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元騎士団のおっさん伝説のピンクビキニアーマーになる ~魅力を添えて~  作者: トリミング中の噛み犬


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第27話 魔法学院仕置き2

・コスモ(女)=モウガス(男)


元騎士団の39歳のおっさん冒険者

職業は【ソードアーマー】

 領主騎士団時代に負傷した右膝を治す為に飲んだ森の魔女の秘薬、万能薬の効果により39歳のおっさんモウガス(男)から見た目が20歳前後のコスモ(女)となる

 上皇アインザーによって<インペリアルオブハート>の称号を得るが、それを象徴するハート型の盾と共にビキニアーマーがますます外せなくなる、ある意味呪われた装備と化していた


諸事情によりモウガスの姪という事になる




 帝国首都、城塞都市アウロポリスの一画に広大な敷地が広がっている。住居や施設がひしめく中、敷地内には樹々などが並び、自然の豊かさが残っていた。


 それを堅固な塀で囲まれ、観音開き式の装飾が施された鉄格子の門が入口に構えている。そこから整然と敷き詰められた石で出来た幅広い道が正面の建屋の大きな玄関口まで続いている。


 建屋も三階建ての校舎に、中央上部には時計塔が立っており、格式高い歴史的建造物となっている。門の側には国立魔法学院という文字が黒い御影石に刻石され、白の塗料が文字の溝に塗りこまれた銘板がある。


 すでに日が真上に登ろうとしている、全ての生徒達が登校しているのか、辺りには学生の姿は無かった。


 魔法学院の門の前に豪華な薔薇の装飾が施された馬車が一台、停車する。その馬車の中から、コスモとシャイラがゆっくりと下りてくる。


「コスモ殿、ここがアウロポリスの魔法学院です」


「はー立派なもんだな……」


 広大な土地に建つ立派な校舎を見て、コスモが呆気にとられる。ロンフォード領にはこの様な立派な建物が無かったのだ。魔法学院の校舎自体が帝国の財力、威信を見せつけているようであった。


 校舎に見入っているコスモに、シャイラが本音を話す。


「今回の件について、私も少々不満に思っています」


「上皇様の決めた称号に魔法学院の生徒達が反発してますからね」


「いえ、そうではなく……アーマー職に対するマジック職の態度がです」


 シャイラは職業【インペリアルソードマスター】であらゆる剣技に通じている帝国内でも屈指の女剣士だ。今は亡き親友ストレが【インペリアルアーマー】だったので、アーマー職の重要性を一番理解していた。


「いくら本物の戦場を知らないマジック職達とはいえ、アーマー職に対する侮辱は許せません、本来であれば私が仕置きをする所ですが、アーマー職では無い私には役不足」


「で、俺が呼ばれたという事ですね」


「はい、コスモ殿であれば生徒達も流石に嫌という程、現実を知る事になるでしょう」


 シャイラの冷血そうな顔で少し微笑む。余程生徒達の態度に業を煮やしていたのだろう。


「私は馬車と共にここでお待ちしていますので、コスモ殿、存分にとっちめてやって下さい」


「は、はい、では行って参ります」


 シャイラもアインザーと同じ気持ちなのかとっちめると言う言葉を使って語気を強めると、拳を握りながら仕置きを願ってくる。その勢いに押されてコスモが門を押し開けると校内の敷地へシャイラに見送られながら中へと入って行く。


 石畳の道をゆっくりと進み、校舎へと向かって行く。


(上皇様がまず魔法学院の院長に会えと言っていたな……)


 流石にいきなり教室に乗り込み、生徒達を相手に暴れる訳にもいかず、アインザーの言い付け通り学院の院長に事情を話してから行動を起こそうとしていた。


 コスモが大きな玄関口から校舎内へ入ると、校舎内の案内図が壁に貼り付けてあった。それを頼りに誰も居ない廊下を歩き職員室へと向かって行く。


 丁度、昼時で生徒達が食堂のある建屋に向かっていたので廊下には誰も居なかった。その廊下をコスモが進むと案内図に記されていた通りの職員室の表札を見付け、扉を軽く叩くと中へと入って行く。


 一方、食堂のある別の建屋では、魔法学院の生徒達が昼食を取っていた。部屋の端から端まで届きそうな長机に椅子が並べられ、奥には厨房があった。厨房で作られた料理を銀盆に載せて生徒達が運び椅子に座り食事をする。


 その中でも一際目立つ生徒が2人居た。


 1人は男で真紅の長い髪を背中まで伸ばし、瞳は赤色で野性味のある強い眼差し、顔は生徒の中でも一番の美男子で、背丈も高く細見の体型で、魔法学院の男子の制服に身を包む。


 もう1人は女で長い銀髪を赤い布で頭頂部後ろで纏め、目は垂れ気味だが、顔は気の強い美人で、背丈は並の女子学生、体型も細見で、魔法学院の女子の制服を着用している。


 その2人が机を挟み向かい合い、食事を取りながら会話をしている。


「ユリーズ様……父上から<インペリアルオブハート>の居るカルラナへと向かえと催促が着ております」


「ルイシュ、君の父君は心配性だな」


 真紅の髪の男がユリーズと呼ばれ、銀髪の女はルイシュと呼ばれていた。アインザーと同じ真紅の髪を持つユリーズこそがアインザーの孫であり、ウェイリー皇帝の子息なのだ。


 今回の工作の首謀者プレイトルがローレスからの助言に不安を感じ、工作は早める様に娘ルイシュを通してユリーズに指示を出していた。


 だがユリーズは気にする事なく平然としていたが、そのユリーズとは反対にルイシュには焦りの色が見えていた。


「ですが、これ以上は貴族の子息、子女達の不満を抑えられません」


「アーマー職を見下す、勝気だけは強い者達か……」


 工作によって焚き付けられた現皇帝派の貴族の子息、子女達の生徒達が称号を与えられた、たかが【ソードアーマー】のコスモに対して敵意を剥き出しにしていた。


 その敵意を今まで抑えていたルイシュなのだが、父のプレイトルからの催促もあってユリーズに相談をしていた。


「たかが【ソードアーマー】如き下賤の者が上皇様の称号を得るなど、あってはならぬと息を巻いておりますが、あの上皇様から称号を授かった者が、ただの【ソードアーマー】とは思えません……」


「ああ、俺の尊敬する爺様が決めた事だ、それは間違いないだろうな、それにカルラナから届く話には必ずその【ソードアーマー】の女が出て来る」


「敵の情報も無く挑む戦いは無謀です、父もその事を良く知っているのに……」


「ルイシュ、君の父君は色々と苦労なさっている、それが今回の工作を強行する原因と俺は見ている」


 ユリーズとルイシュは称号を持つコスモについて詳細を知らされていなかった。ただ噂だけが聞こえて来る<インペリアルオブハート>の称号を持つコスモを、只者では無いとだけ察知はしていた。


 工作の首謀者プレイトルの娘ルイシュも普段の父とは思えない、軽率な行動に疑問を抱いていた。普段であれば相手の情報、能力値や技能、性格までも調べ上げ、慎重に作戦を練り上げている人物なのだ。


 そう動かざると得ない状況をユリーズは理解していた。そして不満を持つ貴族の子息と子女と父の間で板挟みになったルイシュが頭を抱えていた。


「はあ……一体どうすれば」


「俺が思うに、あの爺様が指を加えて待つ程のお人好しじゃない、もしかしたら向こう側から何か仕掛けてくるかもしれない。それにルイシュ、君は考え過ぎだ」


「ですが、生徒達が勝手に行動を起こそうとすれば、ユリーズ様の名にも傷が付きます」


「そんな物、捨て置けルイシュ。そんな事で俺の名は傷付かない」


 一度も会った事が無い祖父のアインザーだが、父のウェイリーから幼少の時から事細かに性格や好み、戦時の活躍を聞かされユリーズは育っていった。


 そして自分の考えに非常に似ている事に気付き、手紙のやり取りを通して疑問や悩みを打ち明けると、見事な解決方法に導く祖父を尊敬していた。


 だからこそ、称号を与えたアインザーが工作を黙って見過ごす事は無いと、考えていた。


 そして校舎内に昼時間の終わりを告げる予鈴の鐘の音が時計塔から響き渡る。


「さあルイシュ、昼の休憩は終わりだ、教室に戻ろう、プレイトル卿には俺からやんわりと返事をしておく」


「すみませんユリーズ様、ご迷惑をお掛けします」


 2人が食器の載った銀盆を持ち、席を立つと返却口に戻して食堂を後にする。


 その頃、コスモが院長室に招かれ、院長から魔法学院の説明を受けていた。


 能力値の【魔力】が高く、身分の高い者を一組、次に【魔力】が並で、身分が中の者を二組、最後に【魔力】が高い者から低い者を含み、身分が平民である者を三組と分けていた。


 帝国の法では身分による差別を禁止している、だが現実はそうはならなかった。身分で人を見下す者、理不尽を要求する者が後を絶たなかった。平等に魔法を学べるよう学院側が配慮した形が今の組分けとなっていた。


 その中でコスモの称号について不満を持つ者は一組の者だけと伝えられる。一組には帝国の中枢を担う貴族の子息、子女が特に多く、それだけに工作の根回しにも時間が掛からなかった。


 魔法学院としては教育機関として中立を守らなければならないので、教師達も今回の騒動には迷惑していた。


 説明を終えた院長にコスモがアインザーから預かった書状を手渡す。


『院長、帝国を担う若者達の育成、大儀である、この桃色の助平な格好している娘は我が帝国の心<インペリアルオブハート>の称号を持つコスモと言う者じゃ、こ奴が学院内で暴れ回って被った被害は上皇の名の下に一切を引き受けるものとする、安心して反逆者共の所へ案内するが良い』


 書状を読み終えた内容について院長が率直な感想を述べる。


「お会いした事は無いですが、豪気な方ですな上皇様は……」


「は、ははは……」


(助平の文言は余計だろ!)


 そして院長が一組を担当する女教師をコスモの案内役として呼び出す。ちょうど昼休憩も終わり、その女教師と共に一組の教室へと向かって行く。


 予鈴が鳴り終わって本鈴が鳴る前には生徒達も教室で待機する。一組の教室では貴族の生徒達が、コスモを負かす為に用意した魔法書の自慢をしていた。


「父上が買ってくれた、魔法書【ボルキャノンの書】だ、これで<インペリアルオブハート>などと名乗る輩を成敗してやる」


「私もこの【ウィンディーカッターの書】を買って貰ったの、【速さ】が上がる特性があるから、【ソードアーマー】だって余裕で倒せるんだから」


 自慢しあっている魔法書はいずれも中級魔法書だ。使用できる者が少ないので、とても高価な値段で一部の貴族にしか買えない代物であった。


 更に威力が上の上級魔法書は帝国の魔法研究部門によって厳重に管理されていて、販売はされていない。緊急時にしか使用が許されていないのだ。


 ただ、家宝としての上級魔法書は一握りの貴族に限りは所持を認められていた。


 中級魔法書を自慢し合う様子を横目で見ていたユリーズが、小さく溜め息を付く。


(つまらん……)


 学年で常に一番を走るユリーズが、魔法学院の授業に飽き始めていた。唯一、自分に近い魔力をもつルイシュも欲を出す事無く二番手に甘んじていた。


 最早、自分の【魔力】に並ぶ者は無く、授業の内容も殆ど学びきってしまった。代わりに古代魔法の書物や冒険譚などを読み漁っている始末だ。


 今回のプレイトルからの工作の旗頭として受けたのも、日々感じていた飽きを紛らわす為でもあった。だが、実際は何も変わらず同じ日々が続いていた。


 それが続く様ならカルラナにでも本当に向かうかとも思い始めていた。そんな漠然とした状態で授業が始まるのを待っていると、突然大きな破壊音が聞こえて来る。


ガン!ズゴゴゴゴゴゴ!!


 突然、必殺の一撃音が鳴ると、教室の扉が壁まで水平に飛んで行き、壁にぶつかると粉々に砕け散る。


「頭を強くぶつけただけで技能が発動するのかよ……」


 コスモの身長に対して扉の梁が少し低く、頭を下げた時に頭が勢い良く扉にぶつかり、技能【乙女の怒り】を発動させる。正面方向へ扉が飛んで行き、まるで盗賊が家に押し入る様な形になってしまう。


 ぶつけた頭をさすりながら怯えた女教師と一緒にコスモが教室の中へ入ると、破壊された扉からコスモのビキニアーマーの姿へと生徒達の視線が移る。


「なんだ、あの裸みたいな格好は!しかもピンクの鎧とは恥ずかしくないのか」


「ちょっと学校に来る格好ではないでしょう……先生達も良く許可したわね」


「だが良い!良いなあれは!!」


(くっそー……その常識があるなら、上皇様に逆らうんじゃねーよ……)


 生徒達から桃色のビキニアーマーについての常識ある批判と一部だが受け入れる声が聞こえてくる。自分達の学校にビキニアーマーの女が来たら誰もがこの様な反応をするだろう。


 コスモが教壇の前まで移動すると、その姿と登場に引いている生徒達に構わず自己紹介を始める。


「上皇アインザー様より<インペリアルオブハート>の称号を賜ったコスモと言う者だ!諸君に反逆の意思ありと聞き、こちらからわざわざ出向いてやった!」


「……あれが、爺様から称号を与えられた者か」


 ユリーズが赤い瞳を見開き、コスモに注目する。噂に聞いていた桃色のビキニアーマーにハート型の盾、聞いた時は冗談かと思い真に受けてはいなかった。だが、本当にその通りなので驚いていた。


「どうやら君達は【ソードアーマー】の俺が称号を持つに相応しくないと、不満を持っているようだな?」


「当たり前だろ!たかが【ソードアーマー】がそんな力がある訳ない!」


「上皇様に取り入ったんでしょ!【ソードアーマー】なんて弱いんだから、そうとしか考えられない!」


「そんな【ソードアーマー】より守備の無い裸みたいな格好して、強い訳ないじゃない!」


「ぐ……さっきから正論ばかり言いやがって……」


 アインザーやシャイラの言う通り、生徒達のアーマー職を見下した意見が大半であったが、一部の圧倒的な正論にコスモが精神的に傷を負ってしまう。


 この場で好きで着てるんじゃないと声に出せたら、どれだけ気持ちが晴れるのだろうかと考えると自分に負けそうになる。


 だがそれは出来なかった。称号を背負う者としてこの装備は外したいが外せない。気を強く持って本題へと入って行く。


「だとしたら、称号を背負う者の責務として反逆者の芽は摘まねばならない!……ただ、俺は慈悲深い、君達に逃げる権利を与えよう!反逆の意思が無い者、戦いを望まぬ軟弱者は教室から出て行くがいい」


 コスモが強い口調で生徒達に宣戦布告をすると、扉の外れた教室の出入り口を指差す。


 しばらく間が空き、誰も無言のまま席を立とうとしない。その様子を確認するとコスモが小声で隣に居た女教師に話し掛ける。


「この辺りで魔法を使っても大丈夫な場所はないか?」


「そ、それでしたら窓から見える校庭です、広さも十分にありますし、普段から魔法の練習にも使っています」


 女教師に話を聞くと、コスモが教室の窓から校庭を眺める。話しの通り十分な広さがあり、周りも樹々に囲まれている、多少の魔法であれば周囲に被害が及ぶ事が無いのを確認すると生徒達の方を向き、声を掛ける。


「よーし全員、校庭に出ろ!君達の魔法でこの俺を屈服させてみろ!」


 そう言い放つと、コスモが壊れた扉から教室を出て行き、校庭へと向かって行く。二組と三組の生徒達も一組の騒ぎに気付いて教室の扉から様子を見ている。


「こ、ここまで言われて黙ってられるか!俺はやるぞ!」


「わ、私だってやる!貴族の力を思い知らせてやる!」


 生徒達も初めての実戦で怖気づくが、ここまで言われて黙って逃げてなるものかと奮起し、一斉に教室を出てコスモの後を追い校庭に向って行く。


 その中でユリーズとルイシュだけは席に座ったままだ。ユリーズが前を向いたまま、横に居るルイシュに声を掛ける。


「ルイシュ、あの者らが駄目そうな時は君が助けてやれ」


「……は、仰せのままに」


 そしてルイシュが腰に革紐で固定していた魔法書【サンダーブレイクの書】を手に取ると、出ていった生徒達を追って教室を出て行く。


 教室にはコスモを案内した女教師とユリーズの2人だけになる。


「先生、少しいいでしょうか?」


「は、はいなんでしょうか!ユリーズ君!」


「保健室に居る【シスター】の者達に至急、校庭の側で医療処置の準備をするように伝えて下さい」


「ま、まさかユリーズ君、あの魔法を使うのでは……」


 父から譲り受け、祖父から伝承された魔法書【マグマメティオスの書】だ。それを腰に本を固定していた革紐を外し、手に取るとユリーズがゆっくりと立ち上がって教室を出て行く。


 女教師が慌てた様子で急いで保健室へと向かって行くと、時計台から本鈴の鐘が鳴り構内に響き渡る。


いよいよ魔法学院が騒がしくなってきた。


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