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2/15 思い立ったがグットディ


「で、その後何か進展あった?」


「いや・・・。特に何も・・・」


 ワイワイと笑顔の溢れる2年2組の教室で、はぁ、と大きな溜息をついたのはツバメの親友、畠山ナナ。ユウキはいつも彼女に恋の相談にのってもらっていた。


「マジなにしてんの? 家も隣で、学校どころかクラスも一緒。部活まで同じなのにさぁ! 指スマ大会なんてしてる場合!?」


「なんかその・・・。ゴメンナサイ・・・」


「どうしてアンタはいつもここぞって時に臆病なんだろね〜」


 ナナは最後のねの字を、クレッシェンドに上げて言った。

 ユウキはどうも肝心なところでチキンになってしまう傾向にある。ユウキもそれは認めたくないが自覚はしている。毎回チャンスを事ある毎に潰し、相手を振り向かせるようなアクションも起こせない。

 ユウキはナナの熱視線から目を背け、受け流した。


「あっ。明日って開校記念日だよね? 部活あるの?」


「いや、部活は休みの日だが」


「じゃぁ明日、ツバメとどっか出かけたら?」


「いやいや! いきなり誘ったりなんかしたらおかしいだろ!」


「ん〜。それもそうか・・・」


 ナナは眉間にシワを寄せ、何やら考えているようであった。ナナが両側頭部に人差し指を立て一休さんの如く思惑してから、10秒ほど二人の間で沈黙が続いた。そして、閃いたようにナナは目をクワッと見開く。


「そうだ! じゃぁこういうのはどう?」


「あい?」


 ナナが提案したのは、至極単純な作戦であった。

 まずナナが明日ツバメを遊びに誘い、どこかにでかける。そこで、待ち伏せをしたユウキが偶然を装って登場。その後、ナナがどこかへ消えてユウキがツバメとふたりっきりになる、というもの。


「ちょっと無理ねーか・・・?」


「どの辺で?」


「とりあえずお前はどういうていで消えるつもりだよ」


「あそっか」


 またしてもナナは眉間にシワを寄せて悩み始めた。腕を胸の前で組み、目をつむって首を傾げている。そして勢いよく開眼した。今回はさきほどよりも時間は要さずに済んだようだ。


「急用ができたぁって言えばいいんじゃない?」


「んな安直な・・・」


 その時、昼休みの終了を示すチャイムが鳴り響き、二人の作戦会議は強制的に終了させられた。


「まぁそういうことで!」


「そういうことって、おい!」


 ナナはユウキの言葉を完全に無視し、立ち上がって自分の座席へと向かっていった。

 その途中、座席に座っているツバメに話しかけ、何やら会話しているようだった。


(もう約束、しちまったか・・・?)


 案の定この時ナナはツバメを明日遊びに誘い、承諾をもらっていた。このことをユウキが知ったのは、授業中にナナから回ってきた手紙を見てからだったが。

 その文章のノリからして、ナナはこの状況を楽しんでいるようにしか見えなかった。



*** *** ***



 明日決行となった『偶然出会ってそのまま二人きり』大作戦。

 この作戦、詳細はというと、まずツバメとナナが映画に向かう。ここで重要になるのは、ナナが二人分の前売り券を買ってしまっていることだ。

 映画の前に、偶然を装ってユウキが参入。ナナは急用ができたといってその場から立ち去り、その前売り券を二人、つまりユウキとツバメに渡す。こうすれば、二人で映画を見るしかなくなる。

 もちろん見る映画は純愛ラブロマンスで、二人の間も急接近、というわけだ。


「んな簡単にいくかよ。ってか、前売り券とかどうすんだ」


「もう持ってるよ〜ん。いやぁ彼氏と見ようかなぁ〜って思ってたけど、二人のためだもん」


「マジスか・・・」


「大丈夫だって! それにもうツバメ誘っちゃったし、なるようにしかならないよ」


 まぁ、そういうことで! と会話を断つのに非常に便利な台詞を残し、ナナは教室を出た。ナナは帰宅部のためこのまま下校だが、ユウキは部活へ赴かねばならない。


「お〜いユウキ。早く部活行こゥぜ」


「ん? あぁ」


 ユウキに後方から話しかけたのは、ユウキの親友、音羽おとはねレンジ。レンジもユウキやツバメと同じ、陸上部に所属している。

 とはいっても陸上部の部員はユウキ、レンジ、ツバメの3人しかいない。


「レンジ、お前また告られたんだって?」


「まァーな」


 レンジは、男のユウキが納得するほどのイケメンで、性格も良く、根性もある。足も速く、100メートル走では県トップレベル。

 レンジ曰く、女は目で殺せるらしい。


「でもあんま好みじゃなかったからさァ」


「贅沢野郎め・・・」


「なァに言ってんだ。お前だって、ツバメちゃん以外に告られたって嬉しくないだろォ?」


「ばっ、バカ野郎!!」


 ユウキの顔は火照り、体温が急上昇した。ふざけ半分でこのピュアな

男の純情を弄ばれるのは、とても癇に障る。

 レンジは赤くなったユウキの顔を見て、狼のように大きく鋭い目を三日月状にして笑った。


「ははっ、何照れてるんだか」


「ちゃかすなこらぁ!!」


 レンジはポケットに両手を収めながら逃走。ユウキはその後を全力で追いかけた。



*** *** ***



「ふぅー」


 ユウキは疲労にまみれた息を自室に垂れ流した。今日もツバメにいいところをみせようと張り切りすぎたのかもしれない。


「明日かぁ・・・」


 ユウキはベッドに仰向けになるように倒れ込み、二つの手のひらの上に頭を重ねた。視界に映るのは少しくすんだ白色の天井と、天井に設置された明かりだけ。


(ん・・・待てよ・・・? もしかしたら・・・)


 ふと、あることを思い出した。

 そしてそこから、あることを思いついた。


(いや・・・少し無理があるかも・・・)


 突然提出された書類に、ユウキの脳内会議は大波乱となっていた。


(でも・・・いけるかも・・・。これなら・・・)


 ユウキは今まで、自分からこれといった行動は起こせなかった。今回の二人きり作戦もナナあってこそなのだ。

 だからこそ、突如脳内に出現したこの提案を行動に移すことができたなら、少しはツバメとの関係に変化が起こるかもしれない。そう信じてやまないユウキは、少し強引でも実行することにした。

 ユウキは、部活のせいで枝のようになっていた足を床につけた。そして木製に見立てたプラスチック製のドアを勢いよく開け、階段を降りる。


「母さーん!! ちょっと聞きたいんだけどー!!」

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