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残された者に祝福を  作者: 鳥居之イチ
第二章 それは自殺かそれとも他殺か
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【前書き】

開いてくださりありがとうございます。

そしていつも、リアクション・ブックマーク・コメントをいただきありがとうございます。

少しでもこの小説を楽しんでくださいませ。





 次に目が覚めたときには、ソファで横になっていた。

 若干の気だるさと頭痛がする。

 この症状は寝すぎと言うものではないだろうか。

 寝すぎて体調が悪い場合の対処法は・・・どうすればいいんだ?

 再度寝ることで治るのか?でもそれでは寝すぎを加速させることになるのではないのか?逆に起きておくほうがいいのだろうか?運動するべきなのだろうか?




 『はい、頭痛薬と水だよ。』


 「すみません、ありがとうございます・・・って、え!いつから」


 『火野くんが起きる前からずっと居たよ。』




 まったく気が付かなかった。

 そう言えば警察の監視下にも置かれるんだったか。監視員は佐々木さんと言っていたな。

 それでずっとそばに居たのだろう。

 申し訳ないことをしてしまった。




 『申し訳ないとか思ってる?まったくそんなことないからね。むしろボクは嬉しいよ。

 監視員といっても干渉するわけじゃないから安心して。

 とりあえず、頭痛薬飲んで。落ち着いたらリビングまで来てくれるかな。』


 「わ、わかりました。」




 嬉しい?どういうことだろうか?

 今は考えてもわからないか。とりあえず薬飲んで佐々木さんの質問の続きをしよう。




*   *   *




 リビングに行くと、水面さんと佐々木さんがコーヒーを飲みながら待っていた。

 淹れたてなのだろうか、部屋中にコーヒーのいい香りが充満している。

 



 「すみません。遅くなりました。」


 「そんなことないよつばめくん。体調はどう?大丈夫?」


 「はい、佐々木さんに薬もいただいたので大丈夫です。すみません、どのくらい寝ていたんですか?」


 「よかった。3時間くらいしかしていないよ。1週間も寝てたんだから、もう少しゆっくりしてもいいくらいだ。」


 『そうですよ。なにか欲しいものあります?すぐに買ってきますよ。』


 「いえ、お構いなく。いつもありがとうございます。」


 「つばめくん、気にしなくていいんだよ。佐々木くんはつばめくんにゾッコンなんだから、今のうちに欲しいものがあれば言っておきな。」


 「ゾゾゾゾゾゾゾッコン?」




 急に何を言い出すんだ。

 顔が熱くなってきた。やっぱりこの人たちは俺に惚れているのか?

 いやいや、別に同性同士の恋愛に抵抗があるわけじゃない。むしろ壁を超えている感じがしてカッコいいとすら思える。だが、俺には恋愛経験がないのだ!!!!!!

 佐々木さんは俺のことが好きなのか?好きってなんだ。

 キスとかしたいってことか?

 きききききききききききききききききききキス!?!?!?!?!?!?!?!

 佐々木さんは俺とキスしたいのか?れれれれれれ練習しておいたほうがいいのか?

 キスの練習ってなんだ?





 『水面さんいい加減にしてください!火野くんが頭パンクして噴火までしちゃってますよ!!』


 「ごめんごめん。つばめくん大丈夫?佐々木くんのつばめくんに対する感情は特別なものだけど、それは恋愛感情じゃないよ。」


 『余計に勘違いしそうなことを言わないでください!火野くんもごめんね。ささ座って。質問の続きもあるでしょ。』





 俺はちょっと気まずくて水面さんの隣に座った。

 それを見た水面さんは笑いを堪えるようなかたちで肩を震わせ、佐々木さんは俺が隣に座らなかったからか、がっかりしているようにも見える。

 恋愛感情じゃない特別な感情って何だ?


 パンッ!




 「さ、続きをしようか。」と水面さんは場の空気を変えるかのように手を叩いてそう言った。


 「で、では質問の続きをさせてください。

 稽古とはどのようなことをするんですか?」


 『自身の身を自分で守るための稽古。いわば戦闘訓練だよ。』


 「戦闘訓練?俺がですか?俺のメリデメは戦闘向きじゃないですよ?」


 『だからこそだよ。』


 「話が読めません。自分の身は自分で守るって言葉には賛同できます。

 でも戦闘訓練?護身術とかなら理解は出来ますけど、なぜ戦闘なんですか?

 なにか隠してますか?」


 『ウッ・・・』




 図星なのだろうか。

 佐々木さんが狼狽えている。





 「つばめくん。前に話した覚悟の話を覚えているかい?」


 「・・・命の危険が伴うって話の件ですか?」


 「そう、”聖女の殺人事件”の真相をつばめくんが聞こうとした時に僕がつばめくんに言ったことだよ。」


 『水面さん、その話をしたんですか?』




 血相を変えて、佐々木さんが水面さんに問いかけた。

 問いかけたというか、焦って咄嗟に口に出たような感じがする。

 やはり”聖女の殺人事件”はかなり闇の深い事件なのだろう。




 「詳細はまだ話していないよ。つばめくんが聖女の殺人事件の本当の犯人は誰なのかと質問を受けたことがあってね。

 事件の真相を聞きたいなら、それ相応の覚悟が必要だよって話をしたんだよ。」


 「それが今回の戦闘訓練と関係があるんですか?」


 「・・・・ある。」


 『聖女はね、Sランクだったんだよ。』


 「聖女がSランク。確か聖女は亡くなってるってお話でしたよね?」


 『え、水面さん!すでに死んでいること言っちゃったんですか???』


 「あははっ。言っちゃった☆」


 『言っちゃった☆じゃないですよ!国家機密もいいところですよ!』


 「まぁまぁ、つばめくんには遅かれ早かれ知られていたことだよ。なんならつばめくん自体が国家機密だからね。一緒だよ。」


 『はあ、まったく。

 ごめんね火野くん。状況が飲み込めないよね、』


 「はい、まったく・・・・」




 正直全く話についていけない。

 佐々木さんもちょっと怒ってるし。水面さん最重要事項を俺に勝手に話していたのか?





 『まず、聖女の殺人事件の聖女はSランクの移動系のメリデメ保有者。

 メディアの報道では、聖女が実の父親を自身のメリデメで殺害したことになってると思います。』


 「はい、それ以上を聞こうとした際に、水面さんには覚悟を問われた感じです。」


 『なるほどね。

 火野くんには申し訳ないけど、君には強制的にその覚悟を持ってもらうことになります。

 まず、聖女は父親を殺せてはいないんだ。正確に言えば殺すまでには至らなかったと言うべきだろうか。

 正確に言えば、聖女含めある組織によって殺されたんだよ。』




 生唾を飲み込んだ。

 正直そうだとは思っていた。

 水面さんから明言されたわけじゃないけど、遺体で発見され、さらに報道規制まで引かれたと聞いて殺害されたのだとは思っていた。

 ただ殺人であれば報道されていてもおかしくない。報道規制までして聖女の死を隠蔽する必要があった状況。そしてある組織によって殺されたという現状。





 「”能力者刈り”ですか?」




 能力者刈り。

 噂程度にしか聞いたことがない。所謂都市伝説の類だ。

 聞いたことがあるのは、13人で構成されたグループであり、構成員はみな強力なメリデメ保有者であること。

 そしてメリデメを使用した殺人を行う集団であるということ。

 





 『流石に噂程度には聞いたことがあるかな?そう、聖女は能力者刈りによって殺されたんだ。

 ”聖女の殺人事件”のときにね、聖女とその父親の遺体が、能力開発特別対策課通称「カイトク」の本部に転移されてきたんだ。聖女のメリデメについて事細かに書かれた資料と共にね。その資料には聖女は怪我を治癒する能力ではなく、詳細範囲までをも転移することが可能な移動系のメリット保有者であること。父親に対する強い殺意があったこと。仲間に勧誘すべく父親殺しを手伝ったが、殺すまでには至らないメリットであり、能力者刈りが求めていたメリットではないため父親と共に殺したこと。

 そしてSランクのメリデメ保有者を今後仲間に勧誘し、求めていた人材でない場合は即刻処分する旨の記載がされていたよ。

 これらの事象からSランクは国を上げて保護することが決定したんだけど、ピンポイントで転移が可能なメリデメ保有者が居る以上、特定の場所で保護するのは得策ではないとの判断だね。こうやって監視員という名の護衛をつけることに収まっているんだよ。』


 「つまり俺は今後殺される可能性があるってことですよね。

 納得は一切できませんが、理解は出来ました。ありがとうございます。

 その、もしものために戦闘訓練を積むってことですよね?そこまではなんとか大丈夫です。

 でも2つ気になることがあります。

 1つ目は能力者刈りが求めているメリットがどのようなメリットなのかということ。

 2つ目は佐々木さんの監視員は水面さんってことでしたけど、水面さんって戦えるんですか?失礼ですがメリットも使い切っているってお話でしたので、戦えるようには見えません。」


 「それは僕が答えるよ。まず彼ら能力者刈りは通称「円卓の使者」って呼ばれているんだよ。これは13人と人数が判明していることから名付けられたものだね。

 そして1つ目。円卓の使者が求めているメリットは現状どのようなものかわかっていないんだ。だけど最終目的なら判明していて、それは人為的なメリットの創造。これは聖女の殺人事件の時に遺体と共に送られてきた資料に書かれていないことだから確定事項だね。

 2つ目。僕に監視員が務まるのかってことだけど・・・」


 『ボクと水面さんが戦ったら、水面さんが勝つくらいには強いと思いますよ。なんだったらボクと火野くんと宇田津部長が一斉に戦いを挑んでも勝てないだろうね。』


 「そんなに強いんですか?」




 横に座っている水面さんに目を向けると、ちょっとドヤ顔している。

 本当に強いのだろうか。なんでこんなに掴めないんだ?





 「・・・・戦闘訓練はいつから始まるんですか?」


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