりなんだ。また出産で休学とかなると大変だし」
「うん…」
「僕は…大人になったアンとはもうセックス出来ないと思う」
「そうなんだ…」
「僕は子供の身体でないと反応…セックス出来ないんだ…」
「そう…」
「でも、杏の事を嫌いになった訳じゃなくて、僕はずっとアンの事は大好きだよ」
「うん」
「この先僕の父はアンと僕の受精卵をドライとフォウに着床させて産ませて行くと思う。まだ御月や宮乃の卵子も保存してあるから、僕や僕の父と掛け合わせてくとも思うけど…」
「そう…」
「だからアンには好きな人…愛する人が出来たら八神家の使命を反故にしてその人と結婚して子供を作っても良いんだよ」
「愛する人…」
「まあ、僕の父が色々言って来そうだけど…その時は僕が何とか説得してあげるからね」
「うん…」
マコトは私の事を思って言ってくれてる
優しさから私を八神家の使命から解放してくれようとしている
それは分かっていた
けど…
マコトにもう私とはセックスをしないと言われて
大好きなマコトになんだか突き放されたような…
そんな寂しい気持ちになっていた




