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【更新停止中】残された者に祝福を  作者: 鳥居之イチ
第三章 呪いには代償が必要か
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【前書き】

開いてくださりありがとうございます。

そしていつも、リアクション・ブックマーク・コメントをいただきありがとうございます。

少しでもこの小説を楽しんでくださいませ。





 そのまま学校に向かうと思っていたが、水面さんが全員を集めた。

 事前に印刷をしていたであろうコピー用紙をこの場にいる全員に配布した後、水面さんは話し始めた。


 「今配ったのは、華魅高校3年2組全員のメリデメカルテと校長の日下部、担任の加藤、そして養護教諭の山下の3人のメリデメカルテだよ。

 山下がメリデメ管理システムに最新版を登録したようだったからね、そこから印刷をしてきたんだ。」



 メリデメ管理システムとは警察や確認屋など、メリデメに関わる職業に付いている者のみが閲覧することができる全国民のメリデメを確認することのできるサイトであり、国家機密と同等のセキュリティによって守られている。


 本来は専用のパソコンからのみアクセスし、印刷などは出来ないのだが、さすがは水面さんといったところだろうか。出来ないはずの印刷をそれもこの場にいる6人全員分してくるとは、異常な存在なのだと改めて実感する。



 「カルテを見て、何かおかしなところがあれば教えてほしい。

 おかしなところじゃなくても、カルテを見て思った感想でも構わないよ。

 燃木を突き落とした犯人の手がかりを事前に把握しておきたいのが目的なんだけど、どうかな?」



 そういうことならと、俺含め5人はそれぞれのカルテをまじまじと見始めた。

 水面さんの助手としてカルテの存在は知っていたが、本物を見たのは初めてだ。先日山下さんが見せてくれたカルテは、メリデメ管理システムに登録する前の下書きのため、手書きであり、すこし雑さの目立つものだったが、水面さんから渡されたカルテは本物。きれいに清書されたものであった。



=====

名前    : 桝田ますだ

系統    : 移動系

ランク   : D

メリット名 : スライド

メリット  : 手のひらサイズのものを自身より半径10m範囲内に転移

デメリット : 目眩



名前    : 佐伯さえき

系統    : 生成系

ランク   : D

メリット名 : ブラプラ

メリット  : 自身の血液を自身の血管内に生成

デメリット : 飴を舐める



名前    : 鹿山かやま

系統    : 未保有者ノーマル

ランク   : ー

メリット名 : ー

メリット  : ー

デメリット : ー



名前    : 燃木もえき

系統    : 生成系

ランク   : B

メリット名 : 着火

メリット  : MAXで人の骨すら残さない火力の炎の生成

デメリット : 血液中の酸素の消費



名前    : 蝿野はえの

系統    : 能力強化系(自己能力強化タイプ)

ランク   : D

メリット名 : ー

メリット  : 片方の腕力向上

デメリット : 使用翌日の筋力低下



名前    : 蛇舌へびした

系統    : 操作系

ランク   : D

メリット名 : ー

メリット  : 自身から半径20m内の風の流れの操作

デメリット : 喉の乾き



名前    : 加藤かとう

系統    : 精神干渉系

ランク   : E

メリット名 : ー

メリット  : 触れた物の使用者がわかる

デメリット : メリットの情報量に脳がパンク



名前    : 日下部くさかべ

系統    : 特異系

ランク   : B

メリット名 : ー

メリット  : 復元。右手で触れている壊れたモノを元の状態に戻す。

        手のひらに収まるもの限定。

デメリット : 左手で触れているモノを壊す。

備考    : ■メリットとデメリットは同時に発動しなければならない。

         つまり復元と破壊は同時に行われる。

         破壊は復元したモノの破損量に比例する。



名前    : 山下やました

系統    : 操作系

ランク   : A

メリット名 : ー

メリット  : 生体電流操作

        自身や触れている人を対象に生体電流を操作する

デメリット : 頭痛。吐き気。

備考    : ■生体電流を操作することで

         能力強化型のような身体能力を得ることが可能

        ■生体電流を止めることで

         痛覚を遮断することも可能


=====



 「そもそもカルテにおかしなところなんてあっていいんですか?」



 俺は素人ながらに質問をする。

 その問いに答えるように水面さんは口を開いた。



 「本来ならあってはならないよ。

 バグって覚えてる?登録されているメリデメと本来のメリデメが異なる現象なんだけど、バグは故意的に起こせるんだよね。」


 「聖女の殺人事件で言ってたやつですよね。

 本来は高度な移動系のメリデメだったけど、怪我を治癒するという風に偽っていたというものですよね。」


 「そう。だから本来はあってはいけないんだけど、完全に防ぐことは出来ないんだよね。

 そこで同じような事が起こっていないかをみんなにも見てもらって、確認しておきたいんだ。」


 「なるほど。ありがとうございます。

 でも、そう簡単におかしなところなんて見つかりますかね?

 見たところ生徒分が34枚、教師陣が3枚分ありますけど、これと言って・・・

 あっ。だから全部千円札だったのか。」


 「なにかわかったのかい、つばめくん。

 どんな些細なことでもいいよ!」


 「いえ!少し気になっていたことがわかっただけです。

 今回、依頼をしに来た桝田さんが支払った依頼料金は3万円でしたが、全て千円札での支払いでした。高校生が気にせず出せる金額にしては高価だと思ったのですが、それだけ呪いを解いてほしいんだなと思っていたんです。

 全て千円札だったのも、お小遣いなどから出したからだと思っていたんですけど、水面さんの言っていた、今回自殺をした鹿山さんはクラス全員と仲が良かったというのを鑑みると、あのクラスには34名。鹿山くんといじめをしていた3人を除くと残りは30人。

 その30人全員が千円ずつ出し合ったから、全部千円札だったんだなと今納得したところです。

 すみません。関係のない気づきで。」



 俺は頭の後ろを掻きながら、そう言った。

 そうだ。鹿山くんは自殺なんてしてはいけなかった。

 クラス全員に愛されていたのだから。

 俺はそっと頭を掻いていた手を降ろし、気がつくと握りこぶしになっていた。



 「いや、つばめくん。たしかにそうだ。おかしい。」


 「え?どこがおかしいんですか?

 俺の推理間違ってましたか?」



 爪が食い込むほどに握りしめていた拳が水面さんの言葉を聞いて少しずつ解けていく。三万円分の千円札の推理のどこが間違っていたのだろうか。現状から読み取れることはあっているはず。もしかして前提から間違っているのか?



 「つばめくんの推理自体は間違ってはいないと思うよ。

 おかしなところは、担任である加藤さんが鹿山さんがいじめられていることを知らなかったことだよ。

 つばめくんの言う通り、鹿山さんといじめていた3人を除けば30人もいる。

 いくら次のいじめの標的になるのが怖いからと言って、30人全員がいじめについて誰も先生に相談しないと言うのはいくらなんでも異常な気がする。

 担任じゃなくても、相談できる先生くらいはいたはずだよ。別の先生に相談していたら担任には必ず知らせが入るはず。

 でもそうじゃなかった。

 30人全員がいじめについて誰にも相談することはなかったんだ。

 つまり、クラスでいじめが起きていることを隠しているようにも捉えられる。」


 『水面さんの言う通り、異常かも知れませんね。

 30人もいれば、先生に言えなくとも、両親に相談してみる生徒がいてもおかしくない。両親から学校に連絡を入れることだってあっただろうに、それがなかったと考えると異常ですね・・・』


 『まるで統率が取れているかのようですね。

 洗脳にも近いように思えます。』


 「洗脳ですか・・・洗脳だったら精神干渉系ですよね?

 だったら担任の加藤さんがそうですけど、このメリットでは洗脳とかは出来ないですよね。」


 『つばめん。別に洗脳するメリットは精神干渉系だけじゃないんだよ。

 例えば特異系とかにも当てはまるものがあるかも知れないんだよね。

 そう考えると校長になるけど、校長のは洗脳とかできるタイプじゃなさそうね。

 って、燃木が投身したきっかけになった柵って脆くなっていたって話だったわよね。校長のメリデメなら柵を事前に脆くさせておくことくらいはできるんじゃない?』



 特異系は資料でも殆ど見ることはなかったから勝手に除外していた。

 特異系であれば洗脳することが可能な場合があるのか・・・。

 まだまだ知らないことのほうが多い。

 しかし今はそこではない。カルテによると校長のメリデメは右手で触れているものを直し、左手で触れているものを破壊する。なんというか割とざっくりとした内容しか記載がない。



 「校長の前に質問なんですけど、このカルテ割とざっくりとした内容しか書いてなくないですか?雑というかなんというか・・・・。

 俺が見たことあるカルテはもう少し詳細まで書いていた気がするんですけど。」



 俺の質問に対して、すかさず水面さんが回答をする。



 「それはこのカルテを書いた人物がテキトーな人間だったからだろうね。

 カルテの書き方は人それぞれなんだよ。一応カルテに記載しないといけない項目は決まっているんだけど、このカルテはそれが書かれているだけって感じなんだよね。

 書いたのは養護教諭の山下さんだろうけど、生徒の人数が多かったからかな?少し雑さが目立つカルテだね。

 でも特別珍しいことじゃないよ。」


 「いえ、それもなんですけど、そういうことではなく。

 備考欄に記載のある内容なんですけど、こちらが気になってまして。

 雑というか、良いことしか書かれていない気がするんですけど、これもこういうものなんですか?

 例えば、養護教諭の山下さんのものなんですけど、身体能力強化とか痛覚遮断とかいかにもってことしか書かれていない気がするんですよね。

 生体電流の操作なら、自身の意志とは関係なく手足とかを動かせるようになるってことですよね?だったらリハビリステーションとかでサポートのお仕事とか、病院で寝たきりになっている患者さんの運動不足の解消で能力を使える。なんて表現があってもいいと思います。

 あとは最悪人間を操作できるってことですよね?悪い方向にも使えると思うのですが、これは養護教諭で怪我した生徒の痛みを和らげるとかの意味で、痛覚遮断と記載したんでしょうか?」



 俺は自分の思っている疑問をぶつけた。

 そうすると、水面さん含め他5名は何やら険しい顔をした。

 なにか間違ったことを言ってしまったのだろうか?



 『火野くん。まずその質問は的を得ているよ。

 たしかにカルテは良いことしか基本的には書かれないんだ。これはメリデメによる犯罪行為を少しでも減らすための施策だよ。

 例えば水を生成するメリットの場合、溺死に見せかけた殺人が可能。なんて表記は絶対にしない。あるとすれば水不足を解決するだったり、医療の場など清潔な水が重宝される環境下にて活躍するなどのコメントが書かれるだろうね。

 ほぼ全てのメリデメが何らかの犯罪に使用することが可能だけど、それはそういった使い方を知っていればの話なんだ。だから確認屋やボクらカイトクはメリデメに対して良い情報しか基本的には伝えないんだ。

 それでもメリデメを使った犯罪は起こる。だからボクらカイトクがいるんだ。』


 「佐々木くんの言う通りだよ。

 でもつばめくんの言っていることも正しい。そしてそのおかげでこの事件は解決出来そうだよ。ありがとう。」


 「どういうことですか?」


 『山下が意図的にカルテを書き換えてるかも知れない。ってことだよ。

 このカルテ、更新日時がどれも直近なんだ。それ自体は問題ではないんだけど、注目すべきところは教員のカルテ更新日時も生徒同様直近である点だよ。

 つばめん。大人のメリデメカルテが更新されるのってどんなタイミングだと思う?』


 「・・・健康診断とかでしょうか?」


 『その通り。あとはメリデメの成長に合わせて自身で確認屋に出向いたりする場合だね。でも特例がある。それは確認屋の資格を持つものが常駐している場合だよ。

 つばめんは企業勤めしたことがないからわからないと思うけど、企業側の福利厚生の中にはマッサージ師を常駐させて疲労時などにマッサージが受けられるものがあるんだよ。

 それと同じように確認屋を常駐させて、定期的にメリデメの確認をしてくれるものがある。そして華魅高校はそれに該当するんだよ。』


 「つまりどういうことですか?」


 「山下は生徒だけじゃなく、教員全員のメリデメカルテを書き換えることができるってわけさ。つまりバグを量産することができる立場にあるんだよ。そしておそらく実際にこのカルテには何らかの手が加えられているね。」


 「か、過去更新分のカルテを見ることは出来ないんですか?もしできれば相互性を確認すれば・・・」


 『試す価値はあると思います。

 問題は、過去分のカルテはあるにはあるんだけど、それは過去5回分のカルテしかデータは残っていないんだ。

 仮に山下が黒だったとして、おそらくだが5回分のカルテは上書きしていると思う。』


 「データじゃなくていいんだよ。

 山下は僕が学校に訪問したとき、手書きのカルテを見せてきたんだ。

 つまり、学校にいけば手書きのカルテが残っているかも知れない。

 調べてみる価値は十分にあると思うよ。」


 『佐々木と三好だけじゃ収集がつかないかも知れない。

 私と神田も同行するわ。

 人では多いほうがいいでしょ。あと警察っていう後ろ盾があるとやりやすくなると思うわ。』


 「助かります。

 では、作戦会議を始めましょう。」


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