表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界未転生  作者: ハタケ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

11

 そうして僕はこの世界に完全に飽きたことを認めたのでようやく現実世界、つまり学校の授業中の時間に戻ったのだった。

「しかしお前の居場所はもはやなかったのだった」

 しかしそのとき冴えない中年の男の声が僕の耳朶を震わせたのだった。もちろん耳朶、つまり耳たぶが人の声程度の音量で震えることは皆無なので、もし音のみでしかるべき耳たぶを震わせたければロックコンサートに置かれている巨大スピーカーに目と鼻の先の距離まで耳を近づけたりしなければなからないと思うが、冴えない中年の男が僕に対して非常に時代遅れなハブり言葉を投げかけたというその攻撃的な精神波動が僕の耳たぶを大いにぶるぶるさせてしまったのだ。つまり言葉の暴力である。しかし今の僕のように言葉の暴力に傷ついてしまいました、訴訟、とこの苦しみを他人に訴えても大抵は、言葉で何を言われようが気にしなければノーダメージだと思うんですけど(名推理)、と言われてしまうが、たしかに言葉なんて言われた方がいくらでもいいようにも悪いようにも解釈できるからお前の居場所はもはやない=お前のような落ちこぼれはこの教室にいる資格はない、と解釈して一人で悩んで傷つくよりも、お前はこの平凡な学校にいるような逸材ではない、もっと上を目指すべき人間だ、と都合よく解釈して悦に入った方が精神衛生上は健全かな、と解釈し、わかりました、どうやら僕は学校でこのようなクソつまらない授業をダラダラ聞いているより家に帰ってYouTubeチャンネルを開設して学校なんか行くだけ無駄、とイキりまくった動画でも上げた方が注目度は集まるし広告収入はガンガン入ってきて大金持ちにはなるしでいいこと尽くめなので早く帰って宿題しなきゃ、とウキウキ気分で下校するひでのような面持ちで以て張り切って家に帰ろうかなと思います。もちろんその際は虐待おじさんに遭遇しないよう細心の注意を払いますとも。とにかく僕は教師の分際で一生徒をバカにするようなみみっちい大人と同じ空気を吸いたくないので早々にここから立ち去りますね、と僕はリレミトを唱えた。だが実際の僕はそのしかるべき呪文を唱えた後に学校の出入り口付近まで一瞬で移動したわけではなかった。気が付いたら僕は学校校舎の二階にいたのだった。ちなみにさっきいたのは三階の教室だった。ようするに僕が唱えた呪文は一階層だけ移動するだけのものだったのだ。つまりデジョンである。で、しょうがないから僕は二回デジョンを唱えて外に出たのだが、このまま家に帰ると新人賞の規定枚数まで届かないまま物語が終わってしまうのでやっぱり学校に戻ったのだった。が、やっぱりこんなカス以下のゴミ物語なんかそうそうに打ち切りにすべきだな、と思った僕はさっさと家に帰るべくルーラを唱えようとしたのだがコマンド選択ミスでデジョンを唱えてしまい、そして僕はなぜかベッドが一つ置かれているだけの謎の暗黒空間に飛ばされてしまったのだった。つまりFF3のエウレカの宿である。というわけで教室に戻ってきたのだが弱い者を社会に放出させないようにするためには落ちこぼれの生徒を学校から排除する必要があるという信念を抱いているという時代に逆行するどころか反逆すらしているロックな教師のお陰で僕の席は文字通り排除されていてそれどころか僕が一所懸命綴った異世界冒険譚(笑)で埋め尽くされていた大学ノートも教室のどこを見回しても見当たらなかったのでこれはどうやら捨てられたようですねと絶望的になったのだがノートがないのなら床に書いたらいいじゃない、というアントワネットの声が脳内に響いたので僕は僕のことを駆逐すべき社会的ゴキブリ扱いした教師が眉間に皺を寄せこめかみに血管を浮き上がらせて熱血的な授業を行っている最中の教室に這うようにして忍び込みそしてポケットから油性ペンを取り出していい匂いがしそうな女子の足下の床に新たな冒険譚を書き始めたのだった。その際いい匂いがしそうな女子の生足を拝むことはできなかった。というのもこの学校は多様性を認める方向性で行く方針だったので女子もズボンを選択することができたのだった。

 とにかく僕はまた再び再度異世界へと旅立つことが自ら発した権限によって許されたわけだが問題はこれから一体どういった物語を展開させればいのか、といった可及的速やかに解決されるべき懸念材料をどうにかして処理しなければならぬという問題が今以て我が脳内にぐるぐると巡り巡っていた。これらの問題を早く処理、つまり体から排出させ、僕はこれをご覧になっている皆様に、はようクソ物語まみれになろうや、と呼びかけたいのだが教師が僕に評価を下したように僕は人並みにものを考えられない質なので僕を導いてくれる誰かが都合よく突如現れない限りそれは難しかった。

「というわけで私がまた再び再度参上しました」

 そしてあのエルフちゃんが我が眼前に降臨したのだった。

「出たわね」と僕は言った。

 ちな、僕はこのセリフの元ネタを何かのアニメだと長年誤解していたが全然違ったのでショックを受けたゾ。元ネタが何か知りたい人はググって、どうぞ。ところで匿名掲示板やYouTubeやニコ動のコメントでネットスラングの元ネタを質問する人がいるけどお前今ネットに繋げてる状態なんだからコメントで他人に質問するより質問の答えを一瞬で返してくるグーグル先生に尋ねろよ、とそういうのを見かける度に思いますね……。ああいうのは多分誰かと繋がりたくてしょうがないんでしょうね。僕は結構です。一人で楽しい人生を送る、それが我が人生。

「ということは私も必要ない、と」

 僕の心を読んだエルフが言った。

「いいえ、必要です」と僕は慌てて言った。「どうにかして僕をすばらしきファンタジーワールドに導いてください。オナシャス」

「言っておきますがすばらしい物語が展開する輝かしい舞台を用意するのは私には少し難しいですね。というかほぼ不可能です」

「え、それってどういう」

「なぜって私にはその能力がありませんからね。私が所持している能力、それはあくまでもあなたをこの微妙すぎる世界に転移させることそれのみ」

「なるほどね。ということは物語そのものは自分自身で作りなさいと。でもそれができないから最近夜も眠れず昼寝もあまりできずにイライラしてるんだよね。だから誰か面白い舞台を作って、どうぞ。あ、そうだ(唐突)。物語が作れないんだったらあらかじめ存在しているテンプレ物語を引用すればいいじゃない。今そういう天啓が僕の脳内に降臨しましたね。サンキュー、マリー。というわけでこの世に推計一万パターンほど存在するファンタジー物語のテンプレプロットを丸々引用したいと思うんだけど、何がいいですかね。やっぱり僕は、王道を往く、ドラクエ系がいいと思うんですけど」

「規約違反で削除されたいのならどうぞ」

「やだ怖い……でも魔王勢をなんとかして倒すっていうその目的だけはパクらせてもらいますね……もはやアイディアがないんで」

「それは結構ですけど、でもそれって本当にあなたのやりたいことなんですか? 異世界を救うことで自分も救われよう、という自分の人生の窮状を打開するための現実逃避のような勘違いな努力をしているように思われますが」

 エルフは意外な質問を僕に浴びせてきた。そんな心の本質をえぐり出すような質問よりエルフちゃんの聖水を浴びたいなー俺もなー。

「ところであなた、なんか日本語変じゃないですか?」

「ここが変だよ日本人はとっくに放送終了したんですがそれは」

「えぇ……誰もそんな話してないんですけど……」と僕は軽く引いた。「なんか話が通じてないけど、この物語の序盤でも話し合ったように、やっぱりこの世界の魔王をなんとかするのが今の所は僕の人生でクリアすべき課題だと思うんですよ。で、これが片付いたらいよいよ現実世界の諸問題に取りかかる、と」

「ちなみに現実世界の諸問題ってどういった感じのものですかね」

「えーとまずは、僕を殺処分すべき劣性遺伝子だとバカにする担任教師をダストシュートに叩き込んだ後に焼却炉に放り込んで弱火で長時間苦しませた挙げ句に焼き殺すことですね……」

「それより勇者様、自分の体を見てください」

「はい? ……あっ!」

 僕は自分の体を見た。なんかワイの体、魔物みたいな色になっとるやん。

「これって一体どういうことですかね……。もしかして魔物みたいな発想が頭に浮かんだから体も魔物化したとか、そういう陳腐な設定が発動したとかそういったことですかね」

「まさにそれですよ勇者様」とエルフは無表情で言った。

 彼女は相当やる気がないらしい。(俺も)ないです。

「えぇ……じゃあムカつく奴を殺してやる! みたいなダークサイド的なことを考えていると今度は僕が魔王勢に加入することになって、そして現実世界から異世界へとやってきたアホそうな勇者様に退治されてその後僕はそのアホそうな勇者様がハーレム生活しているのを魂の状態で眺めるしかなくてぐぎぎぎぎって感じでほぞをかむのかな?」

「そうですよ。だから悪いことは考えない方がいいですね」

「でもあの教師はあんなひどい差別発言を僕に投げかけたのになんでまだ人間の姿を維持してるんですかね……。あいつこそ魔物化してしかるべき勇者に倒されてればいいと思うんですけど」

「それはその人があくまでも現実世界の人間だからですよ。だって現実世界の人達ってどんな凶悪犯でも人間の姿のままじゃないですか」

「お、そうだな。あ、そうだ(唐突)。じゃけんあの担任をここに引きずり込みましょうね。そうすればあいつは一瞬で魔物の姿に変わると思うんですけど(名推理)」

「いえ、それは無理でしょうね。だってこの異世界には自分の意志で来るしかないですからね。誰かを無理にここに来させることはできません」

「あなた僕をむりやりここに来させたじゃないですか」

「私はあなたが創り出した虚構の存在なんですがそれは」

「お、そうだったな。あ、そうだ(再唐突)。なんか急に体調が優れなくなってきたからこの物語を打ち切っていいですかね?」

「どうぞ」

「ああ具合悪い……どうしてこんな体がダルいのやら……」

「それは現実世界のあなたが殺処分されかかっているからですよ。だから早くどうにかした方がいいと思いますよ……」

「え、それって」


 その瞬間、僕の意識は途絶えた。


 つまり僕はあのヤバすぎる思想を持った担任に殺されてしまったのである。あの担任は授業を真面目に受けない僕を蛇蝎の如く嫌っていて殺意すら抱いていた、ということが後に彼が法廷に立ったときに判明した。そして彼は殺人罪で実刑が確定したのだが、要するに僕が倒すべき敵――つまり魔王は、僕の存在を否定するような選民思想の排斥主義者だったのだ。異世界になんかに逃避せずにそれを早く理解すべきだった。

 ちな、僕を殺した犯人は他にあと数人いて、将来ラノベ作家(笑)になろうと懸命に努力しているワナビ君と、親のクレカで推しのVTuberにスパチャ投げまくっている依存症系Vオタが含まれていた。彼らはラノベ作家志望やVオタを普段からバカにしている僕に長いこと殺意を抱いていたらしい。

 ちな、僕がどのようにして彼らから殺されたかは僕自身もわからない。だってそのとき僕の意識は異世界にいたしね、しょうがねいね……。


 完。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ