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元騎士団のおっさん伝説のピンクビキニアーマーになる ~魅力を添えて~  作者: トリミング中の噛み犬


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第64話 人質救出作戦1

・コスモ(女)


 元騎士団の39歳のおっさん冒険者

 職業は【ソードアーマー】


 領主騎士団時代に負傷した右膝を治す為に飲んだ森の魔女の秘薬、万能薬の効果により39歳のおっさんモウガス(男)から見た目が20歳前後のコスモ(女)となる

 上皇アインザーによって<インペリアルオブハート>の称号を得るが、それを象徴するハート型の盾と共にビキニアーマーがますます外せなくなる、ある意味呪われた装備と化していた




 ダルダロスの拠点、【海賊の島】に踊り子に変装したコスモと、【北国の狂犬】シャガリアンに変身したパフィが到着する。


 2人の侵入方法だが、隠れる事無く堂々と港正面から小船で乗り込み、港の脇に小船を乗り付けていた。この作戦の考案者はパフィなのだが、心配になったコスモが小声で再度確認する。


「おいパフィ、これで本当に大丈夫なんだろうな?いきなり、お前が倒されたら俺だけじゃあどうにもならないぞ!」


「だいじょうぶいー、こんな強面の男に仕掛ける海賊は皆無ぅー、私だって躊躇したくらいですからー」


「本当に躊躇したんだろうな……」


「0.1秒程ですがー」


「それは躊躇したって言わねえぞ!」


「その時はその時ー、ばれたら一緒に大暴れしましょー、私とコスモさんならーよゆー!」


「……なる様にしかならないか」


 開き直ったパフィの言葉に、コスモが諦観すると両腕を後ろで縄で縛り付け、その縄を握ったパフィが背後に立って砦の入口へと歩いて行く。


 海賊の拠点の港では、2日後に行われるハヌイアムの町の総攻撃に備えて、海賊達が停泊しているガレオン船の修繕や水、食料などを運び入れていた。


 その作業をしていた海賊の1人がコスモ達の姿に気付くと、口笛を吹いて周囲に知らせる。


ピィィィィーーーー!


 口笛の合図に気付いた海賊達が作業の手を止めると、続々とコスモ達の周りに集まり始める。海賊達の手には斧や剣、弓矢などの武器が握られていた。


 その数は100名近い、先の反撃で失った戦力を補って余りある戦力をダルダロスは残していた。恐らく居残り組を含め、砦内や砦外にある海賊の住居を含めればもっと人数が集まるだろう。


 そして案の定コスモの姿を見ても誰も気付いて居ない。ゴンベエ以外の海賊達は、遠くからでしかコスモの姿を見ていない事もあったが、概ね作戦通りでコスモが内心イラつき始めていた。


 その中から1人の海賊がコスモ達の前に歩み出ると、シャガリアン扮するパフィに声を掛ける。


「ちょっとそこの兄さん、ここはダルダロス海賊団の拠点って分かって入って来てるのかい?」


「もちろん知ってるとも、テイルボット領の海上騎士団を打ち破ったダルダロス海賊団だろ。クンカクンカッ!俺の鼻は良く利くんだ」


「……一体あんた何者だい?」


「俺は【北国の狂犬】と呼ばれるシャガリアンってもんだ。ちっとは噂に聞いた事があるだろう?」


「あ、あのスーノプ聖国で大暴れしてた【北国の狂犬】!」


 【北国の狂犬】シャガリアンの名は凶悪さでも有名だが、忽然と姿が消した謎の多い盗賊としても有名であった。もちろんシャガリアン本人はパフィの手によって、消された事は海賊達は知らない。


 その名に海賊達が恐れおののくと、コスモとパフィを囲う様に一定の距離を取る。シャガリアンの悪名もそうだが、何よりその姿がここに居る海賊の誰よりも不気味で恐ろしいのも影響していた。


 すると砦の中から騒ぎを聞きつけた船長のダルダロスが現れる。


「お前ら集まってどうした?作業を止めるんじゃねえ」


「船長、【北国の狂犬】シャガリアンって男が訪ねて来まして」


「【北国の狂犬】だあ?……確かに狂犬って面してやがるな」


 部下からの報告を受けたダルダロスがシャガリアンの姿を見ると、その通り名と同じ顔付きに納得していた。茶狼の帽子にギョロっとした目、発達した犬歯が口から飛び出し、黒い外套の上からでも分かる、立派な体格。


 本物のシャガリアンであると判断にするには、十分に説得力のある風貌であった。


「俺が船長のダルダロスだ、わざわざ遠い北国からお越し頂いた用件はなんだ?」


「クンカクンカッ!……こりゃ出来る男の匂いだな。……何、俺も仲間に入れて欲しいのさ、その手土産にこの女を連れて来た」


「ほお……こりゃいい女だ」


 ダルダロスが踊り子扮するコスモの体を舐め回す様に見回す。当然初対面なのでコスモ本人には気付いていない。


「女、名前は何て言う?」


「あ……えっと……フィオーレだ!踊り子のフィオーレ!」


「フィオーレ……踊り子か……しかし、その割には体がごつい気がするが……」


 偽名を考えていなかったコスモが咄嗟に、フィオーレの名を出してしまう。この事が本物のフィオーレに影響が出るのは、大分後の事である。


 だが洞察力の鋭いダルダロスが、コスモの体付きを見て踊り子なのか疑いを持ち始める。パフィも無理があるとは薄々感付いてはいたが、【踊る】が出来る事を報告で聞いていたので、敢えて踊り子を選んでいた。


 疑い始めたダルダロスを納得させる為、パフィはコスモの耳元で囁く。


「コスモさん、こうなったら【踊る】をして下さいー」


「海賊共が元気になっちまうけどいいのか?」


「今回は戦闘を回避する方針ですー、元気にさせる事で説得力が増すので、問題なっしんぐー」


 領主のレイグの言葉、なっしんぐーが気に入ったのか、その言葉でパフィが【踊る】事で出る影響を問題無しと判断すると、コスモの両手の縄を解き始める。


 縄が解かれると、コスモが疑うダルダロスの前に歩み出る。


「踊り子の妙技、目ん玉ひん剥いてよーく見やがれよ!」


「へっ!威勢の良い女だ」


 ダルダロスが港に置いてある樽に腰を掛けると、コスモを中心に海賊達に囲まれた舞台が整う。


 そしてコスモが【踊る】を実行する。


 コスモがその場に片膝を付いて屈み、顔を伏せて力を溜める。


 そして一気に前方へ飛ぶ。


 力を溜めたので滞空時間が恐ろしく長い。


 空中で片足をくの字にして体を回転させ、大きく両腕を左右に広げる。片足でふわりと着地すると、軸足を入れ替え、上半身を滑らかに仰け反らせながら大きく回転する。


 くの字に曲げた足を前へ突き出すと、独楽の様にゆっくりと回転しながら、円を描く様に移動して全方向に誘惑する様な視線を向ける。そのままパフィの下へと戻ると、その場に座り大きく胸を突き出し、左手を地面に押し付け、右腕を上空に向かって上げる。


 そしてコスモを中心に淡い、赤色のハート型の光が放たれる。周囲に居た海賊達全員に効果が表れ始める。


「う、うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「ち、力が漲ってくるうううううううううう!!」


「へへっ!どんなもんよ!」


 山賊討伐依頼の【情熱の踊り】を披露したコスモだが、以前に比べて段違いに踊りが上手くなっていた。【踊る】事が出来ると分かった後、日課の筋トレに加え密かに踊りを練習していたからだ。


 ちなみにコスモの本来の職業は【ソードアーマー】である。


 疑っていたダルダロスも予想以上の【踊る】の効果に、呆然としていた。


 ハヌイアムの町で手痛い反撃にあって、落ち込んでいた部下達の顔に生気が戻る、いやそれ以上に活気が戻っていたのだ。そして自身も体の奥底から滾る力に震えていた。


「こ、こりゃすげぇ……大陸一って言っても良い踊りだ。何人も踊り子を見て来た俺が言うんだ!間違いはねえ!」


「さあ、俺が踊り子だって信じてくれたか!」


「もちろんだともフィオーレ、今夜でも、もう一度その素晴らしい踊りを披露してくれ!部下達も喜ぶ!」


「だとよ!シャガリアンの旦那……っておい?」


 ダルダロスに踊り子だと信用させる事に成功させたコスモが、先程から黙り込んでいるシャガリアン扮するパフィに目を向けると、恐ろしい事になっていた。


「オフッ……オフッ……グゲッ、グゲゲゲゲ……ハアハアハアハア!!」


 コスモの【情熱の踊り】の効果でパフィがやばい事になっていた。


 大きく見開いた目を充血させ、発達した犬歯からは涎が垂れている。顔中には血管が浮き出て、体の筋肉が膨張して大きくなっていた。息遣いも荒く、最早狂犬そのものと成り果てていた。


 恐らくはパフィが必死に【情熱の踊り】の効果による狂戦士化に耐えているのだろう。


 その変わり様に流石のダルダロスも引いた表情で見つめ、身の危険を感じ始める。


「こ、こいつはやべえ!【北国の狂犬】の名に偽り無しって事か!!」


 ダルダロスが銀の剣を抜くと、シャガリアンに向かって切先を向ける。周りに居た部下も、武器を構え始める。踊りによって海賊全員の戦闘意欲が向上しているが、シャガリアンの異様な姿に圧され攻撃を躊躇していた。


 このままでは作戦が失敗すると感じたコスモが、パフィに小声で話し掛ける。


「しょ、正気に戻れパフィ!このままだとやられちまうぞ!」


「コ、コスモさんの踊りやばすぎー、耐えるのでいっぱいいっぱいですー……うごごご」


 パフィは狂戦士化するのを耐える事で精一杯であった。コスモの表情が曇って行く。このままではパフィの言っていた通り、【情熱の踊り】で能力値の上昇した海賊達全員を相手にしなければならない。


 何が何でもそれだけは避けねばならない。必死にコスモが頭を高速回転させる。そしてコスモが頭に電球が点灯するが如く妙案を閃く。


 シャガリアン扮するパフィの背中に回ると、両腕で取り押さえる。今にも暴れ回りそうなパフィの体をしっかりと固定したのだ。


 すると、ダルダロスに向かって緊張感ある口調で選択を迫る。


「ダルダロス船長!シャガリアンなら俺が抑えられる!今の内に牢屋に案内してくれ!」


「は、はあ?踊り子のお前が何でおさ……」


「ち、力が強い!早くしないとここに居る全員にシャガリアンが襲い掛かるぞ!どうなっても知らんぞっーーーーー!」


「グゲッ!!グゲゲゲゲゲ!!ハアハアハアハア!!」


「いやっ!それは非常にまずい!!こっちだ!案内する!!」


 コスモの迫真の演技と、シャガリアンの容姿に圧されたダルダロスが、銀の剣を鞘に納めると急ぎ足でコスモを牢屋のある場所へと案内する。コスモもシャガリアンを抱え上げ、走って後を付いて行く。


 当初の作戦とは180度違う内容となっていた。手土産となる踊り子のコスモが、シャガリアンの恐怖を手土産に牢屋のある場所へと進んでいた。全くおかしい話である。


 ダルダロス達には何で踊り子のコスモがシャガリアンを抑える力があるのか疑問にも思っていない。そんな事よりも危険人物であるシャガリアンを、一刻も早く牢屋に閉じ込めておきたい衝動に駆られていた。


 緊急時の人の心理を突いた、巧みなコスモの作戦である。


 砦内の通路は迷路の様になっていたが、入口から真っ直ぐ通路を真っすぐ進むと地下に続く階段が見える。そこをダルダロスが駆け降りて行く。パフィの言っていた通り、主要な部屋までの道は単純な構造となっていた。


 牢屋のある広間に出ると、見張りをしていた海賊にダルダロスが慌てて声を掛ける。


「おい!空いてる牢屋が一つあっただろう!早く開けねえか!」


「ど、どうしたんですか船長!そんなに慌てて……ってあばばばば!」


「グゲゲゲッ!!グゲエーーーーーー!!!」


 ダルダロスの後ろでコスモに抑えられた興奮状態のシャガリアンを見張りの海賊が見ると、絶望した表情に変わる。この世とは思えない生き物がそこに居たからだ。


 手を震わせながら牢屋の鍵を取り出すと、空いてる牢屋を急いで開ける。ダルダロスに見守られながら、コスモがシャガリアンを牢屋の中に放り投げると、コスモが急いで扉を閉める。


 そして海賊が震えた手で牢屋の鍵を閉めると、シャガリアン扮するパフィが格子を握り、今にも飛び掛かりそうな勢いで牢屋で暴れ回る。すでに演技の域を超えた、本人になりきった動きだ。


 ダルダロスと見張りの海賊が大きな溜め息を吐き出し安堵する。


 コスモも作戦通りに拠点に侵入できると安心すると一息つく。理由はともあれ、目的の一つ目は果たしたのだ。


「はあー、なんて奴だ。あそこまで狂暴な野郎とは思いもよらなかったぜ……」


「ふー、じゃあ船長、俺も牢屋に入れてくれ」


「……自分から入れてくれって言う奴も珍しいな」


 コスモが笑顔でそう言うと、ダルダロスが戸惑いながら牢屋へと案内する。


「フィオーレには悪いが、生憎空き部屋が無くてな、やかましい小娘と一緒だが仲良くやってくれや」


「誰がやかましい小娘だ!私はアルティナだ!」


 案内された牢屋には先に入っていた領主レイグの娘、アルティナが元気そうにしていた。見張りの海賊が牢屋の扉を開けると、その中にコスモが入る。


 外側から鍵を閉めると、ダルダロスが立ち去る前にコスモに一言伝える。


「夕暮れ時になったら、また迎えに行く。その時にまたあの踊りを披露してくれ」


「ああ分かった、夕暮れ時だな」


「ったく、肝の座った女だ、踊り子にしておくには勿体ねえ位だ。よし、見張りはしっかり頼むぞ!」


「へいっ!」


 そう言い残すとダルダロスが地上階へと階段を上って行く。見張りの海賊が再び、見張りの椅子に戻ると、座り込み牢屋の監視を始める。


 牢屋に入ったコスモが格子越しから牢屋のある広間の構造を確認する。


 地上へ通じる階段は一か所のみで、そこからすぐに四角い正方形の形をした広間に出る。その四隅には牢屋が向かい合う様に設置され、中央には監視用の椅子が2つと机が並べてある。


 普段は2人が交代しながら、24時間監視するのだろうが今は1人しか居ない。息も絶え絶えのロイバン提督に、年若いアルティナ、元ハーバル海賊団の船員10人、この程度の人質ならば1人で十分とダルダロスが判断したのだろう。


 コスモが外の様子を見回していると、奥に居たアルティナが神妙な面持ちで話し掛けて来る。


「お前、確か名はフィオーレと呼ばれていたな?一体何をして捕まったんだ?」


「捕まったというか、わざと捕まった感じかな……」


「わざと捕まった?」


 アルティナにここまでの経緯を詳しく説明を始めると、神妙な面持ちをしていたアルティナの顔が、段々と輝く様な万遍の笑みへと変わって行く。


「なんと!お前があの<インペリアルオブハート>の称号を持つコスモだと言うのかっ!!」


「しっ、しっーーーー!声が大きいっ!!」


「モガモガ……」


「ん?相変わらずうるせえ姫さんだ……ったく」


 興奮したアルティナが大声でコスモの名を出すと、コスモが慌ててその口を塞ぐ。見張りの海賊にはばれてはいない。普段もやたらと五月蠅いのだろう。


 改めて今回の人質救出の作戦を説明すると、アルティナが不安そうな顔になって行く。


「くっ、この事を一刻も早くロイバン提督にも伝えたいが、もう一つ問題があるのだコスモ」


「もう一つの問題?」


「ここには居ないが、私の騎乗する飛竜がどこかに捕まっているのだ」


(確か、アルティナ様はバミーネ様と同じ【プリンセスドラゴンライダー】だったな……)


 ダルダロス海賊団との決戦で、アルティナが捕まった時、騎乗していた飛竜も捕獲されていた。この拠点まで運ばれた事は確認しているが、その後の動向が分かっていなかった。


「賢い子でな、名前を呼べば言う事を聞いてくれる筈だ」


「飛竜の知能が高いのは、山岳部族のラルガーも言っていたな……で、どんな名前なんだ?」


「ポニーナカミュノセイデハディンクルタドウセキニントルネントマルスガモウシテマスチ、と言う名だ!」


「なっがっ!!」


 想像以上の名前の長さにコスモが普通に突っ込みを入れてしまう。なによりも、その長い名前を決めたセンスもそうだが、噛まずに読み上げるアルティナも中々の強者だ。


「世話をする者が大変だと言うので、略してポチでも呼び掛けに応じてくれるぞ!」


「飛竜にポチという名前も中々酷いな……」


「ポチが無事と分かるまでは、私はここを動かないからな!」


「うーん……色々と困った子だなあ……」


 頬を膨らませ意地でも動かないと主張するアルティナにコスモが困惑する。ここでアルティナを失ってしまっては敗戦のショックで臥せているレイグの妻、バミーネが故郷であるバルドニア王国に戻り総力を挙げて、復讐する事は目に見えている。


 そうなると、アルティナを守り切れなかった責任を問われ、帝国を巻き込んだ国同士の諍いに発展しかねない。せめてアルティナの身柄だけでも救出したいのだ。


「分かった、パフィが正気に戻ったら居場所だけでも突き止めて貰う。そして俺が助けに行く、それでどうだ?」


「うむっ!コスモ殿がそう言って下さるのなら心強い。後、ロイバン提督なのだが、容態がよろしくないのだ、今直ぐにでも医者に掛からねば命に係わる」


「隣の牢屋に居た、老齢の騎士の方だな。どこかに【ヒールの杖】があれば良いんだが……」


 コスモが牢屋に入れられる前に、隣の牢屋のベッドで横になっていた老齢の騎士を見掛けていた。確かに顔中が汗ばみ、顔色も良くなかった。


 せめて【ヒールの杖】があればコスモの武器適性で、ロイバンの傷を癒す事が可能なのだ。ただでさえ難しい人質救出作戦であったが、更に問題が山積みとなって行く。


 その問題をどう処理しようか、コスモが牢屋の中で唸っていると扉から鍵の開く音が聞こえる。


カチャカチャ……カチンッ!


 開いた扉からシャガリアンの変身が解けた、いつもの姿のパフィがコスモ達の居る牢屋へと入って来る。だが、いつもの無表情がかなり強張っている。未だにコスモの【情熱の踊り】の効果が抜けきっていない様子だ。


 それでもこの短時間で、狂戦士化を耐えて動ける事は驚異的な精神力である。


「はあはあ……私としたことが、コスモさんの【踊る】の効果を甘く見てましたー……はあはあ」


「パフィ!見張りはどうしたんだ?」


「はあはあ、今はちょっと寝て貰ってますー、その間にー脱出する準備をしましょうかーはあはあ……」


 コスモが格子から外を見やると、広間の中央で椅子に座りながら、豪快にイビキをかいて寝ている見張りの海賊が居た。牢屋の中からパフィが睡眠薬を塗布した含み針を飛ばして見張りの海賊を寝かせていた。


 上皇アインザー専属の暗部として活躍していた【インペリアルダークストーカー】のパフィの成せる技であろう。


 そのパフィにコスモが、夕暮れ時にダルダロスが迎えに来ること、飛竜の事やロイバン提督の容態などを相談する。パフィが静かに聞き入っていると狂戦士化の衝動も治まり、再び無表情に戻って思案する。


「で、その問題を解決出来ればー、すぐにでもEFD(エスケープフロムダルダロス)って訳ですねー」


「EFD?……ま、まあそんな所だ、これはパフィにしか頼めない内容だ。やってくれるな?」


「余裕のよっちゃんですー、ちょっと行ってきまーす」


「あっ、おい!もう行くのか?パフィの入っていた牢屋は誰も居ないんだろ、どうするんだ?」


「牢屋は薄暗いし、大きな黒い外套と茶狼の帽子を木の棒で支えてますのでー、絶対ばれませんー」


 パフィの入っていた牢屋を見ると、確かに背を向けたシャガリアンが座り込んでいる様に見える。流石にシャガリアンの狂気を目の当たりにした海賊が、牢屋の扉を開けて確認する事は無いだろう。


 早速コスモ達の居る牢屋からパフィが出て行く。そして地上へと続く階段を慣れた様子で素早く駆け上ると、影に吸い込まれる様に姿を消して行く。


 後はパフィの活躍次第で今後の救出作戦が決定する。牢屋の中でコスモはパフィを信じて待つ事にした。

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