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STEP1 弓を覚えよう

ルークに弓を教わる約束をして数日後。

入金を確認してみると、金貨20枚が支払われた。

今回競り落とされたのはドラゴンの爪。以前オークションに出された時は15枚だと聞いていたから相場よりそこそこ高い値段までつり上がっているらしい。

本来なら生活費に金貨1枚を残して残りの19枚を家族に送るのだが、今回はルークへの指南代として金貨1枚を、弓代、そして消耗品である矢の代金として少し多めに金貨一枚分を残して、17枚を家族に送金した。


A級冒険者の直接指南が金貨1枚で足りるのか、という疑念はあるものの、足りなければ、そこは付き合いの長さもあるのでルナは、次のオークションの支払いまで待ってもらって後払いする、という形をとることにした。


そして初心者用の弓は銅貨10枚、矢は10本で銅貨5枚だったはずなので、そこそこ良い弓を買った上で、練習用の矢を何百本買ったとしても足りるだろうと見込んでいた。


ルークから勝手に贋作を掴まされるよりは俺が見繕う、と言われていたので、こっちが指南代、こっちが弓矢代と言いながらルナが金貨2枚を渡すと、ルークはバシッとルナの頭を叩いた。


「指南代なんてもんを用意できるんだったらその金で飯を食え!」


正当報酬だと思って渡した金貨に文句を言われたルナはムッとした。その食事代を稼ぐために弓を覚えたいのだとあらためて主張すると、ルークは呆れたように大きくため息を吐いた。


まぁルナだもんなぁ、そんな簡単に変わるわけないわなぁと言いながらもルークは支払い分はきっちり稽古をつける、と言いパーティメンバーに2週間ほど仕事を休む旨を伝えに行った。

そのついでに弓を見てくるからまずは腹ごしらえをしておけと命じられたルナは、何を食べていいかわからずに戸惑った。


(…なに、食べよう。金貨1枚あれば本当は2ヶ月は余裕で生活できるけど、移動馬車とかにお金残しておきたいからあまり使いたくないなぁ…)


そう思いながら保存用にと売られていた安価な乾燥パンを当分の食事に当てるために購入して、その1つをもそもそと食べていると、話をもう済ませてきたのかルークが歩いてくるのが見えた。


「悪ぃ、またせたな。弓の目星はつけてきたがルナの体に合わせないといけねぇから食事が終わったら着いてきてくれ…って、まさか飯はそれひとつとか言わねぇよな??」


ルナはパンを飲み込んだあと、今食べ終わったよと言うと、ルークは再びため息を吐いた。

ルナの購入した乾燥パンは、安価で腐敗もしにくいからと旅では重宝するものの、普段の食事にするものでは無かった。

少なくとも、ルナより稼ぎの悪い初心者ランクのE級の冒険者でさえ、普段は乾燥していない普通のパンを食べる。


根っからひもじさが身に付いているルナは自覚してないが、ルークから見れば食事をしたとは言えない量と質だった。


「…まずは食事、と言いたいが俺も早く弓を合わせたい。後で一緒に食事するとして武器屋に行かねぇか?」


そう言って連れていかれた武器屋でルークがルナに選んだのは小型の弓だった。

構造はシンプルだが素材に拘った逸品であるその弓は女性でも引き易い伸縮性のあるものだと店主に説明をされたルナは、ルークと店主に言われるがままにその弓を購入し、初心者向けの弓を数百本購入した。


「ルナも伸縮袋を持ってて助かったよ」


あの量を持ち運ぶのはさすがに面倒だと笑うルークに、ルナはこくりと頷き肯定した。


ルナとしても伸縮袋…いわゆる四次元ポケットと言われるような空間が内部に広がる袋であるのだが、ルナはその中にドラゴンやらキングオークやら、オークションに出していない災害級やそれに準ずる素材を山のように入れていた。

一気に流れると市場が混乱するからやめてくれと言われた結果、いわゆる高級素材が有り余っている。迂闊に外に置いて盗まれても困るものばかりであるためルナも伸縮袋に関しては躊躇することなく良いものを使うようにしていた。


そうして、初心者向けの狩場と呼ばれる、比較的弱いモンスターの生息するエリアで弓の引き方、狙いの定め方、タイミングや獲物の見つけ方などを指南されながら何百本と放つ。

ルークが居ない時も訓練を続け、何度も矢を放つうちに、ルナもコツは掴めたもののどうしても飛距離が出ないと伸び悩んだ。


そのことを改めて相談し、実際に矢を放つところを見てもらったところ、今度はルークが頭を抱えてしまった。


ルークから見て、筋は悪くない、むしろルナの忍耐強さや集中力は鍛えがいがあると思っていたし、1度教えたら分かるまで練習を繰り返して、分からない時はどう分からないのか説明をしてくるルナの指南はやりやすい、とも思っていた。

実際にルナは上達が早く、動く的…もといモンスターにも何百回目には命中させられるようになっていたし、教えてまだ1週間も経っていないのにそこらの初心者よりも命中率は高いと言えるほどになっていた。


打てば響く、教えればきちんと飲み込んでくれるルナに教えるのはむしろ楽しいし、S級冒険者が弓を使うとなれば弓の知名度も上がり初心者の選択肢にも弓が選ばれる可能性も増える。そういう意味でも是非ともルナに覚えてもらいたいとルークもやる気に満ちていた。


実際に、指導している部分に関しては問題はなかった。


ただ、圧倒的に、筋力がないことを除けば。


ルナは魔法に頼り切りなタイプの冒険者であり、移動するための体力作りはするものの、攻撃手段は魔法一択であった為、鍛えるということと無縁で生きていた。故に筋力が圧倒的に足りていない。


「まずは、トレーニングだな、筋肉をつけなきゃ飛距離は出ねぇ。…が、その筋肉をつけるためにまずは飯を食べる習慣をつけなきゃダメだ」


ルークが付きっきりで指南している間にルナの食事の様子も観察していたが、どうにもルナは乾燥パンひとつで済ませてしまう癖があった。いくら鍛えようとしてもこれでは栄養が足りず、筋肉もつくわけが無い。


ルークとしては、せめて普通のパンと肉を食べてもらいたいところであるがルナは節制が身に染みており肉は贅沢品という思考を辞められずに仕留めたモンスターも全て売却し、矢の補充に当ててしまうというのを見てきたからこそ、何とかしなくては行けないという使命感に駆られていた。


ルークが街の食堂に連れていく途中に食の大切さを説明していると、ルナはぷくっと頬をふくらませた。


「そのご飯のお金を作るための弓の訓練なんだってば…」


ルナは拗ねたようにそう言い返すも、ルークは納得していないようにルナの腕を触る。


「だから仕送りを辞めればいいんだよ、っつーか、仕送りっつーのは自分の生活安定してからするもんだろ。無理して仕送りするから、こんなに細くなっちまって。そりゃあ飛距離も出ねぇわ」


筋肉つけるにはある程度脂肪がいるだぞ、と真剣に語るルークにルナは困ったように眉をひそめた。


「ルーク、それは分かったけどここ街中、セクハラに見えちゃうよ?」


筋肉に脂肪がいるのは知ってるけどさぁと、言いながら手をそっと振りほどくルナと正反対にルークは自分の発言に今更気がついたのか慌てふためき頬を赤らめた。


「す、すまんっ!」


「大丈夫だけど、矢をもう少し買いたいからお金使いたくないんだよねぇ…」


「お前なぁ、弓矢の資金の半分も残ってるんだから大丈夫だろ?ある程度命中率も上がってきてるんだし矢も回収できる程度に上手く射れているじゃねぇか、銀貨30枚残ってるんだ、半分くらい食費に回せ。っつーか、うちのパーティで一旦普通の食事経験した方が良さそうだからうちのパーティに臨時加入しないか?」


ルークとしてはまずは17枚も金貨を送金する必要は無いと思っている。

金貨1枚でも普通に考えれば大金だ。市民であれば2月暮らし、欲しいものも買える程度には余裕の持った生活ができる。

資金援助がないと生活できない程の借金持ちでは無い限り、十分どころか有り余るはずなのだ。


それに、病弱な妹の薬代として毎回少なくとも金貨十数枚送金するより、王家に頼み事のできるS級冒険者なのだから、神殿の中でも1番治癒魔法に長けた神官を呼んで、それこそ送金してる17枚を使って治癒させてしまうことだって可能だ。長期的に見るならそっちの方が安い。


…とお節介は焼きたいものの、そこまで踏み込むにはまだ関係値も浅い。ルークは、一先ずは体を鍛えるためにご飯を食べること、ひいてはルナが自身のためにお金を使えるように、使うことは悪ではないと教え込むのが先だと考えた。


だからこそ、ルークは自身のパーティにルナを誘ったのだ。ライバル視しているグランがルナにちょっかいをかけてくるのが予想出来てしまったが、放っておけないS級冒険者への心配が勝ってしまったから。

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