017
【前書き】
開いてくださりありがとうございます。
そしていつも、リアクション・ブックマーク・コメントをいただきありがとうございます。
少しでもこの小説を楽しんでくださいませ。
「まずはごめんなさい。勝手に説明した気になってたよ。」
「いえ、謝らないでください。聞かなかった俺も悪いです。」
「聞けなかったんだよね。つばめくんは優しいから、無意識に僕はそこに漬け込んでいたのかもしれない。」
「別に俺優しくなんて無いですよ。」
「今もそうやって謙遜するだろ。優しんだよ。」
気恥ずかしい。
そんなに優しいって言わないでほしい。
「つばめくんはほぼ母子家庭だったよね。甘え方とか知らないし、いつも僕の機嫌とか気にしながら生活してるよね。」
「いや俺もうすぐ二十歳ですよ。今更甘えたりしないですし、機嫌を伺うなんて当たり前じゃないですか?」
正直に言って甘え方はわからない。
母と暮らしていたときは、仲は良かったけど、負担をかけたくなくて悩み事なんて言わなかった。お金だって負担になりたくなくて中学のときから新聞配達のバイトをしていたし、高校に入ってからは掛け持ちも始めた。
働き始めてからは当然クレームをもらう日もある。
そんな経験から機嫌を取るなんて当たり前にしてきた。
「つばめくん、それは当たり前ではないんだよ。」
「・・・・・。」
「つばめくんは自分が思っている以上にすごい人だよ。」
「あ、あの・・・・恥ずかしいです。」
『ちょっと!イチャつくために時間作ったんじゃないのよ!ちゃんと話なさーーい!』
宇田津さん、奥の部屋に入ったと思ってたけど、こっそり聞いてたんだな。
いや心配してくれてたんだな。
言うだけ言って、奥の部屋に戻っていった。
ていうか、本当にあの時と同じ警察なのか?喋り方も違うし・・・・
って、そんなこと考えてる場合じゃない。
「あの説明って。」
「そうだね。まずは僕のメリットについて説明するよ。」
「生成系ですよね。」
「そう。ここで話すのは何を生成できるかってこと。」
「たしか、系統を判別できるアクリス版とか作ってましたよね。って、あれなんの物質なんですか?生成系って要は物質生成ですよね。」
「僕が生成できる物質は、ちょっと説明しずらいんだけど・・・・」
「え、説明してくれるための時間なんじゃないんですか?」
「いや、そうなんだけどね。難しくてね。簡単にいうと”この世に存在しない物質の生成”だよ。」
生唾を飲み込んだ。
そんなメリットが存在するのか?
でも確かに系統によって放つ色が変わる物質ってなんだ。
「そんなメリデメ存在するんですか?」
「まぁそうなるよね。でも事実だよ。」
「でも手のひらサイズであればいろんなものを生成できるって前に。」
「それはまぁ嘘ではないよ。生成できる範囲はちゃんと手のひらサイズだよ。」
「銃とか作れるって・・・。」
「作れるよ。この世に存在しない物質でね。」
「チートじゃないですか?」
「まぁそうだね。僕の想像したこの世に存在しない物質の生成が可能だよ。でもそんなに簡単じゃないんだけどね?」
「と、いいますと?」
「僕が想像して生成した物質は、この世に存在したことになるんだよ。つまり想像した同じ物質を量産することはできなんだ。」
って、ことは基本的に生成したものは一品もの?
あのアクリル板はこの世に一つしかないのか。
それであれば、義務教育であのアクリル板がなかったのも納得がいく。
確かにあれがあれば、すぐにメリデメ鑑定が可能になる。系統だけでも判別できればまだメリデメが発現していない人も、開発期間を短縮できたはず。
量産できないのは本当なのだろう。
「では、宇田津さんのアンクレットにはどのような効果があるんですか?」
「精神干渉系メリットに干渉を受けなくするモノ?だよ。」
「なんで疑問形なんですか?てか、すごすぎません?」
「うん、すごいのかな。でももう殆ど作れるものがないんだ。若気の至りと言うか、メリデメの研究成果といいますか・・・・。すでに思いつく限りのものは作成し尽くしちゃったんだよね。あははー。」
「あははーって、でも理解できます。もし同じメリットを俺が持っていたらすぐに使い切ってそうです。」
「でしょー。あ、そうそう。だから宇田津くんに触ってもつばめくんのメリデメが発動することはないんだ。」
納得だ。でもそんな貴重なものを宇田津さんに?
「質問です。水面さんは宇田津さんになにか弱みを握られてるんですか?」
「な、なんでそう思うんだい?」
「いや水面さんのメリデメで生成したってことは一品モノなんですよね?そんな貴重なものを渡すなんて、 よっぽどのことがあるんじゃないかと。」
「ん〜。そうだね・・・。その〜・・・」
『元彼よ。』
「おい宇田津くん!」
「え!付き合ってたんですか?ていうかどっから聞いてたんですか!」
「いや、その付き合ってたって言っても学生の頃の話だし、半年くらいで別れたし、元彼っていうか、ただの同級生だよ。」
「その割には動揺がすごいような・・・」
『水面さんの言ってることは本当よ。でも付き合ってたかどうかは怪しいところよね。未だに名字で呼び合う中。付き合ってたときも別に名字だったしね。何も進歩してないのよ。私たち』
仲良さそうな雰囲気だったけど、過去に付き合っていたのか。
でも当時から苗字呼びって、なんで付き合ったんだ?ウブ同士だったのか?
聞きたいことが増えてしまった。
「まぁ、若気の至りだよね。」
『ちょっと!私と付き合ってたことを黒歴史みたいにしてない?』
「してないですよ。」
「まあまあお二人もと、そのへんにしてください。ちょっと色々と聞かせてください。」
その後、様々なことを聞かせてもらった。
二人が付き合ってたのは大学生のとき。
好き同士で付き合ったわけではなく、水面さんが宇田津さんを守るために偽装で付き合っていたとのこと。
守るとは、宇田津さんの心理的距離の改ざんを利用しようとした者たちからそれらを防ぐため。
利用は、好きな人が親友に取られた。だから別れさせてほしい。であったり、好きな人がいるから、付き合えるようにしてほしい。など大学生らしい欲望であるということ。
ずっと守られるのは嫌だと感じ、宇田津さんは警察を志願したとのこと。
半年で別れたのは、付き合い始めて5ヶ月過ぎたあたりから宇田津さんへのメリットの依頼はなくなったからとのこと。
別れてからも、腐れ縁のような関係で、宇田津さんが警察として事件を任されるようになってからは、度々水面さんに調査協力を依頼するほどには仲が良いらしい。
極稀にサシ飲みに行くのだとか。
「って、え?水面さんって飲みとか行くんですか?」
「僕だってそれくらい行くよ。付き合いだからね。」
「ご飯も食べるんですか?」
『食べないよ。飲むだけ。』
「ちょっと宇田津くん、答えなくていいよ。恥ずかしいな。」
やはり水面さんはご飯を食べないのか。
尚更俺の作ったものだけ食べる意味がわからない。
「もしかして、水面さんがご飯食べない理由ってデメリットが関係してるんですか?」
「つばめくん。これは注意だけなんだけど、デメリットに関する質問はNGだよ。これは僕だけじゃなくて、保有者全員にだよ。」
「すみません・・・・。質問です。デメリットに関する質問をなぜしてはいけないんですか?」
『それがその人にとっての最大の弱点になるからだよ、つばめん。だから私も私のデメリットに関しては教えないし、つばめんのデメリットを聞こうともしない。デメリットに関する質問はご法度だよ。気をつけてね。』
「わかりました。かなり理解できました。ありがとうございます。」
『さて、つばめんと水面さんの話もだいたい終わったし、訓練と行こうか!」
【後書き】
若気の至りって誰にでもありますよねー




