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食卓

 マエルサに連れ込まれた部屋は、野菜が入った箱や干し肉が吊るされていて、奥には流し場もありまるで厨房のようだった。

 

 ラサクはふと疑問に思いさっきヤーガがいた場所が台所じゃないの?とマエルサに聞いた所

 

「ああ、あれはヤーガが錬金術を研究する場所だよ。あそこで色々な薬や道具を錬成するのさ。さて、しょうもない喧嘩が終わるまで私達は料理でもしようか。お前さん料理は何か出来るかい?」


 ラサクは辺りの食材を見渡す。教会にいた他の子供と比べて年長者のポジションだったラサクは料理当番を任されていた為、ある程度の料理の腕はあった。


「か、簡単なものだったら……」

 正直、知らない家で初めて会うような人?達と会話しててラサクは緊張していた。


「いいね、この家にいる連中は研究やら何やらで家の事は二の次だからね。少しでも家事ができると助かるよ。」


 それじゃスープでも作るかね、とマエルサは呟き「ラサクはそこのモイの皮を剥いておくれ包丁で手を切らないようにね。」


 そう言うとマエルサは、尻尾の先で器用に包丁を渡してくる。補足するとモイとは、丸っこい形の植物で痩せた土地でも育ち栄養もある為、庶民の間で親しまれる植物である。


 ラサクが包丁を受け取り、モイの皮を黙々と剥いているとマエルサは流し場に置いてあった鍋の前で何か唱え始める。


「ᛗᛁᛣᚢᚤᛟᚥᚪᚴᛁᛞᛖᛏᛖ•ᚺᛁᛏᛟᛟᛞᛟᚱᛖ」

 そう唱えると、鍋の中には湯気を放つ熱湯が注がれた。

ラサクはその光景に呆気(あっけ)にとられつつ、はっとすると最後のモイを剥き終えた。


 マエルサは鍋に何か調味料を振りつつ、ラサクに剥き終わったモイをマエルサの方に投げるように伝える。


 ラサクは少し悩みつつモイをマエルサの方に投げると、マエルサはそれを尻尾で器用に掴み、鍋の上で尻尾を振ったかと思うとバラバラになったモイが鍋に落ちていった。


「すごい!マエルサ!」とラサクが思わず言うとマエルサは少し得意気な顔で「まっ、私にかかればこんなもんだね。ラサクは後はあの2人を呼んできておくれ。」


 はい!と返事をしてドアに手を掛けようとすると、先にドアが開いた。


 視界が黒色に覆われた。


 思わず上を見上げると、そこには大樹の下であった女性がいた。あの時は気付かなかったが黒色のローブでつつまれたその身体は、ラサクの1.5倍程の背丈であった。


 ラサクが口を開こうとすると、先に相手の方が喋り始めた。


「あ、あの……私はセイン・ケーノと言います。

 ……えーと、ヤーガさんの弟子で……得意な魔法は火属性のファイアボールで……き、君は何か魔法とか使えるの?」


 ラサクは失礼ながら、自身よりガチガチに緊張してるであろう相手を見て少し安心していた。


「僕は特に魔法とかは使えません。あと名前はラサクといいます。よろしくお願いします。」


「そ、そうなんだ……で、でも練習すればいつか使えるからね。私も最初は使えなかったし……そ、そうだ!物語だったら何が好き?私は……」


 ケーノがうつむきながら指を合わせつつボソボソと喋っていると奥の方からヤーガの声が聞こえた。


「ケーノ!顔合わせも済んだんなら食事にするよ。ラサクはマエルサを手伝っておやり。」


 ケーノは肩をビクッとさせると、はーいと返事をしてヤーガ達と先程いた場所にあったテーブルの上を片付け始めた。


 マエルサと鍋を運んだり、パンをテーブルに置いていく。食器も並べ終わると、マエルサが座るように促してきた。こういうのは家主が最初に座るもんじゃないの?と囁くと、マエルサにまたもや巻きつかれて強制的に着席させられた。


 全員がテーブルを囲むように席につくとヤーガが手を合わせ「では、日頃の糧に感謝して。いただきます。」と言うので、それに続いてラサクも言う。


 ヤーガは皆がそれを言ったのを確認すると、スープに手をつけ始めた。


「ほう、今日のスープはいつもより泥臭くないね。」

 ヤーガが呟いた。


「そりゃあ、いつもと違って皮剥きが出来るのがいたからね。」マエルサが自慢気に言う。


「……これで私は料理しなくていいな……」

 何かケーノが言っている。

「あんたは魔法以外にも家事を覚えな、ラサクはあんたと違って包丁持たせたても指を切ったりしなかったんだからね。」


 少し呆れながらマエルサが言う。


 そう言われたケーノは少し顔を紅潮させながら、「私だって皮剥きくらい出来るよ!」と言いかえすので、マエルサがどうだかねえと煽ると、ケーノは何か果物を剥いてくると言って台所に行ってしまった。


 それから少しすると「痛っ」と言う声が何回か聞こえた後に血が付いている果物を持ってきた。


 果物は傍目から見たら、食べるのを忌避したいくらい血が付いていたがラサクは血が付いた果物から目を離せなかった。正確に言えば、果物に付いた「血」から目が離せなかった。


「血」はラサクの大好物であり、生きる上でかかせないものだった。見ているだけで喉が渇き、身体が「血」を手に入れようと動き出す。その衝動に気付いたラサクは必死に身体を止めようと悶える。


 そんなラサクの様子を見てヤーガは重々しく口を開く。


「ラサク……お前さん吸血鬼だね」


 ラサクが驚き、何か言おうとする前にヤーガは何か呪文を唱え、ラサクの意識は閉ざされた。

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