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異世界未転生  作者: ハタケ


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 結果的にその安全な村に着くまでの間に四回もエンカウントし(クズエンカスギィ!)、その度に肉壁役の兵士達が――より正確に言うと疲労で戦う意欲がなく肉壁としか活躍できなくなってしまった兵士達が命を落としていくのを僕は横目で見守るしかなかった。しかしその場面はなぜか残酷ではなかったし、これといってグロ的な演出もなかった。というのも、彼らが魔物に殺されて息絶えるとき、まるで掻き消えるようにしてその存在が消えていったからだった。何を言っているのかよくわからないが、わかりやすく例えると昔のゲーム的な演出で消えていったのだ。つまりフェードアウトである。これはこの世界が実は僕の頭の中で創り出したゲームの世界でした、とかいう稚拙なオチだからではなく、トラウマになるのを未然に防ぐために目の前で展開されるショッキングな場面を僕が脳内補正でゲーム的な表現に置き換えたのだろう。つまり今まで無駄にレトロゲームについて語ってきたのは一種の伏線だったのだ。そうすることによって、『僕がレトロゲームマニアだからいわゆるゲーム脳(笑)のような状態になっていて非現実的な場面を目の当たりにするとすぐさまドット絵時代のシンプルな表現に置き換える体質である』というキャラ付けができるし、読み手に、『この世界は誰かが作ったゲームの中の世界』という考察の機会を与えることができる。ちなみにこの世界は誰かが作ったゲームなどではないし、もちろん僕が本当に死んで異世界に転移したわけでもなく、要するに陰キャで低能で授業中は居眠りか痛々しい小説を書くしか能のない僕がある日の授業中に大学ノートに書いた落書きの中の世界なのだ。つまりこの物語は、『誰かが作ったゲームの中の世界』という設定以上に稚拙な設定なのであった。文句あっか。冒頭で『僕はラノベアニメマンガVTuberといったオタクコンテンツを嫌っている』とか述べておきながらなぜこういったなろう的な物語を書こうと思い立ったかというと、ある有名VTuberが十数年前に作ったRPGツクールの自作品を他のホロメンに(あ、ホロメンって言っちゃった! てへ!)配信内でプレイさせるという自分の内臓を掻き回されるような苦行を、リスナーを楽しませるその一心で敢行するというそのサービス精神やプロ意識に僕は非常に感銘を受けたので以前は心底からバカにしていたなろう的な物語をメモ程度でいいから書いてみようと思い立ったのだった。なんか因果関係成り立っていないような気がするが、まあ低能な僕に理論的な説明は不可能なのでこのまま主観だけで以てこの先もつらつらと自己弁護やら自己正当化やら自己美化とやらをしていきますね……。こういう大物インフルエンサーに触発されて自分も何かやってみるというのは僕のような落ちこぼれ中学生が先生に認められ得る一つの手段になり得るし、それで何か成果を上げようものなら内申書にいいこと書かれそうなのでゆくゆくは現代のドン・キホーテと呼ばれるくらい評価されるかもしれないと期待して顔がにやけたり涎を垂らしたりしないよう抑制しながら是非ともこの授業中にこの物語を完成させようと思う。ついでに言うと落書きをしているのを先生にばれないように注意しなければならない。というかこれが一番重要だと思う。というのもバレたらそこで試合終了だからね、しょうがないね。


「あのー、すいません。死体運ぶの手伝ってもらえませんかね……」

「え?」

 僕が脳内でいろいろ地の文を展開させていたら損傷の激しい兵士達の死体を村の端の墓地に荷車で運んでいるエルフから批難の目を向けられた。このエルフが僕に対してこのような冷たい視線を向けたのは初めてのことで、それはこのメインヒロインの僕に対する好感度が下がったことを意味した。なんとかしてエンディング後に色白で超絶美人のこのエルフと然るべきエッチシーンに突入したい僕としては好感度を下げる選択肢はなんとか避けたかったので、

「すいません許してください。魔物達に惨殺されてバラバラになった兵士達のご遺体を今すぐ運びますから」と言って、突然来たよそ者に渋い表情を向けている村の人から荷車を借りて草原のあちこちに散らばってしまった兵士達のパーツを必死になって集めたのだった。根が極めてビビりにできているこの僕がこのような酸鼻な作業をどのようにして耐えたかというとそれは先ほど述べた色白美少女エルフとの然るべきムフフなシーン(表現古スギィ!)を脳内に浮かべることによって、つまりエロいことを考えることで幽霊が自分に悪さしてくるのを防ぐような要領で以て一般人には到底耐えられないこの作業――例えるなら人身事故の現場処理をこなしていったのだった。

 そうして三十人の兵士達のご遺体は今の所魔物に一度も襲撃されたことのないこの平和な村の端っこにある小さな墓地に山のように積まれてしまったのだった。そして早速今夜のご馳走にありつけると狂喜するしかるべきハエ・ウジにたかられる仕儀となったのだった。そして更に魔物はもちろんよそ者の来訪すら歓迎していないであろう村人達は僕たちに批難の目を向けまくっていた。どうするよこの状況……。

「皆の者! 聞きなさい!」

 すると自称上級神官のエルフちゃんが村人達に偉そうな口調と身振り以て演説を始めた。おいこれ以上彼らの機嫌を損ねるなよ……。

「ここにあらせられるのは世界を救う力をこの世界で唯一持った男、つまり勇者様です! その偉人に対してそのような冷たい視線を向けるのはおやめなさい! やめないというのならこの勇者様の怒りのブロンズソードがあなた方の頭蓋骨を粉砕しますよ!」

 そしてエルフはものすごいわけのわからないことを喚き始めた。

「なんかもうついていけなくなってきたんだけどさ、そういう人生に失敗してコンプレックスまみれになった寂しい中年男みたいにみんなが俺をバカにしているんだと妄想して目が合った通行人に難癖付けるみたいなこと、僕はしないからね? ていうかいきなり死体遺棄した僕らの方がどちらかというと悪いと思うんですけど」

 すると一人の白髪の老人が僕の前に出てきて、

「いえ、こちらの亡くなった方々は我々一般市民を守るために魔物と戦ってくださった英雄ですので我が村でしめやかに埋葬させて頂きます」

「誰だよ」と僕は例の音声を脳内で再生しながら言った。

「私が村長です」

「あ、ふーん」と僕は、『そこは私が町長だルルォ!?』などといった無粋なツッコミを入れたりはせずに、「アリシャス」と適当に例を言った。

「ところで今日の宿はお決まりですかな」と村長は言った。

「宿も何もこれからどうするのか――それどころかこの世界の状況や趨勢すらよくわかっていないので、ぶっちゃけ手持ち無沙汰っすね」と僕は答えた。

「なるほど。では私の家にお邪魔しては?」と村長は言った。「何せ七十年も生きてきたくせに結婚はもちろん恋愛すらしたことのない寂しい人生でしてな……。人肌――いえ、人のぬくもり――いえ、人との交流に飢えているのです。我が家は一部屋しかなく、ベッドも一つしかありませんがそちらのエルフさんも合わせた三人で眠ることが可能なくらい我がベッドは巨大なサイズです。というのも村人達から徴収した年貢によってお金だけは腐るほどありますからな。ベッドだけはこの大陸一の代物なのです。しかしそのベッドはあばら屋のような狭い家に置いておくには分不相応なサイズですので家の中は身動きが取れないくらい狭くなってしまいましたがね、ハハハ」

「なにわろてんねん」と僕は言った。「申し訳ないが僕は一人でゆっくり眠りたい主義なのであなたの家に泊まるのはNG。ていうか誰かと同じ部屋で寝るのも嫌ですね。いびきはもちろん、他人の寝息を聞くだけで鳥肌が立つ質なんですよ、僕は」

「なるほどそれは現代人特有の性質ですね」

「なんでお前が現代人の性質とか病理だとかを判断できるんですかね。それにこういうのは世代云々じゃなくて性格の問題だと思うの。僕の父親も僕と違わず神経質で、夫婦で同じ部屋で寝たのは子作りの時だけだったらしいからね」

「神経質な性格してますね。それではあなたも将来子作りの時に難儀するということでしょうか」とエルフは幾分残念そうな表情で言った。

 つまり彼女は優秀な勇者の遺伝子を持ちし僕と密かに性交したいと思っているらしい(ご都合解釈)。僕としてもこのような美白美少女とそのようなしかるべき行為に及ぶのはやぶさかではないが今はさっさとこの面倒くさい物語を終わらせたいと思っていた僕はたいして好きでもないのにオープンワールドRPGをやり始めたにわかゲーム好きのようにサブクエストをほとんどスルーしてメインクエストを淡々とこなす駆け足プレイのような要領でストーリーを進めるべく、

「とりあえず宿を紹介してください」と僕は村長にお願いした。「あ、宿は必ず風呂付きで! 遺体を取り扱ったので疫病が心配で……」

「まかせてください。この村は温泉だけが取り柄なので」

 そう言って村長は村一番の宿に僕らを案内した。

 その途中で僕は、

「宿に泊まっている間にこの世界の設定とかその辺のことを知りたいんですけど誰に尋ねればいいんですかね」と村長に尋ねたが、

「そういったことは村のあちこちにうろついている人々に○ボタンで話しかけて情報を得ればいいのではないですかね」とにべもなく言われたのだった。

「お、そうだな」と僕は言った。と同時に感心した。何に感心したかというとこの村長が僕のことを任天堂派ではなくPS派だと一発で見抜いたことだった。別に僕はゲハの住民だとかそんなのではないけどPSの方が肌に合っているのでプレイするゲームはもっぱらPSというだけだった。そしてもう一つ感心したのは例え世界基準が国内ハードにも――つまりPS5にも適用されようとも僕が決定ボタンを×ボタンではなく頑なに○ボタンに設定していることを村長が見抜いたことだ。申し訳ないが生粋の日本人プレイヤーである僕が×ボタン決定に慣れることは(一生)ないです。

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