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そして僕とエルフは簡単に倒せると思っていた、すぐに経験値に変換される運命だろうと舐めてかかった魔物相手にボコボコにされて全滅して気が付くと村の教会で勇者よ死んでしまうとは情けないとかいうお前誰様目線やねんと逆ギレしたくなるセリフを神父さんに言われてなんとか復活したのだった。ちな、僕の近くにはおそらくエルフのご遺体が収められているであろう黄金の棺が置かれていた。このクッソ重そうな棺を体育の成績万年『0』の僕が引きずって移動しなきゃならないってマ? ちな、体育の成績が『0』なのはネタではなくマジで、成績表にそのような1以下のマイナス評価を烙印されてしまったのは僕が体育の授業スケジュールを全キャンセルしてそれにブチ切れた体育教師の顧問が僕の成績の評価を拒否、つまり『0』評価をしたのである。つまりあの体育の顧問は、大人気とはいかないがそこそこ人気の個人女性VTuberの配信が直前になって急遽キャンセルされたことで不機嫌になってそのやりきれぬ怒りを晴らすためにそのVのTwitterのリプライに『どうせ男が遊びに来たんだろ』『日々コンテンツを消費するのに忙しい現代の飽きっぽいリスナーを裏切り続けてるとそのうち見捨てられるんだよなぁ』『大手箱に同接並びたいんだろ? そんなんじゃ甘いよ』とネチネチ不満を書き込むようなみみっちい性格をしていたのだったのだ。冗談抜きで僕のクラスの担任は外見筋骨隆々の爽やかスポーツマンタイプのくせして自分に何か嫌なことが降りかかるとそんな感じで必要以上にマイナス方面に精神が傾くタイプだった。陰キャガリ痩せクソメガネの僕は意外とそういうネガティブ思考ではなくて、なんか嫌なことがあるとまあ適当でいいや、めんどくせ、人生なんか生きてるだけでまるもうけだし(偉人の名言の都合のいい解釈)、と開き直るタイプだった。要するに誰かに悪口や陰口を叩かれても、あっそ、君って暇なんだね、としか思わなかった。というのも、世の中に腐るほど溢れている無料で楽しめるエンタメコンテンツを消費するのに急がしすぎてどうでもいい奴らからの視線なんか気にしてる暇なんかないんだよなぁ。TwitterやYouTubeのチャット欄で変な奴に絡まれたときはケンカなんかせずに即ブロックすれば済む話だし、教室にいる嫌なクラスメートは脳内ブロックして見えないもの扱いすればいい話だし、現実逃避する手段が溢れる現代に生まれてよかったああああああと世界の中心で僥倖を叫んだ方が人生充実すると思われますね……。
で、その無限に溢れる無料エンタメコンテンツに耽溺して現実逃避し続けた結果、どうなりましたか……?(小声)その結果は言うまでもなく中毒患者の末期、つまり社会不適合者の爆誕であり、端的に言えば引きこもりのニートだった。それが僕の本当の設定だった。つまり先述した『この物語は僕が授業中にノートで書き殴った痛い小説』というのは嘘で、実際は人生に敗北して絶望する氷河期世代の書いたクソみたいなネット小説だったのだった……。えぇ……何その唐突トンデモ設定は……(心底ドン引き)。
「勇者よ、そなたの仲間を復活させるのかさせないのか、早く決めよ。狭い敷地にその黄金の棺はいささかうざすぎる。可及的速やかに退去せよ」
脳内でいろいろな妄想に耽っていたら僕の目と鼻の先まで顔を突き出した怒り顔の神父さんが虫歯もないきれいな歯だからなのか老人だというのにまったくの無臭の口臭を僕の顔に吐きかけながらそう抗議してきたのだった。
「すいません許してください、なんでもしますから」
とりあえず僕は定石的な謝罪で以て謝った。これが定石かどうかはいささか疑問だがニコ動ではまだ使われる素材だし、多少はね?
「ん? 今何でもすると言ったか?」と神父も乗ってくれた。「では教会に114514ゴールドを寄付せよ。さすれば私が復活させてしんぜよう」
「114514!? ぼったくりやろ! ふざけんな!」
しかし言われみると上級神官だか高級神官だとかいうエルフちゃんの御霊を肉体に戻す儀式にかかる費用はそのくらいすると思われ。じゃあなんとかして工面してやろうかな、この教会ボロいし、修繕費用を寄付するのも悪くないっすね……。
「はい、神父に無礼な口を利いた不敬罪の免罪符代として復活にかかる経費を1145141919072ゴールドに値上げしますね」
ところが神父は不遜な態度でそう言った。
人が寛容な心を示そうか思った矢先にこの詐欺神父はこれだよ……。
「じゃあエルフは諦めますね」と実は性欲が薄い僕はそうそうに諦めた。「ワイ、元々根がロンリーウルフにできてる質だからなぁ、ソロでこのゲームを攻略することにするよ」
「それは無理だな」だが神父は言った。「お主が今から攻略しようと試みている魔物の洞窟にはザコ敵が約千体ひしめいている。三國無双の猛将でもなければお主一人でそれを攻略するのは不可能だ」
「あ、無双シリーズなら全シリーズ制覇したから大丈夫、全部イージーモードでだけど。じゃけん最初のダンジョンくらいなら適当に□□□△のコンボ連発してるだけで勝てると思うから」
「残念ながらこの世界の難易度設定はノーマルだ」
「なんやて!? ちょっ……僕はゲームやるときは絶対に1000%イージーにしないとクリアできない超ゆとりなんだぞ! もう意地でもゲームで苦労なんかしてやるかクソ! っていう気持ちで金払ってゲーム買う僕のことをなんだと思ってんのお前ら!? ふざけんなよ誰がゲーム如きでつらい思いとか苦労なんかするかよそういうのは現実で懲りてんだよだいたい金払ってわざわざハード設定のゲームプレイして苦労する奴の気が知れねーんだわなんなんあいつら得意気に自分のスーパープレイの動画上げていいね押しまくってもらって承認欲求でも満たされたいんか」と僕が絶望してぶつくさ言ってると、
「安心せよ」と神父は特に人を宥める声色になったわけでもない口調で言った。「この世界の戦闘システムは1フレーム単位で入力がシビアなアクションゲーなどではなくオーソドックスなコマンド選択式形式だ」
「あ、なるほどね。そういや最近リリースされた某銀河列車RPGもこの令和の時代でしかも世界を相手に商売している今注目のメーカーだというのにバトルシステムにコマンド選択式を採用してましたね……。やっぱり評価され続けるいいシステムは流行に関係なく再採用されるんやなって。ちな、その某銀河列車RPGはドラクエみたいなターン制じゃなくてFF10みたいなカウントタイムバトルだぞ、と。まあプロデューサーが軌跡シリーズの大ファンらしいからFF10を参考にしたわけじゃないだろうけどね。ちな、そのFF10のカウントタイムバトルは多分ドリームキャストの神機世界エヴォリューションの戦闘システムをパク……参考にしてると思うんですけどお前どう思う?」と僕が神父に尋ねると、
「知らんがな。あとお前また無礼な口利きやがったから免罪符代追加しておくぞ」と神父はほざきやがった。
「いいですよ、どうせもうエルフなんか復活させる気ないし」
僕が以前口にしたエルフを嫁にする云々の発言は結局この手のウェブ小説的な主人公の定石だからそれに則って適当に口にしただけだったのさ。文句あっか。
「私ならとっくに復活してるんですがそれは」
ところがエルフちゃんはいつの間にか僕の背後にいたのだった。
「なんでお前おんねん」と僕は振り返って尋ねた。
「メインヒロインたる私が死んだと思ったら実は生きてました、となるとあなたは動揺して今後の戦いに支障が出ると思いましてね、死んだふりして実は他の場所にしばしば隠れていました」
「なんやねんその幻想水滸伝2みたいな話」と僕は呆れた。
ところで水滸伝1・2のリマスターが決まったのはいいけどパロディウスシリーズもBGMをオリジナルのままで現行機に移植して、どうぞ(無茶振り)。
「というわけで一緒に洞窟攻略しましょうか」
とにかく二人で楽してダンジョンを攻略できるようになったのはありがたいのでそのありがた味は享受してやることにした。ちな、時間をかけてダラダラレベルを上げまくって敵に無双するタイプの僕はどこぞのおやつさんみたいにひたすら楽して攻略するために最小戦闘回数クリアの実現目指して掻き集めた精密な攻略データを頭をフル回転させて子細に検証するような根性や熱意はサラサラないのでやはり味方は一人でも多い方がいいっすね。じゃけんさっき言った根がロンリーウルフとかいう急逝した文豪のパクリ文言は撤回しましょうね。




