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元騎士団のおっさん伝説のピンクビキニアーマーになる ~魅力を添えて~  作者: トリミング中の噛み犬


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第39話 山岳都市スタンブルトへの帰還

・コスモ(女)


 元騎士団の39歳のおっさん冒険者

 職業は【ソードアーマー】


 領主騎士団時代に負傷した右膝を治す為に飲んだ森の魔女の秘薬、万能薬の効果により39歳のおっさんモウガス(男)から見た目が20歳前後のコスモ(女)となる

 上皇アインザーによって<インペリアルオブハート>の称号を得るが、それを象徴するハート型の盾と共にビキニアーマーがますます外せなくなる、ある意味呪われた装備と化していた




 ロンフォード盗賊掃討戦から1カ月、逃亡兵の村に駐屯していた冒険者達の殆どがカルラナへ引き上げていた。冒険者の中には村が気に入り、そのまま留まり魔獣討伐などを行う者も居た。


 そしてロンフォード領内では盗賊の襲撃が無くなった事により、カルラナの人々の生活に影響を与えていた。安全な場所で商売を考えていた駆け出し商人の大規模な流入が始まり、大量の品物が店頭に並び足らない物が無いほどに充実し始めていた。


 未開の森には上皇アインザーから名付けられた、森林警備隊(フォレストレンジャー)の隊長バラーナ【インぺリアルソードマスター】を中心とした仲間が【デュークアックス】、【デュークアーチャー】へとジルトの委任状によって、職業を変えて警備活動を行っていた。


 さらに逃亡兵の村を改め、上皇アインザーの名を冠して森林都市アインザスとしてナズール町長の指揮の下に拡張工事が始まりカルラナにはメデウス商会率いる大工集団も訪れ、今までにない活気に満ちていた。


 コスモはと言うと相変わらずの観光客相手の依頼が尽きず、空いた日には魔獣討伐や薬草採取などを行い日々を過ごしていた。


 そんなある日の夜、何時もの様に依頼を終えて仕事斡旋所に併設されている酒場で飲んでいると、髑髏を模した兜を被り神妙なのか分からない面持ちで黒騎士セルシルが相談を持ち掛けてくる。


「あんのーコスモ師匠、そろそろ俺、山岳都市スタンブルトに帰ろうかと思ってましてえー」


「そうか……寂しくなるな、気を付けて帰れよ」


 ラガーを飲みながらコスモがあっさりと答えると、セルシルが両手の人差し指を互いに突き合わせながら、寂しそうに顔を下に向ける。


「……あの、コスモ師匠に連れて帰って欲しいんだっぺ……俺方向音痴だから……」


「あー……そういえばそうだったっけ……」


 長い間カルラナに留まっていてすっかり忘れていたが、セルシルの着用してる【死神の鎧】によって方向音痴の呪いが掛かっていた。そのせいでコスモが仕方なく地方都市カルラナへと案内した経緯があった。


 横で話を聞きながらエールを飲む冒険者のシノがセルシルに突っ込みを入れる。


「セルシルさ、あんた例のビキニパラダイスで、店員さんにキスして貰って呪い解けたんでしょ?何でまた装備してるの?」


「シノさんーそれは言わない約束だっぺーへへへ」


「……ほんとーに、お前いい加減にしろよ」


 【死神の鎧】の呪いを解く方法は乙女の接吻なのだが、ビキニパラダイスというビキニアーマーを着たお姉さんが接客をする店で接吻され呪いは解けたのだが、なぜかまだ鎧を装備しているセルシルにコスモが怒りを滲ませる。


 そしてシノがビキニパラダイスの女店員から聞いたセルシルの素顔について話を始める。


「お店の女の子から聞いたんだけどさ、セルシルの素顔ってイケメンだって本当?」


「いんやー並よりちょっと良いって程度だっぺ」


「へー……気になるな……チュッ」


 酔ったシノがセルシルの素顔が気になり、唐突にセルシルの被る髑髏の兜の頬に接吻をすると、そのまま勢い良く兜を持ち上げる。


 兜を持ち上げると銀色に輝く長い髪が肩まで掛かり、顔はセリオスやユリーズに引けを取らない噂通りの眉目秀麗な顔立ちであった。


「うっわ!凄いイケメンじゃん!もう呪いも解けたしこのままでいいんじゃない!」


「確かに良い面構えだな、良かったなセルシル!呪いも解けたしこれで1人で帰れるな?」


「……」


 兜を外されたセルシルが無表情で無言のまま、シノから髑髏の兜を取り上げると静かに被り直す。すると肩まで掛かった長い銀色の髪が兜の中へ引き込まれ、そして再び呪われる。


 そして小さい声でぼそっと呟く。


「お、俺だってキスされる相手を選びたいっぺ……」


「お、お前何て事言うんだ……シノ落ち着け、悪気は……無いとは思う!」


 セルシルの呟きを聞くとコスモに戦慄が走る。すかさずシノに対して落ち着くように諭すが時すでに遅しで、シノが体を震わせ持っていたエールのコップを机に叩き付けると、怒りが一気に大噴火する。


「てめー!23歳の若い美女捕まえて相手選びてえだあ!?いっつも理不尽に登場しては奇襲ばっか掛けやがってこの野郎!しかも一発で仕留めるだあ?てめえの人生もリセットしてやろうか!」


「落ち着けシノ!ほらセルシルも謝れ……って、おい!そんなとこに逃げるな!」


 するとすでにセルシルの姿が席に無く男用の手洗い場から顔を出す。


「シノさんって何か雰囲気が怖いんだっぺ!ちょっとは身の程を知るべきだっぺ!」


「るっせえよ!この理不尽ワープ野郎!」


 シノが鋼弓に矢を添えるとセルシルに向かって放つが姿が消えて、今度は仕事斡旋所内の登録部屋の扉から顔を出す。技能【黒家転移】は奇襲にも長けているが、逃亡にも長けていた。


 怒髪天のシノが酒場でも構わず矢を放ち続けるが、セルシルが個室という個室へと逃げ回り、まるで土竜叩きである。流石にまずいと思ったコスモがシノの腕を押さえ、矢を放つのを止める。


「やめろ、シノ!他の奴に当たったらまずいって!」


「うるせえ!野郎はこの手でぶっころっしゃー!」


「だ、駄目だこりゃ!皆、シノを抑えろ!!」


 暴走するシノを酒場に居た冒険者達で取り押さえ、なんとか事態は収まったが冷静沈着が売りの所長のウドガーが珍しくし怒りを見せ、しばらくの間シノは酒場へ出禁となってしまう。


 恐らくこのままセルシルが居たら、怒りメーターがマックスのシノにいずれ頭を射抜かれるだろう。そう思ったコスモが仕方無く、山岳都市スタンブルトへと送り届ける事を承諾する。


 翌日、問題児の黒騎士セルシルを故郷の山岳都市スタンブルトへと送り届ける事を受付嬢のサラに説明する。そしていつもの様に観光客相手の依頼はしばらく休止する事を伝えると、サラが関係各所に連絡をしてくれると申し出てくれるが。


「こちらで連絡しておきますけど……コスモさんもなんか大変ですね……」


 セルシルとシノの暴走に振り回され、損な役回りをするコスモにサラが同情していた。全くその通りである。


 後の事をサラに任せると、コスモが仕事斡旋所の扉を開け外に出る。セルシルが愛馬"宝船"に乗馬してすでに待ち構えていた。


 そして山岳都市スタンブルトを目指して地方都市カルラナを出発する。





 スーテイン領にある山岳都市スタンブルト、大陸随一の標高を誇る霊峰アーガコアを中心とした山脈に囲まれた開けた盆地に造られた都市である。


 標高の高い山が多く、名産品とされるのは低山で取れた木材と、鉱山で取れた豊富な宝石や鉱石であり、それが都市で加工され大陸中に輸出されていた。


 山岳地帯という厳しい自然環境もあり食料が不足しがちであったが、スーテイン領の現領主レオネクスが若年ながらその手腕を振るい、各都市へと繋ぐ街道を率先して整備したお陰で、過去に比べ食料の確保が容易となり都市は繁栄していった。


 だが山岳地帯の土地柄で人目に付かない場所が多く、山賊達の根城にもなっていた。


 そして1人の少女が山岳地帯の高原で鉄の斧を持った山賊2人に襲われていた。走り疲れたのか息を荒くして大きい岩に背を向け、山賊達と対峙する。


「はあはあ……」


「がははは!さあ女、俺達の慰み者になって貰おうか!」


「はあはあ……やめてください!」


「誰も来やしねえよ、諦めな!」


「もしかして、3日前に商人の馬車を襲ったのもあなた達なのでは!」


「ああ、酒と食料しか無くて金目のもんがねえから、つい全員始末しちまったなあ」


「そ、そうでしたか……今もそれをお持ちですか?」


「たんまり持ってるぜ、一緒に楽しい事したら食わせてやるよ」


 健気に怯える踊り子の少女に、山賊が顔をにやつかせながら手を伸ばす。その瞬間、山賊が伸ばした手の指4本が横一線に切られると宙に舞う。


「ぎゃあ!」


「じゃあ、その盗んだ荷物全部、私に寄こしなっ!」


「なっ!いつの間に剣を抜いたんだ!」


 指を切られた山賊が手を抑えその場にうずくまると、その様子を見ていたもう1人の山賊が慌てて警戒すると鉄の斧を構え少女の前に立つ。少女は豹変した様に、健気な表情から険しい表情へと変わって行く。


「て、てめえ!その格好踊り子【アモーレダンサー】じゃねえのか!」


「ぺっ!ちげえよおっさん!その上級職の【ソードダンサー】だっつの!」


 少女の姿は緑色の長い髪を赤いリボンで片側に大きく纏め横へ流し、胸の大きさ小振りだが胸元が開けていて肩を出す様な、密着する黄色の絹の服に、腰まで切れ込みの入ったスカートからおみ足を出し、両手の腕輪には互いを結ぶ薄いローブの様な長い布が取り付けられていた。


 そして最初の健気な言動は山賊を油断させる罠で、本性を表すと細身の剣を握り容赦無く、山賊の指を切り飛ばす。


「山賊は風呂も入ってねえから臭えし、しかも不潔な髭がもじゃもじゃの、ぶっさいおっさんしかいねえのかよ……」


「こ、このアマ!俺は毎日風呂にも入っているし、まだぎりぎり20代の31歳のお兄さんだっつんだよ!」


 山賊のもう一1人が鉄の斧で上段から切り掛かると、少女が踊る様な足取りで山賊の鉄の斧を軽く避けて横に回ると、大きく振った腕の遠心力を利用して、細身の剣を山賊の背中に突き立てる。


「ぐほあっ!」


「31歳はおっさんだろが!自覚しろや!」


 少女が細身の剣を盗賊の背中から引き抜くと刀身に付いた血を振り払い飛ばす。そして指を切られて、うずくまる山賊の男にゆっくりと近付く。


「お、お前はまさか【百剣のダンサー】フィオーレ!」


「うっわ!おっさんに名前覚えられても、ちっっっっとも嬉しくないんだけど!」


「ぐっ……!」


 すると山賊の横を通り過ぎる様にフィオーレが歩くと、山賊が静かにその場に倒れて行く。通り過ぎるその刹那に細身の剣で、心臓を一突きしていたのだ。


「しっかし踊り子と見るや、馬鹿な山賊のおっさんしか襲ってこねえし、この仕事マジちょろ過ぎだろ……」


 【百剣のダンサー】フィオーレ、山岳都市スタンブルトの仕事斡旋所に籍を置く冒険者だ。今は修行と言う名目で山賊討伐を行っていた。


 フィオーレが山賊討伐の証拠として商人の馬車から奪われた食料と酒を拾うと、身に似合わない速さで山道を駆けてスタンブルトへと戻って行く。





 その頃、一週間掛かって山岳都市スタンブルトへとコスモとセルシルが到着する。山岳都市スタンブルトは地方都市カルラナと比べ、また違った雰囲気を持っていた。


 山にある豊富な岩を削り加工した、四角い形に造形した岩を積み上げた建物が並んでいる。岩の重みがある分、山からの吹き下ろす強風にも耐えられる様な構造になっていた。


 都市の周りは白い石で造られた城壁に囲まれ、周りには都市を囲う様に堀があり、そこに吊り上げ式の橋が架けられ、大きい木の門が構えていた。


 大きい門を抜けると石畳が町中まで続き、その上をコスモとセルシルが歩いてスタンブルトの仕事斡旋所へと向かっていた。


 町の中心部まで行くと石造りで出来た三階建ての仕事斡旋所が見えて来る。


 扉を開け中に入ると、カルラナと同じ様に酒場が併設されていた。冒険者の何人かが酒場でくつろいでいる横を通り、コスモとセルシルの2人で受付窓口に向かう。


 セルシルが受付窓口に居る女に親し気に声を掛けて呼び出す。


「メイちゃんーセルシルが戻ってきたっぺよ」


「セルシルさん!また道に迷ったんですか?もう観光に行くって言ってから1カ月以上経ってますよ」


 メイと呼ばれた女は、普通体型に緑色の長い髪を半分に分け側頭部で髪留めを使い流し、目が線の様に細く、おっとりとした顔をしている。


「いんやーカルラナまでの分かれ道でちょっと迷ってな!んで横に居るのがコスモ師匠!俺の恩人で<インペリアルオブハート>の称号を持つ【ソードアーマー】だっぺ!」


「お、恩人なのか……まあ、それは置いて初めましてだなメイ」


「コ、コココココココスモ様ですって!あのロンフォードの騒乱を収め皇帝陛下より称号を授かり、ついこの間は盗賊掃討戦でもその名を広めた!!」


 山岳都市にもコスモの名は広まっていた、特にメイはコスモの大ファンだった様で、コスモを目にすると説明的な経歴を口にしながら、驚きの表情を見せていた。


 少し落ち着いたメイが慌てて身なりを気にし始める。


「えと、お化粧大丈夫かな……コホン!コスモ様ようこそスタンブルトへ!」


「あ、ああよろしくな」


「やーん男っぽい口調もかっくいー!!」


 挨拶を終えるとメイがコスモの顔や体を見回すと、今時の少女の様に黄色い声を上げ1人で騒いでいる。それをコスモが生暖かい目で見守っていると、仕事斡旋所の扉が開き、依頼を終えた踊り子のフィオーレが入って来る。


 フィオーレがコスモ達を……特にセルシルを見ると、険しい表情になり細身の剣を抜き構える。


「メイ!その髑髏の男、ヤバい気がする!私が殺るから早く逃げて!」


「あ、あの違うんです!フィオーレさん!この人こう見えても冒険者なんです!」


「えっ?冒険者?」


 フィオーレがセルシルの【死神の鎧】を見て強盗の類かと勘違いをするが、すぐにメイに説得され勘違いである事が分かる。そして先程の殺伐とした雰囲気と打って変わって可愛い仕草で、手を猫の様に曲げセルシルに謝罪をする。


「へえーあんたが噂の元エースの黒騎士セルシルね、勘違いしちゃってめんご!」


「な、なんか変わった子だっぺな……」


(お前に言われたくないだろうよ……)


 セルシルがカルラナ観光へ向かった後に入れ替わりで、冒険者となったのがフィオーレであった。互いに面識は無く今日が初めての出会いであった。


 新米冒険者としてのフィオーレの活躍は目覚しく短期間で高難度の討伐依頼を数件達成させていた。山岳都市の冒険者の間ではかなりの有名人となっていた。特に山賊に対しては容赦が無く、目に見えない剣捌きで切り刻む所から【百剣のフィオーレ】としてその名が轟いていた。


 そのフィオーレがコスモの桃色のビキニアーマーを見ると、口を抑え笑いを堪え始める。


「何、このビッチな格好!マジで受けるんですけど!ぷふぅー!」


(こ、このクソガキが……)


 コスモの装備する桃色のビキニアーマーについて、フィオーレから新たな評価、ビッチが下される。この怒りをぶつけようにも子供の様に幼いフィオーレに、ぶつける訳にもいかず拳を握り込み大人の我慢をする。


 笑い終えたフィオーレがコスモの顔を見て、何かに気付いた様に凝視する。


「コスモだっけアンタ、なーんか顔が私の師匠と似てるんだよね……」


「へえ、フィオーレにも師匠が居るのか」


「まあもうおばあちゃんだけど、鬼強でさ!私に上には上が居るからしっかりと修行して来いって言うからここで冒険者やってんの!まあアタシより強い奴なんか全然居ないけどねー!」


「年配の女で強いか……なんかアンナに似てるな」


 フィオーレの師匠の話を聞くと、つい森の魔女のアンナを重ねてしまうコスモだが、自分に似ているというフィオーレの師匠に興味を持つ。


 フィオーレが冒険者をしている理由を語り出すと、自画自賛をこれでもかと言う位に強調してくる。恐らくその自惚れ屋な性格を師匠に見抜かれ、修行に出されたのだろう。


 するとフィオーレが自分の胸とコスモの胸を見比べると、苦虫を嚙み潰したような顔で睨んでくる。


「……ちょっとばかし胸がでけえからってなあ、天下取った気になるなよ!ぺっ!」


「え、ええ……」


 それはお前だろうと言う突っ込みを入れる隙すら無い、情緒不安定なフィオーレにコスモが困惑しているとメイから突然、依頼の打診を受ける。


「あ、あのコスモ様、お願いがありまして!こ、この依頼を受けて頂けますでしょうか!」


 手には何枚か依頼書がありその中に受けて欲しい物があるのか、やたらとその依頼書だけを大きく見せる。だがコスモはセルシルを送り届けただけなので丁重に断ろうとする。


「あのメイ、悪いけど俺はセルシルをスタンブルトへ送りに来ただけなんだ、セルシルに任せたらどうだ?」


「セルシルさんだと……1年は帰ってこれない依頼なんです!!」


「あー……そういう事か」


「たははは!参ったっぺなー!」


 その依頼は領主レオネクスの直々に出された物で、内容は山間部に拠点を置く独立した山岳部族の懐柔だった。詳細を見ると山岳部族は霊峰アーガコアに連なる山脈を知り尽くしており、助力を得られれば山賊討伐の要になると記載されていた。


 昔は帝国とも交流があったらしいのだが、ある日を境に急に途絶えてしまった。そこで現地に赴き、説得を行って欲しいという依頼だ。山岳部族の拠点までの案内人は付ける、と書いてあるため戻る時は1人という事になる。


 ある意味セルシルの呪い、【方向音痴】の効果が最大限に発揮されるのにこの上ない条件の依頼であった。


 そしてコスモは悩んでいた。ロンフォード領での盗賊掃討戦で、セルシルに人質を救出して貰った借りもある。だからと言ってセルシルに任せていては、一向に山岳部族の懐柔は進まない。


 仕方なく一度だけメイの依頼を受けて、セルシルの借りを返す事に決める。


「はあ……セルシルにはロンフォード領で世話になったしな、その依頼受けるよ」


「きゃー!コスモ様ありがとうございます!早速こちらで手続きしますから椅子に座ってお待ち下さいね!」


「コスモ師匠、すまないっぺ……この呪いが克服出来たらいいんだげども……」


「セルシル、お前はもうビキニパラダイスでも何でもいいから、その鎧の呪いを解いておけよ……」


 セルシルに借りを返す為に依頼を受けたが、横で聞いていたフィオーレが腕を組みながら呆れた顔で忠告をする。


「コスモ、忠告しておくけどその依頼、どの冒険者でも達成は出来ないからね!」


「……何で分かるんだよ」


「山岳部族ってここら一帯で一番強い部族なんだって、噂じゃあ、はぐれ竜を単独で討伐した者も居るんだってさ、つまり自分達より、竜より強い者でないと従わないって事よ!だからアンタには無理って話!」


「ふーん……じゃあ俺に一番合っている仕事だな」


「はあ?あんた私の話聞いてた?ただの【ソードアーマー】じゃ無理だって言ってるの!」


 まさしくコスモの英雄級の能力値に合致する条件の依頼であった。だがフィオーレはコスモの実力を知らないので理解出来ないでいた。


 ひょんなことから山岳都市スタンブルトの依頼に片足を突っ込むコスモが、今度は山岳都市を中心に冒険者として活動して行くのであった。


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