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元騎士団のおっさん伝説のピンクビキニアーマーになる ~魅力を添えて~  作者: トリミング中の噛み犬


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第63話 海賊の島

・コスモ(女)


 元騎士団の39歳のおっさん冒険者

 職業は【ソードアーマー】


 領主騎士団時代に負傷した右膝を治す為に飲んだ森の魔女の秘薬、万能薬の効果により39歳のおっさんモウガス(男)から見た目が20歳前後のコスモ(女)となる

 上皇アインザーによって<インペリアルオブハート>の称号を得るが、それを象徴するハート型の盾と共にビキニアーマーがますます外せなくなる、ある意味呪われた装備と化していた




 テイルボット領の外海には大小様々な島が存在していた。


 その島々の一つに、断崖に囲われた小さな島がある。人が住むのに適さないこの島はダルダロス海賊団の拠点の島、通称【海賊の島】と付近の村人からは呼ばれていた。


 島の港の周りは天然の岩壁で覆われ、外からは見えない様な構造になっている。その港にダルダロス海賊団が退却を終えて、拠点である海賊の島へと到着していた。


 名が売れている大海賊団だけあって、港も大型船のガレオン船を4隻が停泊が出来る程の大きさだ。停泊したガレオン船から次々と海賊達が降りて来る。


 しかし船から降りて来る海賊達は皆、意気消沈していた。本来ハヌイアムの町から手に入れる筈の奴隷や金銀財宝は手に入れられず、その反対にコスモ達によって多くの仲間が犠牲になったからだ。


 船からは領主レイグの娘、アルティナを筆頭に海上騎士団の人質達が数珠繋ぎの状態で、海賊の砦へと連行されていた。港のすぐ近くには、崖下にある天然の洞窟を利用して造られた石造りの立派な砦がある。


 砦の中の構造は洞窟をそのまま利用しており、蟻の巣の様に部屋が点在している。入団して間もない新米の海賊が、中で迷う事がある程の広さであった。


 その一室の船長室で、魔獣の毛皮で造られた派手な椅子に船長のダルダロスが腰掛け、羅針盤や海図、燭台が置かれた机を挟み、立っていたゴンベエとコスモ達について話をしていた。


 特にゴンベエは情報に無い異様な強さを持つコスモ達について、声を荒げてダルダロスに問い詰めていた。


「おい!ダルダロス!俺の鉄甲船を真っ二つにする程の強力な戦力が居るって聞いてないぞ!一体どういう事だ!」


「落ち着けゴンベエ、俺だって知らなかったんだ」


「本当だろうな?体よく俺達を始末しようって魂胆じゃねえだろうな?」


「それなら、俺の部下を行かせねえよ。今、密偵に探らせているから、直ぐに情報が入ってくるだろうよ」


 ダルダロスはすでにコスモ達の情報集めを密偵に指示を出していた。海上騎士団の勝利に導いたゴンベエがこっぴどくやられたのだ。それに危機感を覚えるのは当然の事である。


 だが、そんな状況でもダルダロスには焦りが無い、旗艦を失ったゴンベエを落ち着かせる様に、静かな口調で現在の状況を説明する。


「いいか、ゴンベエ。数じゃあまだ俺達のが上だ、それに人質が居る。特に領主の娘、アルティナは大きな盾になるんだ、それを使えば無血開城だって夢じゃねえ」


「ふん、確かにな。あの鬼の様な強さを誇る騎士が何人も居るんじゃあ、搦め手が必要だろう」


「それに、人質が居なくても、俺とゴンベエ、同時に違う方面から攻めれば奴らには防ぐ手立てはねえ、ハヌイアムの町自身が人質と同じなんだよ」


「多方面作戦か、戦では常道だな」


「どの道、奴らは詰みなんだよ。制海権のあるこちらがいつでも奴らの首根っこを締められる様にな」


 幾度の海戦に勝利したダルダロスが冷静に状況を分析していた。いくら相手が強いとは言え、主導権はまだまだこちらにある事を理解していた。


 すると、ダルダロスが表情を緩ませ、人質についてゴンベエに確認を取る。


「ところでゴンベエ、俺の言っていた約束の件だが、今どこに居る?」


「あ?えーっと……ジョルセアを必ず生け捕りにするって奴だっけか?」


「そうだ!その見返りにお前にテイルボット領地の運営を任すって約束だろう、あれは俺の獲物だ」


 ゴンベエをテイルボット領の領主をさせる代わりに、ジョルセアの身柄をダルダロスが要求していた。特にダルダロスはハーバル海賊団の船長であるジョルセアに固執していた。


 約定を思い出したゴンベエが、気まずそうにしながら起こった事をそのまま伝える。


「……すまんダルダロス。俺の鉄甲船に乗せていたんだが、奴らに奪われた……」


「なんだと?」


 話しを聞いていたダルダロスの顔から緩みが無くなり無表情になる。次第に体を震わせ始めると腰に携えていた銀の剣をおもむろに抜く。


 そして一気に椅子から立ち上がり机の上に乗って立つと、その切先をゴンベエの顔へと向ける。


 銀の剣を持つ手を震わせ今に斬り掛かっても不思議ではない気迫を放っていた。その表情は鬼気迫るもので、先程の冷静なダルダロスとは別人であった。


 感情を昂らせた状態で声を張り上げながら、ゴンベエに怒声を浴びせる。


「俺はなぁああああ!今まで欲しいもんは何でも俺のもんにしてきたんだっ!!奪われたって何だっ!!」


「お、落ち着けダルダロス!人質に構わず攻撃してくる奴らだったんだ!」


「そんなのは知った事か!いいか俺の獲物を奪おうとする奴は、どんな奴でも生かしちゃおかねえ!!皇帝だろうが神だろうがな!!!」


「くそっ!完全に頭に血が上ってやがる!!」


 ゴンベエの説得にも耳を貸さない程にダルダロスが逆上していた。危険を感じたゴンベエが後ろに下がり、騎士殺しの剣と斧を構えると、ダルダロスと対峙する。まさかの仲間割れが起こってしまう。


「お前も、俺の物を奪おうとしたんだろう……なあゴンベエ!!」


 ダルダロスが机の上から飛び掛かり、銀の剣をゴンベエに向かって上段から振り下ろす。それを騎士殺しの剣と斧を交差させてゴンベエが受け止める。


ギィィィィン!


「くっ、こいつ片手なのに、なんて圧力だ!」


 ゴンベエが銀の剣を受けると、英雄級の【力】を持つ自身と同じ【力】を感じていた。ダルダロスもただの海賊では無く、大海賊団を取り纏めるだけの実力は備わっていた。


 その力にゴンベエが次第に押し込まれ始めるが、隙を見てダルダロスの腹に向かって、蹴りを繰り出し吹き飛ばす。


「フンッ!!」


「ぐっ!!」


ドガッ!ガシャン!!


 吹き飛ばされたダルダロスが、机に激突すると机に載っていた羅針盤や燭台が、地面に落ちて大きな音を立てる。ゴンベエの蹴りが効いたのか、ダルダロスの動きが少し鈍ると、大きな音に気付いた海賊達が部屋の外から入って来る。


「船長どうしたんですか!……ゴンベエてめえ、船長に何しやがった!」


「待てっ!ダルダロスから仕掛けて来たんだ!」


「てめえ!うちの頭に剣を向けるとはどういう事だっ!」


 部屋にはダルダロスの部下、ゴンベエの部下が入り交じり、互いが鋼の剣、鉄の剣を抜き構えると、緊張感が張り詰める。互いの長を攻撃されようとしているのだ、部下達も興奮し始める。


 すると吹き飛ばされ机に寄りかかっていたダルダロスが、そのまま静かな口調で部下に命令する。


「……大丈夫だ、何も問題はねえ。お前らは仕事に戻れ」


「し、しかし船長……」


「ここで争ってどうする?……俺達は仲間だぞ、なあ?ゴンベエ?」


「そ、そうだな、仲間内で争うのは敵が喜ぶだけだ」


 ゴンベエの背筋が凍った。先程まで狂った様に暴れていたダルダロスが、顔をにやつかせて冷静に部下を宥めているのだ。しかもその目は完全に殺意を抱いたままであった。


 己の権威を示す為の行動かと思ったが、そうではない。その行動原理はダルダロスの異様な執着心だ。絶対に自分の物にすると決めたら、どんな障害だろうと手段を選ばず力技で奪い達成させる。


 今までダルダロスはそうやって海賊団を一大勢力へと押し上げて行ったのだ。ゴンベエよりは能力値は劣るが、執着心では恐らく右に出る者は居ないだろう。


「奴らはすぐには動けない。帝国からの増援も早くて1週間、3日後には必ず決着を付ける。いいなゴンベエ?」


「……分かった、それまでは俺の部下も休ませておく」


 場が治まるとゴンベエが部下と共に、船長室の外へと出て行く。長い通路を歩きながらゴンベエは、ダルダロスの狂気の一面を見て考えていた。


(あいつは、破滅の道を進む男だ……目的の為とは言え共闘は早まった決断だったかもしれん……)


 ゴンベエは過去にダルダロスと似た者と出会った事があったが、その者も有能な武将で華々しい活躍をしていた。だが、名誉に対する執着心が余りにも強かったので無計画な城攻めを行い、それに付いて行けない部下の裏切りに遭って破滅して行った。


 行き過ぎた執着心は冷静な判断が下せなくなる。それを良く知るゴンベエであったが、すでにダルダロスの協力者となっている。


 後悔をするにしても、ここまで来てしまったからには、自身の目的を果たそうとしていた。





 翌日、領主レイグから提供された中型船"大陸一号"に乗船したコスモ達が、テイルボット領の領海沖を航行していた。


 天気も良く、視界は良好、海の状態も穏やかで、心地良い海風が帆に当たり順調な航海であった。遠くには小さな島が点在していて、遠くには小さな漁船も見える。その島々の合間を通る様に船が航行していた。


 コスモ達の乗る船の型はキャラベル船で、乗組員もそれなりに必要であったのだが、その乗組員20名が船内を忙しそうに駆け回り操船を行い、船はしっかりと航行していた。


 なぜ乗務員が20名も集まったのかと言うと、海上騎士団が決戦に敗れ、コスモ達がハヌイアムの町を守った話が広まると、協力を申し出る領民がテイルボット城に多く訪れた。


 意外な事に領主のレイグは、あれでも領民に思った以上に慕われていたのだ。


 その中には、コスモから貰った金貨で改心して、名も無き海賊団を解散した20名の姿があった。すると自分達に任された初仕事が、なんとコスモの乗船するキャラベル船"大陸一号"の乗組員だった。


 早速、元海賊の経験が活かせると思わなかった20名だが、これも命を助けて貰った恩を返す機会と考え、喜んで協力を申し出た。


 そして甲板上では、踊り子の格好をしたコスモが無邪気に歩き回っていた。


「はあー船ってこんなに早く動くんだな!なあなあ、この縄って何に使うんだ?」


「いいですかいコスモちゃん、これは帆の向きを変える縄で、こちらに引けば左、こっちを引けば右に帆が向いて風を受けられるんだ!」


「船ってすげえなあ!ボルボ船長!」


「わっはっはっは!なあにコスモちゃんに比べれば大した事はないよ!」


 初めての船で上機嫌で船上を動き回るコスモが、協力を申し出た元海賊の頭ボルボを引っ張り回し、船の設備について興味津々になって質問をしていた。


 ボルボという男は中年で、髪は茶色、長いもみ上げに凛々しい目付きに横に真っ直ぐ伸びた眉、そして2つに割れた大きな顎が特徴的で、身長はコスモより少し大きく、体格はがっしりとしている。


 そして支給された海上騎士団の制服に赤い三角帽子を被り、"大陸一号"の船長を任されていた。


 その様子をセリオスとジョルセア、パフィが離れた所から眺めていた。


「うわーコスモさんって船乗った事無いんだー珍しー」


「ふふっ、俺も初めて船に乗った時はあんな感じだったな」


「コスモは何をしてても、愛おしいね」


 はしゃぐコスモを見て、三者三様の感想を述べていた。それ程にコスモが無邪気に船旅を楽しんでいた。今回は隠密行動という事で、隠密には不向きのピンクのビキニアーマーは全部、テイルボット城に置いて来てある。


 今の姿は、肩まで掛かる長い紫色の髪を後ろで一つにまとめ、胸がはみ出そうなチューブ型の衣服に、自慢の割れた腹筋を剥き出しに、腰までスリットが入ったスカート、そこから逞しいふと……おみ足を出している。両手の腕輪には半透明に透ける程に薄く編み込まれた長い布が取り付けてあった。


 以前、スーテイン領で仲間になった踊り子のフィオーレと似た様な姿である。


 今回の作戦は人質救出が主なので、極力戦いは避ける方針であった。その為、乗組員もボルボ船長を含め20人と、コスモ、セリオス、ジョルセア、パフィの総勢24名と最低限の人数で向かっていた。


 さらに人質救出の実行部隊はパフィとコスモの2名のみで、残った者はダルダロス海賊団の拠点から離れた沖で待機、敵のガレオン船を奪い、動き出したのを合図に、援護に向かう手筈となっている。


 だが、セリオスがコスモとパフィだけでどうやって人質を救出するのか疑問に思っていた。


「コスモとパフィの2人で乗り込むのは良いけど、パフィは顔がばれていないとは言え、女の子だよね?一緒に海賊に捕まるんじゃないかな……」


「あーセリオスさん、そこは問題なっしんぐー……ぷっ、受ける……」


「……」


「そんな冷たい目で見ないでくださいよーちゃんと考えてますよー……これでどうかなーセリオスくーん☆」


「レ、レイグ卿の顔!?」


 パフィがセリオスの冷たい視線を感じながら、一旦顔を伏せ、再び上げるとパフィの顔がレイグの顔に変わっていた。だが、体は女なのに声と顔がレイグという気味の悪い状態になっていた。


 再びパフィが顔を伏せると、元の顔に戻り、無表情な視線をセリオスに向ける。


「本当は体も変身出来るんですけどー、服が破れるんで本番までやりませーん」


「しかし、驚いたよ。優秀な暗部の者は姿を変えると言うけど、パフィのはそれ以上だ」


「私達の一族伝来の技能でしてー、これで今までの標的は100%やっちまってますねー」


 パフィの持つ特殊技能【変幻】は、出会った者ならば誰にでも変身出来るが、体の大きさも変わる為、即時対応出来ないのが弱点である。しかし仕込みさえ済ませてしまえば、完全な隠密行動を可能としていた。


「これで、踊り子に扮したコスモさんを手土産に、ダルダロス海賊団の拠点に侵入しよーってすんぽる感じですー」


「す、すんぽる?だけど、拠点に乗り込んでからが大変だね……人質の場所を探さなきゃいけないし」


「もうそこは、あれです。私が侵入出来た時点でゲームセットでーす、だいたい人質ってのは置く場所決まってるんでーよゆーでーす」


「人質の置く場所が決まってるって言うけど、ダルダロスの砦は洞窟を利用した迷路の様な所だぞ?そう簡単に見つかるとは思えないけど」


「ジョルセアさん、賊っていうのは建物に関して素人なんでー、案外いい加減な造りなんですよー。難しいのは他国の城とかですねー、むっちゃ逃げ難い様に計算されててだるだるでーす」


「確かにハーバル海賊団の拠点も、誰でも分かる様な構造だったな……」


 他国の城にも侵入した事があるのか、パフィが入り込めさえすれば人質救出は成功したものと同然と、豪語していた。それだけ自分の能力に自信があるのだろう。


 そんな話をしていると、見張り台の上に立って居た船員の1人が船長のボルボに声を掛ける。


「おかし……いや船長!海賊の島が見えてきやしたぜ!」


「おーし!分かった!コスモちゃん、そろそろ出番だぜ!」


「もう、着いたのか早いなあ……」


「じゃあ、コスモさんー小さい小船に乗り換えましょうー、ちょっと私は船室でスタンバりますー」


 到着を残念がるコスモを横に、パフィが船室に入り込み準備を始める。そして待機組のセリオスがコスモに寄って声を掛ける。


「コスモ、今回は武器も防具も無い、あまり無茶をしない様にね、ちなみに無茶って言うのは海賊に対してだからね!」


「分かってるよセリオス、俺は上皇様やシャイラ殿と違うから安心してくれ」


 何気無く、アインザーとシャイラの行為を暗に否定すると、今度はジョルセアが悔しそうな顔でコスモに話し掛ける。


「本当は俺が皆を助けたいんだけど、仲間の事はコスモに全部任せる。俺の仲間は皆いい奴ばかりだ、きっとコスモの助けになるから……」


「……ジョルセア、必ず仲間を全員助けて、またお前の船に乗せてやるよ」


「ああ、期待して待ってるよ」


「ちょっと2人共、距離が近いって!話すならもっと離れても大丈夫だから!」


 心配するジョルセアが仲間の救出を頼むとコスモが笑顔で応える。そして相変わらずセリオスがジョルセアとコスモの距離が近い事を気にすると、間に入って距離を離そうとする。


 そんな事をしていると、準備の終えたパフィが船室から出て来る。


「おまたーコスモさんー、じゃあ行きましょうかー」 


「ぶっ!!お、お前パフィなのか?」


「そーですよー、この姿は【北国の狂犬】シャガリアンって言う盗賊ですねー」


「顔と声が合ってねえ……」


 パフィが変身したのは【北国の狂犬】シャガリアンという男で、背丈はボルボ船長と同じ大きさ、頭には魔獣の茶狼の顔を帽子にした物を被り、目が飛び出そうな位に大きく開き、頬がこけて発達した犬歯が口から覗く、全身を黒い外套を身に纏い、恐ろしいくらいの殺気を放っていた。


 誰がどう見ても悪党である。その迫力にコスモ、セリオス、ジョルセアが驚いていた。そして気だるそうな女の声色から、ドスの利いた男の声色に変わって行く。


「声色はすぐに変えられるぜえ!はははは!今日は良く鼻が利く日だぜ!くんかくんか!」


「な、なんか強そうな奴だな……パフィ、お前そいつとやりあったのか?」


「はいー、じょーこーさまの命令で首以外の骨を全部ボキっておきましたー、その後は襲っていた村人に引き渡したので、今は土の中ですねー」


「ボ、ボキッって……パフィって案外武闘派なんだな……」


「いえーコスモさんほどでは、ないですよー」


 謙遜するパフィであったが、コスモとまでは行かないにしても、英雄級の能力値を誇っていた。シャガリアンという男は、帝国より遥か北にある連合国の1つ、スーノプ聖国で大暴れしていた盗賊団の首領だった。


 そのスーノプ聖国の王と古い知り合いであったアインザーが盗賊討伐の個人的な依頼を受けると、パフィを派遣してその盗賊団を鎮圧させていた。もちろん十数人と居た盗賊達、1人残らず全員を再起不能にさせていた。


 急にシャガリアン率いる盗賊団の動向が途絶えると、賊の間ではスーノプ聖国の信仰対象である女神によって神隠しに遭ったと噂されていた。


「じゃあ、行くかーコスモ!」


「な、なんか不思議な気分だが、パフィ、よろしく頼むぜ」


「俺は鼻が利く!この匂いは絶対に仕事が上手く行く匂いだ!くんかくんかっ!」


「なりきってるなあ……」


 【北国の狂犬】シャガリアンの普段の癖なのか、その堂に入った演技に感心しつつも、2人が小船に乗り込むと、待機組の皆に見送られダルダロスの拠点の港へと向かって小船を漕ぎ出して行く。





 同時刻、ダルダロス海賊団の拠点、砦内の牢屋には敗れた海上騎士団の提督ロイバンと元ハーバル海賊団の船員達が居た。


 ロイバンは高齢の男で、長い白髪頭に、顎から口に掛けて立派な白髭を蓄え、高齢とは思えない整った顔付き、服装も海上騎士団の制服で青地に金色の装飾が施され、その細見の長身が映える立派な出で立ちだ。


 牢屋に設置されている朽ちた木製のベッドの上にロイバンが置かれ、元ハーバル海賊団の船員達から懸命な看病を受けていた。頭と胸に包帯が巻かれ、包帯には血が滲んでいた。


 ゴンベエ水軍からの奇襲を受けて重傷であった。


「くっ、我ながら情けない姿だ。海賊に遅れを取るとは……」


「ロイバン提督は情けなくないですよ!元海賊の俺達なんかほっとけばいいのに……助けて怪我をするなんて……」


「海賊かどうかは関係無い。同じ仲間の船乗りならば、守るのが提督の務め……げほっげほっ!」


「提督!もう喋らないで下さい!」


「はあはあ……だが、このまま倒れては逝けぬ、せめてレイグ様に最後に一言、謝罪を述べてから逝きたいものだ」


「そんな弱気な事言わないで下さいよ!きっと、きっとジョルセア船長が助けに来てくれますって!」


「ジョルセアか……あの若者も上手く逃げてくれれば良いが……」


 提督のロイバンは決戦で敗れた後も、仲間を逃がす為に旗艦を盾に殿になって、ダルダロス海賊団からの攻撃を一手に引き受けていた。


 そのお陰で、多くの海上騎士団の騎士達を逃がし、元ハーバル海賊団の船員を誰一人失う事無く守っていた。そのロイバンの武人としての振舞いに感動したゴンベエが、捕虜となった後も丁重に扱ってくれていた。


 ゴンベエから与えられたきずぐすりで応急処置を施してはいるが、重傷を負いながらも元ハーバル海賊団の船員を守った影響で傷が悪化していた。


 そのロイバン達から離れた牢屋ではレイグの娘アルティナが心配そうに扉の格子に顔を近付け、大きな声を上げていた。


「ロイバン提督!無事か!今に帝国から救助が来る筈だ!それまでの辛抱だぞ!」


「ひ、姫様か……相変わらず元気そうで良かった」


「提督っ!貴様が万が一にもあの世に行ったら、私が化けて出てやるからなっ!」


「は、ははっ、私があの世に行ったら化けて出るもありますまい……」


 ロイバンがアルティナからの激励を受け、気を強く持つと矛盾した言葉に苦笑いをする。そしてロイバンが改めて牢屋の格子から、ダルダロス海賊団の様子を見ると異変に気付く。


 決戦に勝利してハヌイアムの町を十分に略奪した筈なのに、ダルダロス海賊団の海賊達の顔が浮かない顔をしていたからだ。


 それに警備も散漫で人数が少ない、何かの準備に人手が取られていた。この空気を感じ取れない程、ロイバンは耄碌はしていない。


 何者かがダルダロス海賊団の目的を邪魔しているのだと察知する。


「……もしかしたら、姫様の言う通り、帝国からの救助があるやもしれぬな」


「ほ、本当ですか?提督!」


「私の勘だがな……だが、これでまだ諦める訳には行かなくなった……お前達も、備えておくのだ」


 ロイバンの読み通り、人質の救出でコスモとパフィがダルダロス海賊団の拠点の島へと向かっていた。そしてロイバンは静かに目を閉じて、傷の回復を図り、いざと言う時の体力を温存し始めていた。

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