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元騎士団のおっさん伝説のピンクビキニアーマーになる ~魅力を添えて~  作者: トリミング中の噛み犬


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第56話 大陸の商人達

 元はと言えば、呪いで方向音痴の黒騎士セルシルをスーテイン領の山岳都市スタンブルトへ送り届けるだけであったコスモが、その【運】の無さからあらゆる災難に巻き込まれ、最後には上皇アインザーの誕生日プレゼントの入手まで手伝っていた。


 働きづめのコスモが解放されるのはまだ先で、バンディカ帝国の皇子のユリーズと共に首都アウロポリスを目指していた。


 しかし遡る事数日前、一足早く首都のアウロポリスに集う者達が居た。


 スーテイン領で長年暴れ回っていた山賊王のコンドラが拷問の際に漏らした言葉、ユズリハ商会と奴隷。この事を領主のレオネクスが早馬で皇帝ウェイリーに伝えていた。


 だが証言しか証拠が無く、ユズリハ商会の会長ユズリハを捕らえる理由にはならなかった。そこで牽制としてウェイリーが各商会の会長へと連絡を取り、会議の場を設ける事でユズリハに揺さぶりを掛ける様に指示する。


 そして首都のアウロポリスに続々と各商会の会長達が集まる。


 首都のアウロポリスには帝国運営を担う行政組織の建物が集まっていた。どれもが意匠をこらした装飾に荘厳な佇まいを持ち帝国の中枢を担うのに恥じない建物である。その中に民間ながら行政組織の建物に引けを取らない立派な建物があった。


 『大陸商会会館』


 大陸を代表する各地の商会長が円滑に集まれるように建てられたものだ。大きな会議室から遠路から来た者の為に寝泊り出来る設備も入っている。


 会館で開催される会議は緊急時を除くと、大陸に流通する食料、資材、貴金属、宝具などのあらゆる物の相場を決める事が主となる。


 各自で勝手に商品の値段を決めると転売する者が現れ、下々の者に商品が行き届かないのだ。邪神竜との戦いから40年経つが、未だに食料の足りない場所もあり死活問題となっていた。そこで定期的に商会長が集まり相場を決めると皇帝ウェイリーに届けられ承認、そして公布する流れとなっていた。


 中には相場を無視して商売をする闇商人も居るが、一度見つかると大陸中の商人から敵対される上に帝国からも指名手配を受ける。真っ当に手順を踏んで働く商人が損をしない様に厳しく取り締まっていた。


 その会館入口には、広い敷地に馬車を止める専用の場所がある。すでに何台もの馬車が停車していた。そのどれもが外観が豪華で堅牢な馬車で、高級馬車の製造を専門とする商会の紋章を模った鋳物が馬車に取り付けられていた。


 そして最後の一台だろうか、会館の正面門から一般的に使用されている普通の馬車が入って来ると、空いている場所に停車する。そして御者が降りて馬車の扉を開ける。


「あー……やっと着いたわ、マジでかったるー」


 馬車から出て来たのはユズリハ商会、会長ユズリハであった。


 今回呼び出された理由をユズリハは知っていた。取引していたコンドラが口を滑らしたのは全てが想定内で、証拠となる物は全て処分を行い、一緒に居た従業員にはアリバイ工作を徹底していた。


 対策をしっかり済ませた余裕からか、欠伸をしながら気怠そうな表情で馬車を降りると、焦る様子も無く1人の付き人の少女と共に会館の会議場へと向かって行く。


 会館の会議場ではすでに大陸各地の商会長が9人集まっていた。この9人だが商会の純利益が大陸で一番大きい順に選出されている。互いの近況や、新規開拓の為に名刺の交換、事業の拡大で協力者を求める者など、各々が時間の許すまで商売に勤しんでいた。


 その中には業界3位のトールネ商人連合の盟主トールネと業界1位のメデウス商会の会長メデウスの姿もあった。


 メデウスは年配の男で頭はスキンヘッドで耳元から顎にかけて立派な白髭を蓄えている。巨体な体に紫色のローブ、黒地に金色で縁取りした肩掛けをしている。威厳のある風貌に近寄りがたい雰囲気を持っているが、周りには多くの人が集まりにこやかに話をしていた。


「しかしメデウス会長の新規事業、ビキニパラダイスでしたか?大当たりしてるみたいですね!」


「グフフ!そう褒めてくれるな……。あれは我の手柄では無い、優秀な部下フネガーの発案なのだ」


「いやー、でもそれをお許しになったのはメデウス会長でしょう?先見の明があると言うか何と言うか」


「ただ我は背中を押しただけ、もし其方らが同じ事業を起こしたいのなら、許可もしよう……だが、コスモ様のイメージを貶める行為をした場合は分かっておるな?」


 メデウスがギョロっとした目で周囲に居た会長達に脅しを掛ける。その迫力は邪神竜に匹敵していた。


「も、もちろんですよ、早速、私の地元でも始めてみたいと思います」


「うむ、是非にも試してくれ、その方が我が商会も気が入るというもの」


 メデウスは見た目以上に商売に真摯に向き合う昔気質の男でビキニパラダイスの権利を独占せず、競合店を増やすことによってサービスと品質の向上を図っていた。だが、モチーフのコスモのイメージを壊す事だけを嫌い、お触り無しを徹底していた。


 そんな話をしていると会議の時間が迫っていた。


 会議場の高い天井の正面に大きい時計が設置されている。会議が始まるまで後1分、秒針がゆっくりと刻み始める。会話や笑い声で五月蠅かった会議場も静まる、各会長が円卓に置かれた席に座って会議の始まりを待っていた。


 しかしユズリハの席だけはまだ空席であった、それをメデウスとトールネが厳しい目で見つめていた。会議が始まる10秒前を時計の秒針が指し示すと、会議場の扉が開きユズリハが登場する。


「いやー間に合った間に合った!道が馬車でぎょーさん混んでましてな、ほんま遅れるかと思いましたわ!」


 ヘラヘラと笑いながらユズリハが有り得もしない適当な事を言いながら自分の席に着席する。その周りに居た会長達は厳しい目をユズリハに向けていた。


 しかし議長役のメデウスは気にせずに円卓の後ろにある壇上に上り、会議の主旨の説明を始める。


「今回皆に集まって貰ったのは、皇帝ウェイリー陛下から出された命令でもある。議題は皆に配った書類に書かれていた通り、ユズリハ商会に奴隷売買の嫌疑が掛けられている、それが事実か否か本人の口から話を聞かせて貰う、それだけだ」


「これが本当なら重罪だが……」


「あのユズリハならやりかねんな……」


 メデウスから議題が発表されると静まり返った会議室がざわつき始める。ユズリハはまだ20代の若者で、新進気鋭の経営者であった。しかし強引なやり口と礼儀作法の未熟さから他の商会からは嫌われていた。


 業界2位まで急成長を遂げたユズリハ商会ではあるが良い噂が無い。奴隷売買も真実味があるのだ。当の本人ユズリハは笑みを浮かべ腕を頭の後ろで組み静かにメデウスの話を聞いていた。


 ざわつきが収まらないでいると、メデウスが木槌を叩き静かにする様に促す。


ダンッ!!ダンッ!!


「静粛に!……来て早々だがユズリハ、こちらに来て弁明すると良い」


「はいはい、そんな怖い目でにらまんといてや、メデウスのおやっさん」


 メデウスに呼ばれたユズリハが軽口を叩きながら席を立ち上がると、円卓の後ろにある檀上に上りメデウスの横に立ち席に座る会長達を見渡し、笑顔で挨拶を始める。


「えー皆さん忙しい中、くだらない会議のためご苦労様ですー。なんか僕に奴隷売買の嫌疑があるって言うてますけど、何も証拠無いんですよ?よって僕は無実です、以上!」


 挨拶をした後にあっさりとした弁明をすると、やりきった顔でユズリハが檀上を下りようとするが、メデウスがユズリハの腕を掴み気迫ある顔でさらなる弁明を求める。


「そんな戯言を聞きに皆が集まったのでは無い、商会の会長としてしっかりと釈明するのだユズリハ!」


「いやいや、そうは言うてもなあ……」


 困った顔でユズリハが頭を掻いていると、席に座っていた会長の1人が質問をする。


「ユズリハ会長、スーテイン領で捕まった山賊王のコンドラがユズリハ商会の名を口にしたと調書に書いてますが、それは事実なんですか?」


 事前に配られていた山賊王コンドラの調書を、集まった会長達は目を通していた。コンドラの名は会長達でも知っている、何故なら自分達の商会の荷馬車がスーテイン領で良く襲われていたからだ。その口からユズリハの名が出たと言う事は自分達の荷馬車を襲わせていたのもユズリハの指示ではないかと勘繰っていた。


 ユズリハが大きく溜め息をつくと、再び壇上に上って質問に答える。


「はあー、さっきも言いましたけど、何も証拠は無いんです、もしかしたらコンドラは僕の商会に恨みのあるどこかの商会が何か吹き込んだんやと思うてます。なんか僕、憎まれやすいみたいで、ほんま困ったもんですわ!」


 質問した会長を見ながらユズリハが当て付けの様に困った振りをする。その様子を見て質問した会長が青筋を立てるも怒りを抑え質問を終える。すると、次に業界5位のドンガス商会の会長ドンガスが質問をする。


 ドンガスはメデウスより少し年下の年配の男で、白髪交じりの黒髪に太い眉に不精ひげで大工の棟梁と言った風貌、年の割に締まった肉体に日焼けした肌が特徴的、今は商人の正装、白いチュニックを着ていた。


「ユズリハ、お前のとこの従業員は経歴がはっきりしない奴が多かったよな?って事は奴隷を買ってると思われても仕方ねえと思うが、そこんとこどうなんだよ」


 ドンガス商会は主にアウロポリスで建築現場、道路の舗装工事、水道工事などインフラの仕事を担っている商会だ。ドンガス自身も叩き上げの職人で口が悪い、だが人情は人一倍ある男である。


「これはこれは、ドンガス会長自らの質問、これは僕もはっきりとお答えせなあきませんな」


 ユズリハが笑顔になるとおどけた台詞で質問を受ける。ドンガスを見つめると静かな口調で語り始めるが、しかし口から出た言葉は答えでは無かった。


「奴隷が云々言うてますけど、ドンガス会長だけやない、皆さん奴隷の様に人をこき使うてませんか?」


「んだと!馬鹿な事言ってんじゃねえぞユズリハ!俺んとこは家族と同じ様に従業員、関係者を扱ってる!だからこの場に顔を出せる程の商会になってんだ!」


 ドンガスが机と叩き口調を強めて反論するが、ユズリハが笑顔を崩さないままに指摘をする。


「ドンガスさん、お宅の部下、大手の商会を笠に下請けに相当無茶させてますなあ、何でも勝手に工程を延ばしたり、報酬ケチったり、挙句の果てに小切手をわざと不渡りにして潰した小さい商会もある、まあその部下も会長のドンガスさんにええ顔したいんやろなあ、当たり障りない報告しか聞いてないのとちゃいます?」


「な、何だって?」


 ドンガスの仕事の関係上、どうしても人手が足りず小さな商会に仕事を依頼する事があった。互助関係である小さい商会が潰れない様に絶対に報酬は払い、減額しない様に日頃から部下達には厳命していたのだ。


 しかし商会が大きくなると現場から離れ、会長職の事務仕事、付き合いばかりをしていたドンガスは、それが守られていない事に気付いていなかった。


「それにそこの会長さん、お宅の息子さん……二代目が盗賊の女に手を出して脅されていた所をどこぞの貴族に手打ちにして貰ったって言うやないですか?その損失も商会の人間を使うて無理くり補填した、いやー儲けも無い仕事を増やすのが二代目の方針ですか?」


「な、なぜそれを……」


 情報は金にも武器にもなる。


 それを良く知るユズリハの情報網は恐ろしいものであった。あらゆる場所に間者を忍ばせ各商会の問題点を把握し的確に指摘する。メデウス商会、トールネ商人連合を除き、格下の商会はユズリハに弱点を握られているのと同じであった。


 ユズリハが自分の商会を業界2位まで押し上げたのも、この情報を上手く活用し取捨選択していたからである。情報を扱う事ならばユズリハの右に出る者はこの場には居ないだろう。


 一通り他の商会の不都合な点を指摘すると全て事実なのか、集まった会長達が畏れを成すと沈黙してしまう。


「ほらな?僕の言う通りやろ?それに僕んとこは経歴こそ不明やけど、皆ようけ働いてくれます。商う人なのに人を扱い切れてないってほんまおもろいと思いません?ははははは!」


 皮肉をたっぷりと込めた台詞でユズリハが笑い飛ばすと、トールネが席を立ち上がりユズリハに議題を戻す様に言い付ける。


「そこまでにしておきなさいユズリハ、結局、奴隷売買はしていないのかしているのか、はっきりと皆さんに伝えなさい」


「トールネのおっちゃん、何度も言うてますけど僕はやってません、それが僕の答えです」


 トールネには敬意を払っているのか、真面目な顔でユズリハが答えるとその目を見てトールネは静かに席に座る。質疑応答も終わりメデウスが結論を出す。


「本人が否定している以上、このまま続けるのは無意味だな。今回の件、我ら商人達はユズリハ商会を無実と判断する、皆もそれで良いな?」


 メデウスが決議を取ると静まり返った会議場にいる会長達が片手を上げ賛成する。皇帝ウェイリーの目論見は外れ、あっさりとユズリハの嫌疑が晴れてしまう。だが、余りにもあっさりとして不気味な事にユズリハが気付く。


「では、本日の会議は終わりとする。皆の者、遠路はるばるご苦労であった……」


 会議が終わり解散しようとした時、ユズリハが思い出した様に全員に声を掛ける。


「そうやった!皆さんが全員揃ってるんで宣伝しておきますけど、今度新しい事業でビキニアーマーを着た美女がサービスする娼館を作ろう思うてます、もし参入したい方は僕のとこまで来て許可料払うて下さいね」


 この話を聞いた瞬間、メデウスとユズリハを除く全員の顔が青ざめて行く。ユズリハが来る前にメデウスがコスモのイメージを貶める行為を強く禁じていたからだ。


 話を聞いたメデウスが怒りで全身から怒気のオーラを放つと、手に持っていた木槌の柄を握り潰して忠告をする。


「ユズリハ……その事業は即刻中止にするのだ」


 だがユズリハも肝が据わっているのか、軽い口調で言葉を返す。


「いやーこればっかりはメデウスのおやっさんの言う事聞けへんわー、もう建物も作ってしもうてるし。もしメデウスのおやっさんも参入したかったら許可料忘れんといてな」


 ユズリハが毛嫌いされていた理由はこれである。他の商会が始めた事業を二番煎じで真似すると、少しだけ趣向を外し権利を独占し主張するのだ。儲かるだけなら最善の手ではあるが自分だけが儲かり過ぎるのは、未来の儲けを逃す行為で商人の間では外法であった。


 しかしメデウスの怒りはコスモを貶めようとする事だけでは無い。ユズリハの身を案じてるからなのだ。


「ビキニアーマーと言えば<インペリアルオブハート>のコスモ様を忘れてはおらぬな?」


「もちろんよう知っとるで、有名人やし、メデウスのおやっさんのとこは本人公認やもんね」


「あの方が娼館の存在に気付いたら、ユズリハ……貴様の命は無いぞ」


「……ご、ご忠告感謝すんで」


 ユズリハもコスモについては調査をしていた。ある日、地方都市カルラナへと舞い降りた奇跡の桃色の【ソードアーマー】で、上皇アインザーから<インペリアルオブハート>の称号を得る。美しい美貌を持ちながらも、帝国全軍に匹敵する武力を持ち賊には容赦の無い事で有名だ。


 しかしユズリハの情報網を以てしても、コスモの素性は分からなかった。元領主騎士団の副団長だったモウガスという男の姪とまでは判明しているが、そのモウガスも行方が分からなかった。


 だが今が旬のビキニパラダイスを逃すのは商人として有り得ない、コスモの弱みを握る前の見切り発車であったのだ。それを察していたのかメデウスが怒気のオーラを抑えると、不気味な笑みを浮かべる。


「ではなユズリハ、次に無事に会える事を楽しみにしておるぞグフフ!」


「まったく食えん人やで、ほんま……」


 こうして会議が閉幕すると、集まっていた会長達が足早に商会のある本拠地へと戻って行った。ユズリハも会議室の外で待たせていた付き人の少女と共に馬車に乗ると、本拠地へと向かって馬車を走らせていた。


 その馬車の中で付き人の少女がユズリハに問い掛ける。


「かいちょー、会議たいへんだった?」


「なんやルル?あんな会議、屁みたいなもんや、大した事ないわ」


「でもかいちょー顔色悪いよ?何か嫌な事でもあった?私が叩き潰そうか?」


 ユズリハの顔を見て心配する少女ルルが、背丈と同じ大きさの銀の斧を擦って顔に似合わない不穏な言葉を口にする。ルルは金髪の癖毛のある長い髪で、子供っぽさが抜けない温和な顔、コスモと同じくアーマー職で小柄な体に黄色の重装鎧を装備していた。


 見た目からしてユズリハの身辺警護を生業としている【マーチャントアクスガード】であった。


「いやな、人は変わらん思うてな……家族だの信頼だの期待だの言うて、人を雑に消耗させて一時の富を得る。そないなアホなやり方に呆れてただけや」


「うーん、かいちょーの話は分かり難いよ」


 アーマー職なだけあってルルもコスモと同様に漏れなく知力が低かった。困った顔を見てユズリハが少し笑うと、分かりやすく説明を始める。


「ええかルル、人は商品や、安くて永く使える商品は皆が喜ぶ、しかも壊れる前に修理したり休ませたり丁重に扱うとな、自分を大事にしてくれると考えてくれるんや、すると商品は一生モノになる。」


「うんうん、安くて長持ちはいいもんね!」


「そんな当たり前を知らんでぶっ壊れるまで使うたら捨てる奴が多いねん、ほんま、けったくそ悪い、そんな商会潰れてしまえと思うてな……」


「じゃあその時は私が潰しちゃうね!」


 ルルが銀の斧を擦りながらユズリハに笑顔を向ける。


「その時になったらルルに頼るわ」


 ユズリハの言葉の綾にルルが真剣に答えると表情を崩し頭を撫でる。


(ウチの親父も帝国に壊されて潰されたんや……奴隷売買で伸し上がって一泡吹かせたるわ……)


 帝国から禁止されていた奴隷売買をユズリハが上手く利用して商会の利益をあげていた。一度買った奴隷は生活さえ保証すれば従順になり、人件費も掛からず稼いでくれる。人を商品以下に扱う、最も嫌悪する盗賊にも媚を売り、壊れかけの奴隷や女と小さな子供を優先して引き取っていた。


 奴隷売買は禁止されているとは言え、未だに大陸には奴隷に身を落す者が多かった。丁稚で商会に入るも、過酷な労働環境に耐えられず逃げる者、莫大な借金を背負い身売りする者、そして盗賊によって捕らえられた者、帝国の目の届かない所ではこういった事が良く起こっていたのだ。


 そして身辺警護をしているルルも奴隷落ちした所をユズリハに買われていた。


 ユズリハの父も帝国から酷使され、幼少の頃にはすでに寝たきりとなって10年以上前に亡くなっていた。帝国に対する恨みと憎しみがユズリハの商人として伸し上がる為の原動力となっていた。そして手段を選ばず、楽をして利益を得る事がユズリハの経営理念として形成されていった。


(それに、この宝具を上手く使えばまだまだ稼げる……)


 ユズリハの手には宝具【ブラックオーブ】が握られていた。

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