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残された者に祝福を  作者: 鳥居之イチ
第一章 俺は母を殺してしまったのだろうか。
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【前書き】

開いてくださりありがとうございます。

そしていつも、リアクション・ブックマーク・コメントをいただきありがとうございます。

少しでもこの小説を楽しんでくださいませ。





━━━俺は母を殺してしまったのだろうか。




 俺って何のために生きてるんだろ。

 女手一つで育ててくれた母親が今、棺に納められている。

 悲しいなんていう感情は無いことは無いが、その感情を上回る罪悪感。

 俺がいなければ、この人は死ぬことはなかったのかもしれない。俺が生まれてこなければこの人の人生はもっと煌びやかなものになっていたかもしれない。

 俺って何のために生きてるんだろ。




 この19年間、ごく普通の生活をしてきたつもりだ。

 不自由がなかったと言われれば、あったかもしれないが、それなりに満足してきた。

 父親は10歳のときに突如いなくなったが、後々それは父親の浮気で、浮気相手と一緒に蒸発したことを知った。だからといって本当に不自由は無かったと思う。

 でもそれは、俺が不自由ではないと思っていただけで、母親は違ったのかもしれない。母親の口癖は「お金の心配はいらないよ。やりたいことがあったら遠慮しないでね。」だった。

 その言葉は、俺を不安にさせないための呪文だったのかもしれない。




 父親の浮気の理由はなんとなく知っていた。

 俺にメリデメが現れなかったからだ。



【メリット】

それは能力者本人にとって有益に働く能力の相称


【デメリット】

それはメリットとは対照的に本人にとって不利益に働く能力、もしくは対価の相称



 父親のメリットは”座標指定型瞬間移動”だったらしい。らしいというのは俺の前でメリットを使用することは無かったが、父親の荷物整理をしていた時に能力証明書を見て知った。

 当人、及び触れている対象を指定した座標に瞬間移動できるメリットだそうだ。住所もしくは経度緯度がわかれば、実際に訪れたことがなくとも移動できるらしい。

 そういえば、運送系の会社に勤務してたんだっけ。確かにそのメリットがあれば運送業は引く手あまただろう。住所さえわかれば正確に荷物を届けることができるのだから。それも一切本人は移動することなく。

 それだけ優秀なメリデメを保有しているなら、メリデメが発現しなかった俺を捨ててもおかしくない。と思う。だからといって母親も一緒に捨てるのはおかしいと思ったが、メリデメが発現する子どもが産めない女は不要と感じたのだろう。

 その頃からだったと思う。


 俺って何のために生きてるんだろ。


 と思い始めたのは。俺がメリデメを発現していれば両親が離婚することは無かったかもしれない。そもそも俺が生まれてこなければ別の子どもが生まれ、その子が優秀なメリデメを発現させてたかもしれない。


 まぁ、やっぱり俺って何のために生きてるんだろ。


 母親は俺が思っていることがわかっていたのだと思う。だからではないと思うがより一層、愛情を感じることができた。口癖の「お金の心配はいらないよ。やりたいことがあったら遠慮しないでね。」はそんな俺を気遣った言葉なのだろう。不器用な母親なりの愛情のこもった言葉だ。それは不安にさせないための呪文。




 そんな呪文ももう聞くことができない。

 母親は今、棺に納められている。不慮の事故だったらしい。よくある美談だ。轢かれそうになっている子どもを助けてそのまま自分が轢かれた。すぐに病院へ運ばれたが結果は空しく、そのまま目を覚ますことはなかった。突然のことすぎて言葉はおろか、涙すら出てこない。何もできない俺を見かねてなのか、葬式の準備などは、母親の会社の方が手伝ってくれた。母親は職場の方にかなり好かれていたらしい。一人になった俺のことを気にかけつつ、母親のために多くの方が泣いている。



 葬式は火葬を選んだ。思い出の品を同じ棺に入れ、共に弔ってもらえるのだという。俺はアルバイトで貯めたお金で買ったのに渡すことのできなかった母親の誕生日プレゼントのネックレスを入れることにした。向こうでつけてくれることを願って。



 棺に入れる際に母に触れた。

 冷たい。本当に死んだんだ。ようやく実感した。もう会えないのだと。もうあの呪文を聞くことができないのだと。目の前が歪んで母親の顔が見えない。どんなに目をこすっても歪んでいる。あぁ、泣いてんだ俺。これは涙だ。どんなに拭っても溢れてくる。




 「もう一度話してぇよ、、、」




 その時、母親の手が動いた気がした━━━





【後書き】

初めまして。

ページを開いていただきありがとうございます。

お暇な際にでも読んでいただき、お時間があればコメントいただけると

めちゃくちゃはっぴーな気分になります。

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