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残された者に祝福を  作者: 鳥居之イチ
第二章 それは自殺かそれとも他殺か

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【前書き】

開いてくださりありがとうございます。

そしていつも、リアクション・ブックマーク・コメントをいただきありがとうございます。

少しでもこの小説を楽しんでくださいませ。





 「佐々木くん、つばめくんを抱えて移動できる?」


 『出来ますけど、なんですか?

 水面さんはこの場に残って戦うつもりですか?

 ボクなら全員抱えて飛べます。一人で戦おうだなんて思わないでください。』


 「時間稼ぎくらいはするってこと。

 奴らの狙いはつばめくんなのは明らかだ。

 だったら少しでもつばめくんが逃げ延びれる可能性を考えるのは当然だろ。」




 水面さんの口調がいつもの口調じゃない。

 かなり焦っていることが伺える。

 それだけのイレギュラー。

 それだけの緊急事態ってことだろう。

 状況としてはかなり分が悪い。

 奴らの口ぶりからするに、この場に来た3人の円卓の使者以外に佐々木さんと同様の移動系のメリット保有者がいるのだろう。

 また8thとか言っていたな。

 移動系のメリット保有者とは別と考えられる。

 つまり、この場に居る3人以外にもこの事務所の襲撃に加担した構成員がいるということだ。

 さらに言えば戦闘向きのメリデメ保有者が俺含めこちらにはいない。

 逃げようにも、佐々木さんを頼ることになってしまう。

 Sランクのメリデメ保有者であり、マーキング箇所への瞬間移動(ポインター)であることは知っているが、水面さんが以前異常なメリデメだと言っていた。

 異常なのはおそらくデメリットなのだろう。

 俺は佐々木さんのデメリットまでは知らない。

 だからこそ俺を逃すためだけにメリットを使用してほしくない。

 いくら俺の監視時に移動手段に普段遣いしてるからと言って、俺だけには使ってほしくない。

 この場にいる全員が生き残る可能性が高い選択肢を取りたい。

 それは、、、、、俺が奴らに付いていくこと。それしかない・・・。





 「そんなに警戒するな。

 今日は戦いに来たわけでも、14番目の仲間を拉致しに来たわけじゃない。

 まずは名乗っておこう。某は円卓の使者の10th。後ろにいるのは2thと3thだ。

 これからどうぞよろしく。火野燕。

 今日ここに来たのは、お前を円卓の使者に勧誘するためだ。

 本当は拉致ってもいいんだが、本人の意志に関係なく、某たちの仲間に入れるのは8thが辞めておけと言うんでな。

 おそらくはお前のメリデメが意志に関係するものなんだろ?

 仲間にしたいのは本当だが、まずは挨拶をってわけだ。

 さらに言えば、お前らの中に戦闘向きのメリデメ保有者はいねーだろ?戦おうだなんて思わねーことだな。まず某には勝てん。

 それに移動系保有者の佐々木孝汰だっけか?お前のメリデメはこちらで把握している。どんなに逃げても、某たちから逃れることはできんよ。

 精神干渉系の宇田津心音に、元メリデメ保有者の水面鷹人もそうだ。メリデメの発動条件も把握している。

 もう一度言おう。お前らでは勝てんよ。」




 奴らには、どこまでの情報が筒抜けなんだ?

 それに、奴らは自身を数字で呼んでいた。本名を知られてはいけないのだろう。

 つまり本名が知れ渡っている人物か、もしくは数字で呼ばなければならない事情があるか。

 いいや、今はそんなことはどうでもいい。

 俺のメリデメが意志に関係するものであることも知っていた。奴らの中には情報屋のような情報を扱うプロフェッショナルがいるのか。それとも対象のメリデメを把握するようなメリデメ保有者がいるのか。

 それなら俺を含め、他3人のメリデメを把握していることも頷ける。

 だが、水面さんに対して”元メリデメ保有者”と言ったのはどういうことだろうか。たしか想像できうるこの世に存在しない物質は生成しつくしたようなことを以前言っていた気がする。

 それが故の元メリデメ保有者という呼び方なのだろうか。

 だとしたら、本当にどこまで知ってるんだ?

 白いローブ姿のフードからチラッっと見える赤と金の入り混じったような瞳。

 まるで宝石のような瞳の色だ。3人とも同じ瞳の色をしていることから、円卓の使者はおそらく全員が同じ瞳の色をしているのだろう。

 話を進めている10thと名乗る円卓の使者の1人は、その赤と金の入り混じっている宝石のような瞳からは、余裕を感じられる。俺等では勝てないと言うのは本当なのだろう。

 そう考えると、奴の言っている今日は挨拶をしに来ただけと言うのも本当なのだろうか。

 いや、詐欺師は真実の中に嘘を少量ずつ含ませることで、真実と嘘の堺をなくし、最終的には嘘を真実だと錯覚させると聞いたことがある。

 そう考えると、奴らに勝てないのは真実だが、挨拶に来たというのは嘘ではないだろうか。それとも考えすぎか?

 そんなことを考えていると、10thがこちらに歩き出した。

 ローブ姿であるが、筋肉質でガッチリしている体格であることはわかる。身長は170~175cmといったところだろうか。そこまで高くはない。が、本来見えないはずのオーラが見えるような気がする。そのためか本来の身長より高く見えるように錯覚する。

 俺含め全員がそのオーラに圧倒されるように動けいないでいると、急に10thは頭を下げた。




 「ごめんなさい!!!!!!!!

 カッコつけてべらべら話してたけど、まずは謝罪だよね。

 机壊してごめんなさい!怪我はなかったかな?

 おい!2th!3th!お前たちも謝りなさい!!!!!!!」


 「なんでウチが謝らないといけないのよ!

 大体1thの転移がテキトーなのが悪いんでしょ!

 ていうか話しすぎなのよ10th。わかってる?

 8thの言っていたーとか、仲間にするつもりだとか。機密事項ばっかりよ!

 ほんと脳筋バカよね。なのに礼儀だけはあるのが本当におかしいわ。

 3thもそう思うわよね?」

 と2thと呼ばれた円卓の使者の構成員は未だに壊れた机に寝そべっている3thと呼ばれる構成員を指さしながら言う。

 2thは髪が長く、フードと顔の間から髪が垂れているのがわかる。基本的には金髪で毛先だけピンクに染められたおそらくツインテール。自分で染めているのか、後染めしたであろうピンクの部分は統一感がなく、疎らに染まっている気がする。しかしその疎らに染まっている感じが逆におしゃれにも見えてくる。


 「机壊してすみませんでした。」

 と3thと呼ばれた円卓の使者の構成員は、壊れた机から起き上がりながらそう答えた。

 10thと比べて背は低く、2thと比べて背は高い。165cmほどだろうか。声からして男性だろう。こちらは完全にローブやフードに覆われていて、それ以外の情報はない。あるとすれば他の二人と違って手袋をしていることだろうか。

 実際手袋をしているのは珍しい。

 メリデメの発動条件で最も多いものは直接触れることだ。つまり手袋をしていると言う事はメリデメの発動は直接触れなくても問題ない可能性が高い。


 「ちょっと!なんで謝ってるの!意味わかんないんだけど!

 あーもう、はいはい。すみませんでした。

 10thこれでいい?満足かしら。」

 2thはよっぽど不服なのだろう。いやいや謝罪を行ってくれた。

 その後10thからそんな謝罪は心がこもっていない。だとか3thも10thに便乗するかのように2thに野次を飛ばしている。それに反論するかのように2thも何か言っている。

 こっちのペースを乱すのが目的なのだろうか。俺含め此方側4人は呆気にとられる。




 『水面さん、宇田津部長、今なら逃げられますよ。

 火野くんは下がっててね。』と佐々木さんが何故か揉めている円卓の使者の3人に聞こえない程度の声量で俺達に声をかけた。


 『私のことはいい。つばめんを優先的に逃がして。

 いくら万能でも、体力の消耗は最小限に抑えるべきよ。』

 宇田津さんは俺を逃がすことだけを考えているらしい。

 俺もだが、宇田津さんも佐々木さんも冷や汗がすごい。それもそうだ。敵は俺達のメリデメを知り尽くしているかのような口ぶりだった。それに対して、円卓の使者サイドのメリデメは全くといっていいほどわからない。緊張が走る。

 が、水面さんだけは違っていた。俺等のように緊張したり、焦ったりしているわけではなく、驚いているような表情だ。

 確かに”元メリデメ保有者”などと言われていた。詳細まで知られていることに驚いているのかもしれない。

 なんて考察をしていると、水面さんが口を開いた。




 「10thと言ったな。嘘はついていないようだね。

 挨拶に来たと言っていたけど、今日はこのまま帰ってくれるってことかな?」


 「ああ、その通りだ。

 14番目の仲間の顔も見れたし、それに収穫もあった。

 今日はこのままおいとまするよ。二人も喧嘩始めちゃったし。」

 10thは2thと3thの喧嘩を仲裁しながら、水面さんの問いかけに答えた。

 答えを聞くと、水面さんは続けるように質問を投げた。


 「では、帰るまえに聞きたいことがある。

 10th、君は僕と会ったことあるかい?」


 「・・・さあな。どこかですれ違ってるかもしれねーな。」

 そう言いながら、2thと3thを小脇に抱え事務所の出入り口から普通に出ていった。




 嵐のようだった。

 円卓の使者の3人が出ていってから、緊張感が解けたのか宇田津さんと佐々木さんはその場に尻もちをついた。かく言う俺も例外ではない。

 一息置いてから今後のことについて話し始めた。




 『これやばいんじゃない?

 円卓の使者につばめんのことが知られちゃってるよね。』


 『それだけじゃないと思います宇田津部長。ボクたちのメリデメについても知っているような口ぶりでした。

 円卓の使者内にメリデメを把握するような能力者がいるかもしくは、内通者がいる可能性があると思います。』


 『そうね。それだと考えたくはないけど後者よ。

 敵はこちらのメリデメだけじゃなく、名前も把握していた。

 メリデメで相手の名前まで把握できるのであれば、それは精神干渉系で心を読んだ可能性があるが、そうじゃないと思う。』


 「宇田津くんに同感だよ。

 おそらく僕らのことを円卓の使者に売った奴がいる。

 それに・・・・・」

 水面さんだけはその場に座らず、立ったまま話をしている。唯一あの場で冷静に物事を考えられていたと思う。

 しかしあの驚きに満ちた表情。そして10thに対して言ったあの言葉。

 引っかかる点が多い。




 「それにどうしたんですか?」すかさず水面さんに聞いてみる。


 「いや、やっぱりなんでもない。

 そんなことより、つばめくんの作ってくれたご飯がぐちゃぐちゃだぁ!!!!!!」

 

 『なっ・・・』


 『そんな・・・・』


 「いやいや、また作るんで!今はそれどころじゃないでしょ!」

 急にペースを崩された。いやはぐらかされたのだろうか。

 これ以上聞かないほうがいいのだろうか。表情から見るに、今は聞かないほうがいいかもしれない。

 



 「質問です。

 警察的には、円卓の使者は逮捕したいような相手なんですか?」


 『そうだね・・・・。

 火野くん申し訳ないけど奴らを逮捕することは出来ないんだ。

 犯罪の証拠がないというか。

 表舞台に出たのはあの聖女の殺人事件の死体転移くらいだからね。

 世間じゃ、能力者刈りって恐れられているけど、その犯行のすべてが円卓の使者かどうかはわかっていないんだ。

 手口が毎回異なるからね。同一犯ではない可能性が上がっているって感じなんだよね。』


 『そう、だから出来たとしても事情聴取の任意同行くらいなのよ。

 加えて言えば、私も今回初めてみたくらい神出鬼没だからね。捕まえたくてもそう簡単に言えないのよね。』


 「なるほど。ありがとうございます。

 それで、ちょっといいづらいんですけど・・・」


 『どうした火野くん。怪我でもした?』


 「いえそうではなく。

 ご飯作り直したいんですけど、さっきので材料ラストでして・・・。

 スーパー行ってきてもいいですか?」


 「『『いや、ダメでしょ?』』」


 「ですよねー・・・

 今日は、出前かな。。。」


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