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プロローグ 追放の朝

 昨日までパーティの仲間と朝を迎えたはずなのに、今俺と共に朝日を浴びるのは酒瓶と謎のオネエだ。


 空になった酒瓶が朝日を受けてキラリと光る。カウンターの向こうではマスターが晩に向けて仕込みをしながら「ようやく起きたか?ならそいつも店から引っ張り出してくれや。」とこちらも見ずに声をかけてくる。言われた方向を見れば皮鎧を着た傭兵が酒場の床に手足を投げ出してイビキをかいていた。隅では竪琴を抱えた吟遊詩人が船を漕いでいた。


 俺はパーティ追放を受けて酒場で酔い潰れ、気がつけば寝ていたらしい。マスターがかけてくれた毛布が暖かい。本来なら摘み出されているはずだが、そうされずにむしろ施しを受けているのは昨夜の俺が相当荒れていた証拠なのだろう。


━━「すまないシュユ。君には一度パーティを抜けてもらいたいんだ。」

 威圧的な鍔鳴りと仲間たちの沈黙が俺の脳裏に響く。


 未だ酒が抜けきらないのか、それとも昨日のローズの冷たい視線のせいか、朝日はこれほど眩しいのに、俺の頭は昨日の暗闇から抜け出せないでいる。


「あなた、ちょっとお店の人に迷惑かけすぎじゃないかしらん?」


 そうやって俺に心配そうに声をかけるのは、口元を扇で隠しながら俺の寝顔を眺めていた謎のオネエ……

 謎のオネエ!?意味が分からん。なんじゃこの朝。

 明らかな異物に急に脳が覚醒してきた。咄嗟に魔法で動きを加速させ、毛布を跳ね除けて口元を覆う。


「だ、誰だよあんた!」


「今あんたすごい動きしたわね……ってそれはそうとあんたとは失礼ね!あなたが心配だから声をかけた通りすがりのオネエよん!!」


 意味不明な状況に呑みすぎによる幻覚を疑がったものの、パーティ追放を受けてショックのあまり呑んだくれて見た幻覚にしては、なんというかあまりにも絵面が楽しすぎる。あと俺がポカンとしてる間に普通にマスターと談笑してるし。


「マスターも心配してるわよん?一晩中呂律も回らなくなるくらい呑んで、ずっとわんわん泣いてたんだものん。呂律が終わりすぎてて何言ってるかわかんないから他の客もみんなドン引きよん!」


「うっ、うるさいなぁ!」


 つい口元を覆って顔を隠したが、オネエにはお見通しだったようだ。扇をパタパタとさせながらニヤニヤとコチラを見ている。変に冷静になった上で昨夜の痴態を突きつけられるとものすごく恥ずかしくなってきた。今戦っているかつての仲間にも申し訳なくなる。こんなのだから追放されたのだろうか。


「よかったらアタシが話聞くわよん?別にあなた進んで人様に迷惑かけるような子でもないのくらい可愛い顔見りゃわかるわよん。何か事情があるんでしょ?」


 誰が見ず知らずのオネエなんかにとも思ったが、誰かに今の気持ちを吐露したいのも事実だった。とはいえ今は仲間とも離れて聞いてくれる人もいないし、見ず知らずの人の方が後腐れもない。

 昨日のことを思い出すとまた涙が出そうだが、どうせ一度恥を晒した相手だ。今日を境に2度と会うこともないだろう。ならばいっそかけるところまで大恥をかいてやろうじゃないか。

 そんな気分で、俺は見ず知らずのオネエに昨日の出来事を語り始めたのだった。

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