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元騎士団のおっさん伝説のピンクビキニアーマーになる ~魅力を添えて~  作者: トリミング中の噛み犬


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第29話 魔法学院仕置き4

・コスモ(女)=モウガス(男)


元騎士団の39歳のおっさん冒険者

職業は【ソードアーマー】

 領主騎士団時代に負傷した右膝を治す為に飲んだ森の魔女の秘薬、万能薬の効果により39歳のおっさんモウガス(男)から見た目が20歳前後のコスモ(女)となる

 上皇アインザーによって<インペリアルオブハート>の称号を得るが、それを象徴するハート型の盾と共にビキニアーマーがますます外せなくなる、ある意味呪われた装備と化していた


諸事情によりモウガスの姪という事になる




 魔法学院の教師や生徒達の避難が続く中で、広大な校庭にはコスモとユリーズの二人だけが残り相対していた。


 ユリーズが左手に魔法書【マグマメティオスの書】持ち、コスモに語り掛ける。


「コスモ、俺の願いを聞き入れてくれて、改めて礼を言う」


「何を仰いますかユリーズ殿下の全力の魔法、このコスモが見事に受け止めましょう!」


 コスモが魔剣と盾をしっかりと構え、少し腰を少し落とし防御態勢を取る。


 ユリーズが目を瞑ると静かに天に顔を向け、同じく右手を天に向かって掲げる。その右手が燃え盛る炎の様に真紅の色に輝きだす。


 さらに集中して右手に体中の魔力を注ぎ込んでいく。


 すると校庭の上空に巨大な火球が出現し、太陽の様な明るさで辺りを強く照らし始める。魔力を注ぎ込むのと比例して火球が緩やかに静かに膨らんでいく。その大きさも校舎を覆う程だ。


 ユリーズの額に汗が流れ始める、全身全霊で魔力を込める事に集中している。その中で、自分の想いをコスモへと伝える。


「よいかコスモ、この【マグマメティオスの書】には俺の想いだけではない、上皇アインザーの後悔の想いも込められている。それを……<インペリアルオブハート>として跳ね除けてみせよ!」


「はい、ユリーズ殿下!」


 コスモが応答すると火球に向かってハート型の盾を掲げる。


 魔力を込め続けた火球が徐々に膨らむと、校庭が収まる程の大きさになって行く。まるで小さな太陽の如き大きさである。


 ユリーズが目を見開き、全身に力を入れ天に掲げた右手をコスモに向かって静かに振る。


「ゆくぞコスモ!マグマメティオス!!」


 天空にあった小さな太陽、火球がゆっくりとコスモに向かって落ちて行く。火球の周りには炎が激しくうねり強い光を放っている。


ゴゴゴゴゴゴ……


 火球に押された空気が辺りに校舎の窓を揺らし、地面に振動を与える。周りの樹々も空気が圧縮された風を受けて激しく揺れている。


 その中で正門から駆け付けたシャイラが校庭に到着し、ユリーズの放った火球を見て頭の中で40年前の【アウロポリスの変】を思い出す。


「コスモ殿!受けてはなりません!我が盟友ストレがこの魔法によって亡くなっているのです!逃げて下さい!!」


 ストレは職業【インペリアルアーマー】、アインザーの側近を務め、そして森の魔女アンナの一人息子である。


 シャイラがそう叫んだのも、自分が知る最も優秀で信用のおけるアーマー職のストレが、マグマメティオスで亡くなっていたからだ。


 ましてや【ソードアーマー】のコスモに受けられる道理が無いと判断した。その声を聞いたコスモが火球に視線を向けたまま、シャイラに返答をする。


「だとしたらシャイラ殿!この魔法を俺が耐え切れば貴女の盟友のストレ殿の手向けにもなりましょう!」


「こ、こんな時まで何を馬鹿な事を……」


 シャイラがコスモの姿を見ると盟友ストレの面影を重ねる。彼も危機に陥ると同じく笑みを浮かべ、それに立ち向かっていたのだ。


 性別は違えど心の在り方が瓜二つであった。シャイラが覚悟を決めてその場に留まる。


「……ならば、最後まで見届けましょう、それが私の義務です」


 そのシャイラに向かってコスモが笑みを浮かべると、迫りくる火球に集中する。


 距離が迫る程に、火球の圧力と熱気が強くなるのを肌に感じていく。ここでコスモが、技能【鎧形】を組み合わせた奥義を発動する。


「盾奥義!妖精鎧形(エルフーンアーマー)!!」


 技能【鎧形】は防具の強度を上げる一般技能、それに魔法の威力を軽減する盾技【妖精盾】を組み合わせたものである。


 全身が青白い光の膜に包まれると熱気が軽減される。


 そして、ゆっくりと迫っていた小さい太陽の様な巨大な火球がコスモのハート型の盾に接触する。


ギッ!ギギギギギギギギ!!


 火球を受け止めた盾が、その重さと圧力で軋む音を立てて行く。盾を掲げていた腕も少しづつ押し込まれて行く。


「ぐ、ぐお!こ、これがマグマメティオス……」


 コスモが持つ上級技能と英雄級の能力値を以っても押し返せない程の圧力だ。巨大な火球は無慈悲にも、コスモを押し潰す様に地面へと向かって行く。


 やがて踏ん張っていた足元が地面へと埋まって行き、そこから地面が割れて辺り一帯が陥没して行く。


 巨大な火球は動きを止めず、そのままコスモを地面へと押し込んで行く。誰の目から見ても、そこから立ち直るのは不可能であった。


 コスモが巨大な火球の勢いと重さに耐え切れず片膝と付き、限界を迎えようとしていた。


(く、くそ……俺も、アンナの息子と同じ様に、ここで終わっちまうのか……皆の想いも果たせないまま守れないまま……)


 コスモの頭の中でアインザー、シャイラ、ユリーズと森の魔女アンナの顔を思い浮かべていた。今ここで倒れれば、アインザーとシャイラは再び【アウロポリスの変】を迎える事になる。ユリーズも同じ思いをするだろう。


 何よりアンナが失った息子のストレの無念が晴らせない。あの寂しそうなアンナの顔は忘れられないし、もう見たくは無い。


 そんな想いを守り貫き通す事こそ【ソードアーマー】の本懐、それだけは体が朽ちようとも譲れない信念であった。


「こんな所で……諦めてたまるかあああああああああ!!」


 コスモの心の奥底から力が漲って来る。特殊技能【羅刹】と特殊技能【乙女の怒り】が合わさった新たな特殊技能が芽生える。


 技能【羅刹女の怒り】である。全ての能力値が3倍になり、攻撃では確実に10倍の必殺の一撃を出す。


 巨大な火球に押し込まれていたコスモの体から、今までより巨大な青い炎の様な陽炎が溢れ出す。すると徐々にだが、巨大な火球の進みが止まり始める。


「マ、マグマメティオスを……止めた!」


 シャイラがマグマメティオスを止めた事に驚愕している。もし止められるとしたら女神か邪神竜デモゴルゴ以外には有り得なかった。


「はあはあ……さすがにやられるかと思ったぜ……だがな、まだ負けてやるにはいかねえ。アンナから貰ったこの命と力!無駄にしたら怒られちまうからな!!」


 巨大な火球を押し上げながら立ち上がると、右手の魔剣ナインロータスを後方に振りかぶったまま、腕に力を溜める。前腕から上腕、広背筋が盛り上がって行く。そして一気に火球へと魔剣ナインロータスを横なぎに打ち込んで行く。


「剣奥義!浸透瀑布撃(ペネレイトゴージ)!!」


 技能【浸透】攻撃時に相手の【守備】を20無効にする効果と、剣技【流水撃】流水の如く流れる様に相手の弱点に突く技、この2つを掛け合わせたものである。


 効果は相手の【守備】【魔防】を無視して、内部に爆発的な【魔力】を送り込み、破裂させる技能だ。しかも技能【羅刹女の怒り】の効果も上乗せされ10倍の威力を誇っていた。


ズドン!ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


 重厚な衝撃音と、10倍の必殺の一撃音が今までにない長さで響き渡る。


 魔剣ナインロータスを巨大な火球に叩き付けると、魔剣の当たった火球の先端部分から勢いよく全体にひび割れが入って行く。


 そのひびから少しつづ白い光が漏れ始める。段々ひびが大きくなると内部を破壊する光が強まり、火球の内側から一気に爆発する様に粉々になって行く。


 火球が爆発すると込めていた【魔力】によって辺りに強風が吹き、風に乗った破片が辺りに散って行く。校舎の窓ガラスを突き破り、壁にめり込み、樹々にぶつかる。


 シャイラが力を使い果たしたユリーズの前に立つと、飛んでくる破片を曲線を描いた魔剣で颯爽と振り払って行く。


 少しすると強風も止み、砂埃が舞う校庭に残りの破片が降ってくる。


 砂埃が落ちついて行くと、薄っすらと桃色のビキニアーマーが見え始める。技能【羅刹女の怒り】が解除され、コスモの体から出ていた巨大な青い炎の様な陽炎はすでに消えていた。


 コスモの装備していたビキニアーマーも留め具が壊れ、ハート型の盾がひしゃげていた。そして強風で飛んで来た瓦礫で、体中に擦り傷や打撲を負っていた。


 その姿を見れば、ユリーズの全魔力を込めた【マグマメティオス】が如何に、凄まじい威力であったのかが伝わって来る。


「……ふう……スッキリしたぜ!」


 魔剣ナインロータスとハート型の盾を背負うと汚れた顔で、強い日差しを手で遮りながら、天に上る太陽を見つめて一息付く。これで亡くなったストレの手向けになったかと思うと、やりきったという達成感を実感する。


 そして人類初の【マグマメティオス】単独の撃破だ。


 感慨深げにしていると、シャイラがコスモに駆け寄り称賛の言葉を送る。


「コスモ殿、お見事でした……これで亡くなったストレもきっと、天の上で喜んでいるでしょう」


「ああ、同じアーマー職が果たしたんだ、きっと喜んでいるさ」


 2人で空を見上げるとシャイラの目に小粒の涙が浮かぶ。盟友ストレが果たせなかった無念をコスモが見事に晴らしたのだ。その思いがシャイラの頭を巡っていた。


 遅れてユリーズが体をふらつかせながらこちらに歩いてくる。魔力を全て使い尽くしたのだろう、足取りには力が無かった。


 コスモの前まで来て両肩を掴むと、ユリーズが笑顔で語り掛ける。


「見事だったコスモ!俺の全力、爺様の思い!よくぞ受け止めてくれた!」


「ユリーズ殿下のお力、凄まじい物でした、俺はもう駄目かと思いましたよ、はははは」


 ユリーズの腕から技能【慈愛】で心の色が見えてくる。アインザーと同じ様に白と黄色が強く円を描き、太陽が輝くような色をしているが、中央に桃色に輝く光の様な物が見える。


(うん?桃色の光?)


 初めて見る色にコスモが困惑していると、ユリーズがコスモの腰を掴み自分に引き寄せると、真剣な眼差しで顔を近付ける。


「コスモ、俺は決めたぞ、お前を次期王妃にしてやる」


「……王妃?ああ、側室として護衛してくれって事ですか?」


「何を言っている、もちろん第一の妃としてだ!」


 この流れどこかで見た事があると危険を感じたコスモが、体を捻りユリーズの腕から抜け出すと距離を取る。


 そして何故か魔剣ナインロータスとハート型の盾を構える。


「そ、それをお断りする事は……」


「許さん、逃げようものなら帝国が総力を上げて、地の果てまで追いかけるぞ」


 セリオスの時と違い強引で執着心が物凄い。さすが次期皇帝、アインザーの血がしっかりと受け継がれている。


「こんな小汚い、変な色のビキニアーマーなんか着て、筋肉だらけの女のどこが良いのですか!」


「全てだが?」


 帝国皇子の即答である。


 物凄い高圧的な態度なのだが、表情を変えずにはっきりと信念を持って言葉にする。聞いてる方が恥ずかしくなる位だ。


 コスモがそれを聞いて顔を赤くすると、魔剣ナインロータスとハート型の盾を構えながら少しづつ後退して行く。


「お、俺にはまだやるべき事があるのです……殿下とはお、おおおお付き合いは……出来ません!!」


 お断りをするとコスモが一目散にその場から逃走を始める。


「シャイラ、コスモを捕まえるのだ」


「はっ!」


 全力を出し尽くした後なので体力の無いコスモが、シャイラの技能【神速】であっさりと追い付かれると捕まってしまう。捕獲されるとシャイラに羽交い絞めにされて、ユリーズの前に立たされる。


「俺の全力の【マグマメティオス】からは逃げなかったのに、変わった女だなコスモは……」


(中身がおっさんだからだよ!)


 中身はモウガス(39歳男)なのだ、帝国皇子の拒否権の無い行使に対して逃亡を選択するのは当然であった。


 しかし帝国の皇子でもある立場から、コスモの力の有用性、将来性を鑑みても王妃として束縛をする時期では無いと、冷静に判断していた。


「コスモの言う通り、お前の力は必ず帝国に必要となる筈だ。だが諦めた訳では無いぞ!お前の言うやるべき事を果たしたら必ず答えを聞かせて貰う、いいな?」


「か、畏まりました!ユリーズ殿下!」


 どうにか場が収まり安堵するコスモ、その後は避難していた魔法学院の院長に経緯を説明し、目的を果たした事を伝える。


 だが校舎の窓が割れ、校庭も穴だらけになってしまったので、今日の授業は中止にして避難していた生徒達をそのまま家に帰す事にした。


 その日に起こった出来事は現皇帝派の貴族達の子息、子女達によって詳細に親へと伝えられ、コスモの力が技術研究員のユユの言った通りだと知ると、プレイトルの下に現皇帝派の貴族が集まり、すぐさま工作計画を中止にした。


 そしてお仕置きを済ませたコスモはシャイラと一緒に馬車に乗り込み、アインザーの隠れ家に戻って行った。





 隠れ家に到着すると、玄関口の大広間でアインザーが待ち受けていた。


「はははは!見事にボロボロじゃのう!どうじゃった我が孫のユリーズの【マグマメティオス】の威力は!」


「流石にもう駄目かと思いましたよ……」


 アインザーが笑顔でコスモ達を迎える。その言葉にはユリーズが【マグマメティオス】を放つ事を想定していた様な含みがあった。


 そして同行していたシャイラの表情を見たアインザーが声を掛ける。


「シャイラ、お主も少しは溜飲が下がったか?」


「はい、コスモ殿のお陰で……」


 コスモのお陰で盟友ストレの無念も果たされ、シャイラの気持ちにも整理が付いた様子だった。その様子をアインザーが優しい顔で微笑み、見つめていた。


 続けてアインザーがコスモに寄り肩に手を添える。


「コスモよ、余の後悔を……ストレの無念を晴らしてくれた事に感謝する……」


「何を申されますか、このコスモ、上皇様のお役に立てて光栄です」


 コスモが跪いて任を果たしたことに満足したと伝えると、アインザーが顔を隠す様に背を向けて拳を強く握り、肩を震わせてコスモの言葉を噛み締めていた。


 アインザーが袖で顔を拭う仕草をするとこちらに振り返る。


「あれから40年か……長かったのう、シャイラよ」


「はい、上皇様と私が魔女の呪いで女になってから40年ですからね」


「は?え?シャイラ殿も?」


 【アウロポリスの変】の後、護衛としてアインザーに付き従っていた時に森の魔女アンナによる急襲を受け、アインザーを庇ったシャイラも巻き込まれ女になっていた。


 ただし呪いの技能【魅了】は2人が意識を失った後にアインザーだけに施された様だ。


 シャイラが盟友ストレが散って行く様を事細かく知っていたのも、実際その場に居たからである。そうなると気になるのが、2人の実年齢である。


「お、お2人の歳は一体……」


「余が今年で72歳じゃ、このシャイラは65歳じゃな」


「女性に歳を尋ねるのは、些か配慮が足りていないのでは?」


 アインザーは歳を気にしていない様だが、シャイラが敏感に反応していた。


 森の魔女アンナが万能薬の説明で言っていた通り、体の時間を止める話は事実であった。ただ不老不死では無いので、いずれ精神が朽ち果て体だけが残る。


 その事を思い出し2人の姿を切ない顔でコスモが見つめていると、アインザーが嬉しそうな笑顔で話を続ける。


「さあ、コスモこれで帝国が変わってゆくぞ」


「帝国が変わる……ですか?」


「ああ、お主の存在がその要じゃ、しばらくここに居ると良い、その内にウェイリーから登城の勅令が来るからのう」


「ウェイリー陛下に……謁見ですか」


 <インペリアルオブハート>の称号から始まった騒動も一旦は収まり、貴族達の間で魔法学院内での出来事が広まって行く。


 その話は皇帝ウェイリーの耳にも入って行った。


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