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残された者に祝福を  作者: 鳥居之イチ
第一章 俺は母を殺してしまったのだろうか。
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【前書き】

開いてくださりありがとうございます。

そしていつも、リアクション・ブックマーク・コメントをいただきありがとうございます。

少しでもこの小説を楽しんでくださいませ。





 いつもとは少し違っていた。

 でも、その小さく、優しい手の感触は母親のものだった。

 違う点は、一つ。手にぬくもりを感じられなかったこと。




 聞こえてきたのは悲鳴だった。

 俺はどうして悲鳴が起こったのか一瞬理解できなかった。




 恐ろしいものでも見るかのような目

 子どもを背中に隠し、何やら戦う姿勢を見せる親子

 死者が生き返ったと騒ぎ立てる大人




 俺の頭を撫でたその手が離れていく。

 そこからの記憶は曖昧だ。

 覚えていることは、手が離れた後は母は一切動かなくなってしまったこと。母はやはり亡くなっており、動いた原因はわからないこと。火葬は行われ、母は骨だけになったこと。母はもうこの世にはいない。ということ。




 気が付いたら葬式から1か月以上が経過していた。

 俺はあの日から悪夢を見るようになっていた。悪夢の内容はいつも同じ。母親が俺を憎んでいる。という夢だ。

 それもそうだろう。俺は母親を一度殺してしまったのだから。

 あの時俺の頭を撫でたのは、間違いなく俺の母親だ。何度も撫でられてるんだ。体が覚えてる。

 俺はあの時母親を生き返らせたのだと思う。メリデメが成人後に発現することは珍しいことではあるが、ない話ではないことは知っている。メリデメは義務教育の時に”確認屋”が各々のメリデメに合わせたカリキュラムを組み、メリデメを自身でコントコールできるようにする機関と期間が存在する。




 俺も詳しいことはわからないが、確認屋はただメリデメに合わせたカリキュラムを組むだけではなく、一人ひとりのメリデメの発動条件やデメリットの内容を研究、検証している団体でもあるらしい。

 例えば『火を吹ける』メリットがあった場合、何をエネルギーに火を吹いているのか。一日に火を吹ける回数やエネルギー量は決まっているのか。火を吹くためには特定の条件が必要なのか。とか色々調べてくれるらしい。

 まぁ『火を吹ける』メリットのデメリットは『血液中の酸素を使用』すると相場が決まっているらしく、血液中の酸素量は人によって異なるため、学生を卒業し大人になってからも定期的な酸素量をチェックするなど、幅広く活躍している機関ということは知っている。




 例にもれず俺も確認屋にはお世話になった。しかし、どんな検証にもメリット使用の痕跡も、才能もなかった。つまり俺にメリデメが発現していないか、もしくは確認屋が確認しえないメリデメだったかのどちらかだ。




 俺は前者だと思ってた。ずっとメリデメが発現しないタイプ。でもあの時母親を生き返らせてしまった。

 おそらく俺のメリデメは死者を一時的に蘇らせることのできるメリデメなのだろう。現実的に考えて、死者が生き返ることはない。さらにあの場にいた全員のメリデメにそういった類のものはなかった。そうとなれば必然的に俺のメリデメ以外考えられない。そしてデメリットは蘇生した人間の悪夢を見ること。だと思う。確認屋に診てもらったわけじゃないからなんとも言えないけど。




 そろそろ大学に行かないと。




 そうつぶやく。遺品整理やもろもろの手続きで気づけば1か月以上経っていた。正直それは言い訳で、あの日以降毎日見てしまう悪夢による睡眠不足であったり、母親を生き返らせ、そして殺してしまったことを嘆いて、ほぼ引きこもっていたからである。




 俺は母を殺してしまったのだろうか。




 どんなに悔いても仕方がない。せっかく母が大学に行かせてくれたのだから通わなければならないし、生活費もないのだからバイトにも行かないといけない。

 大学とバイト先には説明しており、大学は1か月だけ休学。バイトは一時的な休職扱いにしてもらっているが、そろそろ前を向かないといけない。




 ご飯もまともに食べていないから、この1か月でずいぶん瘦せたと思う。いややつれたというべきだろうか。スーパーかコンビニにでも行って、少しでも栄養のとれるものを買いに行こうと思ったとき、インターホンが鳴った。




 時刻は午前10時。自宅への訪問にしては少し早いと思うような時間帯だ。集金か営業かのどっちかだろう。買い物に行きたいのに、なんてタイミングなのだろう。こんな時は居留守に限る。10分位居留守を使えば相手は基本的に折れてくれる。




 長い。ずっとインターホンが鳴ってる。居留守使われてるのが解ってるタイプの鳴らし方だ。これは出るしかないか。。。。




 「はい、、、どちら様でしょうか?」


 「こんなにもインターホン鳴らしているのに出るなんて、少し用心が足りていないんじゃないかい?」


 「はい?なんですか、営業ですか?ウチ間に合ってるんでお引き取りくd」


 「君かい?実の母親を生き返らせたメリデメの保有者は」





【後書き】

遅くなりました。

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