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族長の決断
「……天の使いに似ている、か」
ザルグ族長は重くつぶやいた。
アークの扉に浮き彫りにされた一対の像。
それは千年の間、開かれたことのない“神の箱”の象徴であり、部族の誇りでもあった。
「ならば──一つ、試してみる価値はあるな」
「父上、やめてください」
リャーナの声には、普段にない強い感情がにじんでいた。
「今まで挑んだ者は皆、文字を書いた瞬間、炎に包まれて消えました……!」
「知っている。それでも構わん」
ザルグの目が細くなる。
「どうせあの小僧に生きる価値などない。ならば、せめて“鍵”として試してみろ」
娘は拳を握りしめて、黙った。
逆らうことはできなかった。