016
【前書き】
開いてくださりありがとうございます。
そしていつも、リアクション・ブックマーク・コメントをいただきありがとうございます。
少しでもこの小説を楽しんでくださいませ。
まさか朝食だけで食パン3斤も消費するなんて思っていなかった。
俺がつけていたフレンチトーストは4枚。
水面さんが食べたいがために、スーパーの買い出しついでに追加の食パンを買って来ていたのだ。
と、いうか色んな種類のフレンチトーストを作った。いや作らされた。
ノーマルフレンチトースト、アイス乗せフレンチトースト、はちみつたっぷりフレンチトースト
甘いのに飽きたのか、しょっぱいフレンチトースト、それを使ったサンドイッチ。
俺もファミレスでありえないくらい食べたけど、この人も大概だろ・・・。
「いやぁ、食べたね。朝食でこんなに満足できるなんて本当につばめくんはすごいね。」
「・・・こ、コーヒー淹れましょうか?」
「うん、お願いしようかな。つばめくんの淹れたコーヒーもまた格別だからね。」
俺はこの人になんでずっと口説かれてるんだ?
ほんとうに謎だ。
そんな事を考えながらも俺はコーヒーを淹れる。
それにしても、なにか忘れてるような・・・
「あ、俺のメリデメについて!」
「え、なに。忘れてたの?」
「いや、なんかはぐらかされてる気がして・・・。ずっと口説いてくるし・・・。」
「だから口説いてないって!料理を褒めてるのは本心だよ!下心あって口説いてるとかじゃないよ。」
そう笑いながら水面さんは答える。
でも次には真剣な表情に変わった。
「つばめくん。つばめくんがメリデメの制御をして常時発動状態を解除しないと、きみは近い内に死ぬよ。」
「えっ。」
「デメリットにはならないデメリットがあるのを伝えたのは覚えてる?」
「体力とかエネルギー消費とかのあれですか?」
「そう。今のつばめくんは常に走り続けてるに近い状態だね。常にメリデメを発動させてるってことは、常に体力を削っているのと一緒なんだよ。」
「ど、どうしたらいいんですか?制御ってどうするんですか?」
「申し訳ないが答えられないんだ。いや、説明のしようがないって方が正しいかもね。」
「?」
「つばめくんは階段を上がるときに、段差がどの程度の高さなのかを測定して、どの程度足を上げればいいか。とかいちいち考えてないでしょ?それと一緒で要はこれまでの経験と
感覚の問題なんだよ。」
じゃあ今はどうしようもないのか?
このまま体力尽きて死ぬってことか?
「安心して、つばめくん。そろそろ来るよ。」
「来る?」
ほぼ同時にインターホンがなった。
「お客様でしょうか?」
「まあ、うん、まぁお客さんかなぁ?僕が出るね。ちょっとまってて。」
「はい・・・わかりました・・・」
待つこと3分。水面さんが戻ってきた。宇田津さんを連れて。
予想外の人物に思わず声が出てしまった。
「え、宇田津さん?」
『おはよー、燕くん。元気?』
「あ、はい。元気?です。」
『ハッハッハッ。疑問形だね。それは元気じゃないっていうんだよ。水面さん本当に私でいいの?』
「うん、僕じゃ教えられないからね。同じ系統であれば教えられることもあるでしょ。」
「あの、俺抜きで話が進んでいるようですが、どういうことですか?」
『え、水面さん説明してなかったの?あちゃー、全く水面さんはただでさえ口数少ないんだから、こういう重要なことは伝えておかないと!』
「うん。僕もそれは思っていたところだよ。」
水面さんはすこし誇らしげに言った。
いやいや全然誇らしげにすることじゃない。本当に大事なこと喋らなさすぎて正直困ってるんだぞ!
『はー、燕くんも災難だね。こんなのの助手をすることになるなんて。』
「いえいえ毎日良くしてもらってます。水面さんには感謝しかないですよ。」
『うわ。本当にいい子だ。水面さんの助手なんてもったいないよ・・・。ま、そんな話はおいておいて。つばめくんのメリデメの先生を本日務めることとなりました。改めまして宇田津心音っていいます。今日は警察じゃないから、口調は軽めだけど、よろしくね!』
「メリデメの先生?ですか?」
『そ!燕くん。いやつばめんって呼ばせてもらうね。』
「つばめん・・・。」
『つばめんと同じで私は精神干渉系のメリデメ保有者。水面さんに頼まれて、つばめんのメリデメ制御するのを手伝いに来たんだよ!』
「同じ精神干渉系・・・」
『そ!私の場合はメリットは心理的距離の改ざん。私自身には使えないんだけど、例えば好き同士を嫌いあってる犬猿の仲にしたり、初対面同士を親友のような関係にしたりできるものだよ。』
「素敵なメリットですね。」
『ハッハッ。そんなこというのは、つばめんくらいだよ。こんなメリット。戦いの火種にしかならない。』
「そんなことない!」
思わず叫んでしまった。
またやってしまった。
『どうやら、水面さんの言うことは本当なんだね。つばめん、私の手を握ってくれる?』
「そんなことしたら、思っていることを強制しちゃいます・・・・」
『大丈夫だよ。これがあるから。』
そういいながら見せてきたのは、ただのアンクレットだった。
シルバーを基調とした、ブラックのラインが入っているどこにでもあるようなデザインのアンクレットだ。
「アンクレットがどうしたんですか?」
『まぁ握ってみなって。』
アンクレットつけただけで変わるのか?
正直不安だ。
水面さんにも目を向ける。ただ頷くだけ。信頼にみちた表情だ。
「どうなっても知りませんからね!」
俺は勢いよく宇田津さんの手を取った。
「・・・・・・あれ?宇田津さん今ナニも考えてないんですか?」
『そんなわけないでしょ。ナニも考えてない人なんていないよ。』
「でもどうして・・・・」
『言ったでしょ。このアンクレットをつけてるからだよ。』
「詳細は僕から説明させてもらうよ。あれば僕のメリットで作ったアンクレットだよ。」
「水面さん、そう言えば生成系でしたね・・・って、水面さんが作ると何かあるんですか?」
『ちょっと水面さん。本当に何も説明してないの?』
「ま、まぁ聞かれなかったし?ちょっと殴らないで!」
『信じられない!助手なんでしょ!助手にするんでしょ!信頼してるんでしょ!口下手なのはいいけど、説明不足はいくらなんでもつばめんが可愛そうだよ。私ちょっとコーヒーでも勝手に飲んでくるから、二人だけで話し合ってきな。さもないとつばめんは警察に勧誘するし、水面さんには私の希望するモノを作ってもらうからね!』
そう言い残すと、宇田津さんはキッチンへ向かい勝手に冷蔵庫にある缶コーヒーを持って、奥の部屋に入っていった。
「あ、ごめん。口下手なんだ・・・・。今からちゃんと説明するよ。」
「はい・・・・。」
「と、とりあえず、そこのソファに座ってもらえる?」
水面さんは少し緊張しているように思える。
さっき、水面さんに宇田津さんがいっていたことも気になる。
”助手にするんでしょ!信頼してるんでしょ!”
きっと水面さんは宇田津さんに俺のことを話していたんだろう。恥ずかしい。
座ってから3分。沈黙が続いたが、ゆっくりと水面さんが口を開いた。
【後書き】
そう言えば、どんな瀬高でどんな顔立ちなのかとか書いてないですね。
それはまたいつか。