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元騎士団のおっさん伝説のピンクビキニアーマーになる ~魅力を添えて~  作者: トリミング中の噛み犬


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第25話 東国の剣士

・コスモ(女)=モウガス(男)


元騎士団の39歳のおっさん冒険者

職業は【ソードアーマー】

 領主騎士団時代に負傷した右膝を治す為に飲んだ森の魔女の秘薬、万能薬の効果により39歳のおっさんモウガス(男)から見た目が20歳前後のコスモ(女)となる

 上皇アインザーによって<インペリアルオブハート>の称号を得るが、それを象徴するハート型の盾と共にビキニアーマーがますます外せなくなる、ある意味呪われた装備と化していた


諸事情によりモウガスの姪という事になる




 ロンフォード領、地方都市カルラナとテイルボット領、海上都市ハヌイアムを繋ぐ街道に、大型の木製の荷車を引く男が居た。


 男の姿は東の国の衣服、上を白色、下を紺色の着流しを着用しているが、薄汚れていて、所々破れている。腰には東の国の曲線を描いた鋼の剣を一本を差している。


 年齢は30歳前後、黒い長い髪を頭の後ろで纏め、温和な表情に不精ひげ白い肌、体躯も痩せ気味だがしっかりとしている。


 大きい荷車には家財道具や寝具を載せていて、その寝具には男の母親である老婆を寝かせていた。老婆の状態は長旅のせいか疲れ気味で頬がこけている。


 男が母親を元気付け様と優しい口調で声を掛ける。


「母上、もう少しの我慢だ、あと少しでカルラナへ到着するからね。そうしたら何か美味しい物でも食べよう」


「苦労を掛けるねえ……」


(待ってろよ……今にカルラナの<いんぺりあるおぶはーと>を倒してこの土地で一旗揚げるんだ!)


 男の目は野生動物の様に鋭く輝いていた。地方都市カルラナでコスモを倒して名を上げようと企む男の一人であった。





 その頃、カルラナの水上公園では特設した会場に観光客の相手をするコスモが居た。ユユの技能、適性鑑定の日から数日経過していた。


 コスモ目当ての観光客の数も日に日に増して行き、益々と忙しくなっていた。


「本当に……良い目の保養になりました!また来ますね……ウヒヒ」


「あ、ああ、頼むから手を離してくれないか?」


 コスモの手を握りながら、手を揉み込むように触り続ける中年の小太り男。視線は胸と下腹部に集中していて、それに気付いているコスモの笑顔が歪む。時には観光客の中にこう言った者も現れ、コスモを困らせていた。


 もちろん、そういう手合いの対策は済んでいた。


「お兄さん、これ以上は他のモンの邪魔になりますんで!」


「は、はひ!失礼しました!!」


 声を掛けたのは【ランスアーマー】のバガンであった。コスモとの決闘で大盾を壊され、その修繕費用を捻出する為、コスモの警護役の依頼を任されていた。


 バガンの岩の様な形相と巨漢の迫力に圧倒され、中年の小太り男が小走りで去って行く。


「いやー助かったよバガン、女だと思って舐めて来る奴も多いからな」


「いえいえ、姐さんの役に立てたのなら幸いです」


 コスモに決闘を挑み破れた者達が、バガン以外にも数人だが会場近くで働いている。観光客の列の整理に、闘技場の柵の修繕、会場近くの掃除など多岐に渡っていた。


 そんな者達から慕われると<姐さん>と親しみを持ってコスモが呼ばれていた。


 日が真上に登る頃、昼食休憩を取ろうとコスモが仕事斡旋所の酒場へと向かうと、外に見慣れない荷物を積んだ木製の大きな荷車が停めてあった。


 誰か訪問しているのかと思いつつも仕事斡旋所の扉を開けて中に入る。よく見ると酒場の席に東の国の衣装、小袖を着た老婆が座ってくつろいでいた。


 すると丁度、登録部屋からシグネと共に変わった格好の男が出て来る。


 受付嬢のシグネがその男を案内し、受付窓口で冒険者証を発行する。男が落ち着かない様子でシグネに話し掛ける。


「あの、<いんぺりあるおぶはーと>はここに居ると聞いて来たのですが……」


「え?ああ、コスモさんの事ですね」


「コスモと言うのか……」


「ちょうど、戻って来たみたいですよ、ほら、あのピンクの人です」


 男がシグネに指差された方向を向くと、コスモと老婆が仲良く座っていた。それよりも、コスモのビキニアーマーに視線が行く。


「こっちの国の女子はあんな破廉恥な格好をしてるのか……」


「いいえ、断言しますが、コスモさんだけです!」


 この反応に慣れてきたシグネが、もう断言と言い放つ。しっかり断りを入れないと、自分を含め町中の女がビキニアーマーを着ていると思われてしまうからである。


 そんな男をよそ目にコスモと老婆が楽しそうに会話をしていた。


「婆ちゃん、可愛い格好してるね、どこから来たの?」


「東の国から船で来たのよ、あらーこっちの娘も可愛らしい格好してるねえ」


「ありがとよ、褒めてくれたお礼に一緒に昼飯でも食べようか、俺が奢るよ」


「え、いいのかい?悪いねえ」


「いいのいいの!遠慮しないでくれ」


 酒場の給仕の女にランチセットの鶏の照り焼きを注文をすると、酒場の店主が早速調理に入る。


 コスモが何故ここまで親切にしているのかと言うと、森の魔女のアンナに世話になってから老婆を見るとどうしてもアンナと重なり、他人だとしても見過ごせなくなっていたからだ。


 その世話焼きをするコスモを見ていた男が、ゆるりと寄ると真剣な表情でコスモの正面に立つ。


「<いんぺりあるおぶはーと>のコスモ殿!私と手合わせ願おうか!!」


「あー?誰だお前?」


 老婆との会話を邪魔され不機嫌になったコスモが、正面に立つ男に睨みを利かせる。すると横に居た老婆が急に立ち上がる。


「かーーー!この子はなんて不忠義者なんじゃ!こがな優しい子に向かって、なんて言葉使いかえ!」


「ですが母上!名を上げるにはこのコスモなる女子を倒さねば……」


「お黙り!」


「え、えーと……」


 親切にしてくれたコスモに対する男の態度に、立腹した男の母親である老婆が立ち上がると、物凄い剣幕で怒鳴り始める。男もその勢いに押され、たじたじとなる。コスモも老婆の豹変振りに戸惑っていた。


 しばらく母親の説教が続き男がすっかり萎縮してしまっている。その間に料理が運ばれて来るとようやくその説教も終わる。


「ごめんなコスモちゃん、私の息子が失礼をして……こらペイタ!謝らんか!」


「も、申し訳ありませんでしたコスモ殿」


 ぺイタと呼ばれる男が腰を直角にして頭を下げて来る。コスモが気の毒と思う程に落ち込むぺイタに気を使ってしまう。


「き、きにすんなって!それより料理も来たし皆で食べようぜ」


 運ばれてきた料理を食べる様に促すと、老婆とペイタが食べ始めるが余程、お腹を空かせていたのか一心不乱になって食べている。余りの食べっぷりにコスモも気を遣い、自分の分をペイタへと差し出す。


 料理を食べ終えて落ち着いた2人に、コスモがここに来た経緯を聞いてみる。


「それでペイタ達は何をしにカルラナまで来たんだ?」


「ここ最近の話なのですが、東の国で東西に分かれた一大決戦がありまして、私の所属する西軍が敗北し、新たな殿様……こちらで言う領主様から故郷を追い出され、流浪した末に西の国、アセノヴグ大陸へとやって参りました」


「東の国も大変だったんだな……」


「はい、それで海上都市ハヌイアムで日雇い仕事をしてて、小耳に挟んだのです。カルラナの<いんぺりあるおぶはーと>なる者を倒せば名を上げられると言う噂を」


 海上都市ハヌイアム、テイルボット領の経済を担うアセノヴグ大陸代表する都市だ。東の国との交易も盛んで、大手の商会が軒を連ねている。そこまでコスモの称号が広まっていた。


「それで俺に挑みに来た訳か」


「はい、私こう見えても、剣術には少々心得がありまして、コスモ殿を倒した暁には、自分の剣術道場を立ち上げたいと思い、カルラナに母を連れ参りました」


 話しを聞き終えるとコスモが、さりげなくペイタの手に触れる。


 技能【慈愛】でペイタの心の色が映し出される。疑念、不安を示す青黒い円の中に、淡い青色の海、日が昇る様な輝く橙色が見えてくる。不安の中、希望を持ってカルラナに来た心情が伺える。


「あらーコスモちゃん、息子が気に入った?私が言うのもなんだけどね、いい男だよー」


「あ、婆ちゃん違う違う、ちょっとしたスキンシップって奴だよ」


「わ、私などコスモ殿には勿体ないですよ母上!」


 コスモがペイタの手に触れた事を老婆が勘違いする。相手に触れなくては見えない技能【慈愛】の弊害とも言えるだろう。コスモがスキンシップと誤解を解くが、ペイタは満更では無い様子だった。


 そしてコスモがペイタと老婆の顔をじっと見つめると、何かを決心した様な面持ちで席を立つ。


「よし!分かったペイタ、この町の中央に水上公園がある、その横に闘技場があるから、そこで存分に相手してやるよ」


「私との勝負を受けて貰えるのですか!」


「ああ、東の国の剣、一体どういうもんなのか、きちっと見せてくれ」


「コスモ殿……感謝致します」


 机に2人分の食事の代金を置くとコスモが2人を残して酒場を後にする。ペイタはコスモが外に出るまで頭を下げ続けていた。





 コスモが闘技場に着くと、昼食を終えたバガンを含めた敗者組を招集する。


「お前らに頼みがある、<インペリアルオブハート>と東の国の剣士の世紀の決戦、これを町中で連呼して、ありったけの観客を集めて来い!」


「お、姐さんの晴れ舞台ですね!任せて下さいよ!」


「しっかり頼むぜ!」


 敗者組が町中に走って行き、周囲に響く声でコスモと同じ言葉を叫ぶ。その声を聞いた者は観光客だけでなく住民達にも伝わり、次第に闘技場へと集まり始める。


 その声に気付いた巡回警護中のオルーガとセリオスが闘技場を見つめていた。


「なんか、コスモちゃん面白い事やろうとしてるねえ」


「オルーガ、もう少ししたら僕らも行ってみようか、東の国の剣が気になるし」


「セリオスも分かってんじゃねーか!……よし、お前ら少ししたら、切り上げるぞ」


「「おーっす!」」


 セリオスとオルーガの意思が疎通され、傭兵団の全員に巡回警護の任務を切り上げさせる指示を出すと、水上公園の闘技場へと向かって行く。


 コスモが闘技場内で準備運動をしながら待っていくると続々と人が集まって来る。宣伝した甲斐もあって普段の倍以上の観客が集まっていた。そして今かと今かと待つ観客の騒ぎ声が聞こえて来る。


 準備運動が終わるとコスモが闘技場中央で腕を組み仁王立ちで待ち受ける。しばらくして遠くから観客の歓声が上がる。


 ペイタが人波を掻き分けて、闘技場へ向かってゆっくりと入場する。先程の姿とは打って変わって、白の鉢巻に綺麗に整った着流しに、袖の部分をたすき掛けで上げ、腰には一本の剣を差している。


 闘技場の中央でコスモとペイタが向き合い、名乗りを上げ始める。


「我が名はコスモ、<インペリアルオブハート>を持つ【ソードアーマー】だ!帝国の名に懸けて、この勝負受けて立とう!」


「我が名はペイタ、東の国の剣術、無心一刀流の免許皆伝、今は訳あって流浪の【ローニン】!我が名声の為に勝負を受けて頂いた事に感謝する!」


 お互いの名乗りが終わると同時に、コスモは右手に魔剣ナインロータスと左手にハート型の盾を構え、ペイタは腰の剣を抜くと、両手で柄を持ち正面に切先が向くように構える。


 いよいよ勝負が始まろうとすると、興奮した周りの観客から耳を裂く歓声が上がる。


「ッワアアアアアアアアアア!!」


 その中でペイタの体に鎧が装備されていない事に気付き、コスモが忠告する。


「防具は無くていいのか?俺の攻撃は生身で受けるときついぜ?」


「心配ご無用、我が流派は女、子供でも、相手を退けられる事を主体にした剣、遠慮なく掛かってくると良い」


「女子供の剣か……大した事はなさそうだな!」


 コスモが安い挑発をすると、ペイタの目の色が変わる。


「ならば、その身を以って試すがいい」


「そうさせてもらうよ」


 すると、コスモが目の止まらない速度で上段から魔剣ナインロータスを振り下ろす。


 ペイタがコスモと同じ早さで上段に剣を振り上げると、魔剣ナインロータスの刀身に剣の側面を上手く当て、振り下ろされるのに合わせて横へと押し受け流す。


ズサッ!!


 魔剣ナインロータスがペイタを避ける様に地面に叩き落され、切先が砂場に埋まる。そしてペイタが剣を返す様に一歩踏み込み、コスモの魔剣ナインロータスの持ち手、小手の部分に剣を打ち付ける。


ガキィィン!


「お、おおおおおおおおおおお!」


「コスモの体に初めて攻撃が当たったぞ!」


 常連の観客は今まで見た勝負で、相手の攻撃をコスモがハート型の盾以外で一度も受けていない事を知っていた。それが初めて当たったのだ。観客を含めコスモ自身もペイタの剣術に驚いている。


「この小手が無ければ手首が飛んでいた訳か……」


「我が流派は相手の威を払う剣術、無駄に命を取る事はせぬ」


 それを聞いたコスモが、再び同じ様に魔剣を上段に構える。


「今度は連続で行くぜ」


 そう言うと先ほどと同じく上段から魔剣を振り下ろすが、同じ様に横へと受け流される、それを力で無理矢理、上段へと戻し同じ様に振り下ろす。


(も、戻りが早くて反撃する間がない!)


 コスモが受け流された後の隙を無くす為に、力技で魔剣ナインロータスを引き戻すと、ペイタが反撃する機会を失い防戦一方になって行く。その速度も段々と上がって行く、ペイタの剣とコスモの魔剣がぶつかり合う音が闘技場に響き渡る。


ギィン!ガギィン!ギィン!……


(この娘、一撃、一撃が早い上に重い……暴風で飛んでくる大木を受けている様だ)


「なかなかやるなペイタ!じゃあこれはどうだ!」


 コスモが上段からの振り下ろしを止めると、右に魔剣ナインロータスを振りかぶると、勢いよく左へと振り抜く。


 ペイタが横から飛んでくる魔剣ナインロータスの刀身の下に、優しく添える様に剣の峰を当て、突き上げる様に一気に持ち上げ、華麗に攻撃をいなす。


「へー!これも駄目なのか!凄いな、おい!」


「はあはあ……」


 初めての経験に楽しくなるコスモと対照的に、一つ一つが致命的な威力を誇るコスモの剣戟を、全神経を使い受け流すペイタに疲労の色が見えてくる。


(これ以上は……剣が持たない)


 コスモの重い剣戟を受け流していた剣に亀裂が入っている。もし、直接受けていたら一撃で剣が折れている威力だ。


「それじゃあ、これは受け流せるかな!」


 コスモが腰を落とし、魔剣ナインロータスの切先をペイタに向けたまま、右腕を引き力を溜める。ペイタがその動きを見て突きだと予測をすると、自身の剣術の技で起死回生を狙う。


「くらえ!!」


 コスモの掛け声と同時に、猛烈な勢いで正面から魔剣ナインロータスの突きが向かって来る。


 ペイタがその突きを寸での所で避けながら体を潜り込ませる。伸びきったコスモの魔剣ナインロータスの持手に剣の先を使い反時計に回す様に打ち上げる。


「無心流、巻雲!!」


 空中にコスモの手から離れた、魔剣ナインロータスが宙を舞う。


(とった!!)


 ペイタがそのまま振り上げた剣をコスモの頭上へと落そうとした瞬間、ハート型の盾が横から飛んでくる。


 ハート型の盾はペイタの体を逸れ、持っていた剣にぶつかると半分に折れた剣先が飛んで行く。


 武器の無くなった2人が離れ互いに距離を取ると、宙に飛んていた魔剣ナインロータスが地面に突き刺さり、飛んで行った折れた剣先が地面に突き刺さる。


 お互い武器を無くした状態になる。辺りの観客が一瞬の攻防に声を失い、辺りを静寂が包む。ペイタは全てを出し切ったのか、その場で片膝を付いて息を荒くする。


「はあはあ……コスモ殿……私の……」


「いやーペイタ殿、実にお見事!すでに両者共に戦う武器は無い、よってこの勝負引き分けとしよう!」


「ワアアアアアアアアアア!!」


 コスモが大々的に引き分けを宣言すると、大勢の観客の歓声が地面を揺らす様に町中に響き渡る。ペイタが自身の敗北を宣言しようとするが、歓声に消されてしまう。


「あの<インペリアルオブハート>と互角に渡り合うなんて凄いぞー!」


「兄ちゃん頑張ったなー!引き分けは自慢していいぞ!」


 ペイタに向けて観客から声援が送られる。コスモが声援に笑顔で応えながらハート型の盾を背負い、飛ばされた魔剣ナインロータスを拾うと、ペイタに手を差し伸べる。その手を取るとコスモが真剣な顔で耳打ちをする。


「いいかペイタ、俺は帝国を背負ってる、お前は母親を背負ってる、その想いに違いはねえ筈だ、だから引き分けだ、いいな?」


「コ、コスモ殿……」


 ペイタは全てを理解した。最初の挑発も本気を出させる為にわざとしていた事、攻撃が上段、横なぎ、突きの基本技のみで剣術の有用性を分かりやすく観客に伝え、最後はわざと武器を手放し、ハート型の盾の攻撃をペイタ本人ではなく、折れかかった剣に向けていた事。


 コスモがペイタの剣術を引き出し、カルラナでの道場を開く切っ掛けを作ってくれていたのだ。全てにおいて完敗であった、それを武士として宣言しようとしたが察したコスモに止められる。


 耳打ちが終わるとコスモがいつもの様にペイタの腕を上げて、観客の称賛に応えると響く様な大声で宣伝を始める。


「近々、この東の国の剣士ペイタがカルラナで剣術道場を開く!女、子供でも扱える剣術だ!興味がある者は是非、道場に通ってくれ!必ず人の助けになる筈だ!」


「本当に本当に……感謝致す……」


 ペイタの目から涙が止まらない。東の国を追われて西の国、アセノヴグ大陸に来てからはその日暮らしが続き、生活も安定しなかった。時には人に金品を騙し取られ損な役割りをしてきたが、西の国で初めて人の思いやりに触れたのだ。


 涙を片手で覆い隠しながらコスモに支えられペイタが闘技場を後にする。観客からの歓声と拍手は2人が見えなくなるまで続いた。


 その一部始終を見ていたセリオスとオルーガが拍手をしながら、勝負の内容について話ていた。


「ねえオルーガだったらコスモの剣を何回受けられる?」


「冗談だろセリオス?あんなの一撃も持たないぜ?」


「だよね、ペイタ殿はもしかしたら、僕らが思っている以上に物凄い剣豪かもしれないね」


「ああ、あのコスモちゃんの一撃を受ける覚悟だけでも大したもんだよ」


 勝負を見ていた2人がペイタについて賞賛していた。そしてペイタの繊細で華麗な剣術を、セリオスが領主騎士団にも取り込みたいと考えていた。


 後日、勝負を見ていた観客の1人がペイタの剣術の腕前に惚れ込み、自身が引退して使わなくなった空き店舗を道場として改装し、格安の家賃で提供してくれた。


 コスモとの互角の勝負の噂が人を呼び、子供から女、男まで、年齢を問わず何十人もの人が道場に訪れ入門していった。


 道場主のペイタは流派名を無心一刀流から、コスモの象徴ハート型の盾にあやかり、愛心一刀流と名を変え、カルラナの道場で門下生と共に稽古に精を出して行った。


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