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元騎士団のおっさん伝説のピンクビキニアーマーになる ~魅力を添えて~  作者: トリミング中の噛み犬


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第91話 伝説の三姉妹物語

 マーシャとイリーナという【ペガサスライダー】の姉妹の、手荒い歓迎を受けたコスモ達であったが、その後に現れた、リンティス魔導公国の公妃フリーニアの案内で空上都市ナクラティスへ向かっていた。


 空上都市ナクラティスの出入口は、地上から続く長い坂道が1つのみで他には無い。


 敵の侵攻する道を絞る狙いもあるが、機動力に優れた地上の兵は居ないので主に商人や旅人、冒険者の出入りを想定した造りとなっている。本格的に攻める場合は、先行して空から【ペガサスライダー】の天馬騎士団が出るのも理由の1つだ。


 空上都市ナクラティスに入ると、山の上にあるとは思えない町並みが広がっていた。地上にある都市と同じように、見通しの良い大通りはどこまでも続く長さで終わりが見えない。


 切り立った断崖には、岩を積んで造った小高い壁が造られ町を囲っていた。町を歩く人々も女が多く、男の姿は少ない、だがペガサスが翼を広げたように、生き生きと生活しているのが印象的である。


 町の中心部へ進むと城壁に囲まれた、こじんまりとした小さな城が見えて来る。


 元々は貴族のクリマが住んでいた屋敷を、城塞化するために改築したもので、皇帝ウェイリーの居るヴィオーラル城と比べて小さいが、高さは2階建てで横に広がるような特徴を持ち、屋敷であった名残りがある。


 フリーニアとマーシャ、イリーナがペガサスに騎乗しながらゆっくりと歩き、コスモ達を城の前まで案内すると、ペガサスを門に居た兵士に預けて城内を案内する。


 屋敷を改築しただけあって、内装は以前のままで、煌びやかな装飾品に豪華な造りのシャンデリアなどが目立っていた。長い廊下には部屋の扉がいくつも並び、その中で特に大きな両扉の前に辿り着くと、フリーニアが立ち止まって外から声をかける。


「大公殿下!マーシャとイリーナを連れ戻しました。それと冒険者のコスモ殿とジョストン領の領主リフィス殿も到着されました」


(フリーニア様は僕の事を知っていたのか……)


 自分の名前を言われた瞬間にリフィスが驚いていた。フリーニアとは過去に面識は無い、それなのに自分の事を知っていたのだ。


 英雄のフリーニアに知られていた嬉しさもあったが、公妃という立場であっても、常に情勢や情報収集は欠かしていない事にも気付く。やはり国を率いる者は常日頃から国のために動いているのだ。


「フリーニア、ご苦労だった。中に入ってもいいぞ」


 両扉の中から公王ヴィレオンらしき若い男の声が聞えて来る。その声を聞いたフリーニアが両扉を開けて、コスモ達を中に招き入れる。


 部屋の中は執務室を少し改築したようで、暖炉が1つに魔法書が多く並んだ本棚がいくつも壁に沿ってある。私室である名残りを感じさせつつも、リンティス魔導公国の国旗である、ペガサスと竜巻を交差させたような紋章が旗に刺繍されて部屋の隅に掲げてあった。


 そして部屋の正面にある、執務を行う机の椅子に1人の男が座っていた。長い緑髪を絹で編んだ布で抑え、綺麗に整った眉に憂うような目、年は20代ほどだろうか若々しい顔で、服は白と黄緑を基調とした魔導服に近い貴族服を身にまとっていた。


 その男の前までフリーニアが歩み寄るとその場で跪く。それに合わせコスモとリフィス、マーシャとイリーナと続いて跪く。


「大公殿下、我が天馬騎士団の恥ずかしい所お見せしてしまい、申し訳ございません」


「いや、いいんだフリーニア、話し合いの場を勝手に抜けたのはそこのマーシャとイリーナだからね。貴女に責任は無い」


 2人の会話の流れから、どうやらマーシャとイリーナは何かの話し合いの最中に抜け出しコスモ達を襲いに来たようだ。それとフリーニアはヴィレオン大公の母でも関わらず主従関係をはっきりとさせている。


 身内であっても主従関係をはっきりとさせる事で、周りの者を律する狙いもあるのだろう。


「恐れ入ります大公殿下、後でこの2人には棒叩きの罰を与えておきます」


「「えっーーーーー!」」


 フリーニアと同じく後ろで跪いていたマーシャとイリーナが悲痛な叫び声を上げていた。棒叩きという名から、臀部にきつい一発をお見舞いする罰なのだろう。


 いきなり他国の来賓を襲う者達に対して、その罰でも軽いくらいだ。


 すると椅子に座っていたヴィレオンがコスモに目を向ける。椅子から立ち上がって、跪いていたコスモの側まで寄って行くと声をかける。


「君が噂のピンクのビキニアーマーを着るというコスモか……すまないが立ってもらえないだろうか」


「えっ?は、はい大公殿下」


 意味が分からないままにコスモが立ち上がる。立ってみると頭1つ背の低いヴィレオンだが、成人男性の中では高い方だ。コスモの背が高過ぎるのもあるが、それを気にする事なく、ヴィレオンが全身を下から上までじっくりと見つめると、何か納得をしたような仕草を見せる。


「ふぅ……なるほどね」


「な、何か私に不手際がありましたか……」


「不手際どころか完璧さ、どうかなコスモ、1つ提案があるんだけど」


「提案ですか?」


「うん、何、簡単な提案だよ。私の正室になって欲しい、君みたいな美しい女性が伴侶になってくれたらリンティス魔導公国の将来も安泰だからね」


「え、えっーーーーー!」


 突然の告白にコスモが顔を真っ赤にさせ、罰を受けたマーシャとイリーナのような声を上げる。提案の内容はヴィレオン大公の妃となる事であった。そして畳みかけるようにヴィレオンが言葉を続ける。


「コスモとそこのリフィス君の目的は分かっている。私達にスーノプ聖国と連携してバルドニア王国に対抗する願いをしに来たのだろう?」


「そ、その通りですヴィレオン様!」


 跪いたままリフィスがヴィレオンの言葉に反応して肯定する。


「それには我が国も全面的に協力をするよ、もちろんコスモが私の妃となったらね」


「ぬ、ぬぬぬ……」


 突然出された条件にコスモは頭を抱えて顔を真っ赤にして混乱をしていた。


 この条件を飲めば自分達の目的が果たされる、だがそれを飲めばロンフォード領の次期領主セリオスと、バンディカ帝国の皇子ユリーズが黙ってはいないことは容易に想像できる。


 苦悩しているコスモを見たフリーニアが小さく溜め息をつくと、マーシャとイリーナに退室するように命令する。


「マーシャとイリーナは別室で待機してなさい。用が済んだら呼びます」


「「はっ!はは!」」


 マーシャとイリーナが急いで部屋を出て行くと、フリーニアが立ち上がりヴィレオンの側に詰め寄って行く。さきほどまであった凛としたフリーニアの顔が、一気に母親の顔となって行く。


「このバカ息子が!よりによって我が国の救世主となり得るコスモ殿に向かって求婚するとは何事ですか!!」


「母上、王たる者、伴侶がいればいるほど世継ぎが増え、国が栄えると貴女が言っていた事ではないですか」


「確かに言いましたが貴方にはもう、何人もお付き合いしている女性が居るでしょうが!」


「ええ、私に言い寄る女性は多いのでね。ですがこうして誘いの言葉をかけたのはコスモが初めてなんですよ」


 どうやら見た目の良いヴィレオンは多くの女性と付き合っているようで、慣れているのかフリーニアの咎めの言葉に対して飄々と反論をしていた。


 というよりも下々の者が居なくなった途端に、厳格に保っていた主従関係も一気に無くなっていた。それをコスモとリフィスが呆然と眺めていた。


「それに母上、コスモが私の妃となったら嬉しいでしょう?私も私なりに考えているのですよ」


「……た、確かにコスモ殿が身内となれば……義娘になるのか……そ、それはそれで悪くは無いかも……」


 名声と知名度、実力共に申し分ない上に、見た目の美しさは水着大会と庶民の間で流行っている【ビキニパラダイス】で証明済み。


 母親としてコスモは喉から手が出るほどに欲しい理想の義娘であった。コスモに対する求婚を止めようとしていたフリーニアが、いつの間にか言いくるめられ、腕を組み前向きに真剣に悩んでいると、そこへリフィスが苦言をする。


「あ、あの申し訳ありませんがヴィレオン様、それは止めておいた方が良いかと……」


「ん?なぜかなリフィス君、これで君達の願いは叶うだろう?」


「いえヴィレオン様、コスモはすでにある御方から求婚をされていらっしゃいます」


「へえ、それは初耳だね。でも求婚されていたとしてもコスモの魅力ならば不思議じゃない、一体誰なんだい?」


「はい……それはバンディカ帝国の皇子ユリーズ殿下と、帝国貴族のセリオス公爵です」


「……な、なるほど」


 2人の名前を聞いた瞬間にヴィレオンの顔が暗くなって行く。ユリーズ、セリオスも大陸中に名を馳せる知名度があった。


 ユリーズは帝国の皇子として、セリオスは神器の継承者、賊の討伐やテイルボット領での海賊討伐で名を上げていた。


 もしこの2人が相手となるとヴィレオンも、バルドニア王国とバンディカ帝国の両国を相手にしなければならなくなる。特にセリオス、ユリーズの2人のコスモに対する執着心は凄まじい物がある、他国に嫁いだと知られれば総力を挙げて取り戻しに来るだろう。


 さすがのヴィレオンも小さく溜め息をついて、コスモの求婚を諦めざるを得なかった。


「ふぅ……リフィス君の言う通り、今はその2人を敵に回すのは止めておいた方が良さそうだね」


「ありがとうございますヴィレオン様。懸命なご判断かと……」


「ユリーズ皇子とセリオス公爵の活躍は、リンティス魔導公国にも轟いている……少し残念な気がするが、仕方がないな……」


 リフィスの苦言でコスモが窮地を脱すると、ヴィレオンが再び椅子に戻り、フリーニアは少し残念そうな顔をしていた。するとヴィレオンが緩んでいた表情を、厳しい表情に変えて本題の話を始めていく。


「では話を戻そう。書状でも伝えた通り、今の我が国は大きな問題を1つ抱えている。それがさきほど居たマーシャとイリーナの2人の事だ」


「ああ、あの変わった武器を持った2人ですね。さっき襲われましたが、物凄く攻撃が軽かったですね……」


「まあ2人の実力も関係があるのだが、それだけでは無い。話が変わるが、バルドニア王国には数々の伝説が語り継がれている、その1つにペガサス三姉妹物語というものがあるのを知ってるかい?」


「……聞いた事があります。何でも【超獣(ベヒモス)化】した白嶺大熊(シルバビッグベア)を王命を受けた【ペガサスライダー】の三姉妹が協力して倒すという空想の物語ですよね」


「リフィス君は詳しいな、元々は白嶺大熊の恐ろしさと、仲間と結束する重要性を子供達に伝えるために脚色した物語なのだが、マーシャとイリーナはその物語を本当の事だと信じ込んでいるんだ。そして何が何でも自分達が伝説の三姉妹になるんだと躍起になっている。そこから先は……フリーニア、貴女から話をして欲しい」


 話の流れからして、少しずつだがコスモとリフィスは嫌な予感を感じ始めていた。


 話をしていたヴィレオンも、その先を自分の口から言いたくないのか、天馬騎士団の長である母のフリーニアに説明させようとしている。


「わ、分かりました大公殿下……実はマーシャとイリーナには年下の弟が居るのです」


「は、はあ……」


「その……とても言いにくい事なのですが、マーシャとイリーナは弟を妹にしようとして……執拗に男の人のあそこを……つまり……」


「フリーニア様!そこから先は言わなくても結構です!何となく察しました!!」


 フリーニアが公妃として口にしてはいけない言葉を、ぎりぎりの所でリフィスが止める。マーシャとイリーナは鋏を半分にしたような変わった剣を愛用している。


 そしてそれを使って挟み斬るような攻撃をコスモに仕掛けて来た。という事は伝説の三姉妹になるには弟を妹にする必要がある。

 ならアレを切るしかないのである。


 その凶行からマーシャとイリーナには【シザーシスターズ】という、不名誉な二つ名が付けられていた。


「もしかして、その弟が2人の姉に嫌気が差して、自分の管理する領地にバルドニア王国の人間を引き込んだ……とかですかね?」


 コスモが苦笑いしながら半分冗談で予想した事を話すと、ヴィレオンとフリーニアの表情が一瞬だけこわばる。それを見たコスモとリフィスが、内心で『当たってるんだ……』と困惑していた。


 リンティス魔導公国の騒動はカイネル王の仕業では無く、内部で起こった不祥事だったのだ。珍しく軍師のエーシンの予想が外れていたが、余りにも酷い理由である。


 しかし事実をコスモに知られた事で、恥と感じたフリーニアが顔を真っ赤にさせて、腰に携帯していた短剣を取り出すと自分の腹部に添え始める。


「ヴィ、ヴィレオン大公殿下……やはり、この私が切腹して罪を償いたいと思います!!」


「お、落ち着け母上!コスモなら何とかしてくれる筈だ!」


「このような恥ずかしい事を人に知られたら、私は、私は生きていけません!!武人としてけじめをつけさせて下さい!!」


「コスモすまない!母上を止めてやってくれ!」


「は、はい分かりました!!」


 乱心するフリーニアをコスモが慌てて羽交い絞めにすると、手から落とした短剣をリフィスがすかさず拾い上げる。もう厳格な雰囲気はどこかへ行ってしまったかのような荒れようだ。


 バルドニア王国に領地を奪われた理由が、余りにも酷すぎて友好国や他人に知られたくなかったのだろう。フリーニアが落ち着きを取り戻すと、部屋の横にある長椅子へ座らせる。


 ヴィレオンもフリーニアが落ち着くのを確認すると、大きく息を付いて話を続ける。


「そこまで話すつもりは無かったのだが、コスモ達に知られたからには正直に話そう。マーシャとイリーナの弟はガリオンと言って、我が国では1人しか居ない魔法も使える竜騎士【ウィンドドラゴンライダー】なんだ」


 【ウィンドドラゴンライダー】は風魔法が操れる上に飛竜を使って移動が出来る良いとこどりの職である。適性の難易度がかなり高く、なりたいと思ってもなれない希少な兵種である。


「ガリオンは姉達に比べて優秀で、将来を期待されていたんだが、あの狂った姉達に毎日のように追われてな……とうとう我慢の限界が来たのだろう。今の時期を狙って反旗をひるがえしたのだ」


「な、なるほど……妹になれって言われた理由がなんとなく分かりましたよ……」


「となると、ガリオン殿は武力では無く言葉で説得した方が良さそうですね」


「ああ、リフィス君の言う通り、今は前公王である父のクリマが、捻嵐魔導団(ツイストオーダー)を引き連れ説得に向かっている。天馬騎士団の長である母上に気遣ってね……そこでマーシャとイリーナには弟のガリオンに手を出さないように、約束を取り付けるつもりで呼んだのだけど、ちょうどコスモが到着したという報を聞いて自分達の力を試したいと挑んだ訳なんだ」


 話を聞けば聞くほどに、マーシャとイリーナの振る舞いに呆れて来るコスモとリフィスであった。帝国では鉱山に送られるか、家を取り潰されてもおかしくは無いレベルでの失態である。


 それが出来ないのもマーシャとイリーナは、公国の中でも有力な家柄で私兵も多く抱えている。戦力の無いリンティス魔導公国にとっては、大事な戦力である事も影響していた。


「そこでコスモに頼みがある、もし君達がガリオンの説得に成功して帰参させたら、君たちの要望は何でも聞こう」


「何でも……という事は私の騎乗できるペガサスや、希少鉱石のオルコン鉱石【キングストーン】も提供して頂けると?」


「オルコン鉱石……もうそこまで知られているのか。もちろんだとも、私に二言は無いよ」


「ふむ……」


 今回の問題も簡単では無い、ガリオンだって限界まで我慢した上で祖国を裏切る苦渋の決断をしている。その覚悟は並々ならぬものだろうし、そこをどうやって説得すればよいかコスモには良い案が思い付かない。


 すると隣にいたリフィスが真っ直ぐな目でこちらを見つめる。


「コスモ、悩む必要は無い。これが果たせれば戦局は大きく変わるんだ、受ける以外に選択肢は無いよ」


「……言うようになったなリフィス、そんじゃリンティス魔導公国のために一肌脱ぐとするか!」


 リフィスはもう一肌脱いでる格好だよ、と突っ込みを入れそうになるのを我慢していた。


 こうして対バルドニア王国との戦況を変えるべく、リンティス魔導公国の協力、騎乗するペガサス、オルコン鉱石を得るために、コスモが覚悟を決めてヴィレオンからの頼みを受ける事にした。


「それは助かる、ガリオンの居る領地はバルドニア王国と国境に面した南にある。そうだな、案内は……」


「大公殿下、案内役はマーシャとイリーナに頼みたいと思ってます」


「あの【シザーシスターズ】をか?私でも扱いに困る、おてんば娘なのだがコスモは大丈夫か?」


「なあに短い期間ですが、みっちりと騎士団式の訓練を受けさせてやりますよ!そうすればちっとは曲がった性根も治るでしょう!」


「うわあ……あの訓練をするのか……ちょっと引き受けた事を後悔したかも……」


 コスモは案内役にマーシャとイリーナの姉妹を指名する。一度、手合わせしただけで2人の鍛錬不足をコスモは分かっていたからだ。


 それに伝説の三姉妹に近付きたいと本気で考えているなら、コスモの提案に乗って来ると計算もしていた。もちろん付き添いのリフィスも強制参加である。


「コスモの訓練か……あの2人には丁度良いだろう。コスモ、すまないけどマーシャとイリーナ、2人の事をよろしく頼む」


「任せて下さい大公殿下、きっちりとリフィスのような一端の騎士に仕立ててみせますよ」


「へえ、リフィス君もコスモの訓練を受けているのか……これは楽しみだな」


 ヴィレオンがリフィスの顔を見ると、コスモの訓練の対して期待を膨らませていた。ヴィレオンも王に足る人物眼を持っている。その目から見てリフィスは頼もしい男として映ったのだろう。


 こうしてヴィレオンとの話を終えたコスモ達が部屋を出ると、別室で待機していたマーシャとイリーナに声を掛けて案内役を頼む。


 ついでに目的地まで向かう間、伝説の三姉妹になれる特訓を実施すると伝えると、何も知らないマーシャとイリーナはもろ手を上げて喜んでいた。


 だが横で見ていたリフィスは、コスモが悪魔のような笑顔を浮かべている事に気付いていた。


 ガリオンの領地とは言え元はマーシャ、イリーナと3人で運営をしていた領地だ。2人にも責任を取ってもらう義務がある。


 空上都市ナクラティスからは、歩いて2日ほど離れた場所に目指すガリオンの領地があった。もちろん道中は訓練を兼ねて走って向かう事になるので、ペガサスの騎乗は当然禁止だ。


 マーシャとイリーナが、いきなりコスモの騎士団式の訓練の洗礼を受けると、不満を言い始めるがリフィスの時と同様に、丸太を2人の前で思いっ切り引っ叩き、脅しをかけて無理矢理走らせる。





 一方、前公王クリマが率いる捻嵐魔導団が、ガリオンが立てこもる領地に到着して1日が経過していた。


 すでにガリオンの領地には、バルドニア王国の地上軍が布陣をして戦う構えを見せていた。だが冬の時期で竜騎士達の姿は無い、戦いを仕掛けるなら絶好の機会なのだがクリマは攻撃をしないで、自軍の陣地に留まっていた。


 本陣に設置した大型の天幕の中では、部隊長達が集まり軍議を開いていた。


「クリマ様、相手は援軍も見込めない地上軍、進むしかありません!」


「それは分かっている、だがあの布陣どうも嫌な予感がする……」


 クリマと呼ばれた男はフリーニアと同年代で、緑色の髪に髭を蓄え、皺が目立つがヴィレオンと同じ様に美形な顔をしていた。そして革製の厚手のコートの中に、ローブのような魔導士用の軍服を着用し、腰には上級魔法書【ヴォルテクサー】を携帯していた。


 軍議では、攻め入る進言をする者が多く居たが、クリマは決断できないでいた。決断できない理由はガリオンの領地にある地形にあった。


 リンティス魔導公国の領地の多くが山岳地帯となっていて、ガリオンの領地も同じく山岳地帯となっているのだが、領地の入口となる道が左右に山を囲まれた谷間のような地形になっている。


 布陣していたバルドニア王国は、その谷間の道を少数の守備兵で守っていた。守備兵の数が少なすぎるし周囲には誰もいない、まるでクリマ達が攻めて来るのを待っているようなのだ。


 斥候からの知らせにも、待ち伏せをしている伏兵の姿が報告されていた。それもあってクリマが悩んでいた。


「例え罠があろうとも、無理にでも突破せねばガリオンの説得すら出来ないのです……クリマ様、ご決断を」


「むう……ここで戦力を失うのは痛手だが、バルドニア王国に領地を易々と渡す訳にはいかぬ……やむを得ないか……」


 雪解けの時期が来れば、バルドニア王国から本格的な後詰めが入って来る。そうなればもう、ガリオンの説得だけでは解決できなくなる。


 時間の無いクリマが辛そうな顔で苦渋の決断をするが、その時、見張りをしていた兵士が慌てた表情で天幕へ駆け込んで来る。


「ほ、報告!」


「一体どうした!バルドニア王国が攻めて来たか!」


「いえクリマ様!空上都市ナクラティスからの援軍が参りました!」


「援軍?私は聞いていないが……一体誰が来たのだ?」


「はっ!それが……天馬騎士団のマーシャとイリーナ、それとかの有名な冒険者コスモ様と、ジョストン領の領主リフィス殿です!」


「な、何!あの冒険者のコスモが援軍だと!」


 クリマはジョストン領にコスモが居た事は、リフィスの軍師グストの書状で把握をしていたが、ガリオンの問題を解決した後でコスモと会おうと考えていた。


 しかしコスモが援軍に来たという事は、すでにその件を知られている、ということに気付く。


 そんな事を考えていると、天幕の中にコスモが入って来る。後に続く様にリフィスが、そして体中が泥で汚れたマーシャとイリーナが体を震わせながら入って来る。


 突然入って来た4人を見て天幕に居た部隊長達が騒ぎ始める。

 特にマーシャとイリーナの敗残兵のような格好を見て、どこかで一戦を交えて来たのかと勘違いをしていた。


 その中でコスモが、ヴィレオンと顔の似たクリマを見付けると自己紹介を始める。


「クリマ様ですね、私は冒険者のコスモ、そして横に居るのがジョストン領の領主リフィス、後ろに居る小汚いのはもうご存知ですね」


「貴女がコスモ殿か、それにリフィス殿……君の事は良く知っている。何せ我が隊を完膚なきまでに叩きのめしてくれたからね」


「クリマ様、その件についてはこの場で謝罪を致します」


「その必要は無いリフィス殿、私がこうして生きているのも、ジョストン領の貴族達が手心を加えてくれたお陰だからね」


 まだクリマが大公であった頃、国境の諍いを口実にバルドニア王国とジョストン領の連合軍と戦っていた時期があった。


 圧倒的な戦力差とカイネル王の巧みな戦術によって、戦況がかんばしくないと判断したクリマが撤退を決める。その追撃戦を任されたのがリフィス麾下の

貴族達であった。


 ジョストン領の貴族の中には、幼年のリフィスを担ぎ出すバルドニア王国カイネル王のやり方が気に入らない者達が居た。


 それがエシェラント伯爵の亡き父や、三代続けて仕える古株の貴族達であった。リンティス魔導公国の撤退戦を、追撃をする振りをして逃がしていたのだ。


 それはカイネルにでは無く、リフィスにだけ従うのだという帝国貴族としての意地、そして意思表示でもあった。


「まあ2人はともかくとして、マーシャとイリーナの姿は一体何なのだ……」


「ああ、この2人なんですが、伝説の三姉妹になりたいと言うので、私自ら鍛えているのですよクリマ様」


 コスモとリフィスの援軍にも驚いていたクリマだが、マーシャとイリーナの異様な姿を見てさらに驚いていた。

 するとマーシャとイリーナがすがりつくように、クリマの足元へすり寄って来る。


「クリマ様、罰なら受けます!こ、この頭のおかしな女から私達を……いえ私だけでも良いのでお救い下さい!」


「マーシャ姉、卑怯だぞ!自分だけ助かろうなんて!クリマ様、心を入れかえて生きますから、私をお救い下さい!」


「えっ?ええ……」


 2人の嘆願にクリマが顔を引きつらせていた。普段は家柄を盾に、傲慢な振舞いをしていたマーシャとイリーナが、体を震わせて許しを請うていたのだ。


 一体どのような訓練を受けたら、このように従順になるのかクリマは困惑をしていた。そのようすを見ていたコスモがさらに邪悪な笑みを浮かべ、クリマに進言をする。


「クリマ様、ガリオンの居る屋敷までは私達4人が先行しましょう」


「それがコスモ殿、どうやら敵は道中に罠を張っているようでな、我が軍もそれで足止めされているのだ」


「なら私1人で罠を突破します。突破したその後にクリマ様達がゆっくりと進軍されると良い」


「コスモ殿、貴女の実力を疑う訳では無いが、相手は賊と違い軍なのだぞ。そう簡単に行く訳が無い」


 コスモが賊の討伐で名を上げている事は周知の事実だが、相手は統率の取れた軍が相手である。練度も違えば戦い方も違う、クリマの反応は当然のものと言える。

 そこでリフィスが後押しをする。


「もしうまく行かないとしても敵は罠を必ず使います。それを見れば、クリマ様達も対策ができるし、進軍も容易にできるでしょう。コスモにやらせてみても損は無いかと……」


「ふむ……リフィス殿がそこまで言うのであれば、先陣を任せて見るか」


 本来であれば一番槍は騎士の誉れとして、クリマは配下の貴族に任せるつもりであったが、今回の目的はあくまでガリオンの説得と領土奪還、マイナスがゼロに戻るだけで、名誉はあるが報奨は何も無い、マーシャとイリーナの起こした問題の尻ぬぐいである。


 他の部隊長からも反対の意見が出ないのを確認すると、クリマが改めてコスモに先陣を頼む。


「ではコスモ殿、かたじけないが先陣をお任せしたい」


「任せて下さい!クリマ様、ヴィレオン様との約束もあるんで、必ず突破して見せますよ」


 正式な命令をクリマから受けると、コスモが二の腕を叩きながら自信たっぷりに返事をする。そしてリフィスの方を向くと作戦の内容について説明する。


「俺が先陣をきって突っ込むから、後に続いてくれリフィス、しっかり距離を取っておけよ!」


「もちろん、どんな罠があるか分からないからね」


「それと実戦訓練も兼ねる予定だから、マーシャとイリーナも止まらずに

走って付いて来いよ!いいな!!」


「ば、馬鹿な……この女は頭がおかしい……」


「罠を張る敵陣に突っ込むなんて……」


 マーシャとイリーナが絶望した顔になる。

 今から罠を張った敵陣に突っ込むのだ。どんな戦上手であろうとその状況に絶望するだろう。

 コスモが天幕の外へ出ると敵の布陣を遠目で見つめる。


 その間にクリマが部隊長に進軍の準備をするように指示を出すと、部隊長達が編成を始めて行く。いつでも出陣が出来る事をコスモが確認すると、魔剣【ナインロータス】とハート型の盾を構える。


「いいか!俺の後に付いて来いよ!遅れたら敵の餌食にされてちまうからな、特にマーシャ、イリーナ、これは実戦だからな、覚悟を決めろ!」


「……無茶だ!私達はここでやられるんだ……」


「……伝説の三姉妹になる前に、天に召される事になるとは……」


 涙を流しながら諦めた表情のマーシャとイリーナに、リフィスが優しく言葉をかける。


「君達は僕が守る、だから何も考えずに必死になってコスモを追うんだ、いいね!」


「「リ、リフィス……」」


 リフィスの心強い説得力のある言葉にマーシャとイリーナが、目を潤ませ感動をしていた。今までの道中でもコスモの厳しい訓練をリフィスは淡々とこなし、疲弊しきったマーシャとイリーナを助けていたのだ。


 女所帯で育っていたマーシャとイリーナは、男は取るに足らない存在と軽蔑をしていたがリフィスだけは違っていた。


 2人とってリフィスは課された訓練も楽々と行い、笑顔が素敵で自分達に優しく接してくれる頼りがいのある男なのだ。そのお陰でたった2日間ではあるがコスモの厳しい訓練に付いて来れていた。


「よーし!じゃあ行くぞ!」


 コスモが掛け声と共に一気にガリオンの領地の入口へ走り始める。

 その後方をへろへろになったマーシャとイリーナが走り、殿をリフィスが走る。


 バルドニア王国の守備兵もコスモの姿に気付き、作戦通り後方へ下がろうとするのだが敵が1人だけなのを確認すると、戦力はこちらが上と勘違いをして待ち構えてしまう。


「こっちは10人居るんだ!1人だけなら下がる必要は無い!」


 10人は馬から降りた【キングダムナイト】で鋼の剣と盾を構え、横一列に陣を敷くとコスモを迎撃しようとする。


 その迎撃の構えを見てもコスモは速度を落とさない、それに気付いた守備兵の1人が違和感を感じる。そして間近までコスモが迫ると、ピンク色のビキニアーマーを見て確信へ変わって行く。


「あのピンクのビキニアーマーは……あ、あいつは冒険者のコスモだ!逃げるんだ!!」


 バルドニア王国にもコスモの名は轟いていた。だが一部の兵士の間では、その人離れした活躍と、ビキニアーマーという恥ずかしい格好をしている女が、居る訳が無いと信じられていなかった。


 しかしカイネル王に付き従った竜騎士達によって、事実である事が伝えられると、兵士達は次第にコスモの存在を、信じるようになっていた。


 今目の前にその話の通りのコスモが居るのだ。だが気付くのが少し遅かった。


ドンッ!ズゴゴゴゴゴ!!


 ハート型の盾が目の前にあると思ったら、次の瞬間に自分達が空中に舞っていた。必殺の一撃音と共に中央に居た4人の守備兵が、ぼろきれのように上空へ弾き飛ばされていた。


 その後をマーシャとイリーナが走り抜け、リフィスも続く。残った6人の守備兵は呆然と立ち尽くしてそれを見送っていた。


 先へ進むとコスモの姿に気付いた伏兵の【キングダムアーチャー】が10人ずつ、左右の山の中腹から現れ、交差する様に鋼の弓で矢を一斉に放って来る。

 だがコスモは気にする事無く走り続ける。


ココココココココ……ンッ!


 相手の練度も高く、放たれた矢の16本がコスモに命中するのだが、コスモの【守備】によって矢が弾かれていた。


 有り得ない状況を見て、鼻水を出しながら伏兵が呆然としていると、その後ろを必死に走るマーシャとイリーナ、リフィスの存在に気付く。


 慌てて矢を筒から取り出し、鋼の弓へ添えるとマーシャとイリーナに狙いを定めて放つが、動揺して手元がぶれる。


 だがそれでも6本の矢がマーシャとイリーナの背中に向かって行くと、リフィスが素早く飛び出し、銀の槍の柄の中央部を掴み、片手で素早く回転させると矢を弾き返して行く。


「ふう、コスモの頑丈さに助けられたかな……」


 弓手が動揺して狙いを外してくれたことで、リフィスでも矢を弾き返せていた。もしこれが最初と同じ命中精度なら、完全に防ぎきれなかっただろう。


 ただそれでも、伏兵達の士気を挫くのには十分であった。コスモに続いて簡単に矢を打ち落とす、リフィスという化け物が居ることに伏兵達も、ただ立ち尽くすしかなかった。


 そしてコスモが先へ進むと、左右を山に囲まれた道の終わりが見えて来る。


 そこへコスモ目掛けて、左右の山の上から大きな音を立てて、巨大な岩が転がって来る。


 岩の大きさは直径が大人1人分はあって、人工的に丸く加工した岩である。山の上では投石兵の4人が立って居たが、落とした岩以外に用意している岩は無い。

 どうやらこの落石攻撃が、バルドニア王国の仕掛けた最後の罠のようだ。


 ほぼ同時に左右から迫る巨大な岩に、コスモが足を止め、ハート型の盾を左へ突き出し、魔剣【ナインロータス】を持った右手を大きく振り上げる。そして眼前に迫った右の岩に対して一気に魔剣を振り下ろす。


「剣奥義!【浸透瀑布撃(ペネレイトゴージ)】!」


ガスッ……ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


 マグマメティオスを打ち砕いた技で、右から迫る大岩を叩き付けると、内部から破裂するような必殺の一撃音が響き渡って岩の動きを止める。


 そして岩の周りがひび割れて行き、その隙間から光が漏れると岩が一気に粉々になって散って行く。


 左から迫る巨大な岩はハート型の盾で受け止め、コスモが足を踏ん張らせ力づくで完全に勢いを無くしていた。


「う、嘘だろ……あ、あれを止めるなんて……人間じゃない……」


 そのようすを山の上から見ていたバルドニア王国の投石兵が体を震わせていた。今まで同じような罠を何度も仕掛けてきたが、巨大な岩を砕いたり抑えたりする者は今まで誰も居なかった。


 もし止められる者が居るとしたら、それは竜だけである。


 後ろを走っていたマーシャとイリーナが、コスモの力を目の当たりにして信じられない顔をしていた。


「はあはあ……し、信じられない、あんな大きい岩を破壊するなんて……」


「はあはあ……や、やっぱりあの女はただものじゃない……」


 帝国から送られた称号<インペリアルオブハート>に偽り無し、それをコスモが十分に見せ付けた活躍であった。

 そしてすぐにマーシャとイリーナに指示を出す。


「マーシャ!イリーナ!2人別れて山の上に居る奴らを捕縛して来い!」


「「は、はいっ!」」


 指示を受けたマーシャとイリーナが、背中に携えていた【シザーソード】を手にすると二手に別れて斜面を登って行く。山の上に居た投石兵はコスモの力を目の当たりにして、完全に戦意を失っていた。


 お陰で反抗する事無く素直に指示に従いマーシャ、イリーナと共に下山をしてくる。


 コスモが罠のある道を走ってから、数分で決着がついてしまった。

 道の左右を山に囲まれた、奇襲をかけるのに優位な位置から仕掛けた攻撃が、全てコスモに通用しなかったのだ。


 捕縛された兵士達は肩を落として、信じられないといったようすである。


 捕まえた兵士の1人から、残りの戦力がどのくらいあるのかコスモが聞き出すと、残りは全てガリオンの屋敷に居ると白状する。


 冬の時期になってから、急遽ガリオンから降伏する要請があったことで、バルドニア王国も、大軍を派遣できなかったらしく少数の戦力しか送れなかったのだ。


 しかしその軍を率いて来た将軍が、今回の作戦を立案して罠を仕掛けたのだという。


「俺達は失敗したが、バルドニア王国、西部戦線の将軍グレメンス様が屋敷にいるんだ!きっと将軍が俺達を救ってくれる!」


「グレメンス将軍……名将と呼ばれる男か、一度は俺も聞いた事があるな」


「僕もだよコスモ、面識は無いけど、魔斧【ハイボルトアクス】を使う猛将だとか……」


 捕まっていた兵士が自信をもって言い放つグレメンスという男だが、バルドニア王国のリンティス魔導公国と接する、戦線の指揮を任されている男である。


 実際に戦った事のある者は居ないが、あらゆる戦略戦術に精通していて、本人自身の能力値も高いという噂は、戦場を経験した者ならば一度は聞いたことのある話だ。


「ふん、捕虜の分際で偉そうに!そうやって内情をペラペラ話すとは、グレメンス将軍という男もたかが知れるな!」


「将軍はな、助かる為なら将軍に関わる範囲で話をして良いと申されている!無駄に抵抗して命を失うよりも今日を生き、明日にかけるのが、将軍の訓示よ!」


「う、ううん……何か良い訓示だが、何か引っかかるな……本当にいいのかそれ……」


 マーシャが、内情を簡単に話すバルドニア王国の兵士に罵声を浴びせるが、兵士達もグレメンス将軍の言う事を聞いて、答えてるようだ。


 その事にコスモは少し疑問を抱いていた。よほど自身の腕に覚えがあるのか、それともただ何も考えていないのか、その狭間にグレメンスという男がいるように感じていた。


 そんな話をしていると、後方からクリマ率いる捻嵐魔導団が進軍をしてくる。後ろに居た伏兵達もクリマに捕らえられその後ろを歩いていた。


 砕かれた岩と止められた岩を見て、クリマが難しい顔をするが、コスモの姿を見るとすぐに駆け寄り、感謝の言葉を述べる。


「コスモ殿、言葉通りの一騎駆け見事であった。やはり罠を仕掛けていたな……」


「ええ、どうも時間を稼ぐのが狙いみたいでして、この先に居る兵もそんなには多くはないでしょう」


「確かにな、奇襲や罠という物は少数の者が仕掛ける常套手段、しかし状況が状況だからな、分かっていても進まねばならぬところだった。我が兵を救って頂き感謝する」


 クリマが頭を下げるとコスモが慌てて止める。


「頭を上げて下さい、クリマ様、元々無理を言ったのはこちらです。気になさらないで下さい」


「何、これは私の個人的な礼と思ってくれて良い。それよりも後はガリオンの屋敷に向かうだけだが、この先は開けた平野地帯となっている。罠を仕掛ける所はもう無いだろう」


「えっと……それについてまたお願いがあるのですが……」


「コスモ殿の願いなら聞かなくてはならないな、申して見よ」


「はい、クリマ様達はこの先に本陣を移して待って頂きたい。そして先ほど言った通り、この先は私とリフィス、そして原因のマーシャとイリーナだけで進みたいと思っています」


 コスモが睨み付けるようにマーシャとイリーナに目を向けると2人が慌てて目を背ける。そのようすから今回の問題の原因である事は認識しているようだ。


 コスモとしてはこの先に罠が無いとしても万が一を考え、捻嵐魔導団の戦力温存とマーシャとイリーナ2人に決着をつけさせるために自分達だけで進むと進言をする。


 それを聞いたクリマが少し悩むが、周りにいた部隊長達の顔を見るとすぐに決断する。


「分かった、我々はこの先でコスモ殿の朗報を待つとしよう。それにマーシャとイリーナの2人にも責任を取ってもらわねばならぬからな」


「「えっーーーーー!そんなーーーーー!!」」


「そんなーじゃねえ!ガリオンの屋敷まで訓練を続けるからな!!覚悟しとけよ!!」


「は、はははは……」


 こうしてコスモとリフィス、【ペガサスライダー】の姉妹であるマーシャとイリーナだけでガリオンの屋敷を目指す事になった。


 クリマ達は道の先にある小さな村に本陣を移すと、コスモ達の朗報を待つ事となる。


 その村からガリオンの屋敷までは歩いて1日かかる、その道をコスモ達が走り始め、ある程度進むと途中で止まり筋肉の鍛錬を行い、それが終わるとまた走り始めるという過酷な訓練を行いながら、ガリオンの屋敷を目指して行く。

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