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残された者に祝福を  作者: 鳥居之イチ
第一章 俺は母を殺してしまったのだろうか。

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【前書き】

開いてくださりありがとうございます。

そしていつも、リアクション・ブックマーク・コメントをいただきありがとうございます。

少しでもこの小説を楽しんでくださいませ。





 「まず、君のメリデメの話をする前に、約束してほしいことがある。」


 「約束ですか。」


 「そう。約束事は簡単だけど、大変なこと。今後むやみにメリデメを使用しないこと。」


 「そ、それだけですか?」


 「それだけじゃない。君のメリデメは今までの未解決事件を解決することができたり、強力な軍を率いることができるほどのものだ。」


 「・・・。」


 「怖気づいたかい?無理もない。メリデメとはそういうものだ。」


 「そういうものなんですか・・・。」


 「僕はいつも考えてるよ。メリデメなんてものがこの世からなくなってしまえばいいと。いや、これはいずれお話するとしよう。それで約束できるかい?」


 「約束はできると思います。でも質問です。”むやみに使用しない”とはどういうことでしょうか?」


 「君のメリデメは今後様々な手続きを得て、君のメリデメとして登録されることになる。そうすれば君のメリデメを悪用しようと考える輩から何かしらの接触があると考えられる。」


 「そういったときには、俺の命を優先的に考えろってことですか?」


 「その通り。でも君はつい1ヶ月ほど前までメリデメが発現していなかった。いや発現していることに気がついていなかったただの一般人だ。急に今後自分の命が狙われる可能性が出てきて何がなんやら。と言った思いがあるでしょう。」




 確かに話が急でついていくことができているか、理解はできても納得ができるか。不安が残る。いや不安しかない。




 「俺のメリデメの詳細を聞いてから、考えてもいいですか。」


 「それもそうだね。簡潔にいうと君のメリットは願望の強制に似たモノ。デメリットは感覚の自己投影と強制に伴うエネルギーの消費。だね」


 「願望の強制?感覚の自己反映?」


 「詳細を説明しよう。まず君のメリットは願望の強制に似たモノ。対象に触れ、対象の願望や想っていることを口にすることで、願っていることを強制的に実行させることのできるモノだよ。対象が例え死んでいてもね。」


 「死んでいても・・・それって。」


 「そう、君の母親が生き返ったように見えたのは、君が君の母親の願望を叶えたからだよ。」


 「願望を叶えた・・・。」


 「そう、葬儀で母親に触れたと言ったね。その時に何かを想ったんじゃないのかい?」


 「も、もう一度話したい。と思いました。」


 「それは君の母親の願望だったんだよ。でもそれは君の願望でもあった。だから生き返らせたと勘違いをしたんだね。おそらく死者の場合は死ぬ直前で想っていたことが反映されると想定できる。それは先程の実験でモルモットを触ってもらったことで検証はできている。」


 「あ、さっきの・・・」



 「赤ゲージの子たちには、願望と呼べるものをなるべく叶えてきていた子。青ゲージの子たちは、申し訳ないが食事の量を減らしたりした子。生きてる赤ゲージの子を触った時に、お腹が空いた。といっただろ。その直後暴れ始めた。これは食料を求めたがための行動だね。青ゲージの子に触れたときは悲しい感情を抱いたのだろう。餌がもらえずに悲しい感情になっていたモルモットだったからだね。君がその感情を口にした後あの子は涙を流した。」


 「そうだったのですね。ありがとうございます。それでメリットは。」


 「デメリットは対象者の願望や願いの自己投影とエネルギー消費。エネルギー消費の方は簡単。ファミレスでの異常なまでの食欲を見れば一目瞭然だね。これはエネルギーの消費量が異常だったから。これはメリットを初めて使用した時によくあることだよ。どの程度の能力を行使すればよいのかわからない状態であれば、どれだけエネルギーを消費するか、どれだけのエネルギーを注げばよいかわからないはず。だからこれには慣れるよ。大丈夫。問題はもう一つの願望の自己投影だね。今までは安全な願望だけで終わっているからね。」


 「どういうことですか?そんなに問題視することでしょうか?」


 「”話したい”や”空腹”といった感情は、即叶えることができたからだよ。」


 「?」


 「君のデメリットは対象者か君自身がその願望を叶えるまで持続すると考えられる。母親のときも、モルモットのときも願望をすぐに叶えることができた。一つを除いて。」


 「それはおかしいです。俺は、母とモルモットの2匹でしか発動していないはずです。願望を叶えるまで持続するというのは、断言するには早いと思います。」


 「いや合ってる。君がメリデメを使用した回数は5回。母親とモルモット2匹と、そして・・・君自身だ。」


 「え?」


 「君は生まれてこなければよかった。つまり死にたいとそう願ったのは母親の葬儀中だったねと言ったね。」


 「そうですが・・・もしかして。」


 「そう、君は母親にメリデメを発動させたと同時に、自分自身にもメリデメを発動していたんだよ。生まれてこなければよかった。という願望を。その結果君自身は栄養を取らないという選択を取っていた。ま反動でたくさん食べてたけどね〜。」


 「でもおかしくないですか?それだったら、俺は今も死にたいと想っているはずです。」


 「そう、でも僕あった時に後メリデメを使用したんだよ。これで5回。その時の僕の感情は君のメリデメに対する研究心だよ。」


 「研究心・・・あっ」


 「そう、君が君自身のメリットに対して調べてほしいと感じたのは、僕の願望が君に投影されたからだよ。でもこれで証明は完了だ。デメリットは上書きされる。」


 「上書き?」


 「そう、君のデメリットである、感情の自己投影は1つまでしか感情の投影はできない。」


 「なるほど・・・。」


 「では、まとめよう。君のメリットは生物に触れることで願望を読み取り、生物が生きている場合は君自身かその対象が願望を叶えるまで、死んでいる場合はその対象者が願望を叶えるまで行動を強制する。デメリットは願望の自己投影とエネルギー消費であり、願望の自己投影は、読み取った願望を自身に反映し、その願望は願望が叶うまで感情を蝕む。でも感情は、重複することはなく、読み取った順で感情の上書きがされていく。」


 「・・・ありがとうございます。俺を救ってくれて。」


 「言っただろ。君は母親を生き返らせてなんかいないし、殺してもいない。加えて言えば死ぬ直前すら君と話したいと思うほど、君のことを愛していた。大丈夫。君はずっと救われていたんだよ。あと、君のメリデメは残された者に祝福すら与えることのできるものだよ。誇りに思うといい。」





 涙が止まらない。俺はやっと自分に自信が持てたかもしれない。この19年間。自信ずっとほしかった言葉をもらえた気がする。




 「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます・・・」


 「それで、約束できるかい?むやみにメリデメを使用しないと。」


 「はい。できます。」


 「うん、ありがと。そして君のメリデメは今この瞬間に”国家機密”となった。」


 「え?どういうことですか?」


 「君のメリデメは非常に危険だ。」


 「き、危険ですか?」


 「危険も危険。国家転覆なんて赤子の手をひねるくらいに簡単にできるくらいに危険だね。もし殺人鬼にメリデメを発動したらどうなる?」


 「そ、それは・・・。」


 「殺人をするまで行動を強制する。」


 「で、でも殺人鬼なんてそう出会えるものじゃないし。」


 「心理状態を操作すればいい。これはメリデメじゃなくて可能だよ。人を殺すように仕向ければいい。それだけ。」


 「それって簡単じゃないじゃないですか?」


 「至って簡単だよ。今ここでやり方を伝えると、今後に関わるかもしれないからそこは伝えないでおくけど、空腹状態を作りたいのであれば、ご飯を与えなければいい。それだけ心理状態を操作するのは簡単なことだよ。」


 「な、なるほど・・・・それで俺はどうなるんですか?」


 「どうなる?」


 「国家機密扱いになるんですよね?俺。国の研究所に拉致されたりするんですか?」


 「あははっ。違うよ。僕の目の届くところにいてもらうだけで大丈夫。もちろんプライベートは確保するよ。それ以外は仕事扱いで・・・そうだ、僕のところでアルバイトしないかい?もちろん無理強いはしないけど。」


 「えっと、その・・・本当にいいんですか?」


 「それって・・・」


 「俺、1ヶ月以上バイト欠勤状態なんでもう今のバイト先行きづらくて。でもお金は必要だし。俺で良ければ働かせてください。あ、でも大学に行きながらでもいいですか?」


 「僕も君とたくさんメリデメについて語りたいし、僕の話を聞きたいと言ってくれたよね。忘れてないよ。大学も問題ない。母親が通わせてくれた環境だろ。卒業までは必ず通いなさい。」


 「あ、ありがとうございます。」


 「うん、それじゃあ改めて僕の名前は水面鷹人(みなもたかと)。君の名前を君の口から聞かせてくれるかな?」


 「はい、俺の名前は火野燕(ひのつばめ)と申します。本日からよろしくお願いします!」





【後書き】

第一章はこれにて完結です。

この次に閑話を挟み、第二章に続きます。


まずは、第一章を読んでくださりありがとうございました。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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