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残された者に祝福を  作者: 鳥居之イチ
第二章 それは自殺かそれとも他殺か

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【前書き】

開いてくださりありがとうございます。

そしていつも、リアクション・ブックマーク・コメントをいただきありがとうございます。

少しでもこの小説を楽しんでくださいませ。





 えっと、オムライスにカレー、豚汁に焼き魚、チャーハンに餃子。そしてサラダもある。デザートにプリンとミルフィーユも作ってみた。

 今まで自炊をすることはあったが、ここで働くようになってからは、さらに作れるレパートリーが増えたように思える。水面さんは偏食なのか、いつもオムライスでいいよ。なんて言うから俺がバランスを考えて出すようになった。その結果食のレパートリーが増えたのだ。

 サラダなんて男子大学生は好んで作ったりしたいと思うが、バランスを考えて出すようになった。我ながら感心している。

 これだけあれば大丈夫だろ。そろそろ二人を呼びに行くか。

 そう思いながら奥の部屋に体を向ける。





 「わ!びっくりした。急に振り返らないでよ!」


 「ずっと見てたんですが、水面さん。声くらいかけてくださいよ。こっちもびっくりしたじゃないですか。」


 「いや〜、集中してたみたいだったから、なんか声かけるの辞めとこうかなって思ってね。」


 「もー、できましたんで手洗ってきてください。」


 「わかったー。今日も豪華だね〜。そうだ、宇田津くん起こしてきてもらえる?」


 「わかりました。」





 宇田津さん寝てんのか。

 やっぱり連続2時間は流石にしんどかったか?

 申し訳ないことをしてしまった。なんて思いながら俺は奥の部屋の扉を開けた。





 「宇田津さん、起きてください。ご飯ができましたよ。」


 『うっ・・・ん・・・あ・・・つばめん?おはよ』


 「おはようございます。ご飯の準備ができたので、顔と手を洗ってこっちに来てください。」


 『うん・・・・いく・・・・』





 ご飯作ってる短時間でこんなにも深く眠れるものなのだろうか。

 といっても、ご飯作り始めてから3時間以上は経過しているか。

 それだけあれば眠れるか。



 しばらくして、宇田津さんが食卓に着いた。

 まだまだ眠そうだ。水面さんは待ち切れないと言わんばかりに礼儀正しく席に付いている。

 こんなに楽しみにしてくれているのは、嬉しいものだ。

 そう言えば、3人以上で食卓を囲むのは久々かもしれない。

 ちょっと嬉しい。





 『え!これ全部つばめんが作ったの?すごい!私の嫁に来る気はない?どう?』


 「宇田津くん、つばめくんはもう僕の助手なんだよ。嫁に行かせるわけにはいかないね。」


 「二人して何言ってるんですか。俺男ですよ。」


 『つばめん、そこじゃないよ。』


 「え?」


 「やっぱりつばめくんは面白いね。ささ、食べようか。」


 「「『いただきます』」」





 二人は勢いよく食べ始めた。どんだけお腹空いていたんだ。

 最初に手を付けたのは豚汁だった。やはり汁物から行くのがセオリーなのだろう。

 その後焼き魚。チャーハンに餃子。カレーにオムライスと和中洋の順に手を付けていった。

 とても美味しそうに食べる二人を見て、さらに嬉しくなってきた。

 少し遅めの昼食。空腹は最高のスパイスと言うが本当なのだろう。

 あっという間に、空になった皿が積み上がっていく。

 といっても沢山の種類を食べてもらえるように、一個あたりの量は気持ち少なめに作っている。





 「デザートもありますよ。プリンとミルフィーユどっちから食べたいですか?」


 『両方持ってきてもらえる?同時にいただくわ。』


 「僕も同時で」






 嬉しい。

 実は俺の転職は料理屋なんじゃないだろうか。

 でも今更調理師免許を取るのは骨が折れる。

 人生に遅いも早いも無いとか言うけれど、実際そんなことはあると思っている。

 よく大学へ行っていない人が勉強したいと口にすると、今からでも大学に行けばいいよ。なんて無責任なことを言う人は一定数いる。

 実際には、基本的に社会人なのだから時間が無い。それにお金もかかる。学校に通うために会社を辞めたとして、お金はどうする。学費は愚か生活費すら賄えるか心配だ。

 それを言うとバイトすればいいだの、社会人の時に貯めておけばいいだの言ってくる人はやはり一定数いるのだが、それができるだけ稼いでいる人がどれだけいるのかという話になってくる。

 そんなこと言ってくる人は現実が見えていないか、よっぽどの金持ちか、時間が有り余ってるかだ。

 かくいう俺は母が行かせてくれた大学を辞めてまで、調理師免許を取って料理屋を開こうだなんて考えていない。

 ちょっとした思いつきだ。



 なんて考えながら俺は冷蔵庫からプリンとミルフィーユを取り出して二人に出す。

 出した瞬間の二人のあの目の輝き。

 二人とも甘いものが好きなのだろうか。そういえば水面さんは以前のプリンも今朝のフレンチトーストもかなり喜んで食べてくれた。

 ・・・・いや水面さんは俺の作る料理全部喜んで食べてるな。



 無言で食べ進めてた二人が食べ終え、ようやく話し始めた。

 食事中に喋らないのが、マナーなのだろうか。





 『美味しすぎる。水面さんはこんなに美味しいものを毎日食べているの?』


 「そうだよ。羨ましいかい?」


 『意味わかんない。ずるくない?つばめん、やっぱり嫁に来る?それとも警察で給仕係なんてしてみる?』


 「ダメでーす。つばめくんは僕の助手なので他の仕事ができませーーーん。」


 『いやいや、つばめんの意思次第でしょ。束縛激しいと嫌われるよ水面さん』


 「そこは大丈夫。アルバイトするときの契約書にここで働いてる限り他の場所での勤務ができない旨了承取ってるからね。」


 「え!そうだったんですか?」


 「つばめくん、書類には目を通そうか・・・・僕心配になるよ。」


 『つばめん、そんな契約書違法よ!違法。私達警察に助けを求めていいのよ!』






 こればっかりは、またも書類にちゃんと目を通していない俺が悪い。

 水面さんが言っていた通り、いつか詐欺に引っかかるかもしれない。






 「宇田津さん、大丈夫です。俺が選んだ道なので。」


 「つばめくーーん!!」




 水面さんが泣きそうだ。





 『つばめん、いい子過ぎない?あ、そうだ!お弁当作ってくれないかしら。もちろんお金は払うわ。』


 「でもさっき、他のところでの勤務はNGって。」


 『この事務所で作れば、他の場所で勤務していることにはならないでしょ。どう水面さん。お弁当くらい許してくれてもいいんじゃない?』


 「・・・・・・ヤダ!」


 『子どもみたいなこと言わないでよ!ほんと束縛きついと嫌われるよ。つばめんだって付き合いとかあるでしょうに。』


 「まあまあ、そのへんに・・・」


 「つばめくんのお弁当、僕も食べたい。」


 「え、そこですか?毎日ご飯作ってるじゃないですか?」


 「お弁当はちょっと別じゃない?特別美味しくなる気がするんだよね。まぁ仕方ないね。宇田津くんお弁当は許可しよう。ただし金額はこっちで決めさせてもらうよ。」


 『うーわ、つばめんを労働者として、貸出みたいな使い方しようとしてる?』


 「言い方が良くないな!現にウチの従業員なわけだからね。従業員の労働は会社に利益が無いとダメなものだよ。」


 「お二人でお話進めてますけど、お弁当箱もないですし、そもそもどうやって届けるんですか?水面さんはいいとして、宇田津さんに届けられないんですよ。俺勝手な外出できないですし。」


 『え!行動制限もされてるの?束縛どころじゃないじゃない!監禁よ監禁!重罪じゃない。でもスーパーはOKなの?』


 「スーパーはこのビルの横にあるしね。僕に一言貰えばスーパーならOK出してるよ。ていうか、つばめくんのメリデメは国家機密なの!危険が多いから外出のときは基本一緒に行動してるだけ!」


 『水面さんのメリデメは今はほぼ使い物にならないでしょ!一緒に行動してもいざって時につばめん守れないじゃない。』


 「宇田津さん大丈夫ですよ。俺はここに住まわせてもらってるんです。お給料もいただいてますし、俺は一切損はしてません。むしろ水面さんには感謝してます。」


 「つばめくん・・・・いい子・・・・。」







 こんな話をしながら、楽しく食卓を囲むことができた。

 ちなみに宇田津さんがどうしてもお弁当が食べたいと言うので、月水金でお弁当を作ることに。

 水面さんがお弁当一個に法外な金額を提示してきて、宇田津さんと喧嘩していたけど、サブスクのような形で月2万円を支払ってもらうことで落ち着いた。

 それでも十分に高いと思うのだが・・・・。双方納得しているのでよしとしよう。

 お届けに関しては、宇田津さんの部下に移動系のメリデメ保有者がいるとのことで、その人が対応してくれることになった。

 ちなみにあの佐々木さんだ。佐々木さんは自身と自身が触れているものを瞬間移動できるそうで、宇田津さん曰く最高にできた部下とのこと。

 ただ持っていってもらうのも申し訳ないので、お弁当は佐々木さんの分も作ることにした。

 てか今日は休日のはず。いくら上司とはいえ、休日に呼ばれて速攻くる部下・・・。

 確かに優秀で最高にできた部下なのかもしれない。



 そして今、俺、水面さん、宇田津さん、佐々木さんの四人でショッピングモールに来ている。なぜこうなったのか。そう!お弁当箱を買うためだ。

 警察のお二人は、毎日お弁当箱を返しに来るのは大変じゃないかと提案したところ、なら2,3個あったほうがいい。と言う話になり、ついでに水面さんもお弁当箱がほしいと言うのでみんなで買いに来たところだ。





 『火野くんはなにか欲しいものはある?一緒に払っちゃうから持ってきていいよ。』





 俺のことを名字で呼ぶ数少ない人、佐々木さん。

 今日で会うのは2回目なのに、大人の余裕があってとってもかっこいい。

 水面さんほどではないが、高身長で指が長い印象がある。いわゆるイケメン。

 先日みた警察のスーツ姿とは違い、私服姿はおしゃれで華がある。

 それに佐々木さんのお弁当箱も買いに来たのに、俺がなにか欲しいものがあれば買ってくれるという。

 できた部下さんだ・・・・。俺もこんな大人になりたい・・・・。





 「大丈夫ですよ佐々木さん!ありがとうございます。そこまで甘えるわけには行きません。」


 『いえ、本日おクルマまで出していただいてますし、それにボクの弁当まで作ってもらうことになってしまったお詫びみたいなものです。』





 ちなみに水面さんが流石にショッピングモールは何があるかわからないとのことで、宇田津さんがつけていたアンクレットを一時的に借りている。

 極力誰かに触れないようにはするが、念には念をと言ったところだろう。

 俺としても心強い。事故で触れないとは限らないからな。





 『え、なに?つばめん欲しいものがあるの?お姉さんが買ってあげるよ。』


 「いやいやつばめくんの上司は僕だよ。僕が買ってあげるよ。ささ持ってきておいで。」





 なんでこの二人はずっと喧嘩みたいなことしてるんだろ。

 二人とも佐々木さんを見習ってほしいものだ。

 そんな二人を無視しつつ、俺は佐々木さんに話しかける。





 「佐々木さんは何か食べたいものとかありますか?逆に苦手なものがあれば事前に聞いておきたいです。」


 『そうだね・・・宇田津部長や水面さんが絶賛していたオムライスを食べていたいですかね。苦手なものは殆ど無いですが、強いて言えば生野菜でしょうか。加熱してあれば問題はないのですが、生には少し抵抗がありまして。ですが食べられないわけではありません。火野くんが作りやすいモノを作っていただくのが一番です。』






 生野菜苦手なのすこしわかる。俺も生トマトは苦手だ。

 にしても、オムライスか。

 今日作ったばっかりで、材料もまだ残ってる。





 「佐々木さん、今日の夜ってご予定ありますか?よかったらオムライス作るのでご一緒にいかがですか?」


 『え、いいんですか?』


 「はい、お弁当にいれても大丈夫だと思うんですけど、俺の作るオムライスは半熟のたまごで包むので、日持ちしづらいんですよ。なのでお弁当ではなく食卓を囲む形で食べてもらえるとこちらも嬉しいです。」


 『ボクも今日は予定が無いから、ぜひお願いしたいです。』


 「決まりですね!水面さんいいですよね?」


 「うん、いいよ。でもちょっと距離近くない?仲良くなりすぎじゃない?今日で会うの2回目でしょ?」


 『なに佐々木、夜につばめんのご飯食べるの?私に断りもなしに?ずるくない?つばめん、私も分も作って!』






 なんか二人が保護者っていうか、若干の彼氏面してくるんだけど、これは何?

 ま、いいか。今日は久々に食卓を大人数で囲って食事ができた。

 メリットの名前も決まったし、佐々木さんとも仲良くなれたし、良い一日だ。





【後書き】

そう言えば大人数で食卓を囲むなんて、

もう何年もやってない気がする。

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