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元騎士団のおっさん伝説のピンクビキニアーマーになる ~魅力を添えて~  作者: トリミング中の噛み犬


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第28話 魔法学院仕置き3

・コスモ(女)=モウガス(男)


元騎士団の39歳のおっさん冒険者

職業は【ソードアーマー】

 領主騎士団時代に負傷した右膝を治す為に飲んだ森の魔女の秘薬、万能薬の効果により39歳のおっさんモウガス(男)から見た目が20歳前後のコスモ(女)となる

 上皇アインザーによって<インペリアルオブハート>の称号を得るが、それを象徴するハート型の盾と共にビキニアーマーがますます外せなくなる、ある意味呪われた装備と化していた


諸事情によりモウガスの姪という事になる




 コスモが校庭の中央に立つと、後から追って来た一組の生徒達に向かって振り返り、仁王立ちで待ち構える。


 校庭の広さは端から端まで人の足で歩いて10分程掛かる広さがある。コスモの目から見て正面には校舎があり、それ以外の周りは樹々に囲まれている。


 校庭の場所は校舎を挟んで正門の反対側に位置していて、魔法の練習で住宅地や施設などに影響の無い様考えられて作られていた。


 続々と一組の生徒達が集まる中、その後方で遅れてやって来たユリーズが静かに事の成り行きを見守っていた。校舎の窓からは校庭を一望でき、他の生徒や教師が固唾を飲んで見ていた。


 一組の生徒が十数人と校庭に揃うと、コスモが声を張り上げ勝負の方法を説明する。


「いいか!俺は10分間、ここを一歩も動かない、倒せれば君達の勝ちだ、称号を返上しよう!だが、時間を過ぎても倒せない場合は……君達に攻撃を開始する」


 校舎に取付けられている大きな時計を指差し、生徒達解りやすく伝えると、さらに条件を付け加える。


「俺からの攻撃はこの剣も盾も使わないし拳も蹴りも出さない、走っての移動もしない、ただし君達が校庭から外へ逃げないという条件でだ!どうだやってみるか?」


 完全に自分達を侮っている条件を出されて、誇り高い貴族の子息、子女達の怒りが頂点に達する。


「たかが、【ソードアーマー】が偉そうに条件だと!ふざけるな!」


「貴女やられたいの?これだけの人数で魔法を受けるなんて正気じゃない!」


 怒りとともに相手を斃す事に躊躇する者が出て来るが、さらにコスモが挑発を行う。


「安心しろ!俺が倒れても上皇様が咎が及ばない事を保証する!まあ無理だとは思うが出来るものならやってみろ!」


 一組の生徒達が一気に頭に血を上らせ早足でコスモの正面側を陣取って行く。魔法書を手に持ちもう一方の手をこちら側に掲げて構えを取る。


「完全に舐めやがって!痛い目を見せてやる!」


「手を抜かないで全力で行くから!恨まないでよね!」


 生徒達の準備が整うと、コスモが時計を見て開始の時期を伝える。


「あの時計の長い針が2の数字をさしたら始まりだ!それが4の数字をさすまで自由に攻撃をして来い!」


 時計台の時間が1時9分を示していた。生徒達が時計の長針に注目すると、しばらくの間が空き、時計の長針が軋みながら2の数字に振れる。


 そして一斉に生徒達からの魔法攻撃が始まる。


「くらえ!ボルキャノン!!」


 1人の生徒が魔法名を唱えると。掲げた手から炎を纏った人の胴体程の大きさの巨大な岩石が出現すると、力一杯引かれた矢の様な速度でコスモに迫る。


 その魔法がコスモの体に触れる瞬間。


 コスモが前屈みで腰を落とし斜めに捻りながら右腕を後ろから下へ、そして上体をあげるのに合わせ、少し遅れる様に拳を下から上へと振り上げ炎を纏った岩石に当てる。


ゴスッ!ズゴゴゴゴ!!


 必殺の一撃音と鈍い音と共に拳によって打ち上げられた炎を纏った岩石が、緩やかな曲線の軌道を描きコスモの後方の校庭へと落ちて行く。弾かれた魔法が着弾した場所には大きな穴が開いていた。


 生徒達が全員、目を見開き信じられないような顔をする。


「ま、魔法を拳で弾く……だって?」


 魔法を放った生徒が手を掲げたまま体を震わせている。その様子を見て固まる生徒達にコスモが忠告をする。


「おーい、もう30秒経ってるぞ、攻撃は終わりか?」


 その言葉で一気に正気に戻った生徒達が、一斉に魔法書に魔力を込め始める。


「皆で一気に攻撃すればやれるはずだ!サンダースフィア!!」


「ウィンディーカッター!!」


「フレイムランス!!」


 十数もの中級魔法がコスモに向かって同時に放たれる。どれもが強力な魔力が込められていて、並の【ソードアーマー】ならすぐに倒せる威力だ。だが相手は並では無かった。


 次々と向かって来る魔法に足を一歩も動かさず、膝から上、上半身を使い、拳を使って軽々と弾いて行く。魔法を弾く音と、必殺の一撃音が被る様に辺りに響き渡る。その動きは残像が見える程に早かった。


ガスッ!ズゴ……ドスッ!ズゴ……コンッ!ズゴ……


 コスモの格闘適性はS級、その効果が遺憾なく発揮されていた。


「なんで鈍足の【ソードアーマー】があんなに早く動けるんだ!」


「文句言ってないで、どんどん撃ちなさい!!」


 生徒達に焦りが見え始める、ただの【ソードアーマー】だと思っていたが、明らかに動きが違う。そして自分達の放つ高威力の魔法がコスモの【魔防】の能力値を超えていない事に気付き始める。


 拳で弾かれた魔法がどんどんとコスモの後方へ落ちて行き、校庭が着弾した魔法によって地面が穴だらけになって行く。5分程経過すると、魔法を撃ち続ける生徒も減り始め、6分を過ぎると魔法を放っていた生徒が全員、その場に力尽き座り込む。


「はあはあ……も、もう……はあはあ……限界だ……」


「も、もう撃てない……はあはあ……」


「おい、もう終わりかよ!」


 その生徒達を見てコスモが拍子抜けする。


 モウガスの時に模擬戦で戦ったマジック職は全員中級魔法を最低でも10分は撃ち続けていたからだ。そのお陰で防御陣形を取り圧力を掛けるも、根負けしてしまったのだ。


 さらに模擬戦に勝ったマジック職達は、老齢の上官に狙いの精度が甘いと注意を受けていた。マジック職はとんでもない職業だと思っていたが、それに比べて生徒達は余りにも拙かった。


「時間一杯まで逃げる体力は回復させておけ!マジック職に大事なのは逃げる力だからな!」


 コスモの言っている事が理解出来ていない生徒達が息を切らせながら話を聞く。刻々と時間が過ぎて行き、時計の長針が4の数字をさすとコスモが動き出す。


「君達は帝国の将来を担う貴族になる、だから手加減はしてやるから安心しろ」


 ゆっくり歩きながらコスモが迫ると、残り少ない体力を振り絞って生徒達が校庭内の四方に向かって走り出す。


「はあはあ、走らないなら捕まる訳がない……」


 そう思っていた男子生徒の1人が後ろを振り返ると、桃色のビキニアーマーが紫色の長い髪を揺らしながら、巨大な体躯と割れた腹筋大きい胸が両腕を広げて、物凄い早歩きで迫って来ていた。


 眼前に居たと気付いた時にはコスモに抱き上げられていた。1人目の犠牲者である。


「な、何をする離せ!」


「ふん!」


ギュッ!ズゴゴゴゴゴゴ!!


「ぴぎゃあああああああ!!……」


 コスモに正面から抱え上げられた男子生徒が、両腕で体を締め付けられると言葉にならない悲鳴と必殺の一撃音を上げ、体中から力が抜けだらりとする。


 コスモが腕の力を緩ませると締め付けられた男子生徒が力なく地面に倒れ込む。そして次の獲物を、底知れない殺意の籠った眼光で見つめると、再び両腕を広げて生徒達に早歩きで迫って行く。


 それを見ていた生徒達が戦慄する。


「ひ、ひい!な、なんて馬鹿力なんだ!」


「や、やだ……いやだ!」


 コスモの技能【不殺】で体力1が残った状態で生きてはいるが、見た目の衝撃に恐怖が勝っていた。生徒達から余裕のあった表情が消え、必死の形相で逃げ回る。


 だがコスモの恐ろしい早歩きが、体力の無い状態で走る男子生徒達よりも圧倒的に早く、次々と捕まり犠牲となって行く。


「た、助け……!」


ギュッ!ズゴゴゴゴゴゴ!!


「うぎゃああああああ!!……」


「や、やめ……」


ギュッ!ズゴゴゴゴゴゴ!!


「にぎゃああああああ!!……」


「大きい胸に挟まれ倒れるならば帝国男児として本望!!」


ギュッウウ!ズゴゴゴゴゴゴ!!


「ほんぎゃあああああ!!……」


 校庭に抱き潰された男子生徒達が悲鳴と一部受け入れる声を上げると、その場に力無く倒れ、変わり果てた姿が散乱する。


 女子生徒達の中には腰を抜かして、四つん這いになって逃げる者、その場で恐怖に耐え切れず泣きながら動けぬ者など、男子生徒よりも酷い状況であった。


 1人の女子生徒が遠目で見ていたルイシュの足にしがみつき、助けを求めて来る。


「ル、ルイシュ様……お、お助け下さい!」


「……分かりました、貴女達は下がっていなさい」


 ルイシュはただの【ソードアーマー】ではないと予想をしていたが、予想を遥か上に行くコスモを見て自分達の負けだと確信していた。だが首謀者の娘として逃げる訳には行かなかった。


 そしてユリーズに言われた通りに、ルイシュが生徒達の助けに入る。次々と男子生徒を襲うコスモに向かって大声を上げる。


「<インペリアルオブハート>のコスモ殿!私はバンディカ帝国大臣プレイトルが娘、ルイシュ!貴女との一騎打ちを所望します!」


 透き通ったその声は離れていたコスモにもしっかりと届いた。生徒達を追い詰める事を止めて、笑顔でルイシュの方向へ体を向ける。


「ルイシュ殿!その申し出承った!貴女が全力を出せる様、準備する!少し待ってくれ!」


 コスモが嬉しそうに言うと倒れていた男子を次々と担ぎ上げて行くと、ユリーズが頼んでいたシスター職の保険医達が待機する校舎側の仮設救護所へ次々と運んで行く。


 保険医達が変わり果てた男子生徒達にヒールの杖を掲げ、治療を始めて行く。それを見送ると、コスモは再び校庭の真ん中へと歩いて行き、右手に魔剣ナインロータス、左手にハート型の盾を持ち構える。


「お待たせしたルイシュ殿!さあ存分に貴女の力を俺にぶつけてみよ!」


「……な、なんて清々しい人なの、だけどこれも父の為、行きます!」


 コスモの威風堂々たる態度に尊敬の念を抱くルイシュが、魔法書【サンダーブレイクの書】を手に取ると、もう片手をコスモに向けて掲げる。


 その手から黄色い光が輝くと、空に暗雲が集まり始める。暗雲が校庭を覆う程になると、ルイシュが魔法を解き放つ。


「サンダアアーーーブレイクーーー!!」


 暗雲の中から、大木の様な太さの白く輝く閃光の稲妻が校庭一帯に降り注ぐ。


「盾技!妖精盾(フェアリーシールド)!」


 【魔防】の能力値が30を超えると使用が出来るアーマー職の上級盾技、魔法の威力を軽減させる効果がある。


 コスモの持つハート型の盾が青白く輝くと膜を張る様に包み込む。そのハート型の盾を天に向け、自分に向かって落ちて来た稲妻を受け止める。


ガギィィィィィン!バリバリバリバリ……


「ぐぬう!流石に重いな、だが……まだまだ!!」


 コスモが腕に力を込めると盾で防いでいた稲妻を弾き返し、その横に弾かれた太い稲妻が着弾し校庭に大穴を開ける。校庭一帯に降り注ぐ太い稲妻を盾で弾き返しながらルイシュの下へとコスモがゆっくりと歩みを進める。


「そ、そんな我が家の家宝、【サンダーブレイクの書】が通用しないなんて……」


 ルイシュの眼前でコスモが降りかかる雨粒を払うかの如く、稲妻をハート型の盾で弾き続ける。その姿を信じられない顔で見つめていた。


 邪神竜が猛威を振るっていた頃、眷属が率いる竜達を悉く殲滅してきた魔法が【サンダーブレイクの書】なのだ。ただ広範囲の敵に対して有効的な魔法で、敵が1人の場合はその威力を集中できない弱点があった。


 それをコスモが見抜いたのか、敢えて動く事によって多くの稲妻を受け続けていた。


 そして校庭一帯に降り注ぐ稲妻群を抜けるとルイシュの前に立ち、魔剣ナインロータスの切先をその顔に向ける。稲妻を受けたハート型の盾からは稲妻により熱せられた煙が上がっていた。


「まだ、続けますか?ルイシュ殿」


 コスモが真剣な眼差しでルイシュに問いかける。ルイシュが目を瞑り、魔法を解くと空の暗雲が晴れ日が差し込む。そしてその場に跪く。


「コスモ殿、参りました……私が代わりに罰を受けますので、残った級友達はお助け下さい……」


「ル、ルイシュ様!!」


 ルイシュが降伏するとコスモの前で許しを請う。それを見た他の生徒達が悲観の声を上げる。


 自惚れた者が多いと思っていたコスモが、ルイシュの貴族たる振舞いに感心をする。まだこの様な者が居るのなら貴族も捨てたものではない。


「頭をお上げ下さいルイシュ殿、俺は上皇様よりとっちめ……仕置きをしろと言われて来ただけ、罪に問うなど毛頭ありません」


「……上皇様の温情に感謝いたします」


 罪を問う気が無いと告げるとルイシュが更に深く頭を下げ、感謝の意を示す。コスモが続けて辺りに居る生徒達に告げる。


「これにて、不毛な戦いは終わりとする!其方達の父君、母君にしっかりと伝えるのだ、<インペリアルオブハート>のコスモは称号に値する人物、そして上皇様の判断が正しい事をだ!」


「……」


 散々に打ちのめされた現皇帝派の子息、子女達は反論の言葉が出て来なかった。自分達がたかが【ソードアーマー】と見下していた者に、全力を尽くした魔法を受け止められ、一方的に蹂躙されて、自信も誇りも粉々になっていた。


 そして己の無力さと愚かさを身を持って感じ取っていた。


 すると遠くから見ていた上皇アインザーの孫、ユリーズが拍手をしながらコスモへと近寄って行く。


「さすが上皇アインザーの爺様が認めた者だけはあるな、見事だぞコスモ」


「貴方がウェイリー陛下の御子息……」


「ああ、俺の名はユリーズ、バンディカ帝国の皇子だ」


「はっ!上皇様より話は伺っております」


 真紅の髪に赤い瞳、アインザーと同じ特徴を持つユリーズがコスモの前に立つ。それをコスモが魔剣ナインロータスの切先を下に向け、直立したまま胸へと掲げて敬礼をして迎える。


 ユリーズが自己紹介を終えるとコスモに自身の頼みを伝える。


「コスモよ、お前の力を見込んで頼みがある。俺の全力の魔法を受けてはくれないか?」


「ユリーズ様の全力をですか……」


 その話を聞いたルイシュが何かに気付いた様に立ち上がり、真剣な表情でユリーズに詰め寄る。


「ユリーズ様!貴方が全力を出したら、この魔法学院ごと消滅してしまいます!どうか考え直して下さい!!」


「ルイシュ、俺はな生まれてから今まで全力を出した事が無いのだ。だが今、目の前に全力を出しても良い相手が居る、これを見逃す手はあるまい」


「ほ、本気なのですか!」


「俺に二言は無い、解っているだろ?」


「……」


 ルイシュがユリーズの赤い瞳を見ると、本気である事を察する。


「今回の工作、騒動には一切関係無い、純粋な俺とコスモの勝負だ!よもや恐れをなして逃げるとは言うまいコスモよ?」


「ユリーズ殿下は上皇様に似ておられる……そう言われて逃げる者に称号など与えられる事はありません!もちろん喜んで御受けします!!」


 コスモが嬉しそうな顔でユリーズの申し出を受ける。ここにコスモとユリーズの決闘が決まった。


 ルイシュがそれを確認すると、周囲に居る者に声を掛ける。


「今動ける者は負傷者を抱え、校外へ避難しなさい!校舎内に居る人、全員にもそれを通達するのです、訓練ではありません、迅速に行いなさい!」


 コスモの襲撃から逃れた生徒が負傷者を抱え、保険医の【シスター】達は院長室に向かい、避難をするように連絡をして行く。


 院長から教師へ、教師から生徒へと避難の連絡が届くと、続々と校舎玄関口から生徒達が正門に向かって出てくる。正門横に止めた馬車で待機していたシャイラが、学院内の異常事態に気付く。


「生徒達と教師までも外に逃げている……」


 何か嫌な予感がするシャイラ。


 馬車の御者に待機するように指示を出すと正門から出て来る生徒達の逆方向、校舎へとシャイラが駆けて向かって行く。


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