第44話 山賊王コンドラとユズリハ商会
・コスモ(女)
元騎士団の39歳のおっさん冒険者
職業は【ソードアーマー】
領主騎士団時代に負傷した右膝を治す為に飲んだ森の魔女の秘薬、万能薬の効果により39歳のおっさんモウガス(男)から見た目が20歳前後のコスモ(女)となる
上皇アインザーによって<インペリアルオブハート>の称号を得るが、それを象徴するハート型の盾と共にビキニアーマーがますます外せなくなる、ある意味呪われた装備と化していた
ラルガーを含む5人の山岳部族が、円陣を組んで誰が代表で出るか相談をしていた。
その間に執事のフェニーが頼まれていた樽を、領主の間の玉座の前に運び込み設置する。すでに領主のレオネクスは準備運動を終えて、樽の上に太い右腕を置いて、ラルガー達を待ち受けていた。
「さあラルガー殿、山岳部族の力を俺に見せてくれ!」
「……やはり、ここは代表である我が行こう。お前達は我が山岳部族の長の力を見ておくのだ」
山岳部族からは族長を取りまとめるラルガーが、代表として樽の前に歩み出ると、レオネクスの目の前で、太い右腕の肘を叩き付ける様に、樽の上に置く。
そしてレオネクスと向かい合い、互いの手を力強く握ると腕相撲の準備が整う。
「では悪いがコスモ殿、開始の合図を頼む!」
「この戦いをコスモ様に捧げます、どうか見ていて下さい!」
「分かりましたレオネクス様、ラルガーもあんまり無理するなよ」
開始の合図役を頼まれたコスモが、2人が睨み合う間の横に立つと一旦、目を瞑り大きく呼吸をすると、吐き出すと同時に大きい声で合図を送る。
「始めっ!」
「フンッ!」
「ドリャッ!」
開始の合図が聞こえるのと同時に、レオネクスとラルガーの力を込める声が一瞬聞こえて来る。
全ての力を腕に込めているのか、2人が息を止めると右腕の力こぶが、山の様に盛り上がって行く。驚く事にレオネクスとラルガーの腕力は互角で、腕を微動させながら、どちらにも倒れずに均衡を保っていた。
「こ、これが山岳部族の力か……さすがに強いな!」
「ぐ……若造の癖に俺と張り合うだと……信じられん……」
ラルガーは、はぐれ竜や灰色熊を単騎で打ち倒す程度の力はあった。それなのに年若いレオネクスが、自身と互角の勝負を繰り広げている事に、信じられないでいた。
スーテイン家の初代は、邪神竜討伐で槍斧の神器【ドラバルド】を携え、眷属や竜達を数多く屠って来た生粋の戦士であった。
【力】は邪神竜を討伐した英雄5人の中で一番高く、神器の恩恵を含めれば50の上限値を誇っていた。そしてレオネクスは、その一族の血を色濃く受け継いでいた。
次第に互いの顔が真っ赤になると腕には汗が滲み、限界を迎えようとしていた。
「……ラルガー殿、貴公の力は分かった、山岳部族の力を是非とも、若年の俺に貸して欲しい!」
「……わか……いや、レオネクス殿を、見た目で判断していた事を謝罪する。……だが、この勝負だけは負けられん!」
「ふっ!ならば……俺の本気を見せてやる!」
レオネクスの技能【底力】が発動する。【体力】が半分以下になると力が10上がる、一般技能だ。それによって均衡が崩れ始め、ラルガーの右腕が徐々に右側へと倒されて行く。
苦悶の表情でラルガーが耐えるがやがて力尽きる。
ラルガーの右腕がレオネクスによって完全に倒されてしまうと、それを見てコスモが勝者の名を上げる。
「勝負あり、レオネクス様の勝ちです!」
「はあはあ……ラルガー殿、先ほどの無礼な言葉は、こちらも撤回する。こんな頼もしい仲間が出来たのだ、これほど心強い事はない」
「はあはあ……こちらも無礼な言い方だった、レオネクス殿……貴方の力は山岳部族に引けを取らない。もし部族で生まれていれば、族長の長になれる力の持ち主だ」
勝負に勝ったレオネクスが勝ち誇る事は無く、ラルガーに対して放った発言に謝罪をする。それをラルガーも受け入れレオネクスを賞賛する。
力と力でぶつかり合った者同士が称え合っていた。
「じゃあ、これでこの件はお終いですね」
「いや、コスモ殿、まだ貴女の力を見ていない、俺に見せて貰えるか?その称号に相応しい者かどうかを」
ラルガーとレオネクスの諍いが終わって、締めようとしていたコスモに、レオネクスが勝負を挑んで来る。樽の上に再び右腕を置いて、コスモを待ち構える。
まさか、自分も挑まれると思ってもみなかったコスモが、困った仕草を見せる。するとラルガーがレオネクスへと忠告をする。
「悪い事は言わん、やめておくのだレオネクス殿、コスモ様の強さは我らでは計り知れない、怪我をするぞ!」
「ほほー、なおさら試してみないと気が収まらないな!」
「おい!ラルガー、そんな事を言ったら、レオネクス様がやる気を出すだろ!」
ラルガーより強いと聞いたレオネクスが、更にやる気を上げてしまう。顔見知りのロンフォード家の者なら洒落で済むが、スーテイン家には縁もゆかりもない、万が一怪我をさせたら一大事なのだ。
コスモのやる気の無い様子を感じると、レオネクスが挑発を仕掛ける。
「そのピンクのビキニアーマーで、戦場に出ればさぞかし、山賊共の陽動に使えそうだな!やはり、その称号も女の武器を使って、上皇様に取り入ったのだろう!」
「……安い挑発なのは分かっていますが、上皇様を侮辱されては黙っておれません……いいぜ、その挑発に乗ってやるよ!」
上皇アインザーは元男で今は少女なのだが、それを知らないレオネクスがアインザーの名を貶める。恩人のアインザーの名誉が貶められた事に、コスモが真剣に怒っていた。
コスモが沸き上がる怒り抑えると、目付きが鋭くなって行く。
レオネクスの構える樽を挟み、正面に立つと中腰になって右腕の肘を樽の上に、ゆっくりと置く、そしてレオネクスの手を強く握り込むと、技能【慈愛】で心の色が見えて来る。
中心に赤黒い炎の様な色彩が揺らいでいる、回りには青と白の階調が中心から溢れる様に広がっていた。本人は明るく振る舞っている様だったが、心の奥底には大きな炎の形をした、憎しみを抱いていた。
なぜその様な色なのか、コスモはその理由に心当たりがあった。
「ラルガーと勝負して疲れてるだろ?両手を使ってもいいぞ、それで勝っても俺は言い訳をしないぜ?」
「はははは!コスモ殿も、煽るのがお上手だ!」
「ではここは私、フェニーが開始の合図を務めさせて頂きます」
執事のフェニーが、コスモとレオネクスの握り込んだ右手に両手を添えると、掛け声と共に手を離す。
「始めっ!」
「うぉおおおおお!!」
開始の合図と共にレオネクスが雄叫びを上げ、太い右腕を体ごと倒し一気に勝負を、決めようとするがコスモの右腕は、初期の位置から一切動いていない。
レオネクスがまるで巨大な岩の塊を、相手にしている様な錯覚に陥る。しかも自身とは対照的に、コスモが涼しい顔のまま冷たい目で、レオネクスを見つめていた。
「お、俺の力が通用していないのか!有り得ない!」
「……両手、使っていいんだぜ?」
「くっ!ならば両手で行かせてもらうぞ!!」
片手ではコスモに勝てない事を悟ると、意地を捨てたレオネクスが太い左腕の手を、右腕の手の甲に当てると両手で一気に、コスモの右手を押し倒そうとする。
顔を真っ赤にして、今にも頭の血管が破れそうな位に力を込める。
だがそれでも、コスモの右腕は微動だにしない。
「ぐおおおおおおおお!こ、こんな馬鹿な事があるか!!」
「これが限界みたいだな、じゃあこっちから行くぞ」
コスモの右腕が太陽が沈む様に、ゆっくりとレオネクスの右腕を倒し始める。それを必死に食い止めようとするが、健闘空しく左腕で支えている右腕が倒されて行く。
そして倒し切る寸前で止めると、コスモが勢い良くレオネクスの両手を樽の上に叩き付ける。
ダンッ!!バキバキバキバキバキッッ!!
叩き付けられた樽が砕け散ると、コスモの右手からレオネクスの両手が離れ、その巨体が横に勢い良く一回転して行く。そして尻餅を付いた状態で、レオネクスが座り込む状態になる。
その様子をラルガー達とフェニーが、目を見開いてそれを見つめていた。
「や、やはりコスモ様は山の女神様の生まれ変わりだ!あの男をいとも簡単に倒してのけるとは!」
「レオネクス様に勝つなんて……もしかしたら本当に」
コスモよりも巨大な体を持つレオネクスが、子供の様に回転したのだ、誰もが驚く。
コスモが何事も無かったかのように、両手を叩き樽の破片を落とす。尻餅を付いて呆然としているレオネクスの前に立って、両手をレオネクスの両脇に差し込むと、そのまま上に軽く持ち上げ、立たせる。
簡単な様に見えるが、大男のレオネクスの身体を腕だけで、持ち上げる事は容易ではない。
「どうでしたか俺の称号の力は?与えられた理由に納得出来ましたか?」
「……な、なんという凄まじい力なんだ!まさか本当に……陛下の手紙通りとは……はははは!」
「へ、陛下からの手紙ですって?」
コスモが山岳部族の懐柔の依頼を受けている間に、皇帝ウェイリーからレオネクス宛てに手紙が届いていた。その手紙をレオネクスがポケットから取り出すと、コスモに見せる。
『レオネクス君、そっちに例のコスモ君が行ったから、フェニー君に言って作戦を練って貰いなさい。コスモ君の力は簡単に説明すると、帝国を1人で滅ぼせるレベルだからね。あんまり怒らせないようにしてね、でも根は凄い優しい子だからさ、僕のお願いって言えばきっと、君の力になってくれるよ、じゃ僕は帝国で吉報待ってるね!』
相変わらずの口調で文章が書かれていた。どうやらコスモの動きは監視されていた様で、手紙が届いた日から逆算しても、カルラナを出発したのと同時に、皇帝ウェイリーの下に監視役の者が伝えに行ったのだろう。
手紙を読み終えたコスモが、暗い顔になって頭を抱える。
黒騎士セルシルを送り届けるだけだったのだが、それすらも利用されウェイリーの思惑通りに、事が運んでいるからだ。それだけ帝国が抱える問題が、多いという事になるのだが。
腕相撲でコスモの圧倒的な力を見せつけられ、負けた領主のレオネクスだが、自分の想像を超えるコスモの力に、喜びを隠せないでいた。
「フェニー!今度こそ……今度こそは山賊共に、奴にコンドラに勝てるぞ!」
「はい!コスモ様の力があれば実現可能です!……ああ、こんな日をどれだけ待った事か」
レオネクスとフェニーの2人の喜ぶ姿を見て、コスモが腕相撲に勝ったのに、負けた様な気分になる。
コスモと山岳部族の実力を、領主のレオネクスが身を以って確認すると、先代が果たせなかった、山賊王コンドラ討伐が現実味を帯びて来る。
長年、山賊達がスーテイン領で好き勝手出来ていたのも、戦力が乏しかったからだ。だが今、コスモと山岳部族が戦力に加わり大幅に強化された。
後手に回っていたレオネクスに、やっと復讐の機会が巡ってきた。
~
一方その頃、山賊達の砦にある男が訪れていた。
砦はレオネクスの居城よりは小さいが敷地は広く、岩を積んだ壁に囲まれて、城門には丸太で作った両開きの大門が設置されている。
砦の敷地内にはいくつかの建物が建っていた。兵舎、牢屋、保管庫などがあり、他にも畑や酪農場など、この場で生活が出来る環境が整っていた。
周囲にも山賊達の住む小屋が点在していて、招集が掛かればすぐ駆け付けられる様になっていた。まるで小さな国の様な、様相を呈していた。
その砦の前に1台の馬車を停まると、山賊王コンドラとその配下達が砦の大門で出迎える。馬車の中から1人の優男が降りて来る。
「遠くから良く来たなユズリハ、歓迎するぜ!」
「いやいや、コンドラさんもお元気そうで何よりや」
山賊王コンドラ、見た目は中年で恰幅の良い体型に黒い長い口髭を生やし、その先を三つ編みに縛っている。
鹿の角の装飾が施された鉄兜に、体には鎖帷子、その上から毛皮のベストを着用して、下穿きは赤い腰巻きに黒いズボン、茶色のブーツを履いていた。
もう一方のユズリハと呼ばれる男は青年で年若い、内側に流す様な薄水色の少し長い髪に、青い縦縞模様のシャツとズボンに、上から宝石を散りばめた赤いベストを羽織り、靴は素足に革のサンダルを履いていた。
2人共、付き合いが長いのか、友人の様に接していた。社交辞令をほどほどに、ユズリハが本題に入って行く。
「それでコンドラさんいつもの物は、用意されてます?」
「おう、もちろんだとも、今連れて来る、野郎共!荷物を持って来いっ!」
コンドラの命令を受けた配下達が、砦の大門の奥から攫った若い男女達を連れて来る。首には、鉄の首輪が取り付けられ鎖が連結されていた。両手にも同じ鉄の手枷が付けられていた。
顔は過酷な労働をしていたのか、頬がこけて疲労困憊の状態だ。表情も虚ろになっている者が多かった。
その若い男女達を品定めする様に、ユズリハが眺めていると部下の男に合図を送る。そしてユズリハの部下が、金貨の詰まった大きな袋をコンドラへと手渡す。
帝国では禁止されている奴隷の売買を行っていたのだ。
「いつも悪いな、お陰様でこっちの稼業にも精が出るってもんだ!はっはっはっは!」
「商人は信用が第一や、商品に対して正当な対価を支払う、当たり前の事ですわ。それにコンドラさんにはユズリハ商会以外の、馬車を襲ってもろてますし、こっちも大助かりですわ」
「はっはっは!さすがユズリハ商会の会長なだけはあるな!」
ユズリハ商会は帝国に拠点を置く、三大商会の1つである。
商いの規模はメデウス商会に次いで業界第二位を誇っていた。だが決して評判は高くない。非人道的な商売をして、荒稼ぎしている噂があったからだ。
実際に財力に物を言わせる商人らしからぬ、強引な方法にメデウス商会やトールネ商人連合、他の商会からは毛嫌いされていた。
「ところでコンドラさん、金貨を上乗せするんで、子供の奴隷も譲って欲しいんやけど、どないでしょ?」
「すまねえなユズリハ、ガキ共はここの領主の弱点でな、万が一の保険として取っとかなきゃいかん、諦めてくれや」
「……そうですか、ならしゃーないわ!この子らだけで、我慢しますわ」
仕方無いと言う顔をしながら、ユズリハが少し溜め息を漏らすと乗って来た馬車の荷台に、奴隷達を乗せ始める。
奴隷を乗せ終えると、ユズリハがコンドラに別れを告げる。
「ほな、コンドラさん、僕はこれでお暇します。また良い奴隷が手に入ったら連絡を下さい」
「おいユズリハ、仕事熱心なのはいいが、たまにはこっちで飲んで行けよ。ここの領主様は脳筋馬鹿だから、盗り放題で良い酒がたんまりあるんだ」
「……お誘いありがとうございます、けど積もる仕事がまだ残ってまして、お付き合い出来ないんですわ。その代わりと言っては何ですが、ええ情報を教えときますわ」
「良い情報だと?」
「ええ、なんでもロンフォード領の盗賊達を掃討した、<インペリアルオブハート>のコスモっちゅう女の冒険者がスーテイン領に来てるって話です。強さは相当なもんやから、出会ったら逃げる事をお勧めします」
「賊共から恐れられる【ロンフォードのピンクの悪魔】か、噂じゃあ良い女だと聞くな。もし俺の好みなら、捕まえて可愛がってやってもいいな、へへへへ……」
「コンドラさん、その女は噂じゃあ、英雄級の強さを持つって言われてます。くれぐれも無理しない様に、ほな、また御贔屓に!」
会釈するとユズリハが馬車の御者の横に座り、コンドラの砦から馬車を出発させる。
コンドラの活動の資金源はユズリハ商会に、奴隷や盗品を売る事で得ていた。もちろん帝国では奴隷を禁止していたのだが、そこに目を付けたユズリハ商会が、誰もが恐れてやらない非合法な商売に、率先して手を染めて莫大な利益を上げていた。
走る馬車でユズリハが大きな溜め息を付くと、それを隣に居た部下の御者が気付く。
「はあ……あのおっさんはもうアカンな、忠告しとるのにもう、勝った気でおるわ」
「という事はやはり、コンドラは勝てないと……」
「100%絶対に勝てへんな。<インペリアルオブハート>のコスモ……厄介な奴が出てきたもんや。大盗賊団【黒の戦斧】のドゲイラのボンクラを、そそのかしてアプリニアを襲わせたんやけど、逆にやられてもうたし、折角、見込んでた奴隷の売買も水の泡や、ほんまええ迷惑やったで」
「では奴隷村の奴隷の数は、大丈夫なんですか?」
「そっちは大丈夫や、今回ので人数も十分に足りとる、本当なら子供も欲しいんやけど、贅沢は言ってられへん」
「しかし帝国で禁止された奴隷を使って稼ぐとは、ユズリハ様も大胆な人です」
「俺のモットーは、汗をかかずに楽して金を稼ぐ事や!きっつい仕事は他人任せ、人は生かさず殺さずや、奴隷はええ!衣食住を保証するだけで馬車馬の様に働きよる。ほんま商売っちゅーのは楽なもんや!はっはっはっは!」
ユズリハは冷静にコスモの力を、商売で培った分析力で把握をしていた。コンドラも強い男なのだが、コスモに比べたら赤子同然で、勝負にもならないと分かっていた。
するとユズリハの馬車の荷台の上に、黒い装束を全身に身に纏った1人の男が飛び乗って来る。
「……ユズリハ様、ご報告が」
「どないした?」
「スーテイン領の領主レオネクスが、山岳部族の懐柔に成功しました。更に<インペリアルオブハート>の称号を持つ冒険者コスモが、討伐軍に加わるとの事」
「そうか……引き続き監視を頼むわ」
「御意……」
黒い装束の男が報告を終えると、再び馬車の荷台から山間の樹々に飛び移ると姿を消す。報告を聞いたユズリハが沈んだ顔をする。
「……いよいよ、山賊王も店仕舞いやな、また新しい仕入先見付けんとなー」
そう呟くと馬車を走らせ、スーテイン領の抜けて自身の本拠地へと向かって行く。
時を同じくして砦の玉座に座っていた、山賊王コンドラの下にも山岳都市スタンブルトへ潜ませていた密偵から、ユズリハと同じ内容の報告が入る。
「そうか、ユズリハの情報通りって訳か、だが奴らには精鋭の騎士は居ない。前回の戦いで領主を含めて、完膚なきまでに叩き潰したからな!人数でも、戦力でもこちらが遥かに上回っている」
「しかし頭領、今回はかの有名な<インペリアルオブハート>が加わってます、一筋縄ではいかないのでは?」
「頭を使え!いつもの様に、騎士様が苦手な森の中に誘い込んで、散り散りになった所を3人1組で襲えばいいんだ。もしそれが突破されたとしても、ガキ共を使えばいい、そのために最低限の食事を与えて生かしてるんだからな!」
報告を聞いていた部下が、不安になってコンドラに忠告をするが、それを意に介さないでいた。前回の戦いでは、スーテイン領の先代の領主を討ち取って、精鋭達もさんざんに打ちのめしたのだ。
しかも前回とは違い、今回は数でも戦力でも、こちらが勝っているのだ。負ける要素が見当たらない。
そしてそれが、予測を超えた戦力であったとしても人質の子供を使い、相手の攻撃を防げれば良いと、念を押した作戦があった。コンドラは見た目に似合わず、計算高く慎重で狡猾な性格をしていた。
「この戦いに勝てば、山岳都市……いやスーテイン領は全て俺のもんだ……くっくっく」
酒の入ったコップを片手に一口飲むと、前回の戦いで得た槍斧の神器【ドラバルド】を眺めながら、勝利した後の事を想像して笑みがこぼれていた。




