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残された者に祝福を  作者: 鳥居之イチ
第二章 それは自殺かそれとも他殺か

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【前書き】

開いてくださりありがとうございます。

そしていつも、リアクション・ブックマーク・コメントをいただきありがとうございます。

少しでもこの小説を楽しんでくださいませ。





 翌日の朝、目を覚まし、リビングに朝食の準備に向かうと、宇田津さんと佐々木さん。そして初顔の警察官が2名がすでに席についていた。

 おそらく昨日の円卓の使者の襲撃があったからだろう。

 俺等側には、10thの言っていたように戦闘が可能なメリデメがいない。そのため戦闘が可能な職員に来てもらったと推測する。

 俺に気がついたのか、初顔の2人は席を立ち、こちらを向いて挨拶をした。




 『初めまして。

 私は能力開発特別対策室カイトク三好 叶(みよし かなえ)と申します。

 本日より、火野さんの護衛兼戦闘員として仕えることとなりました。

 どうぞよろしくお願いいたします。』

 先に挨拶をしたのは、手前の席に座っていた男性だ。

 警察には珍しく茶髪で髪を遊ばせている。

 視力が良くないのか黒縁の太めの眼鏡をしている。

 身長は175cmほどで戦闘要員と言うこともあってか、細身ながらもかなり鍛えられていることが伺える。所謂細マッチョというやつだろうか。

 髪を遊ばせているが、口調は丁寧で、品を感じる。

 三好に続くかのように、後ろの女性も挨拶をしてくれた。


 『初めまして。

 自分も能力開発特別対策室所属の神田 奈緒(かんだ なお)と言います。

 三好さんと同じく火野さんの警護兼戦闘員として仕えることになりました。

 これからよろしくお願いします。』

 女性はさほど長くない髪を耳にかけながら俺に告げた。

 宇田津や佐々木、三好のスーツ姿とは異なり、白のTシャツにジーパン、そしてスニーカーといったかなりラフな恰好をしている。かなり動きやすそうだ。

 おそらく自身の身体能力を活かした戦闘スタイルなのだろう

 そう考えると、能力強化系のメリデメ保有者なのだろうか。

 身長は165dmほどで女性にしては背が高く、その分スタイルも良い。白Tにジーパンといったラフな恰好でもかっこよく見えるのは、このスタイルあってのことだ。

 三好”さん”と言っていることから、カイトクの中では若手なのだろう。


 「初めまして。火野燕って言います。

 大学生でこの探偵事務所で水面さんの助手をやってます。

 すみません、俺なんかのために。

 昨日、円卓の使者の襲撃があったから、そのための護衛ってことであってますか?」

 謝罪をしたのは、本心だ。護衛はSPみたいなものではないだろうか。

 つまり、自分の命よりも俺の命を優先して行動すると言う事。俺はそこまでして守られるべき存在なのだろうかと自問自答する。

 そう考えると、俺は謝罪するしかないと感じた。


 そんな俺の心を見透かしたように宇田津さんが声を上げた。

 『つばめんの言う通り、昨日の襲撃を踏まえての護衛よ。

 でも勘違いしないでほしいのは、ここにいる全員がつばめんを奴らの手に渡したくないと思っているから護衛をしてるってこと。

 誰かに命令されたり、指示をされたから危険な護衛をしているわけじゃない。

 だから”俺なんかのために”なんて言わないで。

 それに、円卓の使者は我々カイトクにとっても因縁の相手なの。

 そんな奴らの尻尾を掴む絶好の機会が今。これを逃すなんてないわ。

 だから聞こえは悪いかもしれないけど、つばめんは奴らのエサになってもらってる。そのための護衛よ。

 むしろ謝罪をしないといけないのは私達の方なの。ごめんなさい。巻き込んでしまって。』


 「とんでもないです。

 俺が役に立てるなら協力させてください。」

 こんなにも俺を良くしてもらってるんだ。そんな俺が役に立てるのなら喜んで協力する。

 これは完全に本心だ。

 が、この場にいる2名ほどそれを快く思っていない人物がいるようだ。


 『火野くん、本当にいいの?命の危険があるんだよ?

 最悪死ぬことになるんだ!ボクは火野くんには死んでほしくない。

 や、もちろんそのためにボクがいるから死なせることはないんだけど、それも絶対じゃない。

 守りはする。それでも守りきれないときは存在するんだ。

 火野くんは人の心配をする前に、自分自身の心配をするべきだよ。』

 佐々木さんは俺の心配を本気でしているらしい。

 少し不機嫌なようにも思える口調だ。

 人の心配をする前に、自分自身の心配をしろというのは御尤もだ。おそらくそれで機嫌が悪いのだろう。反省しなくてはならない。

 それに続くように、後ろからマグカップでコーヒーをすすりながら、水面さんが言った。


 「佐々木くんの言う通り、つばめくんはもっと自分を大事にするべきだよ。

 昨日、奴らに付いて行こうとしたでしょ?

 僕らに危害が及ぶくらいなら、なんて考えでもした?」

 佐々木さん以上に水面さんが不機嫌だ。

 不機嫌と言うよりかは、キレているに近いのかもしれない。

 正直に言って水面さんにキレられるのは納得がいかない。液体のない殺人事件のとき、それこそ聖女の殺人事件の真相を聞こうとして、円卓の使者に繋がりそうなことを聞いたら覚悟を問いてきたのは水面さんだ。

 学校にも行けなくなる。友達にも会えなくなる。そして危険を伴う。

 その覚悟があるのかと。


 「まぁ僕も悪かったよ。

 そうだ!つばめくん。助手としてのテストだよ。

 三好くんと神田くんのメリデメが何か当ててみて。」


 「な、急ですね。

 当てることが出来たら、その不機嫌なのも治るんですか?」

 ちょっと言い返してしまった。

 俺もその不機嫌な感情に当てられてしまっていたのかもしれない。

 それに気がつくと、急に罪悪感が芽生えてきた。


 「すみません。言い過ぎました。ごめんなさい。すこし当てられてしまいました。

 それで、どうして急にメリデメを当てろなんてことをいい始めたんですか?」


 「いや不機嫌だったのは認めるよ。

 僕こそごめんね。

 そうだね。メリデメがわかるってそれだけでいろいろな対処の仕方があるんだよ。

 昨日の襲撃で嫌というほどわかったと思うけど、奴らには僕らをいつでも襲えると言ってきたも当然。

 奴らにこちらのメリデメが知られている以上、こちらが圧倒的に不利だ。

 様々な情報から奴らのメリデメを推測する必要がある。僕含めこの場にはメリデメの専門職が揃っているからね。つばめくんにも同じくらいメリデメに慣れてもらいたいんだ。

 そのためのテストだよ。」

 言わんとしていることはわかった。

 だが、なんでこの人は本当に絶妙に話が下手なのだろうか。

 下手なの例え話だけかと思っていたが、そもそもの話が下手なのか。

 これも慣れていくしかないな。


 「わかりました。

 間違ってても笑わないでくださいよ!

 まず、神田さんは自己能力強化型の能力強化系だと思います。

 ラフな格好にスニーカー。動きやすさを重視していると考えました。

 加えて髪がさほど長くないところを見るに、視界を遮らないようにするためではないでしょうか。

 三好さんは、そうですね。

 ごめんなさい。さっぱりわかりません。

 おそらくですが、移動系と特異系ではないと思います。戦闘要員っていうのもあると思うんですけど、スーツの上からでもわかるほどに鍛えられているのがわかります。

 そのため近距離で戦うことが多いのだと感じました。

 このことから直接触れて発動させるタイプのメリデメと判断して、移動系を除きました。

 特異系を除いたのは、単に特異系のメリデメ保有者の母数が少ないと聞いていたので、省きました。あとどのようなものがあるのかまだわかりきっていないからです。

 残るは精神干渉系、生成系、操作系ですが、ここからは絞れません。」

 俺が現時点で判断できる材料は使い切ったはずだ。見落としはないと思う。

 これでも水面さんの手伝いであの山のように積み重なった書類を捌いてきたのだ。

 書類には様々なメリデメに関する情報が書かれていた。どのようなメリデメがどの系統に分類されるのか。さまざまなメリットの発動条件にはどのようなものがあるのかなど。

 ある程度は頭に叩き込んでいる。ご飯を作ってきたわけではない。


 「及第点かな。」

 顎を掴むように考えるような素振りをしながら水面さんが答えた。

 それに異を唱えるように警察サイドが声を上げた。

 『いやいやいやいやいや、十分すぎるほどの観察眼と考察だったでしょ!

 もうちょっとつばめんのこと大事にしてあげたら?』


 『宇田津部長の言う通りですよ。

 火野くんが知っている情報から得られるものはすべて使い切ってメリデメの考察をしたと思いますよ!

 火野くんすごいよ!さすがは水面さんの助手だよ。

 神田さんのはほぼほぼ正解かな。

 三好くんのはそうだね。情報が足りなさすぎるよね。難しいと思うよ。』

 宇田津さんと佐々木さんは俺をかばうかのように水面さんに講義してくれた。

 そんな反論に水面さんは「そんなんじゃないって!つばめくんはすごいの!」と僕が褒めたかったのにと言わんばかりに3人で言い合いをしている。


 『火野さん、すごいですね!

 自分のメリデメほぼ正解ですよ!

 自分のは”パワー”っていうメリットで、その名の通り自己能力強化型の能力強化系です。

 詳細は自身の任意箇所の筋肉量を増幅するもの。めっちゃ強いパンチ打てるし、めっちゃはやくも走れるよ!』

 騒いでいる3人をよそに声をかけてくれたのは神田さんだった。

 すこし気になったのは、敬語とそうじゃないのが混じって話していることだ。感動して口調がバラバラになっているのか、興奮して口調が柔らかくなっているのか。

 俺としても敬語で話されると、緊張してしまうから、タメ口で話してほしい。

 なんなら神田さんは年上なんだし、俺の警護もしてくれるのだから、タメ口であってほしい。それをそのまま伝え、神田さんそして、三好さんもタメ口で話してくれることになった。


 『あ、そうだ。

 スーツじゃないのは、動きやすさを重視してるからじゃないよ。

 スーツもそれなりに動きやすいしね。そうじゃなきゃ警察の制服にスーツなんて起用されてないよ。

 スーツじゃないのは、破れてもいいようにだよ。

 自分のメリット的に、筋肉量を増やすとその分身体の太さも変わるでしょ。

 例えば逃げてる犯人を追うときなんかは、足の筋肉を増幅させるんだけど、パンプアップっていうの?かなり太くなるんだよ。そのまま走るとスーツが秒でお亡くなりになるんだよね。

 スーツも安い買い物じゃないから、自分は割とラフな恰好を許可してもらってるって感じだよ。』


 「大変ですね。でもその分かっこいいメリデメだと思います!

 神田さんは女性なのでそう感じないかもしれませんが、俺みたいな男からしたらロマン全開のメリットです!

 やっぱりヒーローっていうんですか。拳と拳で語る肉弾戦とか憧れます!!」

 いま鏡で自分の顔を見たら目が輝いているんだろうな。

 そんなことを考えていると、次は三好さんがメリデメの説明をしてくれた。


 『火野くんの推察通り、私は操作系のメリデメで、水分子の動きを操作できるものだよ。

 地面を凍らせて滑るように移動したり、氷の盾を作って攻撃を防いだりするのがメインかな。』


 『あれー、言わないの、能力名。』

 三好さんの挨拶が終わると同時に、神田さんが茶化した。

 それを聞いて三好さんは呆気にとられているような表情をしたかと思えば、耳を真っ赤にして、モゴモゴしている。

 『能力名は、、、、、も、モロキュー・・・です。』


 『はははははははははははははは、本当に言った。

 もー、言わなくていいのに。』

 『はあ!お前が言えって言ったんだろ!

 だいたいお前は俺より後輩だろ!先輩を敬え。』

 ここでも喧嘩が始まってしまった。

 はあ。全員俺より歳上なのに、なんでこう、子供っぽいというか。

 というかなんでモロキューなんだ?水分子の操作だよな?

 あ、モルキューブだからモロキュー。ダジャレか。

 でもモロキューって。発動するときの合図に使うことが多いって宇田津さん言ってたよな。

 なら能力名を決めたのは、義務教育時代。

 そんな時にモロキュー?


 『あ、火野くん。三好さんは元ヤンだからね。

 英語もちゃんと読めないし、未成年のときからお酒は飲んでるし。毎日喧嘩三昧。

 もう察しが付いてるかもしれないけど、水分子だからモロキュー。

 当時からつまみでモロキュー食べてたんだって。

 変えればいいのに、それで慣れちゃったから変えないんだって!

 ほんと面白いよね。』


 三好さんが元ヤンなのは意外だ。

 いや今さっき出会ったばっかりなのだから為人などがわかるわけがない。

 だが、一人称が”私”であったり、丁寧な敬語であったことから育ちが良いのだと勝手に思っていた。

 というか、三好さんと神田さん仲良すぎないか?

 先輩後輩の中で、警察が元ヤンだったことなどを後輩に話すだろうか。

 いや、詮索は良くないな。

 今はそんなことより。



 ”パンッ!!”




 俺が手をたたき、喧嘩していた総勢5名の大人の視線をこちらに向けた。

 「喧嘩はやめてください。

 とりあえずご飯作るんで、全員手を洗って席についてください。」


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