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元騎士団のおっさん伝説のピンクビキニアーマーになる ~魅力を添えて~  作者: トリミング中の噛み犬


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第20話 ロンフォード領の騒乱4

・コスモ(女)=モウガス(男)


元騎士団の39歳のおっさん冒険者

職業は【ソードアーマー】


 領主騎士団時代に負傷した右膝を治す為に飲んだ森の魔女の秘薬、万能薬の効果により39歳のおっさんモウガス(男)から見た目が20歳前後のコスモ(女)となる

 本人は嫌々ながらも着る服が無いので、ピンク色で統一されたビキニアーマーにハート型の大盾、魔剣ナインロータスを仕方なく装備する事になる


諸事情によりモウガスの姪という事になる




 盗賊団の頭目ドゲイラの周りに、部下の盗賊達が集まり始める。アカネ村に居た盗賊に比べて、体躯も装備も良く屈強な男達だ。


「良い事を教えてやる、ここに居る奴らは全員選りすぐりの強者だ、全員がレベル20越えで上級職の【バーサーカー】や【アサシンシーフ】だ!」


 【バーサーカー】は【バンディット】の上級職、力と体力に特化した職業、【アサシンシーフ】は【シーフ】の上級職、速さと技に特化した職業でどれも盗賊団の頭目級の、マデジと同等の力を持っている。


 何人かは騎士特効の特性を持つ騎士殺(ナイトキラー)の斧、騎士殺の弓を所持している。騎士殺し系の武器は騎士に対して3倍の威力を発揮する。


「がはははは!さあ絶望しやがれ!……あれ?」


 ドゲイラがコスモに圧倒的な戦力差について語っていると、いつの間にかコスモの姿が見えなくなっていた。周りの部下と同じ様に辺りを見回してコスモを探す。


「ど、どこへ消えやがった!」


「こっちも教えておいてやるよ、俺のレベルは今……8くらいかな、そして職業は【ソードアーマー】だ、これで安心して戦えるだろ?」


 消えたと思ったコスモが目にも止まらない速さで盗賊達の合間を縫って、ドゲイラの背後を取っていた。


 そこからコスモが冒険者登録してから、今までの討伐対象を思い出し、逆算した今のレベルと職業を冷たい微笑を浮かべてドゲイラに伝える。


「ひえっ!」


 ドゲイラが慌ててコスモから距離を取ると、コスモの体から異様な寒気を感じる。そしてコスモのこちらを見る目が、家畜に対して生殺与奪権を持つ者の様だった。


(こ、この女は何かヤバい……俺の勘が、本能が全力で逃げろと言っている)


 百戦錬磨のドゲイラがコスモを強く警戒するが、部下の盗賊達がレベルの低さと職業を聞いて侮り息を巻いていた。


「たかが初期職のソードアーマー風情が!」


 コスモを取り囲んだ盗賊達が八方から騎士殺の斧を勢い良く振り上げ、一斉にに振り下ろす。


ガキィィィン!


 凄まじい金属音が辺りに響き渡る。


 ハート型の盾で攻撃を受けたコスモがその場に跪き、盗賊達の表情から勝ち誇った笑みがこぼれる。


「……はあ、まあこんなもんだよな、お前らは」


 がっかりとした表情で盗賊達が振り下ろした斧を、ハート型の盾で払い退けると、盗賊達が焦った様子で一定の距離を取り始める。


 右手に持っていた魔剣ナインロータスと、左手に掲げていたハート型の盾を背負い、身体に付いた埃を払いながら、まるで何事も無かったかの様にコスモがゆっくりと立ち上がる。


「ほら、武器は使わないし、手も出さないから好きにしてみろって」


 コスモが盗賊団の中でも力と技に自信がある者に対して、最上級の挑発を行う。さすがの盗賊達もここまで虚仮にされたのは初めてなのだろう、怒りに体が震え始める。


「なめんじゃねーぞ!このクソ女がー!」


 1人の盗賊が騎士殺の斧を両手で大きく振り上げ、飛び掛かってくる刹那。


 コスモが長い右足を後方に下げ、力を込める。筋肉が発達した太腿に血管が浮き出ると、鞭をしならせる様に右足をたたみながら前方へ勢い良く出し、それと同時に腰に捻りを加え、盗賊の太腿に向かって、一気に右膝を伸ばし足の甲部分を叩き付ける。


スパァァァァン!ズゴゴゴゴゴゴ!!


 耳に残る渇いた音と必殺の一撃音が鳴ると、蹴られた盗賊が物凄い勢いで横回転をする。何回転かすると、その場に落ちて痛みでのたうち回る。


「ぐあああああ!足が、足が動かねえ!!」


 蹴られた盗賊の足は折れてはいない、その代わりに蹴られた太腿が内出血を起こし青くなっている。太腿は人体の中でも痛みを感じやすい部位で、気絶する事すら許されず、その痛みに苦悶する。


 それを見た盗賊達がコスモを警戒をすると、アカネ村の時と同様に距離を取り始める。


「て、てめえ!手は出さねえって言ったじゃねーか!」


「だから、足を出しただろう?」


 コスモが綺麗な長い右足を前方に出す。コスモの走りを支えるその足は非常に逞しく、そこから繰り出される蹴り技は、想像を絶する威力が発揮される。


「お前ら盗賊は痛みを知れ、痛みを知らないから平然と他人から尊厳を奪える」


 青い炎の陽炎を身に纏ったコスモが、距離を取る盗賊達にゆっくりと歩み寄る。さらに距離を取ろうと盗賊が後退するが、目にも止まらない速さでコスモが瞬時に迫る。


「誰一人逃がさねえよ!」


スパァァァァン!ズゴゴゴゴゴゴ!!パァァァァン!ズゴゴゴゴゴゴ!!……


 次々と盗賊達がコスモの蹴りを受けて、横回転しながら宙を舞うと太腿に受けた激痛に耐えられず、断末魔に近い悲鳴を上げて倒れて行く。


「ぎゃああああ!いてえええええ!」


「うあああああ!だ、誰か、助けてくれえ!!」


 その蹴りから逃れようと、【アサシンシーフ】の盗賊が自慢の【速さ】で避けようとするが、


「お、俺は【アサシンシーフ】だ、速さには自信があるんだ……え?」


 盗賊の中で【速さ】に特化したアサシンシーフだが、それを上回る速度でコスモに回り込まれ、蹴りの餌食となる。まさに確実に逃れられない激痛が盗賊達を襲って行く。


パァァァァン!ズゴゴゴゴゴゴ!!……


「ぐあああああ!いてえええええ!」


「あああああ!うあああああ!」


 辺り一帯には苦悶の表情を浮かべのたうち回る盗賊達であふれかえっていった。こうなると戦力差が全く意味を成さない。集まった盗賊達が痛がる仲間を見て恐怖すると戦意喪失して、我先にとコスモから逃げ出し始める。


 その状況を見ていた盗賊団の頭ドゲイラが起死回生の策を打ち出す。


「お前ら、南門は諦めろ!西門、東門を攻めるんだ!」


「な、何?それは不味い!」


 カーク達が詰めている西門、東門を攻める指示をドゲイラが出すと、逃げていた盗賊達が一斉にそちらへ向かい始める。個が集に対抗できない唯一の弱点ある多面的な戦略だ。


「へへ、いくらお前が強いからってな!1人の力ってのは限界があるんだよ!」


「き、貴様……」


 盾技の大手門で南門は塞いではいるが、そこを守る者が居なければ無防備になる。かと言ってアカネ村で使用した盾奥義の【誘惑】を使うと、味方のアーチャー部隊まで巻き込む。


 打つ手が無く、南門で盗賊達を見過ごすしか出来ない事にコスモが歯軋りする。


 すると、東門へ向かった盗賊達を蹴散らしながら黒い鎧を着た、騎馬に乗った一人の女騎士がこちらへと向かって来る。


 その姿は黒い下地に炎の赤模様が装飾された兜と鎧、肩には薔薇の紋章が刻印され、手には曲線を描いた様な銀の剣を持ち、白い外套をなびかせていた。


 女騎士がコスモの所まで辿り着くと、騎馬を止め馬上から声を掛けてくる。


「私は上皇親衛隊、薔薇騎士団(ローゼリッター)の隊長シャイラ、上皇様の命の下にジルト卿の援軍に来た」


「薔薇騎士団だって?」


 コスモも噂でしか聞いた事が無い幻の騎士団の名である。


 上皇アインザーが見初めた女だけの親衛隊、戦場でその姿を見る者は無く噂だけの存在だとされていた。ただシャイラの着用していた鎧は帝国の軍団色である黒に、炎の赤模様は武勇の誉れと言われ、帝国内の実力者にしか許されない特別色であった。


 するとシャイラの来た後方から、特別色を施した後続の【インペリアルナイト】、50騎が盗賊の集団を引き裂いて行く。そのままコスモ達の前を通り過ぎると盗賊追撃の為に西門へと走り去って行く。


 東門から逃れてきた盗賊の1人がドゲイラに状況を報告する。


「お、お頭!帝国の精鋭が東門に襲来……仲間は全滅です!」


「な、何い!なんで帝国の軍が来るんだ!」


 帝国の思わぬ援軍にドゲイラが戸惑う。今回の作戦は秘密裏に実行されていて、帝国が気付くとしても早過ぎる。予めこの事を予測していたかの様な援軍であった。


 さらに追い打ちをかける様に、南の街道からジルト率いる騎兵部隊が現れる。ジルトが町の状況を馬を駆けながら確認すると指示を出す。


「町は無事か!皆の者!盗賊達を蹴散らすぞ!!」


 薔薇騎士団によって散り散りになった盗賊達を、ジルトが率いる【デュークナイト】達100騎が残党を刈り取って行く。


 すでに戦局は決した。指揮系統も崩壊して盗賊達が散る様に逃げて行く。それを信じられない顔でドゲイラが見つめていた。何日も掛けて準備を行った作戦が、たった1日で気泡に帰したのだ。


「お、俺の町が……俺の夢が……」


「おーい、お前ドゲイラって言ったか?」


 敗軍の将となったドゲイラにコスモが微笑みながら優しく話掛ける。その不気味な微笑みに恐怖を感じたのか、降伏を申し出る。


「ま、待て……降伏する、だから命だけは……」


「空の旅は好きか?鳥の様に飛べたらって一度は思うよな?」


 コスモがドゲイラの降伏を無視して、一方的に質問を続けながら、ハート型の盾を身に引付け、全身に力を込め始める。


「お、同じ帝国民じゃねえか、許してくれよ、へへへ」


「それは帝国民の義務を果たしてから……言えや!盾技!楯駿突撃(シールドアサルト)!!」


「ウゲエッ!!」


ドン!ズゴゴゴゴゴゴ!!


 ハート型の盾をドゲイラの胸元に叩き付けると、上空高く飛んで行き、綺麗な放物線を描いて落下する。気絶したドゲイラの鉄鎧の胸にはハートの窪みがくっきりと残っていた。


 ちなみに帝国民の義務は勤労、納税、そして忠誠である。


「はー!スッキリしたー!」


 コスモがハート型の盾を背中に背負うと、背を伸ばしをして一息入れる。そして薔薇騎士団の隊長シャイラの下に向かい跪く。


「この度の援軍、感謝致しますシャイラ殿」


「見事なお手前でした、私も貴女の味方で良かった」


 シャイラが乗馬したまま兜を外すと、腰まである長い漆黒の髪が、首元の後ろで纏められている。目は鋭く、肌も白い、冷血そうな顔であるが美人だ。


「しかし……ジルト卿にこのような趣味があったとは……」


 シャイラがコスモの格好を見てジルトが強要していると勘違いをする。貴族の中には趣味で従者に変わった服を着せ楽しむ者も居るからだ。コスモの恩人ジルトにまさかの風評被害が及ぶ。


 それを弁解する為に反論しようとするのだが、適当な言葉が見つからない。


「あ、いえ……この格好は……私の一存で……」


「ええ?そ、そうなのか……」


 お金が無くてこのビキニアーマーを着てますとは言えず、辱めを覚悟して自爆するコスモ、趣味で着てますと答えたら誰でも引く。


 盗賊の残党討伐を終えたジルトが南門前に居るコスモとシャイラを見付けると、馬を駆けて寄ってくる。


「コスモ嬢、無事であったか!」


「は!シャイラ殿の援軍もあり、無事に命令を完遂いたしました!」


 ジルトがシャイラの方を見て、驚くと共に懐かしむ顔になる。


「シャイラ嬢、此度の援軍かたじけない、貴女方の援軍で我が領は救われました」


「いえ、我らは補佐をしたまで、コスモ嬢の働きが無ければ町も無事では無かったでしょう」


 シャイラの称賛に嬉しいのか跪きながらコスモが顔を赤らめる。続けてシャイラがジルトに馬を寄せて周りに聞こえない様に小声で話しかける。


「実は上皇様も御出でなのです、どこか離れの屋敷を用意できませんか?」


「なんと!至急、用意致しますのでお待ち下さい」


 2人が話をしている横でコスモの意識が朦朧としてくる。昨日の朝から、今の昼まで断続的に続いた戦闘と移動で体に限界が来ていた。


 さらに帝国のシャイラの援軍にジルトの帰還も合わさり、安心したのか張り詰めていた緊張が一気に抜けて行く。


「も、申し訳ありませんジ、ジルト様……げ……限界に……」


「「コスモ嬢!」」


 その場で倒れ込むコスモに下馬したジルトとシャイラの2人が声を掛けるが何を言っているのか聞こえないまま、意識が遠のいて行く。





 未曽有の危機を脱した中央都市アプリニアでは避難命令が解除され、ロンフォード城に逃げ込んでいた領民達が自分達の家や店へと戻って行く。


 壊された南門には大工達が集まり、急いで修復作業を始める。その外には万が一に備え中央騎士団の騎士達が警らの任に付いていた。


 町の中に盗賊が侵入しなかったお陰で被害も少なく、復興に時間はそう掛からなかった。


 援軍で駆け付けた薔薇騎士団はシャイラに頼まれて、ジルトが用意した城内の敷地の離れの屋敷の警護を行っていた。


 やがて日が落ちて夜になると、疲労から回復したコスモが目を覚ます。


「う……ううん……寝ていたのか」


 大きいベッドの上で目を覚ますと上体を起こし周りの様子を窺う。豪華な装飾をされた貴族用の部屋に、華麗な彫物が施された長机に椅子。


 そして自分の姿を映す、全身鏡がある。


 鏡を見ると、寝ている間に誰かが着替えさせたのだろうか、ビキニアーマーと防具が全て外され、女性用の寝間着を着ている事に気付く。


「む、起きたかコスモよ!」


 少女の様な声が聞こえると、その少女が装飾された照光器に【魔力】で明かりを灯すと、薄暗い部屋が明るくなる。


 少女の姿もはっきりと見える、頭に赤い宝石の入ったティアラを付け、真紅の長い髪が腰まで掛かり、顔は気が強そうな顔付きだが可愛さが残る、白い綺麗な上着に格子柄の赤のスカート、黒い長靴下を着ていている。


「此度は良くぞ、アプリニアを守ってくれた!大儀であるぞ!」


 少女が似合わない言動でコスモを褒めるが、もちろんコスモには面識の無い少女だ。


「え、えっと……お嬢ちゃんは誰なんだ?」


「お、お嬢ちゃんだと!不敬な奴め!」


 ベッドから立ち上がると、コスモの胸の辺りに少女の顔が来る、かなり小さい。すると部屋の扉が開き、夕食を載せた配膳車を押しながらシャイラが入ってくる。


 コスモに頭を抑えられ、腕をぐるぐると回し殴り掛かろうとする少女を見てシャイラが声を掛ける。


「何をしてるんですか、上皇様」


「上皇様?」


 シャイラが少女を上皇と呼ぶ。上皇と言えば40年前に帝位を現皇帝に譲り、年齢的にも老齢な筈だ。


 しかし少女の顔は幼く頬を膨らませながら、コスモを殴り掛かかるが腕の長さが届かず空回りしている。この少女が上皇だとは、とても信じられなかった。


 すると技能【慈愛】によって上皇と呼ばれる少女の心の色が見えて来る。


 白に近い黄色が力強く円を描き、太陽が輝くように辺りを照らしているが、その太陽の中に少しだけ黒い斑点の様な物が見える。気高い誇りを持つが、何かを後悔している者だと分かる。


 改めてシャイラに上皇である事を確認する。


「ええとシャイラ殿、上皇様と言えばアインザー様の事ですよね」


「はい、そのちびっ子がアインザー様になります」


「コラ!シャイラ!お主がちびっ子と言うな」


 コスモの中に稲妻の様な衝撃が走る、こんな小さい少女が前皇帝アインザーである事実。それと同時に森の魔女のアンナの会話を思い出す。


『だから、あのバカ皇帝にそんなに女好きなら、女になってしまえって呪いをかけたのさ!』


 お酒の席で出て来た、あの与太話が真実味を帯びて来た。万能薬で自分も女に変わったのだ、アンナが本当に呪いをかけたのだと信じてしまう。


 頭の整理が追い付かないまま呆然としていると、アインザーの気が済んだのか、両腕を組み尊大な態度でコスモを夕食に誘う。


「まあ良い、余は心が広いのじゃ、夕餉を取った後に積もった話でもしようかの」


「……は、はは!ありがたき幸せ」


「よいよい、そんなに固くなるでない、さあコスモも同伴するが良いぞ」


 コスモがアインザーに跪くと許しを得て長机の椅子に座る。その上に夕食を並べるシャイラ、アインザーも楽しそうに席へと着く。


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