授業は終わらない
こんなにもどかしい気持ちになるなんて。
さっきの自分の失態が恨めしい。
チャイムが鳴るまであと、
五、
四、
三、
◆
「植田くん、ここの問の答え教えてください」
「えっと……」
先生に指名されても、早弁のことばかり考えていたからわからない。とりあえず手元の教科書を見よう、と思ったところで教科書が閉じてしまったことに気づく。
小学生のころの先生が、教科書が配られたらすぐにはじめのページを強く開くように、と言っていたのを思い出した。そう言えば、まだしっかり開いていなかったような気がする。
「で、植田くん?」
「えーっと…」
「初回から聞いてないとか、ねえ。わからない?わからないなら仕方ないけど」
先生が聞いてきたので頷く。ごめんなさい。これからは真面目に受けます。
「じゃあ、伊賀くん」
「わからないです」
即答。こういうとき充ってすごい。
「じゃあ前いって、飯川さん」
「はい。まだまとまりきってないんですけど…」
その前置きはどこへやら、飯川さんはすらすらと幕府の限界と大政奉還の話をし始める。すごいな、とどこか他人事のように思いながらノートに書いていく。
ふと、気まずくて下げていた頭をあげる。気づいてしまった。
チャイムが鳴る。あと十秒で。
飯川さんの話はやっと終わりそうというところ。これからまだ先生の話は続きそうだ。
飯川さんの答えが良くて、途中から既に先生が饒舌なのだ。
僕が、当たり障りのない答えをすぐに言っていればよかったのに。こんなにもどかしい気持ちになるなんて。
さっきの自分の失態が恨めしい。
チャイムが鳴るまであと、
五、
四、
三、
ニ、
一、
授業が終わったのは、五分後だった。次は移動。僕はまた食べ損ねた。




